ミトドケタ━(゚∀゚)━!
ちらほら小難しかったけどいい話でしたね
みんなが対策委員会の部室で休息をとる中、シャーレの二人と三人きりで話がしたい、と言うホシノと一緒に廊下に出た。いなくなる前の晩を思い出してしまうけど、あのときと違って外はまだ明るい夕焼け空。
「ホシノさんも、今日はゆっくり休んだほうがいいんじゃ…」
「大丈夫だよ、おじさんは身動きとれなくなってたし。むしろハリカちゃんが心配だけど…ちょーっと放っておきたくないことがあってさ。…ねえ、ハリカちゃん」
「…はい」
ホシノはくるりと振り返り、ハリカの正面に立った。表情はのんびりしている時とは違う、真剣そのもの。
「単刀直入に聞くよ。ハリカちゃんってさ、本当は何者?」
「………えっ?」
「私がいた部屋のドア…ハリカちゃんが何かしたんじゃない?開ける前に」
「っ!?えっ、えっ…と、それは、どういう…?」
ホシノの質問に対して、ハリカは…ものすごく動揺しつつ、質問を返していた。あぁ…あのときやけにすんなり扉が開いたと思ったけど、やっぱり何かしてたんだ…と思うくらいにはバレバレの態度。…ホシノも、ちょっと震えてる。
「いや~…あのとき、青い光が見えてさ」
「…え…見えたん…ですか」
「それから扉が…え、なに?」
「見えたんですか!?
「さい…えっ?」
ポカンとしたホシノを見て、ハリカはしまった、という顔で口を押さえた。…すごく見覚えがある。
「…魔法は本来、普通の人には実際の変化と結果しか見えないはずなんです。たまに余剰想子光が現実の光に変わることはありますけど…私はそこまでの浪費をしないよう心がけてますから」
「そっか…要するに、ハリカちゃんの隠し事をおじさんは見抜いちゃったってことか。うへ~こりゃ大変だ」
結局、ハリカは魔法についてホシノに明かした。ハリカは「失言がなくても、視られた以上話さざるを得ない」と言っていたけど…
…そう。以前ハリカが魔法について、『適性がなければ視認もできない』と語っていたまさにあの件………ん?待って?…ということは…?
「…いえ、気になりますけど、やめておきましょう。ホシノさんを信用しないわけじゃないですけど…」
「へ?なんの話?」
「…
「そうなの?」
「はい…ここまでイレギュラーな火種は、私だけで充分でしょう」
「うへ~はっきり言うね~。まあ、それもそっか」
気がつけば、ホシノはいつもののほほんとした雰囲気に戻っている。ハリカはまだ顔が固いけど。
「…すみません、新しく隠し事を作ってしまって…でも、お願いします。みんなには秘密で」
「わかったよ。ないに越したことはないとはいえ、お願いされちゃしょうがないや」
「ありがとうございます。…じゃあ、そろそろ戻ります?」
「そうしよっか~」
ほっと安堵の息をついたハリカと、ホシノの先導で来た道を戻る。
…きっと、アビドス最大の苦難はこれで去った。あと、対策委員会のために僕ができることは…
【 ⇒ハリカ】
「おはようございます、先生」
「ああ…おはようハリカ」
シャーレのオフィスに入ると、今日も見慣れた顔に出迎えられ…る……
「…先生、ちゃんと夜寝てます?」
見慣れた顔の目の下には、炭を擦り付けたようなものすごい隈ができていた。なんだか最近どんどん濃くなる一方な気がする。
「うん…寝てるよ。30分くらい」
「短い!?全っ然足りない!もっと寝た方がいいですって!?」
「大丈夫大丈夫、一回泥のように眠ったら元通りだから」
「じゃあ今すぐそれやってくださいほら書類置いて立って!」
でも仕事が、とか反論が来たけど、耳を貸さずに仮眠室に押し込めておいた。心配しなくても、おかげさまでもう書類の整理くらい造作もありませんよ。それに、ここに来るのは私たちだけではないですし。
「…あれ、これは…手紙?」
ふと執務机の上にある便箋に気がついた。差出人は…アヤネちゃんだ。
「アビドス……そっか…」
手紙の内容はアヤネちゃんからのお礼だった。先生の尽力で対策委員会が正式に部活として認められたことは知っている。実質生徒会になるとも。ただホシノさんは生徒会長になるつもりはないらしいけど。
あと、カイザーに連邦生徒会の捜査が入るというのも聞いていた。それに関連して、アビドスが抱えていた借金…そこに付けられていた暴利もなくなり、むしろ元の額より少なくなったとか。…借金そのものや土地の権利については違法な取引じゃなかったからそのままだけど、それでもだいぶ楽にはなったそうだ。
「理事は指名手配と尻尾切りくらって行方不明か…御愁傷様だことで」
まあ、言うほどかわいそうとは思わないけど。是非とも人の心を手に入れる旅になってほしいとは思う。
その他には、柴関ラーメンが屋台で復活したとか、便利屋は新しく事務所を構えたらしいとか、『黒服』も調べたけどよくわからなかったとか…
「…ふふ、結局元通り、ね…」
相変わらずセリカちゃんは残念な子で、シロコちゃんは過激な子で、ホシノさんはのんびりやってるらしい。…でも、よかった。それはきっと、日常が守られたってことだ。何気なくても、それが宝物ってことを、私も…
「………いけないいけない。仕事しよう」
【ハリカ⇒ユウカ】
「…ハリカ?」
「あ、ユウカちゃん」
シャーレのオフィスを訪れると先生は不在で、ハリカが一人で書類の整理をしていた。その姿を見て、思わずジト目になってしまう。視線の先には…重力を無視してふよふよ浮かぶクリアファイル。
「あなた、その魔法とやら…あまり軽率に使うものじゃないんじゃ…」
「いやぁ便利でつい…ね?これくらいなら負担もほとんどないし」
「負担とかじゃなくて…またハスミ先輩のときみたいにバレたりしてないわよね?」
「……………」
「その沈黙は何?」
顔をそらされた。そう、彼女の魔法、実はトリニティ総合学園の羽川ハスミ先輩には既にバレている。単純にシャーレで油断してて目撃されたらしい。ハスミ先輩は真面目でしっかりした人だから、秘密はちゃんと守ってくれるだろうけど…
「そのぉ…言いにくいんだけど…」
「バレたのね?」
「…ハイ」
猫背になって縮こまったハリカから、弱々しい肯定の返事が…ちょっと、この飛んできたファイルは私に渡すってこと?嘘でしょ今このタイミングで!?
「アンタね…」
「待ってき、聞いて!今回、その…バレ方が問題で!」
「これ以上の問題って何?」
「見られたの、
「…………は?」
思わず数秒フリーズした。だって、聞いてた話と違う…適性がなきゃ見えない、って…
「あ、相手は?」
「アビドスのホシノさん…青い光についてはみんなに話してたけど、私ってことは秘密にしてくれてる。適性どうこうは試してないからわからない」
「試してないって…ああでもそうか、使えたら使えたで大ごとよね…」
「察しがよくて助かる…」
…確かに、ただでさえ大事にはしたくないって言ってるのに、使い手が増える事態は避けたいわよね。
「…それって、問題が起きたけど保留ってこと?」
「まあ…ホシノさんも、今のままでいいって言うから」
「…そう」
色々と気にはなるけど…本人たちがこれでいいと言うなら、私には何も言えない。この話に私が踏み込めるのはここまでだ。
「そういえば、先生は?」
「まぶたにすごい隈作ってたから寝かせた」
「あぁ…なるほどね。まったく……あっ、そうだ先生といえば!聞いたわよ、前線に出て体張ったらしいじゃない」
日頃から忠告していることに触れると、ハリカは「げ!」と苦い表情をした。と思うと、また顔をそらされる。
「そ、れは…私の勝手じゃん?いいでしょ別に、防御には自信あるんだよ?今ならウトウトしてても張れるんだから」
「そういう問題じゃないわよ、いくら自信があるって言っても私たちとは違うんだから!リスキーな行動は避けるべき!」
「っ…それを、言われちゃうとさぁ…」
…さすがにちょっと言い過ぎたかな…と目に見えてしゅんとしてしまったハリカを見て思った。書類整理の手は止まってないけど…その作業もすぐに終わったらしい。コンパクトにまとまったファイルを胸に抱えて、空いた右手は後頭部へ。後ろにまとめた髪と白いリボンを揺らしながら、おもむろにその口が開いた。
「…いくらリスキーだろうと、やらなきゃいけないことはあるんだよ」
「…ハリカ」
「悲しませたくなかったし…
うつむくハリカがつぶやいた言葉が妙に引っ掛かった。でも言うべきじゃない、と思ったときには、もう口を衝いていて。
「…帰りたいんじゃ、なかった」
「もう帰れないから」
「…えっ?」
「…何でもない。忘れて」
思いがけない即答に顔を上げた…けど、足早にオフィスを出ていくハリカの顔を見ることはできなかった。
・ハリカ
押されると弱かった。以後気を付けます…
まさかの見えちゃう人登場で取り乱した。同じものを使えるかも、というのは魅力的ではあったけど、あまりにもハイリスクすぎるので追いかけないことにした。
歪んでたドアは発散系か何かで整形したと考えといてください
もう帰れないことは先生にも明かしてない
みんなが救われてよかった。
…え、私?
・ホシノ
見えちゃった人。ことの重大さもハリカの心遣いも承知したので秘密は守る。
使えるか否かは今は保留にしておく
けどたぶん使えはしないほうに行くと思う
・対策委員会
▼かけがえのない にちじょう が まもられた。(これ本来2章のほうでやる演出だよなぁと思いながら…)
・先生
大切な生徒のため、できることを模索し続ける大人
見えるときって青い光なんだね…※使い手や種類によります。
・ユウカ
シャーレに頻繁に来るし、同い年なのもあってすっかり打ち解けてる。見えるときって青(ry
ハリカは外の人間であり、肉体は先生と同じらしいのであまり無茶はしないでほしい
・作者
時系列はベテラン先生にもよくわからないようなのでコノアトドウシヨウカナー状態
「…やらなきゃいけないことがあるとか、啖呵切っちゃったけど…なんてことない、ただの向こう見ずじゃんか」
屋上に続く階段に座り込む少女が一人。膝に顔をうずめたまま、ぽつりとつぶやいた。
「…はぁ、バカは死んでも治らなかったな」