鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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趣味で書くものを増やす+過去作熱が再燃する+オリジナルを挟んで遅くなるやつでした 盛大な自爆で草(真顔)
タイトルにかなり悩むなど



博士と甘味

 

 

 第二次特別学力試験まであと2日となった今日、補習授業部は3度目の模擬試験をすることになった。

 そして、結果は…

 

┏━━━━━━━━┓

┃・ハナコ:69点 ┃

┃・アズサ:74点 ┃

┃・コハル:62点 ┃

┃・ヒフミ:77点 ┃

┗━━━━━━━━┛

 

 ―――全員合格!

 

 

「や…やりました…!?」

「ほ、本当!?嘘ついてない!?」

 思わず先生に詰め寄ったら、先生はにこにこ笑顔で採点後の回答用紙を見せてくれた。…こ、こんなに○が並んでる…?これ、夢とかじゃないよね!?

 

「すごいです!アズサちゃん、60点どころか70点を越えてしまいました!本当にすごいです!頑張りましたね…!!」

「…うん!」

 ヒフミは感動のあまりアズサに抱きついていて、アズサもアズサで(あんまり変わんないけど)嬉しそうだった。

「コハルちゃんも、ギリギリでしたがまごうことなき合格です!すごいです!やりましたね!!」

「あは…こ、これが私の実力よ!見たか!」

「はい!これぞ正義実現委員会のエリートです!さすがです!」

 ちょっ…ヒフミが真っ正面から褒めてくれるおかげでにやけるのが止まらない…!ほんとに嬉しいからいっか!

「それにハナコちゃんも…」

「ふふ、運が良かったですね…良い感じの数字です♡」

 …い、良い感じってハナコ、その点数…いやさすがに偶然よね?っていうか前の模擬試験1桁じゃなかった!?何があったの!?

 …まあいっか。おかげではじめての全員合格ができたんだし…ハナコ本人は、感動して泣き出しちゃったヒフミにちょっとおろおろしてた。あんなハナコめったに見れない…これも合格できたからかな。ちょっといい気味。

 

 

 

「それでは!約束通り、モモフレンズグッズの授与式を始めます!」

 …るんるん気分でいたけど、こうなるのを忘れてた。じゃじゃーん!!とノリノリで机の上に並べられたぬいぐるみたちを前に、私は(ちょっと不本意だけど)ハナコといっしょに立ち尽くしてる。アズサは一目散にテーブルへ飛び付いてた。もうなんか怖い。

「さあ!どうぞ!みなさん好きな子を、欲しい子を自由に選んでいいんですよ!!」

「えっと…私は(つつし)んで遠慮しますね?」

「わ、私も…」

「あぅ…そ、そうですか…」

 …うん、ヒフミとうんうん言って悩んでるアズサには悪いけど、ハナコに乗っかって断ろう。よく言ったハナコ、今だけは尊敬する。たぶん次に口を開くまで。

 

「どうしよう…私は、私は………ダメだ、この中から選ぶなんてそんな難しいこと、私には…!」

 …アズサ、めちゃくちゃガチで悩んでる。ほんといつものアズサと違いすぎて混乱するんだけど…これほんとに、初対面でヤバイ問題児だ!って思ったあのアズサよね?

「…む、無理だ…私には…!頼むヒフミ、ヒフミが私の代わりに選んで…!」

「わ、私ですか!?えっと…じゃあ…こちらの、インテリなペロロ博士でどうでしょうか!」

 ヒフミが選んだのは、メガネをかけた………白いぬいぐるみ。それ博士って設定なんだ…インテリがしてていい目つきじゃないと思うんだけど…?

「このペロロ博士は、物知りで勉強もできるという設定なんです!まさに今お勉強を頑張って、すごい成長をしてる真っ最中のアズサちゃんにぴったりかなと!」

 ヒフミ、やっぱりモモフレンズのことになるとものすごく熱が入っ…今「設定」って言った?言うんだ…なんかそういうこと嫌がりそうって思ってたけど。

「なるほど、そうなのか」

「ちょっとだけ勉強しすぎたせいで、少しおかしくなってる…っていう裏設定もあるんですけどね…」

 いややっぱりおかしくなってるんじゃない!!横でハナコがうつむいて…これ笑ってるな!?すっごい声押し殺してるけど!

 

「よかったね、アズサ」

「うん…気に入った。本当に可愛い、好き…えへへ……ありがとう、ヒフミ。これは一生大切にする」

「あ、ありがたいのですが…そこまで言っていただけると、ちょっとびっくりしてしまいますね…。ですが、私も嬉しいです!それは、アズサちゃんがやり遂げたからこそ…ですよ!」

「うん…それでも同時に、友達からもらった初めてのプレゼントだから。これからはこのカバのことをヒフミだと思って大事にする」

「そっ…それはちょっと恥ずかしいです!?それと、ペロロ様はカバではなく鳥でして…!」

「趣味の世界は広いですねぇ…」

 …なんか、すごく気疲れした気がする。困ったように笑うハナコのつぶやきにも反応する気が起きなかった。

 

 

「それじゃあ、あとの子たちはまたの機会に、ですかね」

「いやまたの機会とかないから…」

 ヒフミがテーブルに置きっぱなしになってた他のぬいぐるみをカバンにしまってる。なんかデカいカバンだと思ってたけど…そんなものまで入ってたの…?

「ハリカちゃんが来てたら、ハリカちゃんにも…と思ったんですけど…」

 胴体の長い猫をしまうのに苦戦してたヒフミが、ふと思い出したみたいにそう言った。今ここにはいない、"先生の助手"の先輩。

 ヒフミもアズサも、ハリカ先輩にはすっかりなついてるみたい。同い年だったと思うんだけど…まあ、気持ちはわかる。教え方が分かりやすいし、先輩自身も勉強中だからいつもは持ってこれないらしいけど、あのノートには私も助けられた。…あと、ハナコと違ってまともだし…。

 その一方で、ヒフミの発言を聞いた先生はちょっと気まずそうな顔をした。

「今日のシャーレは忙しいみたいでね…ああそれと、ハリカなんだけど…明日明後日は来られないみたい」

「えっ?そうなんですか?」

「明後日、百鬼夜行のイベントに代わりに行ってもらうことになってて…それ自体はちょっと前から決まってたんだけど、諸事情あって前乗りすることになったみたい」

「そっか、来られないんだ…」

 まあ、忙しいならしょうがない、かぁ………な、何よハナコこっち見て?べっ別に、残念とか思ってないし!?

 

 

 

 

 

【コハル⇒ハリカ】

 

「忙しい…はずなんだけどな…」

 午後、出先のトリニティ自治区。ぽつりとひとりごちた私の目の前には、テーブルに運ばれてきたワッフルプレート。ホイップかムースかの曲線に沿って3枚のワッフルが半分重ねるように並べられ、その上に半分ジャムみたいなイチゴが盛り付けられ、さらにチョコソースもかかっている。わー本格的。

 

「まあいいじゃないですか。確かに用事はありますけどお互い差し迫ってはいませんし、ちょうどお八つ時ですし。むふふ♪︎」

 右隣で微笑んでいるのは、所用でいっしょに出てきたイコイちゃん。ほくほく笑顔で順調に抹茶パフェを食べ進めている。…私はこういうキラキラおしゃれなカフェに全然慣れてないんだけど、トリニティでもひときわ目立つ和装でありながら通常運転なイコイちゃんは本当に強いと思う。

 

「そーそー。焦って仕事を詰め込むのは心身によろしくないよ。たまにはこんなゆったりした時間も楽しまないと」

 そして左隣から投げ掛けられた声の主は、サイドテールにまとめられた淡いピンクの髪と眠たげな目。ついさっき知り合ったばかりの、トリニティ総合学園1年生。

 

「別に、焦ってるわけでは…」

「まあなんにせよ、お店に来たからには出来立てを逃しちゃ損だよー」

 …まあ、それはその通りか。一枚を4分の1に切って口に運ぶと、ワッフルらしからぬふわふわ食感が口の中に展開された。…恥ずかしながら「これが本格派か~」程度の感想しか出てこない…なにぶんワッフルにナイフを使うのすら初めてなものだから、大目に見てほしい。

 

 誰にともなく言い訳をしつつ、騒がしい円卓の向こう側を見た。こちらにもトリニティ1年生が、それも3人いる。

 左の金髪ツインテールの子が()(ばら)()ヨシミちゃん。彼女にウザ絡み(?)されている正面の黒髪猫耳の子が(きょう)(やま)カズサちゃん。右でパフェに夢中な黒髪正統派美少女が栗村(くりむら)アイリちゃん。そして前述した左隣のピンク髪の子が、部長の()(とり)ナツちゃん。…この4人こそ、いつぞやヒフミちゃんの口から聞いた『放課後スイーツ部』なのであった。

 

 

 こうなった経緯そのものはシンプルで…所用を終えてさあシャーレに戻ろうというところで、トリニティ自治区では比較的珍しいという不良生徒たちによる騒ぎが起きているところに出くわした。

 向こう10人前後に対しこちらはたった2人なので、治安組織*1に通報して来てもらえばよかったとは思う。けどイコイちゃんが「ぱぱっと鎮圧しちゃいましょう!」とやる気満々だったから、彼女の作戦*2を実行に移…そうとした。

 したんだけどそこへ放課後スイーツ部の面々が通りかかり、アイリちゃんとヨシミちゃんと、ナツちゃんが持ってた紙箱に流れ弾が命中したのだ。…その、特に後者が逆鱗に触れたようで…私とイコイちゃんが飛び出すまでもなく、不良生徒たちは放課後スイーツ部(主にカズサちゃん)によって、あっという間に鎮圧されてしまった。

 そして、現在。私とイコイちゃんと放課後スイーツ部の6人で、こうしてお茶をしているというわけだ。…いやうん、急展開だと思うだろうけど、私もここの流れはよくわからない。確かなのはナツちゃんとイコイちゃんの波長が合ってこうなった、ってことぐらいだ。

 

「それにしても、まさか噂のシャーレとこうしてお茶することになるなんてね~」

 頬杖をつくヨシミちゃんと目が合った。…噂、とは?ちょっと気になったけど、行動の早いイコイちゃんがすぐさま聞き返していた。

「噂ですか?良い噂だといいんですが」

「だいじょぶだいじょぶ、良い噂だよ!学校ひとつ救った~とかあったし」

「八面六臂の大活躍!だったかな?ニュースサイトとかでよく見るよねー」

「そんな大層な書かれ方してるの…?」

 確かにあらゆる案件に真摯に取り組んではいるけれど、そこまで言われるとちょっと…なんか気恥ずかしいな。私の腰が引けてるだけなのか、どうなのか…。

 

「八面六臂ってリアルに考えると結構気持ち悪いですよね」

「イコイちゃん?」

「失礼、気が散りました。ちょっと大仰すぎる気もしますけど…それだけ期待されてるなら、これからも精進していかないとですね。むふふ」

「そうだね…」

 何気なく窓の外を見れば、とても平和な町並み。シャーレはお悩み相談室に近い所があるけど、回り回ってこの平穏に繋がってると考えれば、なかなか悪くないよね。まあどこもかしこもここトリニティ自治区ほど平穏なわけではないけど…。

 

 

「あ~そういえば私、補習授業部のほうにも顔出さなきゃなんだけどな…」

「ん?補習授業部って?」

 …今日は()し崩し的にこうなってるとはいえ。これまで暇さえあればあの合宿所()に顔を出していて、今日も当初はそのつもりだった。…明日明後日は来られないこと。先生が伝えてるだろうけど、ちゃんと自分の口からも伝えないと…それで口を衝いて出たけど、隣のナツちゃんはきょとんとしている。

「えっ?トリニティ、だけど…補習対象者を集めて所属させてるやつ…あれ、意外と知られてない?」

「ほう…うちの学校にそんなものが……まー現状私たちには縁がないし、そもそもトリニティに部活はたくさんあるから、何か増えても特に気にならないかな」

「なるほどさすが、キヴォトス三大マンモス校の一角は格が違うのです」

「それに第一、私たち放課後スイーツ部は日々全力投球でロマンを追い求めてるからねー」

「ロマンとかなんとか言ってんのはナツだけだけどね…」

 

 結局のところ、スイーツを堪能しながらわいわい過ごす時間になった。トリニティ別館にも行きたいとは思うし、ほんとはワッフル3枚くらいすぐに片付くけど…もう少しこの雰囲気に浸っていたくなってしまって。

 …当初は直球な名前に驚いたりもしたけれど…なんかいいな、放課後スイーツ部。今まで会った部活の中では一番女子高生してる感じがある。なんならアイリちゃんとかカズサちゃんみたいな子、実際にうちの学年にもいた気がするし…。

「ハリカちゃん?どうかしましたか?」

「ん?あぁごめん、考えごと」

「明日からの予定のことでしょうか?」

「んーちょっと違ったけど…まあ、明日明後日もよろしくね、イコイちゃん」

「むふ、当然なのです。同僚ですし、お友達ですから」

 

 

 

 

 

*1
正義実現委員会

*2
榴弾で攪乱し、その隙を突く






・コハル
語り手チャレンジ初出場でした。難しい
モモフレンズ凄い顔で見てて笑う

・ヒフミ
授与式でハイテンション
「設定」とか普通に言うんだな…は実際思ったやつ
趣味でカバンが重たい系女子

・アズサ
授与式でハイテンション(通常比)
屈託のない笑顔に撃ち抜かれる先生が多発してるとかしてないとか。無理もない

・ハナコ
狙い通りの点数を叩き出した(確信)、安定の変態
モモフレ絡みだと困惑する側に回る

・先生
@トリニティ別館
…彼女たちの頑張りが報われるよう、最善を尽くす大人

・ハリカ
第二次特別学力試験には不在予定。(不忍の心ではないです。念の為)
この後ちゃんと補習授業部のほうにも顔を出して自分の口から伝えた

・イコイ
早速再登場かましたオリキャラ
第二次特別学力試験の日はハリカと一緒に@百鬼夜行予定
着々と育つ人脈お化け

・放課後スイーツ部
なんか一回出したくなってきたんだ…キャラがつかみきれず苦戦。



というわけで…これは当初から決めてたんですが、イレギュラー不在の第二次学力試験は原作と同じ流れになります よしなに


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