鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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原神にかまけてたら次話投稿ボタン青に戻ってた やっべ☆というわけで更新です
更新決めてからもサブタイにかなり悩んだ 外の話が先です念の為…



対照的な内と外

 

 

「やっぱりゲヘナに閑静なんてなかったんだ…」

「…ま、そういうことだね…」

「ま、前まではこうじゃなかったんですよ!?フユコも認めないでください!?」

キャンキャン騒ぐな耳が痛い

「辛辣!!私上司ですよ!?」

 はぁ…。まったく、相も変わらずこの委員会は前途多難が過ぎる。(イヤ)でも重たいため息が出る。

 SNSの状況を即座に確かめていたチナツ曰く、本当にネット上では「約4時間後、アラバ海岸で大規模な全面戦争が起きる」ともっぱらの話題らしい。面白がりやがって…ひとが暮らしてる街をなんだと思ってんだ。

 

「っ…は、はい!委員長?………くっ、やはりダメでしたか…!」

 その一方で、行政官に委員長から電話がかかってきて……さすがに4時間待機を怪しまれたらしい。当たり前だ……と呆れていたらさらに別の電話。何?…万魔殿(パンデモニウム・ソサエティ)から、書類の不備で帰還命令?狙い澄ましたようなタイミングだな4時間後に騒ぐ連中とグルか??

 

「アコ行政官、ご報告です!海辺で正体不明のスケバンお及びヘルメット団の小規模集団が小競り合いを始めた模様です!」

「なっ…!?」

 あー…そうか。考えてみれば、チンピラが律儀に何時間も待てるわけがなかった。わざわざ開戦時刻が決めてあれば、卑怯と言われようと先手必勝をとるやつは出てくるか…。

「こ…これは……」

「アコちゃん、どうする!?」

「悪いことは重なるものですね…行政官、どうしましょうか…?」

 (いじ)めてやるな二人とも。行政官は額に汗をにじませてフリーズしている…と思えば目を閉じて首を振って、深呼吸をひとつ。

「…分かりました。ええ、分かりましたとも」

「ア、アコ…?大丈夫…?」

「こうなったらもう、槍でも雨でもかかってきなさい!この私が委員長のために、これくらいの試練すら乗り越えられないとお思いですか!!

 …そっち方面に爆発しましたか。

 

 

 

 …さて。先生が委員長を落ち着かせに行って、行政官は万魔殿(風紀委員会嫌がらせクラブ)を黙らせるため学園まで戻って…残された私たちは。

「逃げても無駄だ!覚悟しろぉ!!」

「げえっ!?風紀委員だ!!」

 まあ大方お察しの通り、砂浜でドンパチおっぱじめた奴らを黙らせにやって来た。現状を整理すれば当然の役割分担。

 治安組織たる風紀委員の務めを果たすため…あと貴重なオフを満喫する(予定の)委員長のためにも、せいぜい下世話な騒音しか出せないその口には閉じていてもらわねば。

 

「ものすごい乱戦だ…」

「いつもこんなもんだよ」

 まあ、私自身が最前線まで出ることはないけれど。昔から銃の扱いはからっきし、精密に照準を合わせるのは大の苦手で、射撃訓練じゃワースト一桁の常連。それでいてあまつさえ図体だけは立派なものだから、前線にいれば"()()()()()()()()()()()()()"…要するにその辺に立ってる看板みたいなもの。なんの役にも立ちやしない。…それと引き換えに、ということなのか運転は大の得意だから、こうして後方支援で走り回ってるわけ。

 助手席に座ってるハリカは、借りてきた猫みたい…窓の外の乱戦に呆然としてる感じ。いつも先生の傍に控える都合上、こんな乱戦のど真ん中に飛び込む経験は少ないんだろう。

 さっきもなんか大きな覚悟を決めたような眼差しを戦場に向けてたし。それで危なっかしく感じたから拾ったのだ。一応よそ(シャーレ)からうち(風紀委員会)に来てる客ではあるので、何かあってからじゃ遅いと思って。

 

「…っ」

 …まあ一応、開いた窓からときどき戦闘支援をしている様子だけど。借りてきた猫による遠隔ネコパンチが偶発的に飛んでいく…なんて。具体的に何をどうやってるかは知らないし、よくわからない。視界の端に小さい緑の光がちらついて、手すきに横目で確認すれば、光っているのはブレスレットであるらしかった。

 思えばシャーレに入る前、風紀委員会からシャーレまで送ったときにも大技とかなんとか言って超常現象を起こしていた*1けど…まあ、聞くところによれば不思議な力を持つ生徒というのは探せばいるものらしい。実際、百鬼夜行のイズナという1年生がシャーレの同僚になって、一気にその実感が湧いた。

 ハリカのは発動までの間にアイテムを噛んでるあたりイズナのとも違うんだろうけど、まあそこはそれ。珍しいけど、珍しいだけ。イズナとは違い表立って披露したがらないものを、わざわざ詰問するのは面倒だし無駄。不思議だな~程度に留めて見守ってるくらいがきっとちょうどいい。

「ん…」

 短い通知音に携帯の画面を見れば…チサキから。今回のこの騒動は、あまりSNSを見ていないチサキの耳にもさすがに入ったらしい。…正直、来てくれれば助かるのは確かだけども。

 

[チサキ]

 

チサキ:聞いたわよ、アラバ海岸の騒ぎ

チサキ:やっぱり私も同行したほうがよか

    ったかしら?         

 

︎             いい、だいじょぶ >

︎             なんとかなってる >

 

チサキ:大丈夫そうに見えないけれど

 

︎                運転中片手間 >

︎       来てくれたら嬉しいけど、チサキ >

︎       には自治区の方任せちゃってるか

︎       ら              

 

チサキ:今のところ小物ばっかりよ

 

︎       うーんゼロじゃないのがゲヘナク >

︎       オリティ           

︎        でもよかった、引き続き任せる >

︎       それに、これは風紀委員会の夏期 >

︎       訓練だから          

︎           手助けしたきゃ入部しろ >

 

チサキ:それは御免ね

チサキ:わかった、じゃあ倒れない程度に

    ね              

 

︎                      >

 

 

 

「ちょ!?フユコさん!安全運転…!」

「ごめんごめん」

 モモトークには簡潔に返事をしておいて、助手席からの慌てた声にハンドルを握り直した。さてと、お仕事お仕事。

 

 

 

 

 

【フユコ⇒ 】

 

 

「どうぞ、入って。…あれ、先生?」

 ホテル内のとある一室、その前。ノックへの返事を聞いてからドアを開けると…部屋の中で、ヒナが姿見と向かい合うように立っていた。…紺色の水着姿で。

「ヒナ…いつの間に水着に…!?」

「そ、そんな大袈裟な…それに、私のほうがビックリした……その、訓練とはいえ一応海に来たんだし、着替えておこうかなって」

 照れくさそうに目を泳がせるヒナ…どうやら、なんだかんだ海を楽しみにしてはいたらしい。それをほほえましく思う一方で、くるりと正面に向き直ったヒナを見てさらに驚きもした。…胸元に、「ひな」と大書された白い長方形のゼッケンがあって。

 

「そういえば、着替えてたら何故かアコが『せっかくの海なので!』って新しい水着をくれて。だからそっちを着るって手もあったけれど…結局突き返したの」

「そうなんだ?それはまたどうして?」

「どうしてって…この水着が元々あったし。まだ着られるのに、わざわざ新しいものを使う必要はない。持ってるものを再活用するほうが効率的」

「…その、ゼッケンがひらがななのって…」

「小学生の頃のだから、だけど…何か問題でもある?別に、まだ着られるし…何か、変?」

「…もしかして、ヒナってまだ小学生の歳だったり…?」

「な、何言ってるの!?もう、変なこと言うならこの話は終わり!」

 …さすがに違ったらしい。これでも最上級生のヒナにはさすがに失礼だったので、ゴメンネと謝罪はしておいた。…ホシノやネルよりもさらに小柄なもので、つい。

 

「それより、もしかして外で何か起きてる?さっきから少し騒がしい気がするんだけれど…」

「大丈夫。ちょっと訓練の準備でバタバタしてるみたいだけど」

「…そう、ならいいか…」

 …やっぱり、さすがにこの騒々しさはヒナの耳にも届いてたね。僕としては内心緊張が走ったけれど、いつもとは環境が違うものね…と納得してくれたようでホッとした。

 

「ところで、ヒナは今何をしてたの?」

「えっと、特に何も…スケジュール上、『午後の歩行訓練まで待機』ってなってたから。あと4時間弱はあるけど、体力を温存しておかなきゃいけないみたい。…たださすがに長すぎる気がして、さっきアコに連絡してみたのだけれど」

 うん、さすがに長いよね。もはや不審に思わない方がおかしい。僕も最初は聞き間違いかな?と思った。僕は遠い目になりかけたけど、ヒナはいつも通りの様子で…。

「でも、アコが間違ってないと言うなら別に構わない。今回の訓練は、アコに全部任せることにしたのだし。任せると言った以上は、何かよほどのことがない限りは見守ることにする。今まではけっこう、その…私が、自分一人で全部決めてきちゃったから」

「信頼してるんだね」

「うん、そうね。普段から風紀委員会の業務全般を管理してくれてるから、ただでさえ大変だと思うのだけれど…そのアコがやると言ってくれたんだから、任せたい。…口に出そうとすると、なんだか変な感じがするけれど……そうね。信頼、してるから」

 ヒナは普段通りのクールな口調で話してるけど、心なしか口角が上がってる。…この言葉、そのままアコに伝えておくべきかな…いや、やっぱりヒナ本人の口から伝えられたほうが効きそうだ。…どっちみち、今は忙しそうだから無理だけれど。

 

「ただ、ここしばらく忙しかったし、急に『待機』って言われるとその…手持ち無沙汰というか、なんだか落ち着かない。何もしないでじっとしてるなんてこと、今まであんまりなかったし…」

「そうだよね。ヒナの活躍は日頃からよく耳にするよ」

「…だから、えっと…もし、先生がよければ、その……話し相手に、なってくれる?」

「いいよ、もちろん」

「そう?よかった…もう今の時点で、これから4時間もじっとしていられる気がしなくて…あぁ、もちろん先生だって色々忙しいとは思うし、ただでさえこうして風紀委員の合宿に付き合ってもらっているのに、これ以上時間を拘束してしまうのは申し訳ないのだけれど…」

「そんなことないさ。喜んで」

「…ありがとう」

 …なんだか、こうもじもじしてるヒナを見るのは新鮮だな。そもそもオフのヒナを見ること自体初めてだけど…なんて考えていたら、ポケットの中でスマホ*2が震える感覚がする。

 取り出して見れば…外の現場から着信が入ってきていた。ヒナにちょっとごめんね、と断りを入れてから出てみれば……いきなり銃声爆発音に出迎えられた。

 

『先生、今よろしいでしょうか!』

『海辺の奴らが思ったより厄介で、っ…先生、今からこっちに来られる!?』

『どうか委員長にはご内密にしつつ、指揮をお願いします!』

 次に電話の向こうから聞こえてきたのは、やや切羽詰まった様子のチナツとイオリの声。チナツが前線に出ていくことは考えづらいから、イオリが後方に戻ってきているんだろう……と思考を巡らせながら、手持ちぶさたな様子のヒナをちらりと見やる。

 …い、言っちゃったんだけどなぁ~~~さっき、"ヒナの話し相手になる"って……いやでも、向こうは本当にちょっとヤバそうな感じだったし……………

 

「先生?今の電話は誰から…?」

「……ごめんヒナ、ちょっとお手洗い行ってくるね」

「?う、うん…いってらっしゃい…?」

 …ごめんね、本当にごめん。キョトンとしているヒナ*3に内心全霊で謝りつつ、僕は外の喧騒を鎮めるため、部屋をあとにしたのだった。

 

 

 

 

 

*1
2話参照

*2
主に音声通話用

*3
激レア





・ハリカ
出番少なめ ガチ戦場に借りてきた猫状態
魔法の座標指定が必須である関係上、敵味方入り交じる乱戦になってると迂闊に手が出せない

・フユコ
せっかくなので初めてこの視点から書いてみた
ゆるいようでたまに辛辣。たぶんチサキの影響
イズナとかいるから意外と大丈夫じゃない?って話は以前ちょっと出たことあるけど、フユコがちょうどこの状態
ただのネームドモブにしようと思っていたのはもはや遠い昔の話

・チサキ
友情出演(物理)
今のところ二大テロリストが動いてないのが救いね…

・ヒナ
まだ何も知らない空崎ヒナさん(17)
驚異の4時間待ちに手持ち無沙汰中
ゼッケン「空崎」じゃないんだな…

・アコ
聞いたら泣いて喜ぶだろうけど今それどころじゃない

・万魔殿
順調に株が下がっていくゲヘナ生徒会(イブキチャン大好きクラブ)

・先生
子供たちのために駆けずり回る大人
ウェミダー!!は完全に鳴りを潜めた
シッテムの箱に着信かと思ったけどスピーカーモードだとヒナに即バレするし、かといって耳に当てる印象もないので急遽スマホが生えました
普段はなかなかお目にかかれないオフのヒナ…に後ろ髪を引かれつつ前線の指揮へ。ごめんねヒナ…


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