鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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いやー経っちゃいましたねひと月が
下書きをゆるゆる進めてる間に周囲にはどんどん新しい小説が増えていくよ すばらしいね

サブタイは変えるかもです




Ep.3:補習授業部
平穏な再会


 

 

 暖かな日差しが降り注ぐ、レンガで舗装された道。見上げれば白い雲がぽつぽつと点在する青い空…あ、ハトが横切っていった。平和の象徴だったか…じゃあ、今の状況にぴったりだ。

 

「…めちゃくちゃ静かだ……」

 

 とても平和。

 ここはトリニティ自治区。トリニティ総合学園…シャーレ所属メンツではハスミさんとスズミちゃんが所属する学校のお膝元。なんでも、キヴォトス最大規模を誇る"お嬢様学校"らしい。…あのダブル仕事人からは正直あんまり想像つかないけど。

 ちなみに、三つの大きな学園を中心として合併したので「トリニティ」らしい…もうちょっと何かなかったのかと思う反面、確かにこれがシンプルかつコンパクトで最良な気もしてくる。それでなんか生徒会長も三人いるとか。どういうこと?

 そんな街中に、私は一人。決して迷子というわけではない。むしろ、シャーレのあるD.U.に比較的近いこのあたりはもう慣れたもの。

 それにもともと私は目的もなくぶらぶら歩くのが好きなタチで、たとえば途中下車して一駅歩くみたいなことはよくやっていた。ツグミには「旅番組ごっこ」とか散々な言われようで不評だったけど、まあ体力もつくし。

 

「…ん?」

 ふと聞こえた通知音に端末の画面を見やれば、先生からのモモトークが来ていた。

『ハリカ、今大丈夫?』

『予定は未定ですけど、どうかしましたか?』

『ちょっと力を貸してほしいことがあって。今どこにいる?』

 …私に、力を貸してほしいこと…何だろう。できることならいいけど…いや、あの先生に限って、できないことを頼んだりはしないか。まあ悪い気はしないので素直に答えておく。

『トリニティ自治区ってところです』

『ちょうどよかった!とりあえず印をつけた地図を送るから来てほしい。迎えに行くから』

 あぁ…日々いろんな学校に足を運んでる先生だけど、今日はちょうどここだったのか…。

 送られてきた地図から現在地を確認。今いる場所から…トリニティの校舎を挟んだ反対側?結構遠いな…まあ体力に自信はあるから大丈夫だと思うけど。本当に困ったら何か乗ろう。

 それにしても…この巻き込まれる感じ、久々だなぁ…。

 

 

 さて、道中"総合学園"の名前に負けないとてもおおきい*1トリニティの敷地に沿って歩き、その裏門と思われる辺りで先生が手を振っているのが見えた。さすが気付くのが早い。

「あれ…ハリカさん?」

「そういえばここだったね…久しぶり」

 そして先生の隣には、…何よりもその肩に掛けられた、ニワトリみたいなキャラクターのカバンに見覚えがありすぎる女の子…ヒフミちゃんがいた。こうして顔を合わせるのはアビドスの件以来か。

「助っ人ってハリカさんだったんですね…でも、その服装は?」

「ああ、これが私の正装だよ。あのときはノノミちゃんの制服の予備を借りてたから…さすがに連邦生徒会みたいな格好でブラックマーケットに入るのはまずいってことで」

 そうだったんですか?とヒフミちゃんは目を丸くして先生のほうを向いた。…この感じ、どうやら私は本気でアビドスの生徒だと思われていたらしい。…『五人しかいない』なんてインパクトある情報だから知ってるかと思ってたけど、考えてみればここには幾千の学園があるわけだから無理があるよね。…私の感覚で言うなら「北陸の一般高校のことまでわざわざ知らない」感じになるだろうか。

 

「それで先生、用件はなんですか?」

「あれ?一応モモトークで送ったんだけど」

「え?」

 慌てて端末を確認すれば確かに通知が数件。通知バーのプレビューに『ハリカの知識を借りたいんだけど、…』と途切れた一文を認めて、顔を上げた。

「すみません気づかず…でも先生、私にできないことは頼まないでしょう?」

「ハリカってそういうところあるよね…」

「?」

 …正直に思うところを言ったつもりが、先生には困った顔をされてしまった。思わずヒフミちゃんを見ると「あはは…」と苦笑された。解せぬ。

 

 

「なるほど、つまり私は家庭教師役ということですね?」

 二人から受けた説明の要点をかいつまんで確認をとれば、両者から肯定の返事がかえってきた。私たちは現在移動中、目的地はトリニティの別館。先生には申し訳なさそうに体力面を心配されたけど問題ない旨を伝えておいた。

 なんでも、先生は『ティーパーティー』…トリニティ生徒会直々に「補習授業部」の顧問になるよう頼まれたらしい。「補習授業部」は臨時で設置される、その名の通り補習授業を受ける部活。生徒会は他校との条約の件で忙しく*2、補習の面倒を見るには時間も人員も足りないとのことで、先生に依頼することを決めたのだとか。

 そしてヒフミちゃんがここにいるのは「補習授業部」の部長を任されたからだそう。…でも…

 

「ヒフミちゃんって、あまり成績が悪いようには見えないけど…」

 アビドスの件で少し関わった程度だけど、ヒフミちゃんはどちらかと言えば聡明なほうだと思う。ブラックマーケットに踏み込むに当たってしっかり前情報を押さえていたから案内役に徹することができていたわけだし、(不憫枠ではあれど)残念な子ではなかった。そんな何気ない疑問をぶつけたところ、

「私はその…ペロロ様の、ゲリラライブで…」

「そ、そっかー…」

 …ペロロ様。ちょうど彼女が抱えているカバンのキャラクターのことだ。有り体に言うなら「舌を出して目を回してるニワトリ」だろうか…なんか、前の世界はともかく『私』にはこういうの見覚えがある。なんだっけ…サ○スター?だっけ?*3

 まあそれはなんでもよくて、彼女がペロロ様に注ぐ愛の深さの程はブラックマーケットでも目の当たりにしていたけど。していたけど……()()()()()()って何??

 …めちゃくちゃ気になるけど、気まずそうに大きなカバンを抱きしめるヒフミちゃんを見て、深く追及するのはやめておくことにした。ちょっと強引だけど話題を変えよう。

 

「…なんか、ちょっと独特ですね…補習まで部活にしちゃうって」

「あぁ…まあ、それはそうかもしれません」

「私はやっぱり…部活といえばあんまり学業とかとは関係ない、趣味に近い立ち位置って印象が抜けなくて」

 例えばミレニアムのゲーム開発部とか、百鬼夜行の忍術研究部とか…これは結構ずっと新鮮に感じていることなんだけど、キヴォトスの学校における"部活"の認識は少し変わっている。他にもエンジニア部とかあの辺ならまだわかるんだけど、チナツちゃんの風紀委員会や、ユウカちゃんのセミナーなんかまで「部活」になるらしい。

 …そういえば、チサキちゃんがどこにも所属しないのは束縛が嫌いだからとか言ってたな。役職持ちじゃなくても束縛を感じるなんていうのも、私の部活観とは食い違っていて気になっていたのだ。

「ここでいうなら、放課後スイーツ部みたいな感じでしょうか」

「うん、放課g()()()()()()()()!?

 …とか思ってたらヒフミちゃんの口から出てきた単語に目を白黒させることになった。放課後スイーツ部…甘美な響きもいいところ。さすが平和の園、そんな部活まで…。

「そういえば、ハリカは入ってた部活とかあるの?」

「私ですか?写真部ですよ」

「そうなんだ?ちょっと意外だね」

「まあ、こうやって歩き回るのは大好きなので、ちょうどいいなって思ったんです。だからってカメラに詳しいというわけではないですけど」

 先生からの質問で久々に思い出したけど、前述したぶらり歩き趣味との兼ね合いがいい感じにできることもあって、四高では写真部に所属していた。片手に収まる人数の小さな部だったけど、楽しかったな…

「あ、着きましたよ!ここがトリニティの別館です!」

「お、ここが別館……別館……?」

 ちょっとセンチメンタルになってたら目的地に到着した…んだけど。

 …さすがとてもおおきい*4トリニティ、別館とやらも規模だけ見れば普通の学校だった。体育館まであるし、これだけでアビドスに匹敵するかもしれない。なるほど…ホシノさんが身構えてたのも、わからなくもないな…。

 

 

【ハリカ⇒ヒフミ】

 

 困ったら助っ人を呼ぶ…補習授業部の顧問を引き受けてくださった先生から、そんな話は結構早い段階で出ていました。実際にはハナコちゃんのアズサちゃんに対する教え方がうまいことや、コハルちゃんが自信満々なこともあって、まあ大丈夫そうかな、という感じにはなっていたのですが…結局、一週間の強化合宿を行うことが決まり、先生も助っ人を呼ぶことにしたそうです。

 その助っ人というのが誰か、そういえば聞いていませんでした。先生は「ヒフミはもう会ったことあるよ」と言っていましたが…

「そういえばここだったね…久しぶり」

 待ち合わせ場所にしたトリニティの裏門にやって来たのは、ブラックマーケット以来に見るハリカさんでした。

「でも、その服装は?」

「ああ、これが私の正装だよ。あのときはノノミちゃんの予備の制服を借りてたから」

 ただハリカさんは以前見たときとは違う、ゆったりとした白いロングワンピースにグレーのガウンを羽織った姿をしていて、気になって聞いてみたらそんな答えが返ってきました。

 思わず先生にも確認したところ、ハリカさんの所属はシャーレで、率先して先生のサポートをしてくれる生徒だそうです。あのときはアビドスの件で同行していたのだとか…あまりにも馴染んでいたものですから、すっかりアビドスの一員だとばかり…

 

 それから移動する最中、ハリカちゃんが呼ばれた理由を把握していなかったことが判明したり、部活についての話をしたりして……私たちは今、トリニティ別館の部屋のひとつで、ほかの補習授業部のメンバーと合流していました。

「連邦捜査部『S.C.H.A.L.E(シャーレ)』から来ました、稲梓(いなずさ)ハリカです」

 ハリカちゃんの自己紹介を、私も一旦みんなと一緒に対面して聞くことにしました。既に知り合いとはいえ、教えられる側になりますから。…所属もそうですけど、なにぶんブラックマーケットからアビドス高等学校までの付き合いだったもので、改めて考えてみればハリカさんのことを全然知りませんでしたね。同じ二年生なのも今初めて知りました。

「それじゃあ、えっと…改めまして、補習授業部の部長を任されてる阿慈(あじ)(たに)ヒフミです」

「私は(しら)()アズサ。よろしく頼む」

(しも)()コハル…。言っとくけど、ここに長くいるつもりはないから」

(うら)()ハナコです。よろしくお願いしますね、色々と♡…それで、助っ人ということは、めいっぱい頼ってもいいということでしょうか?」

 私たち四人も簡潔に自己紹介を済ませると、ハナコちゃんがそのまま質問に移りました。

「まあ、主に理系科目中心で。…まだ半端者なので、どれだけ力になれるかはわかりませんけど」

「そんなに謙遜しなくても、たまにシャーレで勉強見てる感じでいいよハリカ。ゲーム開発部の子たちも、ちゃんと成績よくなってるってさ」

「ゲーム開発部…というのは、ひょっとしてミレニアムでしょうか?」

「えっ!?」

 きょとんとしたハナコちゃんの言葉に、思わず大きな声が出てしまいました。…ミレニアムって、すごく頭のいい学校だったんじゃ?それも理系の…

「ああうん、でも一年生相手だからね?ゲーム開発部に関しては」

「それに、セミナーの会計とも仲良しだし。たまに二人の話ついていけなくなるよ」

「あの先生ハードル上げに来てます…?確かに理系仲間ですけど普通にユウカのほうが上ですからね?」

「ま、まあまあ…お二人とも…」

 …謙遜するハリカさんと笑顔の先生との間でいきなり攻防戦が始まってしまいました。…とりあえず、ハリカさんは先生にとって本当に頼れる生徒であるようですね。アビドスの件で同行していたくらいですし。

「…そういえば、ヒフミとはもう知り合いなのか?」

「あ、うん、まあたまたま知り合った程度だけど…こんな形で再会するとはね…」

「あぅ…」

「そういうわけでよろしくね。えっと、先生はしばらくここに通うってことですね?」

「いや…最大限面倒を見るつもりでいるから、むしろここからシャーレに顔を出す感じになると思う」

「それでいいのか顧問…いやいいのか。うちの顧問もその辺いい加減だったしな…じゃあ、私はシャーレから通う形にします」

「えっ、泊まっていかないんですか?部屋もベッドも、まだ余裕はありますけど…」

「あまりオフィスを開けておくべきではないしね。それに、極力慣れてる場所で寝たいタチだから」

 気になって尋ねてみると、ハリカさんはやれやれという顔で先生を見ながらそう答えてくれました。そしてその先生から「悪いけどよろしくね」と告げられ、ため息をついています。

「そこで先生も連れて帰るって選択肢はないのね…」

「先生はこういう人だからしょうがないかな」

「…言われてますけど」

「ははは…」

 

 

「そしたら、荷物を片付けて早速お勉強を…」

「あら、でもその前にやることがあると思いませんか?ヒフミちゃん」

「えっ?」

 ペロロ様バッグをベッドの上に置いたところで、ハナコちゃんの言葉に顔を上げました。やること…なんでしょう?コハルちゃんは顔を真っ赤にしていますが…

「なるほど、敵襲を想定してトラップの設置を?」

「いえ、そうではなく…お掃除、ですよ♡」

「お掃除…ですか?」

「はい。管理されている建物とはいえ…長い間使われていなかったこともあって、埃なども多いように見えませんか?」

「…言われてみれば?」

「、…まあ確かに、ちょっと埃っぽくはあるかな。学校で言うなら準備室みたいな感じ?」

 見回してみれば…さっきバッグを置いたからでしょうか、埃がちらちら舞っている様子が視界に入ります。アズサちゃんの発言でフリーズしていたハリカさんも、部屋を見回してぽつりと呟いていました。

「このままここで過ごすのも健康によろしくなさそうですし、今日はお掃除からはじめて、気持ちのいい環境で勉強を始める、というのはいかがでしょう?」

「なるほど…確かにそうですね。まずは身の回りの整理整頓から始める、というのは定石ですし、そうでないと途中で気になってしまいますし…」

 にこにこ笑顔でハナコちゃんがした提案…正直なところ、真っ当なものだったことに安心した自分がいます。なんと言いますか、初対面がかなり鮮烈だったもので…。

「勉強を放り出して掃除に夢中になっちゃう、とかあるよね…」

「あぁ、よく聞きますねそれ…そっちの二人はどう?」

「確かに衛生面は大事。実際戦場でもすごく士気に関わりやすい部分だ」

「お掃除…?えっと、まあ、普通のお掃除なら…」

 ハリカちゃんに話題を振られたアズサちゃんとコハルちゃんも、乗り気とまでは言わないまでも前向きではあるようです。

「…確かに、ハナコちゃんの言う通りかもしれません。やる気が空回りしても困りますし……私たちがするのは一夜漬けではなく、きちんと用意された環境での試験勉強。つまりは長距離走みたいに順番やペース、作戦も考えないとです!」

「おお、いい例え」

「えへへ…じゃあまず大掃除から…各自汚れてもいい服装に着替えて、10分後に集合としましょう!」

 

 

 

*1
(語彙力)

*2
?????

*3
サ○リオ。サ○スターは文房具

*4
(語彙力)





・ハリカ
頼られるのが嬉しくて詳しく聞いてなかった。そういうとこだぞ
シャーレで時おり同級後輩の勉強を見てる。一番恩恵を受けてるのはカリン。シャーレ所属だけでなくたまに遊びに来た生徒も相手にしてる

・ヒフミ
メインの立ち位置で再登場
語り手チャレンジで地味に悪戦苦闘したりしてました

・アズサ
思考回路が物騒
これは余談だけど最近書店で著者が「白洲梓」の小説があって二度見した

・コハル
プライド空転ガール(最年少)
ムッツリ具合が微笑ましいことに定評がある

・ハナコ
あらあらうふふ系問題児
全員集合以来誰よりも発言してるけどまだ本気は見せていない
言い回しを模倣できるか不安です(純粋な目)

・先生
シャーレ激務って聞いてたけど、そこんとこ擦り合わせどうなってんだろうな…と思いつつ…


誤字報告機能は初めて使ったかも ありがとうございます
生えるもの…


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