『敵の増援多数…この数字、恐らく向こうの動ける全兵力が…!』
「こんなところで総力戦か…アタリっぽいね」
かつてのアビドス高校校舎の前に立ち塞がったカイザー理事は、ゲマトリアの要求でここに実験室を立ち上げたのだという。…ここにホシノさんがいる、ということは恐らくその"実験"の被験者にされているということだろう。
居場所を教えてくれるという謎の優しさ(?)を発揮しつつ「既に実験が始まっているかもしれないが」とか言って逆撫でしてくるこいつ…。
「彼女の元に行きたければ私たちを振り切って行けばいい。君たちにそれができるなら、の話だが」
強気な言葉を合図にするかのように、大勢のPMC兵士たちが一斉に銃口を向ける。
「そりゃ簡単には通してくれないか…」
「ん…じゃあ、ここは私が」
名乗り出たシロコちゃんが、ドローンを起動
…する前に、居並ぶ兵士たちの真っ只中で爆発が起きた。
「っ!!?」
『こっ、今度はなんですか!?』
アヤネちゃんが叫ぶ間にも、PMC兵士めがけて銃撃が、黒い鞄が……鞄?
「じゃーん!やっほ~☆」
「…べ、」
『便利屋の皆さん…!?』
そう、現れたのは何度目かの便利屋68。みんなが驚いてるということはお願いしたわけではないらしい。
「やっと追い付いた~!けどなんかみんな集まってるし、大事なシーンに割り込んじゃった感じ?」
「…ふん、こっそり助太刀しようかと思ったのに、そう上手くはいかなかったわね」
きょろきょろ見渡してるムツキちゃんに澄まし顔のアルちゃん…が、なにやらくつくつと笑いだす。
「ふふ…勘だけはなまっていないようね対策委員会。私たちが来た理由なんて決まってるでしょう?……ここは私たちに任せて、先に行きなさい!」
「あ!アナタもまた会おうね~!」
「え?あ、はい!?」
走り出したアビドスの面々を追いかけようとした矢先、ムツキちゃんから声をかけられてびっくりした。当の彼女はくふふ!と笑いながらひらひら手を振って戦場に身を投じていく…アルちゃん百面相してる。また後に
そして、なんとか兵士たちを切り抜けたところで、
『ホシノ先輩の位置、確認できました!あのバンカーの地下です!』
アヤネちゃんの通信が入った。バンカー…頑丈な防空壕みたいなそれが前方に見えた。なんだっけ、掩体って言うんだっけ?とにかく、あの先にホシノさんがいるらしい。
…けれど。
「カイザー理事…!」
「ああもう!どこまで邪魔すれば気が済むの!!」
「どいてください!さもないと、」
「対策委員会…ずっとお前たちが目障りだった」
…なおも立ち塞がる理事は、しかし今度は様子が違った。
「これまであらゆる手段を講じてきた…だがお前たちは滅びかけの学校にいつまでも残って、しつこく粘って、どうにか借金を返済しようとして…!」
「…っ!」
ギシッ…という音は、理事の握りしめた拳から。…怒っている。さっきまでのあの余裕を、理事はもうすっかりなくしている。
「…あれほど懲らしめたのに、徹底的に苦しめたのに、毎日毎日楽しそうに!!…お前たちのせいで、計画が……私の計画がぁぁ!!!」
感情的に吼える理事…対する私たちは毅然と戦闘準備に入る。だって心は決まってるから。セリカちゃんでさえ、静かに口を開く。
「あんたみたいな下劣で浅はかな奴が何をしようと、私たちの心は折れたりしないわよ」
「ホシノ先輩を返してもらうよ」
「あなたみたいな情けない大人に、私たちは負けません!」
『戦闘に入ります…先生、お願いします!!』
「先生…すみません、少し離れていいですか」
通信を一旦切って、隣の先生に声をかけた。戦場のただ中で、私は基本的に先生の身を守る動きをする。他のみんなも同じことは考えてくれてるけど、私は同じシャーレとして第一に。
…ただ、今回はじっとしていたくない自分がいて。
「…みんなの負担、増やしちゃうかもしれませんけど」
「大丈夫だよ、あの子達なら。それに僕も何もしない訳じゃないし…ハリカがよくうずうずしてるのは知ってるから。行っておいで」
「知られてましたか……ちゃんと戻ってきます」
頬が熱くなるのは気にしないようにして、左手首の汎用型から、ここに来て以来二度目となる起動式を呼び出した。突拍子もないように見えて仕組みは単純。加重系…体にかかる慣性を消し、収束系…周囲の空気を動かし、最後は移動系。
「よっ…と」
瞬きの合間に、広範囲を見渡せる場所に移動した。これが『擬似瞬間移動』。遮蔽物さえなければ自由自在…とはいえ、消耗は大きいから控えてる。…考案者かどうかはわからないけど、やっぱり
上から見れば、三人が力強く突き進んでるのがよくわかる。時おりアヤネちゃんの支援を受けながら、気持ちいいくらいにPMCを蹴散らしている。
「先生から離れちゃってるし…負担減らしてあげないとね!」
左ポケットから出したチャック袋を開封。この際全弾放出してしまおう。好都合なことに、なぜだかこんなところにまで弾丸が散らばってることだし。
「…あ、出た」
そして再びお目見えした白いデカブツ。パワードスーツって言うのかな?ああいうの…けど、アビドスがだいぶ押してる。あのすさまじい砲撃に耐えられる身体が本当にわからないのはさておき、もうほぼ戦況は確定と言えそうだ。
…なんて、静観するわけがないけれど。私だって怒ってるから…ここはひとつ、ささやかな大技を捧げよう。
「せめて、これくらいの奇跡は起こしてあげますか」
静かに特化型を構える。狙いはもちろんパワードスーツ、あれを
タイミングを計るため、通信を入れ直す。狙うはノノミちゃんのとっておきが炸裂した直後…
「―――ここだ」
集中砲火を受けたパワードスーツが沈黙し、それを確認した私たちは全力で駆け出した。ヘリの音がしたけれど、気にしてなんかいられない。
【ハリカ⇒ホシノ】
―――先輩はすぐそこにいるはずです!
―――ここです!でもドアが開かなくて…
―――こんのぉっ!!
…大きな音がして、世界が揺れた…気がする。
気がつけば辺りは真っ暗。拘束は解けて、私は床に倒れ伏していた。…いや、そんなわけない。夢でも見てるのかな……みんなの声が聞こえたような。じゃあ、やっぱり夢か…
「…声」
ゆっくりと手を伸ばして、体を起こした。…これは、きっと夢だけど。
「あれ?こ、こっちも!?」
「いや、こっちは歪んでるみたいです…たぶん、さっきので」
「悪かったわね!!」
…夢でもいいから。…最後に、もう一度だけ…
「私がやる」
「えっ…でも、」
「任せて、こういうときは…」
「…へ」
見覚えのある青い光。それが目の前で広がって、真っ暗だった空間を照らした…ように思った。次の瞬間には、目の前に見えた扉が実際に開いて。
「「「「ホシノ先輩!!!!」」」」
…シロコちゃん…ノノミちゃん…セリカちゃん…アヤネちゃんまで。…対策委員会のメンバーが。
ふわりと吹いてくる外の風…さっきまでこの部屋にはなかった、砂と硝煙の匂い……夢じゃ、ない?
「あ、れ…どうやって…?だって、私は…」
「ホシノ」
顔を上げると、扉のわきに立つ先生と目が合った。…あぁ、そっか…
「…みんなと、先生…大人が、ね…はは」
「お、おかえり、先輩」
「あ~!セリカちゃんに先を越されちゃいました!恥ずかしいから言わないって言ってたのに、ズルいです!」
「う、うるさいうるさい!順番なんてどうでもいいでしょ!!」
赤い顔のセリカちゃんは、ノノミちゃんにからかわれて耳まで真っ赤にしてる。…いつものセリカちゃん。
「…無事でよかった」
シロコちゃんはやっぱりクールに、簡潔に…でも、目が潤んでるよ。
「ホシノ先輩、おかえりなさい!」
アヤネちゃんなんてもう泣いちゃって…え、おかえりなさい、って…
「おかえりなさい、です!」
うへ、ノノミちゃんも?
「おかえり、ホシノ先輩」
…シロコちゃんまで。
「あはは…なんだかみんな、期待に満ちた表情だけど…求められてるのは、あのセリフ?」
「あぁもう!わかってるなら焦らさないでよ!」
セリカちゃん、まだ顔赤くなるの…はは…みんな私の言葉を待ってる。…勘弁してよ。頬が緩んじゃうじゃんか。
「うへ~…まったく、かわいい後輩たちのお願いだし、仕方ないなぁ」
「ただいま、みんな」
・ハリカ
アビドスにささやかな
擬似瞬間移動はEp.1初回で疑問に思われてたやつ。お待たせしました。しれっと
最後にいないのは部屋の外で待ってたため
・対策委員会
アヤネはヘリで現着。
おかえりを言えた
・先生
なにげにヘリの手配までしてたのね…
目標を達成できてよかった
・便利屋68
大人気コメディリリーフ。ハリカと戦場で対面したのは初
・ホシノ
夢じゃなかったね
ただいまを返した
もうちっとだけ続くんじゃ…