鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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どこで切るか悩んだ結果こんな感じに



攻防戦と救いの手

 

 

「何なのっ!!?」

 私は思わず声を張り上げていた。叩いた机からイヤな音がしたけど、気にしちゃいられない。

 

 ホシノ先輩はアビドスとシャーレと別々に手紙を残していて…そこには借金の大半を肩代わりする条件でスカウトされていたこと、その話に乗ると決めたこと、アビドス高校をよろしく頼む…なんて書かれていて。

「あれだけ偉そうに説教しておいて!切羽詰まったら何でもしちゃうって、自分でわかってたくせに!!こんなの、受け入れられるわけないじゃない!!」

「助けないと…私が行く。対策委員会に迷惑がかからないように、一人で」

「落ち着いてください!足並みを揃えないと…うわぁ!?」

 

 突然の地響きと爆発音。窓の外を見れば煙が上がっていて、機器を確認したアヤネちゃんが「…うそ、」と声を震わせてる。

「…こちらに向かって数百人規模のPMC兵士が接近中、同時に市街地へ無差別攻撃をしています!」

「カイザーPMC!?どうしてこのタイミングで!?」

「応戦しないとです!何にしても、アビドスが攻撃されているのを見過ごすわけには…!」

「考えてる時間が惜しい、早く行こう!」

「で、ですが私たちが相手するにはあまりにも数が…!とにかくまずは、市民の皆さんを避難させましょう!」

 何か、たくさんのものがぶつかり合うような音が下階から聞こえて、いつの間にか教室を出ていたハリカ先輩が勢いよく戻ってきた。

「みんな、PMCの兵が校内まで…!」

「っ!?…確かにアビドス高校周辺にカイザーPMCの兵士を多数確認、すでに校内にも侵入されています!」

「まじか…っ、とりあえず、学校に侵入したやつからやっつけよう!アヤネちゃんお願い!」

「わかりました!」

 アヤネちゃんが機器を見ているかたわら、持ち物を確かめる。弾薬は十分、整備も欠かさずやってる。

「先生」

「なんだい?」

「屋内は任せます。それと今回、私はここに」

「わかった。ハリカ、行ってらっしゃい」

「えっ?」

 見れば廊下を走り去っていくハリカ先輩の姿。ノノミ先輩も気づいたみたいで、ハリカちゃん?と声をかけたけど、ハリカ先輩は振り向かずに階段を駆け上がっていった。

「…先生?」

「大丈夫、ハリカは強いし、最大限やるべきことをやってくれる。僕らも行こう」

「…ん。わかった」

 …よくわからないけど、シャーレの二人の間だけで通じるところがあるのかな…?

 そこでまた大きな地響きがしてわれに返った。こんなことしてる場合じゃないんだった!とにかく、この学校を…アビドスを、好き勝手になんかさせてやらないんだから!

 

 

【セリカ⇒ハリカ】

 

「うわ…」

 アヤネちゃんの言う通り、外はカイザーPMCの兵士だらけだった。

 ホシノさんがいなくなったタイミングで、こんな…いや、そういえば、カイザー理事はホシノさんと対峙したとき、スカウトについて言及しただろうか?もしかしたらその辺り、食い違いがあったのかもしれない。

「今考えててもしょうがないけどなぁ…っと」

 どちらにせよ向こうに同情の余地はないし。…確か、校舎内の兵士をどうにかしたあとは街へ出ると言っていた。それなら負担は少しでも減らしておくべきだろう。身体を窓の下に潜め、そっと外を窺う。

「さてと…」

 手にするのは特化型。相手は大勢、とはいえあまりド派手なことはしたくないけど。窓を薄く開けて、外気の様子を確かめて。

「…少々、手荒にいきますか」

 

 

『新しい学校の名前は…そうだな、『カイザー職業訓練学校』とでもしようか』

「っ、」

 突然の乱気流(砂嵐)に外が大混乱に陥ったのを確認したあと。そっとアヤネちゃんのもとへ戻ると、現場と繋がった通信からあのカイザー理事の声が聞こえていた。…あの正論と権力でねじ伏せれば勝ち、みたいな姿勢がどうにも鼻につく。あぁ~ヤバいまたセリカちゃんの怒りが伝染しそう…に私はなってたけど、ふとアヤネちゃんがうつむいていることに気がついた。

「対策委員会は、公式に許可を受けてる委員会じゃない…対策委員会ができたとき、もうアビドスには生徒会がなかったから」

『えっ!?』

「ぁ…」

『そう、所詮非公認の組織、公式に書類の承認も下りていない。君たちの存在を示すものは何もない。…だが喜べ、アビドス高等学校がなくなれば、君たちはあの借金地獄から逃れられるのだからな』

「…」

 

 沈黙が下りた部屋から、そっと廊下に出た。いたたまれなくなったから。みんなの努力が水の泡になりそうなことが、じゃない。

「…部外者なのが悔やまれる…っ」

 みんなを支えているのは、きっとこの学校、この街に対する愛着なんだろう。…私が持ち得ないもの。

 正直なところ、私はみんなが必死に足掻くのを、心の底からは応援できないでいた。あ(・)く(・)ま(・)で(・)シ(・)ャ(・)ー(・)レ(・)の(・)仕(・)事(・)と(・)し(・)て(・)の付き合いであって、どこか他人事な自分がいた。

 …その認めたくなかった事実が、本当の窮地にある今になって私の心を責め苛(さいな)んでくる。薄情者になんかなれやしない。そんな環境で育ってないもの。

 

「…今ここで戦ったところで、何かが変わるんでしょうか……今も、凄い数の兵力がこちらに向かっています。たとえ戦って勝てたとしても…その後は、どうすれば……」

 部屋の中から聞こえるアヤネちゃんの声は、か弱いものになっていた。どうやら、最後方で頑張っていた彼女の心が、誰よりも先に折れてしまったらしい。背後で絶望したような言葉が並ぶ中、左から不躾な足音。ちらと窺えばロボットみたいなPMC兵士。

「うざい」

 引き金を引くだけで、そいつは開いた窓の外へ吹き飛んでいく。それでもたった一人だけ。砂山の一粒にすぎなくて、趨勢は何も変わらないらしい。

「…支えてほしいって言われたけど……私も、そろそろ限界かも…」

 

 

 

 

 

「…!?」

 …そんな状況を変えたのは、通信の向こうから聞こえた大きな爆発音だった。

『まったく…おとなしく聞いていれば、何を泣き言ばかり言っているのかしら』

 アヤネちゃんのいる部屋に戻ると、通信の向こうから聞こえてきたこの声…聞き覚えしかない、アルちゃんだ。何がどうなってるのかわからないけど…便利屋68。彼女たちが来たんだ。

 

『何をどうすればいいのかわからない、なることなすこと全部失敗に終わる、ここを切り抜けたところで、この先も逆境と苦難しかない…だから何だって言うの!?仲間が危機に瀕してるんでしょう?それなのにくだらないことばっかり考えて、このまま全部奪われて…それで納得できるわけ!?』

 そして熱い説得をされている…アルちゃんめっちゃいい人じゃん…初見の違和感はやっぱりこれか…なんというか無理してるというか、たぶんあれは本当のアルちゃんじゃないなとは思ってたんだ。

『目を開けなさい?腑抜けた顔のあなたたちに今、真のアウトローの戦い方を見せてあげるわ』

 まあアウトローは諦めないみたいだけど…通信の向こうから再び響きだした爆発音。あの便利屋、だいぶ爆発物の扱いに長けてるよね…。

 

 

『…おかげさまで目が醒めました。私たちにこうしている暇はありません』

『そうよ!何よりもまず、ホシノ先輩を取り戻さないと!』

▼アビドスのみんながふっかつした!

 …いやもう、セリカちゃんのきゃんきゃん言う声(セリカちゃんは猫耳だけど)を聞いて安心してる自分がいる。こりゃあれだけ可愛がられるわけだ…。

『…よくも、私の大事な生徒を…ホシノのこと、返してもらうよ』

 そして先生がちょっと怖い。一人称が変わっていらっしゃる…大人が相手っていうのもあるだろうけど。あれは十中八九キレてる。久々に見たな…

 

 その後、アビドス&便利屋+先生による反撃により、カイザーは退却していった。…最後どうやら理事が操縦しているらしいデカブツが出てきたけど、アルちゃんの一撃がすさまじかった。当たったあと爆発したよ何あれ??

 けど、これで光明は見えてきた。みんなの目に光が戻った。…私も、こんなもだもだしてる場合じゃない。愛着がないから何だ。どうせ乗りかかった船…と言うのは失礼かもだけど、せめて最後まで見届けさせてもらおう。

 

 

「…どうするんだこれ…」

 …そう思いながら、私は校舎内で倒されたPMC兵士たちを外へ投げ出す作業をしていた。そして現在、体育館内部で煙をあげて静止している戦車(!?)の前に立ち尽くしている。…これはいいや、みんなが戻ってくるまで待とう。

 

 

 

 

 





・ハリカ
単独行動に入り平然とCADが登場。空気の密度操作が得意中の得意なので風を起こしまくる
ほんとは内心ずっと思い悩んでたよ。いかんせん抱え込むのは得意なタイプなもので

・セリカ
なんだか、考えるほどハリカ先輩って不思議よね…

・シロコ
たびたび一人で立ち向かおうとするアグレッシブガール

・アヤネ
アビドス勢の中では二番目にメンタルピンチだった
なにやらムツキに気に入られているようで内心困惑してる

・ノノミ
今回は影薄かったね…()

・先生
ハリカに学校を任せ、現場に出た指揮官

・便利屋68
(ほんとはラーメン食べに来ただけだけど)激アツ展開に盛大な拍手。

・ホシノ
…


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