…(これといって主人公の見せ場がないエピソードになりつつある、と憂える顔
頑張りますとも…
ロボットたちの猛攻をかいくぐり、なんとか無事に帰り着いたゲーム開発部の部室。みんな思い思いに休息をとっている…と思う。なにしろ求めていた
ちなみに当のG.Bibleとやらはここにない。『ヴェリタス』…って、確かコタマさんがいるところだよね?そこにさっそく解析を依頼しているらしい。今はその結果待ちというわけ。
「はぁ…そういうことくらいは先に言っておいてほしかったです…」
…そんな傍ら、私は先生からこれまでの経緯を聞かされた。ゲーム開発部廃部の危機、そんな折に廃墟の中で機械少女を見つけ、シリアルナンバーとおぼしき"AL-1S"から「アリス」と名付け、廃部を取り下げてもらうため生徒に偽装…結果としてまず出たのはため息だった。
「あんまり驚かないんだね…」
「んー…ヒューマノイド、って言うんですかね?向こうには家事代行サービスみたいな感じで普通にいましたし…かなり珍しい例ですけど、意志疎通ができるようになった個体もいる、という話は知ってるので…」
「そうなんだ?」
きょとんとする先生にはええまあ、と返しておく。家事代行サービスみたいな、というのは"3H"…ヒューマノイド・ホーム・ヘルパーというやつだ。…実際に見たことはないけどね。名家とはいえ地方のお屋敷程度、もちろん近所にいたこともなかった。四高にもいなかったし。
そして"珍しい例だが意志疎通ができるようになった個体"は一高のピクシーのこと。何も嘘はついていない。
「…むしろ、学生証の偽造とかのほうが、よくやるよって思いましたよ」
「モモイの行動力はすごいよね…」
ストレートに犯罪だぞ犯罪…思わず頭の中にイマジナリーホシノ先輩が登場した。あれだ、「かわいい後輩がそんなことになっちゃうのは嫌だなぁ~」のやつ。聞いたところどうやらモモイちゃんの独断らしく、先生も苦笑いしてる。呼んだー?と振り向いた
「…あれ?」
「ん?どうしたのミドリ?」
「なんか、ヴェリタスの部室に来てほしいって。解析できたのかな」
「おぉ、じゃさっそく行っちゃおっか!」
「はい!行きましょう!」
どうやらそろそろ出発するらしい。ほらほら早く!というモモイちゃんの元気いっぱいな声に、私たちも腰を上げた。
モモイちゃんに先導されて訪れた『ヴェリタス』の部室は、壁に多種多様なモニターがずらりと並ぶ圧巻の眺めだった。すごいな学校でも見たことないぞこんなの…あれだ、放送局の裏側とかがこんな感じじゃないか。そしてパッと見、室内には二人の生徒がいた。
「わ…あ、コタマさん」
「先生、それにハリカも。三日ぶりかな」
「あれ?いつの間に知り合い?」
「コタマは何度かシャーレに来てるからね」
一人はシャーレにも在籍してるコタマさん。もう一人はちょうどモモイちゃんが話しかけている白髪の少女。私は
「…知っての通り、私たち『ヴェリタス』はキヴォトス最高のハッカー集団だと自負してる。システムやデータの復旧については、それこそ数えきれないほど解決してきた…その上で、単刀直入に言うね?」
そして、ハレちゃんは真剣な顔で言う。…その言い方だと、もしかして…
「…モモイ、あなたのゲームのセーブデータを復旧させるのは無理」
「うわあぁぁぁんもうダメだぁーーっ!!」
……………ん??
「えっそっ、そっち!?モモイちゃんが依頼したのって!?」
「そっちじゃないでしょG.Bibleのパスワードの解析はどうしたのさ!?」
「それならマキが作業中ですよ」
「マキちゃんが?」
「んー?あ、おはようミド!来てくれたんだね、ありがと!」
ミドリちゃんが名前を反芻するのに合わせるかのように、居並ぶPCの陰から鮮やかな赤髪の子が顔を出して手を振った。なるほどあの子がマキちゃん。席を立って近寄って来たマキちゃんは、
「それより、G.Bibleはどうだった?」
「ちゃんと分析できたよ。あれは噂の伝説のゲーム開発者が作った神ゲーマニュアル…G.Bibleで間違いないね」
「やっぱりそうなんだ…!」
断言するマキちゃんに、ミドリちゃんの顔が一気に明るくなった。さらにマキちゃんいわく、データは一回*1しか転送された形跡がない…つまり、
「でも問題があって…ファイルパスワードの解析はまだできてないの」
「えぇ!?じゃあ結局見られないってことじゃん!がっかりだよ!」
「だ、だってあたしはあくまでクラッカーであって、ホワイトハッカーじゃないし…」
うわモモイちゃん早い、反応が早い。噛みつかんばかりの勢いに私…どころかコタマさんも驚いたし後ろのユズちゃんまでびびってる。当然マキちゃんもたじたじ。
「とにかく!そうは言っても方法がないわけじゃない。パスワードを直接解析するのはたぶん不可能。でも、セキュリティファイルを取り除いてまるごとコピーする…って手段ならきっとできるんじゃないかな。で、そのためには『Optimus Mirror System』…通称『鏡』ってツールが必要なの」
「セキュリティ以外全部コピーってこと?そんなことできるんだ…?」
「つまり、G.Bibleを見るためにはその『鏡』って言うプログラムが必要なんだね?どこにあるの?」
「あたしたちヴェリタスが持ってた」
「…過去形?」
「そう、今は持ってない。生徒会に押収されちゃったの!こないだ急にユウカが押し入ってきて、「不法な用途の機器の所持は禁止」って!!」
ここにも来てたのかユウカちゃん…本当に忙しいね、っていうか押収は管轄外の業務なのでは?
それと、ぷくーっと頬を膨らませるマキちゃんがさっきまで生真面目に説明してたときとの落差が激しくて頭がバグ起こしそうです。
「『鏡』ってそんな危険なものなの?」
「そんなことはないよ、ただ暗号化されたシステムを開くのに最適化されたツールってだけ。ただ世界にひとつしかない、私たちの部長が直々に製作したハッキングツールで」
「部長っていうと、ヒマリ先輩?」
あ、今ここに部長はいないんだね。ミドリちゃんの説明によるとヒマリ先輩、体は不自由で車椅子を使っているけれど頭は天才そのもの、ミレニアム史上三人目の『全知』という学位を持つすごい人らしい。
「けどそれはそうとして、その先輩がせっかく作った装備をどうして取られちゃったのさ?」
「…私はただ、先生のスマホのメッセージを確認したかっただけです。そのために『鏡』が必要で…」
「コタマさん???」
しょんぼりとした様子で言い訳をし始めたのはコタマさん…えっあなたが原因?それも天才謹製の高性能ツールを、今背後にいる先生のスマホに??…今つけてるヘアクリップのこともそうだけど、この人意外と思い付いたらなりふり構わないタイプだな…?
「不純な意図は全くなかったのですが…」
「私には不純な意図しか感じられないけど…?」
「まあまあ…」
「とにかく、整理すると、私たちも『鏡』を取り返したい。それにG.Bibleのパスワードを解析するために、あなたたちにとっても『鏡』が必要。そうでしょ?」
「なるほどね~。呼び出された時点で何かあるんだろうなーとは思ってたけど、だいたいわかったよ」
先生本人に慰められて(?)いるコタマさんはさておき、ハレちゃんとモモイちゃんの間でそんな会話が…モモイちゃん?なんか悪い予感がするんだけど?さっきマキちゃんの説明にはフリーズしてたのに今回は何をわかったって?っていうか、そのマキちゃんも不敵な笑みを浮かべてる…
「ふふ、さすがモモ!話が早いね」
「目的地が一緒なんだし、旅は道連れってね!」
「あの…お姉ちゃん?もしかして、だけど…」
ミドリちゃんがおそるおそる…たぶん私と同じこと考えてる。まさか…
「まさかヴェリタスと組んで、生徒会を襲撃するつもり!?」
…まさか。いやまさか、ね?
【ハリカ⇒ 】
「諦めよう!!ゲーム開発部、回れ右!!」
「待って待って待って!諦めちゃダメだよモモ!」
くるりとターンしたモモイ、その肩をマキががっしりと掴んで引き留める。…『鏡』を確保するために、生徒会の差押品保管所に忍び込む…そんな話になっていたところだけど、「そこを警備しているのがメイド部」という情報が出たとたん一気にこうなった。
メイド部、というのは正式な名前を”Cleaning&Clearing”という部活だろう。メイド服を身にまとい学園に奉仕する、ここミレニアム最強の武力集団。凄腕のエージェント集団であることは伏せられていると聞いていたけど…どうやら公然の秘密となっているらしい。話についていけない、というハリカに軽く説明すると遠い目をした。世界があまりにも違いすぎるそうだ。
「廃部は嫌だけど話の次元が違う!C&Cの
「…最後には痕跡すら残さず、きれいに
「そりゃ部活は守りたいけど…ミドリにアリス、ユズの方が圧倒的に大事!危険すぎる!!」
モモイがちょっと、初めて見るくらいの剣幕になっている。本当に仲間を大切にしているらしい。…うん、わかるよハリカ。武装サークルってなんだろうね。
「待って待って、何も真っ正面から喧嘩しようってわけじゃないよ?あくまで差押品保管所から『鏡』を取ってくるのが目的なんだから!」
「そんなに変わらないじゃん!」
「でも、不可能な話じゃない」
「ええ、私の盗ちょ…情報によると、現在のメイド部は完全な状態ではありません」
ごねるモモイとは対照的に、ヴェリタスにはどうやら勝算がなくはないらしい…コタマ今盗聴って言いかけたね?先生もう何も言わないよ?
「もちろん、メイド部はミレニアム最強の武力集団。どうして最強と呼ばれているか、それはもちろん素晴らしいエージェントのメイドが揃ってるからっていうのもあるけど、何よりも大きいのは部長…コールサイン・ダブルオー、ネル先輩の存在。でも今、彼女は学校にいない」
「最強がいないからまだマシ、と…?」
「それにさっきも言った通り、正面から喧嘩する必要はないからね。正面衝突を避けて、『鏡』だけ取って逃げるのが理想的なプランだよ」
「正面衝突を避けて、『鏡』だけ取って逃げる…」
「……やってみよう、お姉ちゃん」
不意にきっぱりと提案したのは、さっきまで黙り込んでいたミドリ。
「えっ!?で、でもネル先輩がいないったって、相手はあのメイド部だよ!?」
「わかってる。でも、ゲーム開発部を無くすわけにはいかない。ボロボロだし狭いし、たまに雨漏りするような部室だけど、もう今は、私たちがただゲームをするだけの場所じゃない。…みんなで一緒にいるための、大切な場所だから」
「ミドリちゃん…」
「だから、ちょっとでも可能性があるなら、私はやってみたい。たとえメイド部と対峙することになったとしても、それがどんなに危険なことだとしても、守りたいの!ユズのために、アリスのために、私たち全員のために」
…ミドリの目には、しっかりとした決意が宿っているように見えた。そして、それに誰よりも早く呼応したのはアリス。
「できます、私たちなら。伝説の勇者は…世界の滅亡を食い止めるために、魔王を倒します。アリスは計45個のRPGをやって、勇者が魔王を倒すために必要な、一番強力な力を知りました」
「強力な力?レベルアップ?あ、装備の強化?」
「盗聴ですか?」
「EMPショックとか?」
「やめてあげなさいみんな」
「ち、違います…
周囲の言葉に戸惑いつつも、言い切ったアリスは無邪気な笑顔を見せた。…確かに、現実でも仲間は大切だ。…以前あったアビドスの危機だって、外からの救援が不可欠な要素だったね。
「…うん、よし…やろう!生徒会に潜入して、『鏡』を取り戻す!ハレ、なんかいい計画とかない!?」
「任せて。ただ、いくつか準備は必要だね…さっき言ってた盗聴もそう、EMPショックもそう。あとは仲間かな」
「仲間?」
「ただ私たちとは親しいわけじゃないから、先生にお願いしないとね」
「ん?僕かい?」
「…エンジニア部。彼女たちの協力なしに、この作戦は成功しない」
「わかった、協力しよう」
ところ変わってエンジニア部。部長のウタハから返ってきたのは、ほとんど二つ返事と言っていい承諾。思わず隣のミドリと顔を見合わせた。
「…本当にいいんですか?エンジニア部は実績もたくさんあるし、こんな危ない橋を渡る必要は…」
「そうだね。そうかもしれない」
「なのにどうして、メイド部と戦う、なんていう危険な計画に乗ってくれるんですか?」
「その方が面白そうだから、かな」
「そうです!それに私たち、先生ともっと仲良くなりたいですから!」
「それもあるし……いや、今はいいさ。よろしく」
横から割って入るヒビキとコトリ。ウタハはアリスを見て何か言おうとしていたけど…アリスに託したレールガンのことかな。
こうして、『鏡』を確保する作戦は着々と準備され………静かに始まった。
・ハリカ【ヘイロー装備中】
ようやく情報の擦り合わせができ……いや間に合わない
基本出しゃばらないためしばし地味。次回以降に期待…?
・先生
色々と苦笑いしつつも、生徒のために動く大人
・モモイ
テンションの上下動が激しい
有頂天から転落、でも部活の存続のためには…やるっきゃないね!
・ミドリ
▼ケツイがみなぎった。(だからそれは違うゲーム)
・ユズ
どうしても影が薄くなりがち…
・アリス
何回見ても無邪気で健気な癒やし枠
・コタマ
再び登場。今度は本編
ハリカのヘイローにに関しては当事者なので驚かない
・ハレ
初登場のヴェリタス①
※あくまでモモイが馴れ馴れしいだけであって2年生です
フルネーム一目で読めた人いない疑惑…だけど実在するレア苗字なのね……
・マキ
初登場のヴェリタス②
専門家と歳相応の落差がすごい
ちなみにEMPはElectroMagneticPulseの略、電子機器をお釈迦にする電磁波のことらしい。へー
・エンジニア部
協力者
ウタハの懸念は本作では省略してるシーンにて
・C&C
次回
・ヒマリ
登場はまだまだ先