鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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誤字報告ありがたいね…



和装と修道服

 

【 ⇒ハリカ】

 

 …さて、先生不在三日目のシャーレに朝帰りを決めたわけだけども。そんな私にはまったく予想だにしなかった用事が待ち受けていた。

 何かというと、目の前にいる初対面の二人が答え。

 

「いやほんとこのタイミングで新メンバー受け入れとか正気じゃないでしょ先生…」

「大丈夫です?」

「あぁうん大丈夫、気にしないでいただいて」

 そう、シャーレ部員増員であった。いやまあ先生の名誉のため?に言っておくと、本日シャーレで顔合わせ、という予定が先生不在になる前に決まっていたわけなんだけど。それで代わりに私が対応することになった。

 …なんだか、暗黙のうちに私がシャーレのナンバー2にされている気がする。シャーレ当番としてはユウカちゃんたちの方が先輩なんだけど、シャーレに常駐して「特別部員」の肩書きをもらっているのが大きいようだ。私としてはせめてユウカちゃんたちと対等くらいがいいんだけど。それはさておき。

 

「そうですか。それでは…おそらくもうご存じでしょうけど、百鬼夜行2年の(つじ)イコイなのです。主に後方支援を担当する予定です。先生ご本人にお会いできないのは予想外でしたがまあ、今日からよろしくなのです。むふふ」

 そう言って、目の前の小柄な少女は人懐っこい微笑みを浮かべた。三つ編みおさげにしたダークブロンドに、いまいちなんの動物か判然としない三角のケモミミが揺れている。既にシャーレに所属している百鬼夜行の後輩…まあ言うまでもなく現状一人しかいない、今まさに隣で目を輝かせているイズナちゃんの推薦により来た子だ。しかし浴衣にしか見えないんだけどそれ制服?

 じゃあ忍術研究部なのかと思って尋ねたところ、「これといって籍を置いてる部活はないのです」らしい…なんかただの無所属じゃないような言い回しが気になるけどまあいいか。

「それで…ちょっと、起きるのです、今二つ名発揮するタイミングじゃないのですよ」

んぇ…あぁごめん、寝ちゃってた…春日(かすが)ツバキ。百鬼夜行の……おんなじ…」

「そうですけど同じ2年生ですけど。せめて今は頑張って起きるのです」

「えぇ…」

 で、私と同じくらいの背丈のほうが春日ツバキちゃん…割と本気で先輩かなと思った。なんか2年生多くない?先生の配慮だったりする?

 それはさておき、私の口からあきれ声が出たのはツバキちゃんが立ったまま寝てた、なおかつ二度寝しようとしてるから。修行部という部活の部長らしいのだが、いつでもどこでも寝られちゃう「眠り姫」として有名なのだそう。えぇ…(二回目)

 そして何とは言わないけど『寝る子は育つ(直球)』ですかそうですか…閑話休題。

 

「えっと…まあよろしくね、二人とも。じゃあこれからシャーレの案内をしなきゃいけないんだけど、あいにく私はちょっと忙しいから、当番のみんなに頼むね。すでに一人いないけど」

「はい!」

「了解。チサキはしょうがない」

「ええ。けど、誰か一人はオフィスに残った方がいいわよね?」

「じゃあ、私が残る。任せた」

 不誠実と思われるかもしれないけど、とりあえず最低限挨拶は済ませたのでさっさとシャーレと先生の繋ぎ業務に移ることにしよう。本日の当番…ユウカ、イズナちゃん、カヨコさんの間で話が進んでいくのを横目に、私は必要書類をファイルにまとめてナップサックに突っ込んで、オフィスをあとにした。

 

 

「ところで貴方、その感じで後方支援なのちょっと意外ね」

「どの感じか知りませんが…まあ、カワイイお顔を傷物にしたくはないので」

「かわ…っ」

「むふ、冗談ですよじょーだん。単に戦場真っただ中は性に合わないだけなのです。だからグレネード主体ですしドローンも飛ばしますよ」

「イコイ殿はとっても頼もしいサポーターですよ!」

「そうはっきり言われると照れちゃうのです。というより、ツバキちゃんがガンガン前線に出ていくタイプ、っていうほうが意外なのでは?本人寝てますけど」

「え、またですか?」

「ちょっと待って歩きながら寝てる!?」

「ええ、正直ワケわかんないですよねこの人」

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、朝帰りからのとんぼ返り。すなわち三日連続の石畳を踏んでトリニティの別館に向かってたら。

「…えっ?今の…っ!?ちょっ、何事!?」

 目的地の方向から爆発音、それも立て続けに二回。それを聞いて、思わず私はブレスレット()ほう(CAD)から自己加速術式を引っ張り出した。…他所かもしれないとはもちろん思ったけど、トリニティは比較的治安のいい場所なので。

 そうしてたどり着いてみれば…

 

「だ、大丈夫ですか?怪我とかは…?」

「…きょ、今日も平和と、安寧が…けほっ、けほっ…あなたと共に…けほっ、ありますよう、に…」

「まずご自分の安寧を心配してください!?」

「…何事??」

 (すす)けた玄関にて、黒いヴェールを被ったケモミミらしき少女と即興漫才を繰り広げるヒフミちゃんがいた。

 

 

「びっくりしました…入った直後に、何かが作動して…」

「アズサちゃん…」

「…ごめん、てっきり襲撃かと」

「え、ええっと…?」

 かわいそうな目に遭ったケモミミ黒ヴェール少女、『シスターフッド』の一年生で()(おち)マリーちゃんというらしい。そうかこれ修道服か。

 …そういえば、アズサちゃんが防犯を目的にトラップを仕掛けているんだった。私は説明を受けて引っ掛からないように出入りしていたけど、初見の客人であるマリーちゃんはそんなこと知るよしもないから…ね。

 

「と…ところで、どうしてシスターフッドの方がこんなところに?」

「あ、それはその…こちらに補習授業部の方々がいらっしゃると聞きまして。ただ、ハナコさんがここにいらっしゃるとは存じておりませんでしたが」

「私も、成績が良くありませんので」

「そう…ですか、はい…」

「ハナコ、知り合いなの?」

「まあ…少しだけご縁があって、といいますか」

 はにかむハナコちゃん。なにげに「ふふっ♡」以外の笑い方を初めて見る気がする。というかやっぱりハナコちゃん、隠し立てしてるけどワケアリ感が拭い去れないな…マリーちゃんの反応からして"少しだけご縁が"程度じゃなさそうなんだけど。

 

「マリーちゃんは私を訪ねて、というわけでは無さそうですね。補習授業部にどんなご用事で?」

「はい、本日は補習授業部の白洲アズサさんを訪ねてこちらに参りました。伺ったところここにいらっしゃると聞きまして」

「私?」

「はい。実は、先日アズサさんに助けていただいた生徒の方が感謝をお伝えしたいとのことでして。諸事情ありまして、こうして代わりに」

 諸事情とは?と思ったけど、マリーちゃんの話によると、その……陰湿ないじめの現場を、たまたま通りかかったアズサちゃんが助けた、のだとか。えっ待ってハナコちゃん()()()()()()で済ませていいの?

 こう…そういう話くらいは聞いたことあるけど、私には縁がなかったからな…そう考えるとだいぶ平穏な暮らし送ってたんだな私…

「そういえば、そんなこともあったな…ただ、数にものを言わせて弱い対象を虐げる行為が嫌いだっただけだ」

 唐突なお嬢様学校の闇に真顔になった私をよそに、アズサちゃんはさらりとそんなことを言ってのける。強い。

 

「ただそのあと、アズサさんに怒られた方が正義実現委員会に連絡を取られて…どこで情報が歪曲されたかわかりませんが、何やら正義実現委員会とアズサさんの間でそれなりの規模の戦闘に発展してしまったとか…それでアズサさんは催涙弾の倉庫を占拠し、正義実現委員会を相手にトラップを駆使して、3時間以上戦い続けたと」

「!?…それってあの時の!?」

 そして追加情報にはコハルちゃんが思わずといった風に叫んだし私も驚いた。「あの時」というのは補習授業部の初対面時、私にとっては3話くらい前*1の"聞いた話"の件。やだ意趣返しのやり方が陰湿…私の中でトリニティの株が下がっていくのを感じる。よりにもよって今そこにいるんだけど嫌すぎるなこの感覚…

「何がどうあれ、売られた喧嘩は買う。あのときも弾薬が切れさえしなければもう少し戦えたし、あれ以上に道連れも増やせたのに」

 …当のアズサちゃんはふぅ、と息をついてそんなことを言い出した。うーん片鱗は見え隠れしてたけどやっぱめちゃくちゃ物騒だこの子…やめなさい、ヒフミちゃんとコハルちゃんがドン引きしてるでしょ。

 

「それで、その方が報告も兼ねて私たちのもとを訪れてくださり、アズサさんに感謝をしたいと。ただ学園では見つけられずに、ここに辿り着いた…という次第です」

「…そうか。別に、感謝されるようなことじゃない。私も最終的に捕まったわけだし」

「後半はあんまり関係ないと思いますけど…」

「それにあの事態は気の毒だけど、いつまでも虐げられてばかりじゃ駄目だ。それがたとえ虚しいことであっても、抵抗し続けることをやめるべきじゃない」

 …いや、ほんとに強いんだなアズサちゃん。凛々しいお顔に少々見とれてしまった。それはマリーちゃんも同じようで、ほぅと息をつくのが聞こえた。

「…そうかもしれませんね。はい、あの方にもそう伝えておきます。…アズサさんは、暴力を信奉する"氷の魔女"…だなんて噂もありましたが、やはり噂は噂ですね」

「ぇ」

「ふふ♡それはそうですが、アズサちゃんには意外と"氷の魔女"らしいところもありますよ?他の方からするとちょっと表情も読みにくいですし」

 …や、私としてはこのトリニティ総合学園にそんな(あだ)()つける人がいるのが意外だったんだけど…そんで当人の前だぞハナコちゃんよ。アズサちゃんがちょっとムッとしてるぞ。

 もっとも、そんな心の声を載せた私のジト目は気づいてもらえなかったけど。

 

「ハナコさん…」

「マリーちゃんが元気そうでよかったです」

「はい、私は…ですが…」

「玄関まで送りますね。さあ、一緒に行きましょう?」

「あ、はい…で、ではみなさん、お邪魔いたしました。それでは」

 そのまま背を向けて、並んで玄関まで歩いていく二人…いやだから隠しきれてないんだってワケアリ感が…。けど、あの笑顔ですっかりうやむやにされてしまっているような。

 うーん…モヤモヤするけど火急の案件かと言われると……それに、ここまで隠し立てするなら触れてほしくないってことだろうし………まだ、そっとしておこうかな…?

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
急なメタ発言





・ハリカ
外からの迷子で部外者なのに働きがよすぎてそういう待遇。これが…器用貧乏……?

・ヒフミ
影薄め
モモフレンズ以外だと完全にツッコミ担だな…モモフレンズ以外だと()

・アズサ
》》†氷の魔女†《《

・ハナコ
Ms.意味深ムーブ。ハリカにめちゃくちゃ疑念を抱かれている

・コハル
今回はほぼ空気①

・マリー
開幕不憫シスター。ハナコと何かありげ

・先生
今回はほぼ空気②
どうしてこのタイミングで生徒受け入れしたのか

・イコイ
急遽追加されたオリキャラ四人目。これから人脈の面でキーになってもらう予定
主人公と同レベもしくはそれ以上のフッ軽。固有武器はARだけど付属の擲弾発射器がよく仕事してるタイプ
浴衣の百鬼夜行モブ実際にいるから大丈夫だよ。たぶん
図らずも誰かに似た口調になったと思ったらたぶんトガヒミコだこれ

・ツバキ
せっかくなのでという感じで同じ百鬼夜行から追加された(おい)。まあ参考実況主さんよく起用してるし…むしろ遅いぐらいだと思ってる

・ユウカ
当番①。このあと振り回される感じになる
・イズナ
当番②。友人知人を積極的に案内して回る
・カヨコ
当番③。オフィス待機
・チサキ
当番④。事務作業は苦手で行方をくらましがち


ここまで人数多いの久々だよ
なお設定上投稿日はオリキャラのうち二人の誕生日だったりする…これといって何もできなくてスマンノ……片方名前しか出てないし………
あ、合宿3日目はまだ続くよ


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