お待たせしております
真夜中の大騒ぎが長くなりそうなのでこれだけ
【 ⇒ヒフミ】
「…とにかくアズサちゃんとは、あとでもう少しお話をしてみた方がいいかもしれません。その他についてもいくつか、私の方でも確認してみます」
「はい、もし何かわかりましたら、教えてもらえると嬉しいです!」
「わかりました。ということは私も、この深夜の密会に参加させていただけるということでよろしいですか?ふふ、嬉しいです♡…真夜中、三人寄り添って秘密の遊びだなんて。ドキドキが止まりません♡」
「そ、その言い方はちょっと…」
「じゃあ、もう遅い時間だし。二人ともそろそろ寝ようか」
「はい。先生も、おやすみなさい」
そんな感じで、昨夜の密会は終わりました。…退学の件をうっかり話してしまったのは、反省点だと思っています。ですが結果的に、私たちには心強い味方ができました。
…ハナコちゃん、頭がいいんだとは思っていましたが、探偵みたいなあの推理力には驚かされました。補習授業部の目的について自力でたどり着いてしまって、それぞれどうして容疑者になったのかとか、ナギサ様が言い回しに込めた意図とかも真剣に考えて…私もおそらく容疑者だと聞いてショックを受けましたが…試験の成績だけじゃなくて、こういうところでも秀才なんだと。
あ、あと…
『先生もナギサさんにしてやられた形でしょうか。『成績の振るわない生徒たちを助ける』、その名目で善意を利用されてこの役割を担い、その実シャーレの超法規的権限が利用されている…ですが逆に言えば、先生は純粋に、私たちのために頑張ってくださっていたのですね…ありがとうございます。先生はやはり良い人ですね、ふふ♡』
…自然にこれを言えるのもすごいなって思いましたね。ちょっと照れくさそうにしてる先生を初めて見ました。
密会が終わったあとは…廊下でコハルちゃんと鉢合わせして、今度は私たちも誤解を解こうと頑張る羽目になったり、ハナコちゃんが一人アズサちゃんを探しに行ったり…色々ありましたが、なんとか2時までにはベッドに入れました。
そして、翌日。
「さあでは記念すべき第一回、補習授業部の水着パーティーを始めます♡」
「あうぅ…」
…私は水着姿で、体育館の床に座っていました。
ことの発端は、一夜明けた朝までさかのぼります。
「あぅ…けっこう降ってますね…」
「そうですねぇ…」
目を覚まして、体を起こしたとき耳に届いたのは雨の音、それもだいぶ強いものでした。
「んぅ…」
「あら…おはようございます、コハルちゃん」
「おはようございます。アズサちゃんは…起きられなさそうですね」
「…どうしたの?アズサ、けっこう早起きだったのに…」
「今までは無理をしていたんじゃないでしょうか?ここは少し、寝かせおいてあげたいですね…」
今まで一睡もしていなかったらしいアズサちゃんは、すっかり夢の中です。…そういえば、そんな状態でずっと勉強もしていたんですね…。
「んん…だめ、かわいいものが……ふわふわ、で……それは、よくない…」
…それで、こうして眠っているアズサちゃんは初めて見るんですけど…まさか、こんなに寝言を言うタイプだとは思いもしませんでした。とても幸せそうな顔で癒されているようなので、微笑ましいものではあるんですが。
こんこん、と控えめなノックの音がして、ドアを開けてみればそこには先生、と…
「おはよう。いや~すごい雨だよ」
「ハリカちゃん、早いね?」
「まあいつも通りシャーレの用事。余裕があるに越したことはないし」
足元悪くてちょっと大変だったけどね、と笑うハリカちゃんは、たしかに白い裾をちょっとだけ濡らしていました。
「アズサはまだぐっすりみたいだね」
「…あぁ…こんな、ふかふか……」
「寝言すごくない…?」
「低気圧なのもあるかも…それにしても、
「ひゃ!?」
「ピッ!?」
いきなり窓から鋭い光が差し込んで、体がこわばりました。…そして、それから数秒ほどで届くゴロゴロという音。
「あ、あうぅ…なんだか雷まで…」
「2秒くらい?だいぶ近いな…」
「700メートルほど、ですか……あら」
「どうしたの?」
ふだんとは違う固い声が気になって見れば、ハナコちゃんは焦りを浮かべた顔をしていました。
「忘れてました…洗濯物が外に…!」
「ふぅ…たぶん、これで全部だ」
「これは…見事に全滅ですね…。泥も跳ねちゃってますし、洗い直しが必要そうです」
「まさしくバケツをひっくり返したような雨だったなぁ…まだ止みそうにないし、これ一ヶ月分とか降ってるんじゃ…?」
一階の広間で、私たちは洗濯物を囲んでへたり込んでいました。窓の外を見ればハリカちゃんの言う通り、大雨はまだ止みそうにありません。
あのあと起きてきたアズサちゃんも一緒に、大急ぎで回収したのですが…ハナコちゃんが昨日から干していたらしい洗濯物…私たちの制服は、すでに雨水をたっぷり吸ってしまっていました…それに…
「体操服もすごいことに…うぅ、中まで全部びちゃびちゃ…!」
「それはコハルが途中で転んだからだ」
「すみません、失念していて…私がみんな一緒に、と言い出したせいです。ハリカちゃんまで」
着の身着のまま大慌てで洗濯物を回収しに外へ飛び出したので、四人とも体操着はすっかりずぶ濡れになってしまいました。
無事なのはハリカちゃんに広間で待っているよう言われていたらしい先生だけで、そのハリカちゃんも来たときとは違い、今は裾から雨水をぽたぽた滴らせています。けれど、申し訳なさそうなハナコちゃんにはいやいや、と手を振っていました。
「私は平気だよ。この制服はすぐ乾くし」
「ハナコのせいじゃない。洗濯はもう一度すればいいし、服も着替えればいい。そんなに気に病むことでもない」
「そうですよ。濡れた服のままじゃ風邪をひいちゃいますし、まずは早く着替えましょう!」
「…ありがとうございます。そうですね、髪も乾かさないと…」
しゅんとしていたハナコちゃんでしたが、またいつもの笑顔に戻ってくれました。こういうところですぐになだめられるアズサちゃん、すごいですね…
そうと決まれば、まずは部屋に着替えを取りに…いや、乾かすのが先ですかね?ちょっと肌寒くなってきましたし、急がないと…
けれどそこで、部屋に戻ろうとしていたコハルちゃんがぴたりと立ち止まりました。
「…あ」
「コハルちゃん?どうかしましたか?」
「…もう、着るものがないんじゃ…」
「えっ?」
「そういえば私もそうだ…制服もこの体操着もびしょ濡れで、予備の服はない」
「そ、そういえば私も…あぅ…どうしましょう…」
「あらあら♡まあ、
「何言ってるの!?そ、そんなハレンチなのはダメ!どうしてそういう方向になるの!?」
「でも、話はわかる。下着は多めに用意しているし、靴下も履いておけば体温の維持も問題なさそうだ」
「変に同調しないで!?教室で下着なんてヤ、ヤバイでしょ!?」
「ですがコハルちゃん、想像してみてください?…本来、神聖なはずの学び舎で
「もうあんたは黙ってて!!?手早く洗濯して、ドライヤーか何かで乾かせばいいでしょ!?その間はバスタオルでも巻いてればいいし、何かあっても先生に頼めばいいじゃん!それに、この状況で急いで勉強のこと考える必要もないでしょ!?」
「そうだとしても、どちらにせよその間は下着姿なのでは?」
「早く勉強に戻りたいのだけど、洗濯が終わるまで教室には戻れないなら仕方ない。とりあえず脱ごう」
「何今ここで脱ごうとしてるの!?露出は犯罪!!」
「私たちしかいませんし大丈夫ですよ♡先生も、ご自分の部屋に戻られたようですし」
「常識的に大丈夫じゃないの!!…あれ、ハリカ先輩は?」
「さっきお手洗いに行くと言っていたぞ?」
…そんな感じで、少し騒ぎはありつつも洗濯を待つことにした…んですけど…
「えっ!?な、何!?」
部屋で待っていたら、急に真っ暗になって。
「て、停電…みたいですね」
「落雷による停電でしょうか…」
「…ま、待ってください今の、なんの音ですか…?」
お互いの顔も見えない中…ドスン、という感じの音がしたのは、近くの部屋…今使っている洗濯機のほう。急いで向かってみたら…
「…洗濯機が止まってる。それに蓋も開かない。…困った」
…そんな事情で、現在に至る…というわけです。
「色々とすごい状況だ…」
「仕方がありませんよ。こうとなっては、パジャマパーティーならぬ水着パーティーくらいしかすることはありません♡」
「知らない文化だ…」
雨音に包まれた暗い体育館の中、他に着るものがなくなってしまった私たち四人は学校指定の水着姿。ハリカちゃんが端末で天気を確認したときに見えましたが、先生は変わらないスーツ姿で…ハリカちゃんも来たときと同じ制服のままでした。乾かすのが間に合ったみたいです。そういえばすぐ乾くとは言ってましたけど…うらやましいです……
「あぅ…何か他にもありそうな気はしますが…」
「なるほど、下着パーティーとかもありそうですね。確かによく考えると他にもいくつかあると思いますが、それで本当にいいんですか?ふふ♡」
「こうなると授業とかもやりにくいし、こんな落雷くらいで全機能が停止するなんて、ひどいセキュリティだ」
「まあ、古い建物ですし…」
「セキュリティの問題かはともかく、非常電源とかもないのは驚いたね…」
「…っていうか待って、流されないわよ!水着パーティーって何!?卑猥!!授業もないし着る服もないのは同意だけど、だったらおとなしく部屋で待ってればいいでしょ!?」
あ、固まってたコハルちゃんが戻ってきました。
「あら、ですがこういう時間こそ、合宿の華だと思いませんか?…みんな寄り添って、お互いの深い部分を
「あはは…た、確かに、合宿の定番という感じはしますね」
「言うほど…?」
「なるほど、それがこの水着パーティーか」
「いやいやいや納得するか!水着と掛け合わせる意味は!?」
「ツッコミがキレッキレだなぁ」
「まあまあ、せっかくですし楽しみましょう?とはいってもただのおしゃべりですし、話題もなんでもありということで…ふふふっ♡私、こういうことすっごくしてみたかったんですよね♡なのでちょっと、テンションが上がっていると言いますか…」
確かに、ハナコちゃんの声はいつもより3割増しくらいで機嫌が良さそうといいますか…相変わらず真っ暗で、表情まではよく見えませんけど。
「ハナコ、すごく楽しそうだね…」
「気持ちはわかる。私も…なんなら、補習授業部に入って以来ずっとそういう気持ちだ」
「あら、そうなんですか?」
「うん。何かを学ぶということも、みんなでご飯を食べることも、洗濯も掃除も、その一つ一つが楽しい。…水着は泳ぐときにだけ着るものだと思っていたけど、こんな活用方法があるってことも初めて知った。知らなかったことを知れるというのは、楽しいことだ」
「いやまあ水着は泳ぐときにだけ着るものでだいたい合ってるけど」
「でも、動きやすいし通気性もいい。ハナコがこれを着て学校を歩いていたというのも納得がいく」
「そっかぁ*1」
えっあのハリカちゃん?折れないでください!?アズサちゃん、なんだか変なことまで知っちゃってますよ!?
「そうですよね!だから言ったじゃないですかコハルちゃん」
「いやそれで外を歩くのは犯罪だから!納得しちゃダメ!」
「コハルと一緒に勉強をするのも楽しい」
「っ!?!?きゅ、急に何!?何でそんな急に恥ずかしいことを!!?」
「あらあら♡」
「っ…ま、まあ?私みたいなエリートと一緒に勉強して、タメになることは多いと思うけど?」
「うん、本当にそうだ」
「っ」
コハルちゃん、いきなり嬉しいことを言われて照れが隠せてませんね…それにしても、アズサちゃん…最初はあまり表情の変化も読み取れなくて心配でしたけど、良かったです」
「もちろんヒフミもだ。本当にいつもお世話になってる。ありがとう」
「はう!?あ…アズサちゃん…!うわーん!」
あっわ、私まさか声に出してました!?そ、そんな急にっ…とにかく、あまりにも感動して思わず抱きついたら、アズサちゃんも抱きしめ返してくれました。
「あらあら~♡」
「青春ですねぇ…」
「そうだね…ハリカも同い年だけどね」
「ひ、ヒフミ、少し息苦しい」
・ヒフミ
今回の語り手。あうぅ…
ほんとに流されやすいところが見え隠れしてる
・ハリカ
巻き込まれる形(いつもの)。制服はすぐ乾くらしい…
いつになったら諸々を知るのでしょうか
・アズサ
ハナコほどではないけどノリノリ。どちらかと言えば知識欲に近いものの模様
急に照れさせる天然
・ハナコ
一番ノリノリでフルスロットル
隙あらば発言がこう(color:#71006d)なるのほんと草
・コハル
ツッコミほぼワンオペ状態というか、完全にリアクション担当
・先生
黒一点@水着パーティー、でもなんだこの光景…程度で平然としてる。魂から先生なので。
予約投稿にしてたはずだった…(一敗)