鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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※本日3つ目です
※一気に投げすぎです
あとはまた書きため期ですかね…



最後の大仕事

 

【 】

 

「あうぅ…も、もう色々ありすぎて、疲労困憊です…」

「ようやく落ち着きましたねぇ…」

 正義実現委員会の生徒たちに連行されるミカを見送って、僕らはようやく一息つくことができた。結局一睡もせずに激戦をくぐり抜けることになったけど、アリウス…延いてはミカが立てたナギサ襲撃計画はなんとか阻止することできた。

 そのナギサも、身を隠していた倉庫から正義実現委員会の子たちに連れられていって…今は後始末とか、現場検証とかそんな感じだ。

 

「…っと!?こ、コハルちゃん!?」

「ご、ごめん、なんだか力抜けちゃって…あ、ありがと…」

 がくっと崩れ落ちそうになったコハルに一瞬血の気が引いたけど、安堵で膝の力が抜けたらしい。…あぁいや、それだけが原因でもないか。

「それもそうですよね…一晩中走り回りましたし」

「それにここ一週間、あまりまともに睡眠もとれていませんでしたしね…これでようやく」

「何を言ってるのヒフミ、ここからがスタートだ」

「…はい?」

「あー…」

「…そ、そうでした…試験が……!」

「わ…忘れてた…」

 ここからがスタート。アズサの言葉に一瞬疑問符が浮かんだけど……そうだ、()()()()()()()()()……あまりにも怒涛の展開だったけれど、この集まりの本来の目的はそれだ…。

 サーッと蒼白になるヒフミとコハル、苦笑いするハナコ。そんな中で、アズサはやっぱり通常運転だった。

「現在時刻は午前7時50分。試験会場まで1時間で着かないと。走ろう」

「えぇっ!?走るんですか!?待ってくださいアズサちゃん早っ!?こ、ここから走って着く距離ですか!?」

「全力で走ればギリギリでしょうか…。さぁヒフミちゃん、コハルちゃん!ファイトですよ!」

「も、もう歩くだけで足痛いのに…!待ちなさいよぉ!」

「ど…どうして最後の最後までこんなことに~!?」

 

 ばたばたと走っていく四人に苦笑いしつつ…いや、僕は試験監督もやるんだったな。じゃあ急いで行かないと。そう思ったところで、ふと違和感が……

「………()()()?」

 …静かすぎる背後から返事はなく。振り返っても、現場の調査と事後処理に(いそ)しむ正義実現委員とシスターたちの姿があるばかり…ハリカの白い装いは、どこにも見当たらなかった。

 

「…アロナ」

 取り出したタブレット…『シッテムの箱』に呼び掛ける。…補習授業部はこれから試験を受けなければいけない。それも、彼女たちの今後を左右する大事な試験。だからこれ以上、彼女たちに負担はかけさせられない。

『はい!なんでしょう!』

「ハリカの居場所、わかる?」

 すぐに『シッテムの箱』のメインOS、アロナが画面にひょっこりと現れた。彼女を呼んだのは、いつも戦術指揮を取る際『シッテムの箱』で各自の状況を俯瞰しているのを思い出したから。

 このいたく高性能な『シッテムの箱』のおかげで、僕は生徒たちを支えてあげられる。それはきっと今回も…そう思ったのだけれど、アロナは目をぱちくりとさせた。

 

『えっと、シャーレの名簿にある、稲梓ハリカさんですか?』

「そうだけど…」

『ごめんなさい先生…ハリカさんは現状、『シッテムの箱』の管轄外となっているんです』

「そう…なのかい?」

『はい…キヴォトスの外の人なので、どうしても。初めに先生がしたように認証をしてもらえれば、適用できるかもしれませんが…』

「…たぶん、ハリカもアロナのことはわからないだろうね…」

 ふだん仕事をしているときの様子から、それは何となく察した。…確かに、戦術指揮を取っているとき、ハリカが画面内に現れたことはない。それはハリカが大抵僕のそばにいて、最前線まで飛び出していくことがないから。

 でも、思い返してみれば……例えば、アビドスでホシノを救い出したとき、ハリカは魔法を使ったらしい。カイザー理事のパワードスーツを沈黙させた決め手。その時、魔法の射程の都合で一度僕のもとから離れていたけれど…ハリカがどこから魔法を使ったのか、『シッテムの箱』では把握していなかった。射程の都合というなら僕よりも戦場に近かったはず。…ハリカを信じて送り出したとはいえ、どうして気づかなかったんだろう。

 …いや、思考の海に沈んでも仕方がない。行かなければ。

 

 

 

「そういえば先生…ハリカちゃんは?」

「あぁ…さすがに今回こんな大騒ぎになったからって、急いでシャーレに戻っていったよ」

「そうなんですか…ちょっと残念です」

 そうして、教室にはなんとか開始時間前に…息を整えるのには十分な時間を残してたどり着くことができた。ヒフミがハリカについて問うてきたけど、ここはごまかしておくことにした。…心配だけど、きっとハリカなら大丈夫だと思うから。

 そういえば、試験会場は戒厳令下で厳重に守られていたはずなのだけれど、いざ着いてみれば補習授業部一同は無事に中に入れてもらえた。ミカの命令が上書きした形になったからだろうか?それにシスターフッドのあとに到着して、ミカを連行していたし。

 ともあれ…並ぶ四つの机に補習授業部の四人、それぞれに問題用紙と回答用紙。いよいよ舞台が揃った。

 

「…これが、最後の試験だね」

「あぁ…泣いても笑っても、この結果で全てが決まる」

「あぅ…」

「…ここまで、色々ありましたね」

「…気持ちはわかる。けど、感傷に浸るのは試験が終わったあとにしよう」

「そうですね…とにかく、私たちの努力の成果をしっかり発揮しましょう!」

「最後まで諦めない」

「はい、私もです。せっかくアズサちゃんに教えてもらいましたから」

「私、今度こそ満点取るから!」

 席について、裏返しの用紙を前にして。…みんな、ずいぶん顔つきが変わった。大丈夫。今のみんなならきっと、遺憾なく全力を発揮できる。

「では…第三次特別学力試験、開始!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そして。

 

 

┏━━━━━━━┓

┃ハナコ…100点 ┃

┃アズサ…97点  ┃

┃コハル…92点  ┃

┃ヒフミ…94点  ┃

┗━━━━━━━┛

―――――全員合格!!

 

「や…やっったぁーーーっ!!やりましたよアズサちゃんコハルちゃんハナコちゃん!!」

「はい!ヒフミちゃんもです!」

「……ゆめ?」

「夢じゃないです!92点ですよコハルちゃん!まぎれもなく合格です!!」

「う…っ、よ…よかったぁ~~~っ!!

「それに、みんな過去最高点ですよ!特にアズサちゃん、すごいです!」

「う、うん……えへへ、っ…」

 喜びに包まれる補習授業部のみんなを、微笑ましく眺めながら…大きな仕事を無事にやりきった、そんな達成感を確かに噛みしめつつ……

 

 ……うん、忙しいだろうけど、ここはハスミに頼もう。どんな理由であれ、この空気に水を差すのは気が引ける。

そう思ってシッテムの箱を開けば、一番上にはついさっき届いたモモトーク。

 そこには…虚ろな表情でうつむいて、噴水に腰かけるハリカの写真が添えられていた。

 

 

 

 …それにしても……セリナ。確かに君と僕は面識があるけど、モモトークは交換してたっけ…?

 まあ、僕が忘れてるだけだったらいいんだけど。

 

 

 

 

 





・先生
うっかり僕も忘れてたよ…
生徒たちを導けた大人

・補習授業部
一睡もせず激戦後にテストというハードスケジュールをこなした
㊗️無事合格。 
通常運転のアズサが強い。知ってた。そしてギャップ萌え枠でもある…。

・セリナ
ラストは白衣の天使が全部かっさらっていきましたとさ

・ハリカ
トリニティ分校近くの公園にて、セリナとハスミが保護


最後とは言ったけど補習授業部編自体はまだ続くよ


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