鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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各話タイトルを考える能力に低下が見られていますね(他人事)



火蓋は切られて

 

 

【…】

 

 

「…紅茶でしたら、もう結構です。………?」

「可哀相に、眠れないのですね」

「っ!?」

「それもそうですよね、正義実現委員会がほとんど傍にいない状況。不安にもなりますよね、ナギサさん?」

「う、浦和ハナコさん!?あなたがどうして、ここに…!?」

「それはこのセーフハウスをどうして知ったのか、という意味ですか?それはもちろん…すべて把握しているからですよ?合計87個のセーフハウス、そのローテーションまで…ふふ♡」

「っ…!?」

「変則的な運用もおおよそ把握していますよ?例えば…今のように心から不安なときは、この屋根裏部屋に隠れる、ということも♡」

「なっ…「動くな」…!?」

「あぁ、もちろんここまでの間に、護衛の方々には全員眠っていただきました。だからこそこうやって、堂々と来たわけですが」

「…白洲アズサさん、浦和ハナコさん…まさか……!ぅ、『裏切り者』は一人ではなく、二人…!?」

「…ふふ、単純な思考回路ですねぇ♡私もアズサちゃんも、ただの駒にすぎませんのに…指揮官は、別にいますよ♡」

「っ…それは、誰ですか…!」

「そのお話の前に…ナギサさん。ここまでやる必要って、ありましたか?」

「…」

「補習授業部のことです。ナギサさんの心労はよくわかります。ですがこうして、『シャーレ』まで動員して…何もここまでやる必要はなかったのではありませんか?」

「っ…それは……」

「最初から怪しかった私やアズサちゃんはまあ仕方ありません。ですが…ヒフミちゃんとコハルちゃんに対しては、あんまりだと思いませんか?特にヒフミさんは、ナギサさんと仲が良かったじゃないですか。…どうして、こんなことをしてしまったのですか?ヒフミちゃんがどれだけ傷つくのか、考えなかったのですか?」

「…そう、ですね…ヒフミさんには、悪いことをしたかもしれません。ですが、後悔はしていません。全ては大義のため…確かに、彼女との間柄だけは、守れればと思っていましたが…私は……」

「…ふふっ♡では改めて、私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね?」

「…メッセージ?」

 

 

「『あはは…えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様との()()()()()()』…とのことです♡」

 

 

 

 

【ハリカ】

 

「目標を確保。至近距離から5.56mm弾を一弾倉分浴びせたから、1時間くらいはこのまま気を失っているはず」

「よ…容赦ない…」

 ハナコちゃんに続いて屋根裏部屋から下りてきたアズサちゃんは、亜麻色の髪の女性を背負っていた。純白のかなり上等そうな制服を着ているこの人がどうやらナギサさんらしい。顔色悪いけど大丈夫?息あるよね?

 

「ふふ♡ではアズサちゃん、ここからは敵の誘導をお願いできますか?」

「了解。これで、まだどこかにいる『本当の裏切り者』に嘘の情報が流れるはず…そのハナコの仮説の通りであれば、アリウスも襲撃を急ぐに違いない」

「はい、私の推測の通りなら…まだはっきりとした証拠はないものの、『本当の裏切り者』については、個人的にはほぼ確信がありますし」

 慎重に近辺の様子を(うかが)いながら、"セーフハウス"であるらしい建物を抜け出す。

 私たちは今、冴え渡るハナコちゃんの頭脳が組み上げた作戦に沿って動いている。ミレニアムでの『鏡』のクエスト以来の作戦行動……もちろん、ただある目的物を目指して進むあれとは違うけど。

 

「…ところで、さっきの最後のあのセリフ、必要だった?」

「あぁ、あれはヒフミちゃんの頑張りの分、勝手な仕返しといいますか…ちょっとくらいショックを受けてもらおうかと。まあ全て終われば、すぐに誤解は解けるでしょう」

 それにしても、うん。聞こえてたけどハナコちゃん、お茶目な顔で恐ろしいことをする。…いろいろ言いたいことがあったナギサさんだけど、なんか今はもう一周回ってかわいそうだ。今アズサちゃんからハナコちゃんに預けられたナギサさんを見る私は、それはそれは憐憫に満ちた表情をしていることだろう…それはさておき。

 この後は、アズサちゃんが陽動として別行動になる。私はハナコちゃんに付いて、合流地点と定めているところまで移動。できれば戦闘は避けたいところ…そういえばアリウスかそうじゃないかはどう区別すれば?と尋ねたところ、アズサちゃんがたぶん全員がこれと同じものをつけて行動しているだろう、と厳ついガスマスクを取り出したので思わず真顔になった。

 

「ところでアズサちゃん、アリウスの兵力はどれくらいかわかりますか?正確に言うと、一人でどれくらい持つか把握したいのですが」

「詳細はわからない。けど備えはもうずいぶん前からしてきたから、どれ程の相手だったとしてもかなり時間は稼げるはず…このために毎晩、学園の周辺にトラップやら塹壕やらを作っておいたから、そこに誘導しつつゲリラ戦で時間を稼ぐ。じゃあ、一旦ここで。あとでまた、合流地点で会おう」

「はい、また後ほど!」

 

 

 

 程なくして、ほうぼうから爆発音が聞こえてきた。さすが陽動派手にやる。

「…さてと。一応確認だけど、私たちは戦闘を避けるんだよね?」

「そうですね…今はアズサちゃんの時間ですし。私もこうして銃を持ってはいますが、アズサちゃんみたいに強くはありませんので。それに、ハリカちゃんも」

「わかった。まあ万が一があったら時間稼ぎくらいはするよ。そのために来てるんだから」

「…あまり、先生を困らせるようなことしちゃダメですよ?」

「しないよ。大丈夫」

 物音に耳を澄ませつつ、ブレスレットの電源を入れる…大丈夫、『拡散』にはもうだいぶ慣れてきた。まさかこんなに活用しまくることになるとは思わなかったけど。やはりステルスは神…!

 

 

「っ…待ってください、広場に何人かいます」

「…ほんとだ」

「迂回して行きましょう。さすがにここを通り抜けるのは」

「…いや、いける。大丈夫」

「…本当ですか?」

「うん。とりあえず声と足音と、転ばないようにだけ気を付けよう」

「っ…わかりました」

 

 

 

 

 

「あ、ハリカちゃん…!」

「き、来たわね…ってことは…」

 アズサちゃんとの合流予定地でハナコちゃんと別れ、駆け込んだ先…トリニティ別館の体育館にはヒフミちゃんとコハルちゃん。もうすぐ、今回の作戦の正念場。私が来たらその合図。そういうことになっている。ハナコちゃんから預けられたナギサさんは、作戦で決めた通りの場所に…

「…っ!?」

「あ、ハリカ!大丈夫、僕だよ!」

「せ…先生、こんなところに…」

「あとから登場してもらいたいって言われたからね…あと、ハリカも」

「わ、私もですか…」

 要するにあれか。『サプラーイズ!』ってやつか。(ツグミ)がぶちギレてる様子が脳裏に蘇るけど、感傷に浸ってる場合じゃないので今はパス。

「…一応、場所は移しましょう。ナギサさんには安全でいてもらわないと」

 

 

「…なるほど、逃げたのではなく待ち伏せだったと」

 騒がしい足音、そして誰かのくぐもった声。…来た。アズサちゃんが、ゲリラ戦を切り抜けたアリウスを引き連れて。

「…だが、それだけか?たった四人で私たち相手に何分耐えられると思っているんだ?こんな退路もない場所で!」

「…その通り、もう退路はない。お前たちは逃げられない」

「ですねぇ…ひとまず仕上げといきましょうか♡」

「うん…待ってたよ」

 …スッと歩き出す先生。あちらからは影の中から突然出てきたように見えるだろうなぁ。すごくざわついてる。

「ご存じかは知りませんが…補習授業部の担任であり、連邦捜査部『シャーレ』顧問の先生です♡」

殲滅戦を始める。先生、指示を」

「じゃあ補習授業部、行こう!」

 先生の一声で、戦闘の幕が開けた。…いやそれにしてもほんとアズサちゃんが物騒。

 

 

 

 迎撃戦で殲滅戦。いや()()()って言い方は殺意が高すぎて私は嫌だけど。こんなに戈が並ぶことある?

 いやまあそれはよくて…私の立ち回りには毎回悩むんだけど、今回はさすがに相手が相手。しかしあんまり派手なことをするのはどうにも気が引ける。…というわけで中間の、派手になりすぎないくらいの戦闘支援をすることに決めた。

 

「そういうわけなので、ちょっと移動しますね!」

「わかった、よろしくねハリカ!」

 先生から離れて、ちょっと高いところ…壇上に繋がる階段へ。ここに来て久方ぶりのチャック袋が開封された。…え?この弾丸は何って?そりゃもう、ずっと呑気に平和の園だと思ってたトリニティだけどそこはキヴォトスクオリティ。道端に目を向ければたくさん落ちてるわけで…ここまで来る傍ら、なんだか久しぶりな『輻輳点(コンバージェンス)』で拾い集めていたのだ。板や棒みたいに細長い領域にすれば想子(サイオン)消費も抑えられるからね。

 まあ、私のことはいいのだ。眼前の戦場では、今まで聞いたことがないくらい爆音が鳴り響いている。あれは…さしもの私にも違いがわかる、グレネードランチャーというものだろう。ユズちゃんが使ってたやつ。

 

「回復完了。ポジションを移動する」

「よしっ…こ、今度は間違えないんだから…!」

「ペロロ様、出番です!」

「ちゃんと受け止めてくださいね♡」

 みんなも、それぞれに頑張ってる。グレネードを巧みに(かわ)しつつ勇敢に突っ込んでいくアズサちゃんも、身を隠しては手榴弾を投げるコハルちゃんも、カバンからペロ…ペロロ様??…が出てくるヒフミちゃんも…うん、あと先生の横で後方支援のハナコちゃんも。私も、中途半端じゃいられない。起動するのは汎用型(ブレスレットのほう)だけど。

「…やりますか」

 取り出した弾丸を宙に弾き上げる。…若干土がついてるけど大丈夫だろう。威力調整は十分だし!

 

 

 

 

 

「はぁ…か、勝った…?」

「全員、戦闘不能」

「あぅ…先生の指揮があって、本当に助かりました…ハリカちゃんも、ありがとうございます」

「いやいや、みんなの頑張りだよ」

 …だいたい、35分くらい?で、なんとかアリウスを蹴散らすことに成功した。

 いやはや…アビドスの時とは勝手が違ってちょっと大変だった。迎撃戦なのもそうだけど、補習授業部には前衛がいない。アズサちゃんはそういう動きができるけど…たぶんなるべく詰められない方がいいだろうと思った。

 

「はい…では難所をひとつ乗り越えたところで、次のフェーズに移りましょうか。このあとアリウスの増援部隊が到着するでしょう。ですが、私たちは時間を稼ぐだけで大丈夫です。正義実現委員会の部隊がここに到着する、それまでは」

「あ、ハスミ先輩には連絡しておいた!すぐ連絡来るはず!」

「はい、ありがとうございます♡…ティーパーティーの命令下にある正義実現委員会が動けるとしたら、それはティーパーティーの身辺に問題が生じたときだけ。定期連絡などもあるでしょうし、きっと今ごろナギサさんの身に何かあったことには気づいたはず。それに合わせてコハルちゃんからの連絡…少なくとも状況確認のために動き出すまで、そう時間はかからないはずです」

「あとは早く来てくれることを願うばかりだね…っ!?」

 

 …建物が揺れる。それに、外から大勢の足音。見えた姿は…ガスマスク。

「増援部隊が、こんなに早く…!?」

「しかも…いや、ちょっと待って…?」

「数が多い、大隊単位だ。恐らく、アリウスの半数近くが…」

「あうぅ…こ、これだけたくさんの方が、平然とトリニティの敷地内に…!?」

「それなのに、正義実現委員会が動く気配がない…?」

 …おかしい。ここはアビドスじゃない、マンモス校のトリニティだ。しっかりとした治安部隊を持ってる…っていうかそもそも今戒厳令出てるじゃんか何してるの軍部(正実)!?

 ハナコちゃんの眉間に皺が寄る…この子の想定外が起きている?いったい何が…

 

「それは仕方ないよ。だってこの人たちはこれから、トリニティの公的な武力集団になるんだから」

 唐突に飛び込んできた第三者の声。見ればそこには…ピンクの長髪をなびかせ、純白の装束に身を包む少女。…どこかで見たことがあるような…と思った私の隣で、驚いた顔の先生が。

「…()()?」

「や、久しぶり先生!会えて嬉しいな!…それと、正義実現委員会は動かないよ。私が改めて待機命令を出したから」

「っ…!?」

「今日は学園が静かだったよね?正義実現委員会以外にも、邪魔になりそうなものは事前に全部片付けておいたの。ティーパーティーの命令が届く限り、いろんな理由であらゆるところを足止めしておいたから…ナギちゃんを襲うときに、邪魔なんてされたら困っちゃうもんね」

「…ティーパーティーの一人…()(その)、ミカさん…」

「まあ簡単に言うと、黒幕登場☆ってところかな?」

 

 

 

 

 





・ハリカ
ハナコに同行し、一足早く合流ムーブ
現地調達で弾丸をばらまくの冷静に見るとヤバイな…

・ハナコ
冴え渡る頭脳
容赦がない

・アズサ
ド派手にやる陽動
容赦がない……どころか知らない可能性がある

・ヒフミ
~勝手に爆弾発言を捏造される自称平凡な子の図~
戦場で踊るペロロ様は何度見てもシュール

・コハル
まだよくわかんないことだらけだけど全力で頑張る
お願いペロロ様!のインパクトが強すぎて霞むけど、この子の手榴弾の効果凄いな

・ナギサ
嬉しくない実績『脳破壊』を解除(※生きてます)。そしてアズサ⇒ハナコ⇒ハリカと荷物のように預けられるなど
あとこれを言うと誰の配信かわかるだろうけど「屋根裏部屋にようこそ!」って言われてて笑う

・先生
サプライズ登場にノリノリ ⇒ 真面目に指揮 ⇒ ミカ…?

・ミカ
黒幕登場☆



メモ:
・火蓋を切る…火縄銃に点火の用意をする。主に戦いを始めること。戦端を開く。
・幕を切って落とす…歌舞伎の開演の際に幕の上部を外して一気に落とす。主に催事を華々しく始めること。
しばらく「切り落とされた火蓋」にしてたって話。混ざってたし思ってたよりだいぶ意味違った…。


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