鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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合宿二日目ちょっと長くなりそうだったので分割
おことわり:これは健全な二次創作です



お騒がせな少女達@トリニティ

 

 駅を出て、石畳の上を小走りで進む。はい二日連続でやって来ましたトリニティ。なにげに連続で来るのは初めてかもしれない。いつ来ても圧倒的な本校舎はガン無視し、別館を目指す。

 こんな朝っぱらから来ている理由は単純。外に滞在するにしてもシャーレの先生はシャーレの先生なので、どうしても本人確認の必要な書類は存在する。それで、シャーレに戻る…どころかそもそもシャーレに居着いている私がその手の書類を届けにいく手筈になったのだ。

 まあ、ちょっと色々あって今回は朝イチ訪問とはならなかったけど。とりあえずムツキちゃんとイズナちゃんを当番でご一緒させてはいけないことを学んだ。

 これといって何事もなく平和にたどり着いた別館の門をくぐる…今更だけど、こうやって複数の学校を出入りする経験って『私』まで遡ってもないな。進学に伴う引っ越しはあったけど転校の経験はないし。なんかちょっと変な気分だな…。

 そうして、声がしている教室を見つけて来てみれば。

 

 

「こ、こっちは?この長いのは?イモリ…いや、キリン?なんだか、首に巻いたら温かそうな…」

「それはウェーブキャットさんです!いつもウェーブして踊っている猫なのですが、おっしゃる通り最近ネックピローのグッズが…」

「これは?この小さいのは?」

「それはMr.ニコライさんです!いつも哲学的なことを言って不思議な目で見られてしまう方ですね!今回ご褒美としてその方が書いた『善悪の彼方』という本も用意しているんですよそれも()()!!

「すごい、すごい…!これを貰えるのか?ま、まさか…選んでもいいのか!?」

「はい!アズサちゃんが欲しいのを持っていってください!」

 

 …なにやら机の上に並べられたぬいぐるみを前に、見たことのない盛り上がりを見せているるヒフミちゃんとアズサちゃんがいた。コハルちゃんはポカンとしていて、ハナコちゃんと先生は苦笑い…してたところで私に気づいたらしい。先生が手招きするので、なんとなく足音を抑えて歩み寄る。

「モモフレンズ、ですか…」

「あら、ハリカちゃんはご存じで?」

「まあ一応、シャーレにも好きでグッズを持ってる子はいるし…それでもあれほどではないけど」

 正確に言えば、ヒフミちゃんのあの盛り上がりよう…もうちょっと落ち着いてたのなら、見たことがある。場所はブラックマーケットで、相手はノノミちゃんだったけど。

 なんでも現在、補習授業部は定期的に模擬試験を実施することに決めたらしく、そのモチベーションを上げるためご褒美としてあれを用意したらしい。それでハナコちゃんコハルちゃん*1はいまいち惹かれることはなかったけど、

「やむを得ない。全力を出すとしよう…いいモチベーション管理だ、ヒフミ。約束しよう、必ずや任務を果たして、あの不思議でふわふわした動物を手にしてみせる!!」

 …アズサちゃんにクリーンヒットした、というわけらしい。この子表情に乏しい仕事人みたいな印象でいたから、あんなに目を輝かせることあるんだってすごく意外…あるいは仮面が溶かされたと言うべきか…?

えへへ…えへへへへ……

 ヒフミちゃんも同士を見つけてご満悦…というか随分とだらしない顔になっていらっしゃる。一回落ち着こっか。

 このあと私の存在に遅れて気づいたことによるちょっとした騒ぎがあったりしたけど…まあ大したことじゃないからいいや。ちなみにウェーブキャットはかわいいと思うよ私は。

 

 

「ハリカさん、どう思いますか?」

「私もちゃん付けでいいよ、同い年だし…そうだなぁ…」

 …さて。今は出題側で別の教室に集まって、ヒフミちゃんがかき集めてきた過去問を整理中。ようやく実際に勉強を見る段階に入ったわけだけど…改めて、補習授業部の面々についてまとめておこうと思う。

 まず今隣にいるヒフミちゃん。一次試験は72点、本日行なった模擬試験は68点。合格ラインは60点なので、危なげない…とまで言えるかは微妙な気がするけど、とりあえず特に問題はない。だから今は私と先生の側にいるわけで。そもそも試験をサボタージュしちゃった件でここに放り込まれたっぽいからねこの子。

 次にアズサちゃん。聞いたところによると正義実現委員会に追われた末に弾薬倉庫を爆破したとか…マジですか……まあ今は措いておこう。一次試験は32点、模擬試験は33点。転校生らしく、同じ二年生だけど前の学校とは学習進度の差があって一年生用の試験をしているらしい。そんな差が出ることあるっけ?私普通の学校じゃなかったからわかんない…ともかく本人の学習意欲は高い*2ので、特に問題はないと思う。

 そして、唯一の一年生であるコハルちゃん。一次試験は11点、模擬試験は15点。元はハスミさんと同じ正義実現委員会の所属であるらしく、真っ黒な制服を着込んでいることからも"絶対に復帰する!"という気概が感じられる。けれども、エリートを自称するものの本人の学力は結構残念らしい。なるほど、(ツグミ)が言うところの「プライド空転型」というやつだろうか。まあ私たちが見たことある奴よりはずっと可愛らしいけど。

 最後にハナコちゃん。一次試験は…2点。そして模擬試験は4点。点数が倍になった!といえば聞こえはいいけど限りなく最悪に近いパターンです本当にありがとうございました…。何がおかしいって、勉強中は教える側だったのにこの点数ってことだ。ヒフミちゃんいわく、一年の頃の記録を見れば学年トップに躍り出るほどの秀才だったらしい。そこからこんな落ちるところまで落ちるのって逆に難しいと思うんですがそれは??…まあ、今後の課題だね。頑張ろう」

「そ…そう、ですね!」

「…あれもしかして声に出てた?どの辺から?」

「アズサちゃんの辺り、ですかね…」

「急に一次試験は32点、って言い出すから何かと思ったよ」

お恥ずかしい…」

 思わず顔を覆う。頭の中ではだいぶ砕けた感じなのが垂れ流しになってしまった…でもまあ、思うところは大体伝わったようなのでよしとするか。うん。

 ついでにちょっと懸念事項があるので、回答やマルバツからは目をそらしてざっと問題だけ見てみることにしたけど…まあ見たところ、世界線ギャップについてはあらかた問題ないかな。物理法則に関わる数値が同じなのは確認済み。でなきゃ魔法がうまく発動しないので。ちょっと不安なのは歴史系統か…

「…私大丈夫かなこれ…」

「えっと…そういえば、ハリカちゃんの成績ってどんな感じなんですか?」

「本当に大したことないよ?学年10位台止まりだし」

「…いや学年10位台はけっこう大したことでは!?」

 

 

 

【ハリカ⇒ヒフミ】

 

 

「じゃ、午後にはまた来るからね!」

 そう言ってハリカちゃんがいそいそと出ていったあと。…お昼をうっかり6人分用意してしまったり、途中でモモフレンズの文房具についてアズサちゃんと盛り上がってしまったりしつつ、私たちはまた勉強にいそしんでいました。ふと気がつけば、もう西側の窓から夕日が差してくるころ。

「コハル、質問」

「え、私に?私に!?

「そう、コハルに。今同じところを勉強しているはずだ。この問題なんだけど…」

「う、うん…あ、これ知ってる。これは確か、下のところと90°になるように線を引いて…そうすると、この三角形とこの三角形が一緒。わかった?」

「なるほど、そういうことか…助かった。これは確かに、正義実現委員会のエリートというのもうなずける」

「そ…そうよ!私はエリートだもの!も、もし何かまたわからなかったら私に聞いてもいいから!アズサはその、特別に!」

「ありがとう、助かる」

 …合宿が始まって以来初めて教える側になれて嬉しそうなコハルちゃんと、その様子に微笑みながら純粋に感謝を述べるアズサちゃん。不意に訪れたそんな瞬間に、私も先生も思わず頬が緩みました。

「あらあら。さすが裸の付き合いをしただけはあると言いますか、もう深いところまで入った仲なんですね…♡」

「なっ何言ってんの!?そういうアレじゃないから!!」

「うん?ハナコも体を洗ってほしいのか?」

 ハナコちゃんはやっぱりにこやかにコハルちゃんをからかっていますが…なんのことかわからなくて先生に聞いたら今朝、私が起きてくる前のことだそうです。

 …昨日の晩は、不安で眠れなくて先生のところに行って、

『ヒフミは、ヒフミにできることを頑張ってほしい』

 先生にそんなことを言ってもらえて。それでちょっと張り切って考えた結果、模試を作ることを思い付いて、しっかり夜更かししちゃって…今朝は寝坊してしまったんですよね…。

 

「…あ、コハル、もうひとつ聞きたい」

「ん?この問題は、えっと……」

「コハルも知らない問題か?」

「んん…たしか、参考書で見たような……ちょっと待ってね、確か持ってきてたはず…」

「…!?」

 よいしょ、とコハルちゃんがカバンの中から取り出した本の表紙には…なにやら頬を赤くして向かい合う二人。それも一糸まとわぬ姿で…えっ?えっ!?

「この参考書に載ってるのか?」

「うん、この参考…あれ?」

 きょとんとするアズサちゃんの横で、カバンの中を整えてからテーブルの上を見たコハルちゃんは、一瞬ぎしっと音をたてそうな感じで固まって…

()()()()()ですねぇ…」

「…うわああぁぁぁっ!?な、なんでぇ!!?

 …ハナコちゃんの指摘を聞いたとたん、顔を耳まで一気に赤くして、目にも止まらぬ早さで本をカバンに押し込みました。…み、見なかったことにしたほうがいいのかな、と思いましたが…ここにはそんなことを絶対に許さないひとが一人。

「コハルちゃん、それエッチな本ですよね?まあある意味参考書かもしれませんが。隠しても無駄です、R-18ってハッキリ書いてありましたよ?」

「ち、違う!見間違い!とにかく違う、絶対に違うから!!」

「私の目は誤魔化せませんよ、確実に()()なことをする本でしたそれも結構ハードな…トリニティでも、いえキヴォトスでもなかなか見ることができないレベルのものとお見受けしました!きっと肌と肌とがこすれ合い敏感な部分を擦り合わせ、嬌声が飛び交い理性が飛び去るような!

 あぅ…ハナコちゃんが目をキラキラさせて詰め寄ってます…!コハルちゃんは湯気が見えそうなほど真っ赤ですし止めた方がいいですよねこれ!?

「ハ、ハナコちゃ「どうしてそのような本を持っているのですか?確か校則でも禁止されていたような…」

「いや、その、こっこれはほんとに私のじゃなくて」

「でもそれ、コハルちゃんのカバンの中から出てきましたよね?それに合宿所まで持ってくるなんて…お気に入りなのですか?そうですか、あの真面目なコハルちゃんがエッチな本を…」

「~~~~~っ!!」

「…いえ、なるほどそうですね、考えてみたらそれほどおかしな話でもありませんね?()()()()もバッチリ…つまり、合宿のために必要なものなんですね。コハルちゃん?」

「こっ、これは違うんだってばああぁぁぁぁぁーっっ!!!」

 …結局、ハナコちゃんの勢いを止められないまま、教室から一目散に逃げ出したコハルちゃんの背中を見送ることになりました。

「コハル、いったいどうしたんだ…?」

「ハナコちゃん…」

「あら…やり過ぎてしまったかもしれませんね…本当にごめんなさい。話が合うかと思ったのですが…」

 

 

 

 

 

*1
何があったか知らないけどむしろドン引き

*2
しかもさっきモモフレンズでブーストがかかった





・ハリカ
トリニティ滞在する先生とシャーレとの繋ぎ状態になった
自己肯定感が追い付いてない優等生
なおたまの不在が今後に響いてくる模様…

・ヒフミ
》》溢れるモモフレンズ愛《《
語り手再来。やっぱり普通()の子な分やりやすさがある

・アズサ
沼にドボンした。特殊な訓練でも避けられなかった()
そうですこれがいわゆるギャップ萌えです
純真無垢。並み居る先生方も「そのままでいて♡」と仰っています。

・ハナコ
ペロロ様に対する認識が急にひどくて笑った
本領発揮()。問い詰めるシーンめちゃくちゃ目が輝いてるんだろうなぁ…と思った(実況での読み方の影響もあるかも)

・コハル
不憫枠。死因:エ駄死(※生きてます)
なお、えっちな本はいつもはちゃんと隠…じゃなくて、持ち歩いたりはしてないらしい。

・先生
Staying in trinity(別館)
でも先生としての仕事は普通にあるよね…と思った結果上記の状態に

・ムツキ・イズナ
相性悪くはないと思うけど朝イチで何かやらかしてる模様



コハルちゃんのえっちな本のくだりには触れようと思ってました…ただでさえ「なっ、なななっ何ですってぇーーっ!!?」とかすっ飛ばしちゃってるので……


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