鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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明けましておめでとうございますを言い忘れる痛恨のミスに気づくまで一週間以上かかりました。土下座。
ついに本格始動しましたよ あれが
確認したらTw……》》X(旧Twitter)《《で呟いてからほぼ1年なのか…そうか……



閑話③:新星と巧者

 

 

新しい者の話

 

【???】

 

 

「はぁぁ…緊張する…」

 慣れ親しんだ自治区を出て、一時間あまり電車に乗ったあと。高層ビルの立ち並ぶD.U.の或る駅で降りて、歩くこと数分。目的地のビルがいよいよ近づいて、改めて息が詰まってくるのを感じた。

 …とにかく、うっかり(はぐ)れてしまわないように気を付けないと、と顔を上げて、目の前で揺れる先輩の青い髪を見る。…それにしても、

「なんで私が…しかも、よりにもよって……」

「"()()()()()()()"はさすがに傷つくで、くぅちゃんよ」

 …軽く振り返った先輩の困り顔を見て、内心思ったことがうっかり口から零れ落ちてしまったことに気がついた。

「す、すみません…あと、"くぅちゃん"はやめて頂けると…」

「えーなんでよ?かわええやんか」

「かわいいから恥ずかしいんです!」

「大丈夫やって!あんた自身がかわええんやから」

「うぅ…」

 

 …呵々(かか)と笑う先輩に押され気味。(もと)より主張の強い方ではない私は、いつもの学舎をあとにしてからずっとこの調子だ。

 私たちが今向かっているのは、連邦生徒会のもとに新たに立ち上がった組織・"連邦捜査部S.C.H.A.L.E.(シャーレ)"。制限なく生徒を加入させられる権限を持っていて、基本スカウト制をとっていると噂で聞いていたそこから、私は全く(もっ)て想定外のご指名を受けた。この先輩と一緒に。

 この先輩が出向させられるのはわかる。普段は連れ立つ相棒が強すぎて霞んでしまうけれど実力は高いし、何より臆することを知らないような高い社交性は、もはや彼女の象徴と言って差し(つか)えない。

 …それに比べて私はこの為体(ていたらく)だというのになぜ選ばれたのか。そもそもまだ1年の若輩だし、か弱い後方支援側の人間だし…

「…うわっぷ!?す、すみません!」

「いや…なんやろあれ…?」

 ぐるぐると思考の沼に()まっていたので、ふいに立ち止まった先輩の背中にぶつかってしまった。けど先輩は振り向きもせず、何かが気になるようで、そちらを見たら…

 

「でも、これだってちゃんと学校指定の制服ですよ?」

「そ…っれは、そうかもしれませんけど!」

 …目的地(シャーレビル)の真正面で、なぜだか水着に身を包んでいるピンク髪の生徒と、銀髪の警官が何やら揉めている光景があった。

 

 

 

 

 

同僚になるんですか!?

 …状況が動いたのは、大人の男性…写真や映像で見覚えのあるシャーレの先生がビルの正面玄関から、純白の制服を(まと)った黒髪の生徒に手を引かれて出てきた時だった。少し離れたところにいたからはっきりとは聞き取れなかったけど、先生は両者を説得してビルの中へ案内し、それから「あぁ、そっちの二人もおいで!」と私たちにも声をかけてきた。

 そして案内された3Fシャーレオフィスにて、銀髪の警官が素っ頓狂な叫び声をあげ、現在に至る…というわけで。

「ふふ…ええ、そのようですね♡」

 今はちゃんと白いセーラー服を着ている、先刻のピンク髪の生徒が嫣然(えんぜん)と笑う…なんかもう、先輩と思われるこの人のメンタルが怖い。珍妙な先輩ならうちの自治区でも覚えがあるけどここまでじゃない。シャーレの中には私たちの他にも生徒がいたけど、この人ほぼ全員から生暖かい視線を向けられて怯みもしてないなんて…。

 

「ほどほどに節度は守ってね…とりあえずまあ、初対面の子もいるから自己紹介はしてもらっていい?」

「はい。トリニティ総合学園、2年の(うら)()ハナコです。よろしくお願いしますね♡」

 ピンク髪の浦和先輩…抜群のプロポーションからてっきり3年生かと思ったけれど、考えてみればそれ自体は今隣にいる先輩もそう変わらないか。ただこう…色気というか、艶やかさというか…それだけに限らない格の違いが犇々(ひしひし)と感じられた。

 携行する荷物が少ないところを見るに、私と同じ支援職だろうか。先生や、ハリカさんというらしい最初に見た黒髪の生徒と面識があることはなんとなく察した。

 

「…ヴァルキューレ警察学校1年、生活安全局の(なか)(つかさ)キリノです」

 一方の銀髪警官さんも気圧され気味…というか、こっちはこっちで意外にも同級生だったとは。背丈は浦和先輩とほぼ同じなのに…いやまあ、私が平均と比べれば低いほうなのは知っているけれど。

 こちらも前述した二人とは面識があるようだ。そもヴァルキューレはここD.U.を主な管轄とするし、()()()()()という名前からして、巡邏(じゅんら)に勤しむような()(せい)に近しい部署なのだろうと思う。

 

「じゃあ先輩のウチから…(あし)()(はら)高等学校2年、千躰(せんたい)ミオです。よろしゅうお願いします!」

 簡潔な自己紹介のターンが続いているので、あっという間に私たちの番が回ってきた。そして、ミオ先輩はいつもの調子で軽く手を振りながら済ませてしまう。もう少し時間稼ぎをしてくれてもよかったのに、と恨めしげな視線を…じゃなくて。

「お、同じく葦之原高等学校から来ました1年の、月橋(つきはし)ククリといいます…よろしく、お願いします」

 緊張で上ずりそうな喉をなんとか抑えて、私も定型文めいた自己紹介を済ませる。所属は言わないことにした。先輩もすっぽかしてたし、何より今は普段以上に噛みそうなので。…ひとまず、受け入れられはしたらしい。

 敵ではないとわかっていても、こういう知らない人の多い場所はやっぱり苦手だ。気後れしないミオ先輩が羨ましい…その先輩がぽんぽんと背中を軽く叩いてくれて、ようやく肩の力を抜くことができた。

 

 

「ミオ殿~!」

「イズナちゃ~ん!元気しとったか~?イココもそこで見とらんと、ほらこっちこっち!」

「むう…私は飛び付いたりするほど子供じゃないのですよ」

 場の雰囲気が緩むと、ミオ先輩はさっそく百鬼夜行の子に飛び付かれていた。イココと呼ばれた小柄な生徒もミオ先輩のもとへ歩み寄っていき、頭を撫でようとした先輩の手をつかんで下ろしていた。

「ふふ、イズナちゃんもともと人懐っこいけど、すっごい懐いてるなぁ」

「あ、っと…ハリカさん、でしたっけ」

「あ、自己紹介まだだったね。私は稲梓(いなずさ)ハリカ。2年生だから先輩で合ってるよ。えっと、ここ直属で先生の補佐をさせてもらってます。よろしくね」

 するりと隣に並ばれて、驚いて見上げると先述した黒髪の生徒。髪を束ねる白いリボンの上で灰色の花が揺れている。

「月橋ククリです…さっきも言いましたが。…まさか、数多(あまた)ある学校の中から葦之原が選ばれるとは。少々意外でした」

「まあ、今のシャーレはまだまだ推薦制に近いからね。イコイちゃんの提案をイズナちゃんが猛プッシュした感じたから…」

「そうなんですか?」

「うん。だから…舞踊研究会ってところの人には百鬼夜行のイベントで会ったことあるけど、正直私もあんまり知らないんだよね、葦之原。どんなところなの?」

「どんな…まあ、自然豊かなところですよ。風光明媚、山紫水明といいますか。それと…今のミオ先輩が分かりやすいと言いますか」

 

 先生や部員と思しきメイド服姿の(!?)生徒と話しているミオ先輩は、いまだに百鬼夜行の二人を伴っている。

 葦之原は百鬼夜行と親しい。学校ぐるみで昵懇(じっこん)の間柄というやつだ。付き合いはかなり長く、安定していて自治意識も強く百鬼夜行の連合に加わることはなかったけれど、その辺りで不可逆的な軋轢(あつれき)が生じることはなかったらしい。…具体的に何をしたかは定かでないけれど、先達(せんだつ)の手腕には敬意を表さざるを得ない。私も、そういう生徒会(中書寮)役員でありたいと思う。

「地形的にも、ここに来るまでに百鬼夜行自治区を通過していくような形で…キヴォトス全体で見ても自治がしっかりしてる方、という自負は私たちとしてもあるので、その分シャーレには知られてないのかもしれません」

 シャーレは幅広く生徒や学校のトラブル解決に動く機関と聞いた。うちでは外で聞く不良が跳梁(ちょうりょう)(ばっ)()するような事態もほぼ起きなかったし、それこそ風紀の砦たる『大理寮』…ミオ先輩たちの活躍が目覚ましいわけで。

 

「ククリちゃん」

「は、はい!…えと、」

「たぶん初めましてですね、百鬼夜行2年の(つじ)イコイなのです」

「あ…せ、先輩でしたか…すみません、てっきり」

「のんのん。小柄な自覚はありますし、慣れてるので気にしませんよ。むしろこれは私の機動力の要なのです。むふふ」

 ふと声をかけてきたのは、先ほどミオ先輩が「イココ」と呼んでいた百鬼夜行生。私よりも小柄だけれど2年生の先輩だったとは…キリノさんとは逆の事象が起きているだけか。懐の広い人のようで、謝罪は優しく制されてしまった。

「体格の話なら、もっと小柄な三年生も何人かいるからね…」

「そ…うなんですか?」

「なんといってもキヴォトスは広いのです。それよりククリちゃん、設備案内をしたいのでこっち来てください」

「あ、はい」

 

 稲梓先輩を見れば「私も一緒に行くよ」とのことなので、並んでミオ先輩たちのもとへ向かう。そのついでに(と言ってしまうとかなり悪いけれど)、逵先輩の後ろにいた短いピンク髪の生徒にも挨拶をしておいた。

「トリニティ総合学園2年の鷲見(すみ)セリナです。よろしくお願いします…といっても、私も入部してまだ一週間と経っていないんですけどね」

「と言いつつ付き合いは長いんだけどねセリナちゃん。忙しくて入部は控えてただけで」

「困っている人は放っておけない性分なんです。部員が少なかった頃は、よく倒れていらしたので」

「それってあなたの方が過労なのでは…」

「…ふふ♪︎」

 …何かをはぐらかされた気がする。

 

 

 

 その後、シャーレ入部に際する重要事項を色々と教わった。シャーレビルの施設案内(しか)り、業務の割り振り然り。前線よりも裏方のほうを希望する旨を伝えれば、思いの(ほか)快く受け入れてもらえた。浦和先輩が「お揃いですね♡」と声をかけてきて、つい着物の帯を押さえて身構えてしまったけれど。

「ウチはがんがん前線に出てくつもりやけどな」

「なんだか正反対なんですね、お二人とも」

「所属は別々なので…ミオ先輩は風紀、私は生徒会です。ほんとはもっと小難しい名前ですけど。私は戦闘になると本当に弱いし、そもそも戦闘にならないのが一番だと思ってます。いくら備えたところで、弾薬は一度燃えたらおしまいの消耗品なので」

「なんや会計さんみたいなこと言うとるな」

「実際半分くらいサイカ先輩の影響ですからね」

 生真面目を絵に描いたような先輩を思い浮かべる。…私は、たぶん周囲に感化されやすい質なんだろうと思う。いちおう(きょう)(げき)な方面には進む気配も、その積もりもないけれど…。

 …(いわ)く、「キヴォトスに存在する全学園の生徒を制限なく加入させられる超法規的機関」。生徒をなんの隔たりもなく広く受け入れ、社交と協同、折衷が行なわれるこの場所(S.C.H.A.L.E.)でもまた、私の中で何かしら変化するところが出てくるんだろう………そんな漠然とした予感がした。

 

 

 

 

 

 電車に揺られながら、端末の画面を見る。モモトークに増えた名前と、二つのグループ。

 シャーレに部員として籍を置く生徒たちはみな、モモトークのグループを二つ使っている。先生がいる方といない方。いくら立場も異なる大人とはいえ()け者にするのはどうかと思ったけれど……なんでも、日頃から多忙な先生が何もかも抱え込まんでしまわないよう、備品の出納(すいとう)・管理だとか、事前の大掴みな調査だとか、そういうちょっとしたことは生徒間で済ませてしまおう、というのが目的らしい。

 それでうっかり間違えないよう、先生がいる方*1とは名前*2もアイコン*3も違っているし、いちおう先生もグループの存在だけは把握しているらしい。

 …それにしても。所属メンバーの一覧を開けばずらりと出てくる名前…ミレニアムサイエンススクールの生徒会『セミナー』。ゲヘナ学園の『風紀委員会』。トリニティ総合学園の『正義実現委員会』に『救護騎士団』…様々な学園の、様々な生徒たち。多くは先輩で、仕様上それらの一番上に出てしまう自分の名前と比べると…やっぱり、見劣りしてしまう気がする。

 

「なんで自分が、って思っとるやろ」

「っえ」

 ふいに振り向いたミオ先輩の発言に、思わず小さい声が漏れた。

「くぅちゃんずっとそういう顔しとったで?まあわからんでもないけどな。うちかて1年ときに同じ体験したらそう思てたわ」

「…そう、ですか」

「そうそう。…実はな?うちがシャーレからお声掛けしてもろたとき、くぅちゃんのこと推薦したんよ。みーたんの代わりに」

「み…ミタケ先輩?」

 脳裏に浮かぶのは同じ生徒会の、青緑色の髪が特徴的な先輩。人格者という言葉が相応しく、いつも人に囲まれているあの先輩が……私を?

「元々相談は受けとってん。期待の新人だから是非ともここだけでなく場数を踏んでほしい~って。けど場数を増やす方法なんかそうそうないし、志願して生徒会に加わったらしいから他部署の仕事まで…ってのはある。そこにシャーレのご指名が来て、よっしゃ渡りに船や!って流れやな」

「そう…ですか」

「あー…勝手にやってもうたんはゴメンな?」

「いえ…困惑はしましたけど、嬉しいです」

 

 部活の内外を問わず慕われるミタケ先輩…それは私とて例外ではなく。そんな先輩に「期待の新人」だなんて言われると………なんだか胸のあたりが温まってきて、反射的に顔を手で覆った。

「すみません先輩今ダメな顔してると思うので見ないでください」

「大丈夫大丈夫かわええよ」

「そっ…いう問題ではなく…!」

「うれしくて口角上がるとか別に普通のことやんか~」

「しゃんじゃけっとぉ…!」

「あー出た出た。ふふふ…あちょ、痛い痛い」

 …もう恥ずかしくて、背中をポカポカ叩くことしかできなかった。

 

 

 

 

 


 

囂しい街の話

 

【ククリ⇒チナツ】

 

 

 ご存知ですか?この無法地帯の風紀委員会に、オフなんて有って無いようなものなのです。

 …失礼しました、つい。今日はたまたまオフが被ったイオリと出掛けているのですが…まあ、いつもとあまり変わりません。自由と混沌が校風とはいえ、ここの生徒はあまりにも自由が過ぎますので。というかイオリもイオリで挑発に乗らないでください。おかげで物資が順調に減っていきます…。オフなんですよ?解ってますか?……はぁ…。

「…ハリカさん?」

「あ、チナツちゃん」

 そんな最中、見知った顔が見えた気がして足が止まりました。コンビニの前のベンチに腰かける二人、その横顔に見覚えがある気がして。

 …ただ、普段とは違うパンツルックの装いだったので、他人の空似のようにも思えましたが…ふとこちらを見た顔は、確かにハリカさんでした…若干やつれていますが。加えて、隣には浴衣のような装いの…確か、イコイさんといいましたか。あいにくまだ二度ほどしか当番でご一緒したことがなく。

 

「おや、奇遇ですねチナツちゃん。そういえば風紀委員会でしたね」

「はい…なんだか珍しいですね、ハリカさんの私服って」

「ちょっと諸事情あって…わぁイオリちゃんだ、すっごい久々」

「イオリというと、あなたが銀鏡(しろみ)イオリさんですか。チサキちゃんから聞いたことあります」

「ああ、そう…だけど、よりによってあいつか……何て言われてるんだ私…?」

腕は確かだけど猪みたいな向こう見ずで台無し

 いきなり割り込んできた冷徹な声…聞き覚えしかないそれに目を向ければ、

「げ!チサキ!?」

「相変わらずね、イオリ。人の顔見て「げ!」は失礼でしょう」

 話題に出ていたチサキさんが、コンビニから出てきたところでした。これが、いわゆる"噂をすれば影"でしょうか…ただ、その…チサキさん、なんだかいつもに比べて機嫌が良さそうに見えます。口角は上がっていて、イオリを(たしな)める言葉にも普段のような冷たさはなく、あたかも軽口かのようでした。

 

「で、私服で腕章もないってことは、二人ともパトロールではないのね?」

「そうだけど…チサキお前まさか、着いてくるとか言わないよな?!」

 そういえばフユコさんから聞いていましたが、このお二人は「割と仲はいい方」なんでしたね。客観的にはあまり相性が良いように見えないんですが、思いのほか軽い調子で会話が進んでいます。

「お互い暇でしょう?そっちは普段以上の荷物ないじゃない。私も本命の用事は終わったし」

「そうですね。よければご一緒してもいいですか?」

「お、おい!?チナ「この人がすぐ挑発に乗ってしまうので困っていたところなんです。このままでは普段と変わりませんので」

「ふぅん…?」

「ぅ…」

「それじゃあ決まりですね!どこに行きましょうか」

 隣から抗議の声が聞こえましたが、チサキさんに絶対零度の視線を浴びせられて沈黙していました。放っておきましょう。そんなことより、今からどこへ行くかです。イコイさんがおすすめを訊いてきたので、端末で地図を開きました。

 

 

 

 …さて。場所は移って、ショッピングモールのフードコートでひと休みです。ここに来るまでの間にも不良が絡んできたりしていましたが、チサキさんが突っ込んでいって蹴散らしたり、イコイさんがグレネードで吹き飛ばしたりして、速やかに鎮圧されていきました。モールの中ではさすがにそういった騒ぎも1件しか起きなくて、純粋にショッピングを楽しむことができました。

 そもそも、チサキさんに怯んで逃げていく方もいましたね。イオリがとても複雑そうでした。わかります。

 

 まあそんなわけで…心に余裕が出てくると、色々と気になることが出てきます。

「ところで…ハリカさんとイコイさんは、どうしてゲヘナまで?」

「あー…それはねぇ……チサキちゃんの用事で…」

 ハリカさんは少し言い淀んで…ちらり、とチサキさんに目配せをしました。

「…自分で説明しろって?まあそれもそうね…仕立て屋に行ってたのよ。ハリカの制服はこのキヴォトスじゃ一点ものだから、()()してもらうためにね」

「だから、今私の制服がここに入ってるんだよね」

 ここ、とハリカさんが指差すのは自身の背負うナップサック。制服を持ち運んではいるんですね。

「手に持っただけで材質がわかるのはさすがプロと思いましたね。なかなか見ていて楽しかったです。むふふ」

「…しかし、なぜそれをチサキさんが?」

「決まってるでしょ?趣味よ」

「趣味…?」

 他人の衣服を複製する趣味とは…?よくわからず首をかしげましたが、

「意外かもしんないけど、チサキはコスプレ趣味があるんだよ」

「コスプレですか?」

 

 横合い…イオリから説明が入って、思わずまだご機嫌そうなチサキさんを見ました。…意外です。とても。ストイックな仕事人とばかり思っていましたから。ハリカさんやイコイさんも同じだったようで、揃って目を丸くしています。

「何よ、そんなに驚くこと?」

「いや…なんというか、チサキちゃんにしては俗っぽいというか…」

「聖人だと思われてたの?」

「その気持ちはわからなくもないけど、こいつはマジだぞ。私の格好もできるからな」

「イオリの…?」

 …イオリの格好をしているチサキさん。あまり想像できませんが…それって、つまりイオリは見たことあるんですよね。正直ちょっと気になります。…そんな気持ちがにじみ出ていたようで、苦い顔のイオリが首を横に振りました。残念です。

「外に着ていくことはまずないけど。あんたよくそのうっすいスカートで出歩けるわよね」

「年中ショーパンのやつに言われたくない…あとあの、便利屋の3年とかも」

「カヨコさんです?」

「そう…っていうかこの際聞くけどチサキ、便利屋と仲良いのか?あいつらは指名手配中の規則違反者どもだぞ?」

 

 出ましたね、イオリのこれが。もう使命感の強いあまりに出る発作みたいなものだと私は思っていますが。…内心ため息をつく私の一方で、チサキさんは眉ひとつ動かしませんでした。

「仲って言うほどのものは無いわよ。ただ目くじら立てるほどの相手じゃないだけ」

「…こう言うのは癪だけど…あいつら、結構強くないか?」

「それはあんたらが委員長に頼りすぎ。それに、なんだかんだ10:0で便利屋が悪い案件には言うほど出くわさないし。せいぜい1年の火薬庫にさえ気を付けていればいい程度よ、まだ意志疎通ができるだけよっぽどマシ

「んぐぅ…」

 頼りすぎ…要するに、()()()()。バッサリと言い切られてしまいましたね…。私はあくまで後方支援に回っていることが多いですが、それでも耳が痛いです。

 

「意志疎通のできない存在を匂わせる言い方ですね?」

「ええ、いるのよ。悲しいことに…っ!」

「うわっ」

「ふぇっ!?」

 ふいに、爆音とともにモールが揺れました。耳を澄ませば「開発だぁ!」と音頭をとる…。

「噂をすれば影、ね…来たわよ意志疎通できない狂人の集いが」

「温泉開発部、ですか?…その名目で街じゅう所構わず爆破して回る、と噂には聞いたことがありますが…」

「まあ概ねその通りですね…おっと」

「かなり近いな…被害が広がる前に押さえるぞ!」

「ええ、今日という今日こそ殲滅してやるわ」

 それぞれ得物を構えて、フードコートを飛び出していく2人。紙コップは私が捨てとくから先行ってて、と言うハリカさんにあとは任せて、私とイコイさんもあとを追います。…やれやれ、結局こうなってしまうんですね。束の間の休息になってしまいました。…ですがまあ、有意義な時間だったと思いましょう。

 

 

 

 

 

 

 

*1
『連邦捜査部S.C.H.A.L.E.』、アイコンはシャーレロゴ

*2
『【生徒用】シャーレ部員間連絡網』

*3
先生が不在時のデスク





・ハリカ
シャーレ常駐。窓の外にハナコ(スク水)の姿を認めて数秒フリーズした人
二話連続で登場。私服はパンツルックを選びがち。ロングスカートの制服に慣れていて生足を出すのが苦手なため

・ククリ
ついにオリジナルの学校を考えるに至ってしまった…①
生真面目で言葉遣いも難解な後方支援職。ルビ大活躍
Q.君本当に1年生?⇒A.時おり言われますけど、(まぎ)れもなく1年です。言い振りは…まあ、本の虫を(こじ)らせたといいますか。

・ミオ
ついにオリジナルの学校を考えるに至ってしまった…②
明るく快活でちょっと好戦的気味な関西弁(努力目標)キャラ

・ハナコ
この度シャーレに加入。ククリにはがっつり警戒されている
なお着替えてることからわかる通り持ってきてるしシャーレ(D.U.外郭)まではちゃんと上着を着てきた。それはそれでヤバい気もする
ククリの被害経験者っぽい動きがちょっと気になった

・キリノ
この度シャーレに加入。これから色々大変そうだけど頑張ってね…

・セリナ
この度(よりちょっと前に)シャーレに加入。チナツと被るしなぁ…と思ってたけどもっと早く入れといてもよかった(イコイ・ツバキと同じタイミングで入れるか悩んだけど延期してた)
ちょうど当番の日。色々と不思議な医療担当

・サイカ・ミタケ
名前だけ登場な葦之原の生徒(オリキャラ)。二人とも生徒会所属。「連れ立つ相棒」とか「珍妙な先輩」とかと一緒にプロフィールは開けてる

・イズナ
忍術研究部はイコイ経由で葦之原と交流があり、たびたび「遠征」にも出ている。残念ながら忍者メイトは見つかっていないが
この日は当番。ちなみに名前が出てないもう一人の当番はカリン

・イコイ
自然豊かな葦之原の環境を気に入っておりよく入り浸っている模様。彼女を登場させた目的の半分がこれ
ちなみに当番の日ではないけど来てた
二話連続で登場。配達でいろいろ駆けずり回ってるけどゲヘナにはまだ馴染みがない

・先生
あんま出てない…頼もしい仲間が増えてにっこり。

・チナツ
最近出せてなかったネ…ということで後半語り手で登場していただきました
「モールの中では1件()()ない」あたりがゲヘナの悲哀ポイント

・イオリ
公式不憫枠なポンコツ強者なのでついついこう扱いがち
チサキは同級生。訂正しておくと、仲がいいというより「一方的に気に入られてる」が近い

・チサキ
抑止力が若干あるけどヒナにはまだ遠く及ばない
普段から冷徹な声音(※オコッテナイヨー)だけど嫌いな相手には本当に口が悪い
隠し要素「着道楽」が解禁されました。プロフィールにはもう出てたけど
イオリの"強いけど残念なやつ"なところを面白がってるふしがある模様。
ちなみに仕立て屋は某マトリアとは関係ないです念の為。




久々の閑話にちょっと手こずってました
本作におけるシャーレの設定をちまちま詰めております…他のブルアカ二次文字書き様方の影響をかなり受けている気がする
「【生徒用】シャーレ部員間連絡網」はまさしくそれで、ピンと来る方もいらっしゃるやも……あそこまで湿度高くはならない予定ですが
余談ながら後半タイトルは「かし(が)ましい」のつもり。声よりもやかましい物々(銃・爆弾・その他)があるのでなんとなく"姦しい"は避けた
そして3章前にイベスト挟もうと思ってでもかなり悩んでます……ゲヘ夏、さてはハリカ入れるとストーリーの根っこの部分から崩れるな………?


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