夏バテ明けてもなんか納得いく地の文が作れなくてうんうん唸ってたら前回から3ヶ月半も経っててすまない…
「はぁ…やっと戻ってこれた…屋内涼しい…」
「フユコはずっと車内だったろ…」
…なんとか海岸の騒ぎを収拾、もとい不届き者たちの鎮圧を終えて、オペレーションルームに戻ってきましたが。疲れた様子でどかっとソファに腰を落とすフユコさん、そしてそこにツッコミを入れるイオリの声にも、普段ほどの覇気はありません。
なにせ普段はあまりない三つ巴の攻防戦だったもので、一時は押され気味になりましたが、先生の指揮が入ってからは一気呵成に押し返すことができました。やはり、
…しかし今は、退けたと素直に喜べない事情がありまして。
「なんとか片付いたけど…スケバンのほうもヘルメット団のほうも、ただの
「先遣隊???」
「つまり、先程のはただの前哨戦のようです。4時間後、と言っていた本番では、あれとは比べ物にならない人数が集まるようで…」
「範囲攻撃が必要だ…」
フユコさんと一緒に戻ってきたハリカさんが遠い目になりました。後ろの先生も苦虫を噛んだような顔。まあ、そうなりますよね…私ももう頭が痛いです……。
「本番で少しでも戦況を有利にするために、トラップを仕掛けようとしてたんだと思う」
「お互い同じこと考えていた結果鉢合わせして、小競り合いに発展したようですね」
「あれで全然小競り合いなんだ…」
「…なんで私を見つめるのかなハリカ、私はただの運転手だよ」
「っていうかアコちゃん!全然話が違うじゃん!閑静な場所だって聞いてたのに!」
「あ、地元民でもおかしいとは思うんだ」
「思うよ!?」
「今いない行政官に文句を言っても仕方がありません。…ここも一応ゲヘナ自治区の中ですし、私たちが対処せざるを得ないでしょう」
…はぁ。まったく、ため息が出るのを抑えられません。「多忙なヒナ委員長にお休みを」という目的で動き出したのに…本当、どうしてこんなことに……。
「しっかし、かなり規模が大きくなりそうだけど…どうする?委員長に報告する?」
「んん…それだと、せっかくのヒナのための計画が…」
「それはまあ、そうだけどさ…」
「話に出た通り、今回はあれで全然小競り合いなわけだからさすがにヤバイ。それに行政官…肝心の発案者も、タヌキ鍋相手にだいぶ手間取ってるみたいだし」
委員長のために計画を続けるか、風紀委員会として動くために中止にするか。予想される全面戦争とやらを委員長に隠しきるのは難しいでしょうが、しかし委員長を休ませるべきなのも事実…どちらにするべきなのでしょう。完全に板挟みの状況です………ところでフユコさん、「タヌキ鍋」ってもしかしなくても万魔殿のことでしょうか?
「せっかくイオリが水着まで着てくれたのに?」
「今それは関係ないだろ!?」
「先生…」
「…仕方がありません。委員長に連絡を」
『待ってくださいっ!!』
心苦しく思いながらも、委員長へ連絡を入れ―――ようとしたところで、指揮系統の通信に叫び声が割り込んできました。…この声は。
「あ、アコちゃん!?」
「アコ行政官…?」
『よりによって最悪のタイミングで、
今日はずっと熱いですねこの人……委員長のためを思い、誰よりも張り切っているので当然ですが。背後の雑音から察するに、アコ行政官はこちらへ戻る道中であるようです。そんな状況でもこの調子とは…。
「行政官…熱くなるのはいいんですが」
『まあ聞いてください。海岸に集まっているスケバンとヘルメット団については、情報部に調査をしてもらいました。既にまとめてありますので、関連資料をデータで送ります』
「行政官、いつも以上に仕事が速いですね…」
オペレーションルームのPCに送られてきた資料をさっそく開きつつ、アコ行政官の口頭説明に耳を傾けます。
…まず、スケバンの方は自称"スケバン集団『破茶滅茶』"を名乗るグループ。ひと月ほど前に他所で勢力争いに負け、最近になってこの辺りに流れ着いたそうです。そして一方の『びしょびしょヘルメット団』は、この近くのスラムを拠点としている問題児集団とのこと。この辺りは、支配人が話していたことの補足になりますね。
『既にどちらも勢力の規模、装備のレベルや数は把握済みです。その上で、結論から申し上げましょう――」
…誰からともなく、ごくり…と唾を飲む音が聞こえた気がしました。…まあ、私はあの前向きな態度から、なんとなく察しがついてしまいましたが……
「――作戦は、続行です。委員長には報告せず、私たちだけで解決します!』
…はい。そうなりますよね…。委員長を第一に掲げるアコ行政官のことですから。
「…それ、本当に大丈夫か…?」
「あれじゃない?"理論上は可能"ってやつ。数学的な」
『話は最後まで聞いてください!…はぁ、これだからフユコは苦手なんですよ…』
聞こえてるぞ、と眉ひとつ動かさず呟くフユコさんの言いたいこともわかります。…私たちだけで問題を解決し、委員長の休暇を無事に遂行する……おそらく、
『スケジュール通りであれば、ヒナ委員長が外に出るのは4時間後の歩行訓練から、そして全面戦争が予定されているのもまた4時間後……そこに焦点を合わせて準備するのではなく、その前にスケバン集団『破茶滅茶』ならびに『びしょびしょヘルメット団』を撃破するのです!』
「こっちから先手を打つってことね…対症療法じゃなく原因療法と」
「まあ、そのほうがまだ勝率は高いと思うけど…私たちだけで本当に大丈夫?」
『大丈夫?ではありません。
「だから大げさだって…まあ頑張ってみるけどさ…」
『それでは、イオリはスケバンのほうをお願いしますね。フユコとチナツはヘルメット団のほうを。それぞれ、ホテルで待機中の風紀委員を二組に分けて対応してください!』
ぽん、と肩に手が置かれて、振り向けば気だるげなフユコさんと目が合いました。…この人が気だるげなのはいつものことですが、いつもより3割増しのように思えます。…おそらく今の私も同じような目をしている、とも。
【チナツ⇒ 】
「あ、おかえり先生。ずいぶん慌てた様子で出ていったけど、体調は大丈夫?」
「…ウン、大丈夫ダヨ」
そういえばそんな設定で出てたね……おかげでトイレに延々こもっていたことになってしまった。別に体調は至って万全*1なんだけど、本当のところは言えない。言ったら今回のヒナの休暇は、ヒナ自身の意思で強制終了にされちゃうだろうから……ワーカホリック、恐るべし*2。
そういえば、久々にヒナに会いたいと言っていたハリカだけど…今回は前線についていくことに決めたらしい。いわく「今の状況で会いに行くのは違うし、ヒナさんを引き留めるなら先生の方がよっぽど向いてる」とのこと。…まあ、確かに。ハリカはごまかすの苦手だもんね…。
「そう?…それにしても、また外が騒がしくなってきたけど……戦術訓練、そんなにたくさん銃火器を使ってるの?」
「あぁ…ずいぶんやる気満々みたいでね」
「そう、それは良いことね。おかげでこうやって、久しぶりに休めてはいるけれど…それでもやっぱり、こうして窓の外を眺めるだけだなんて…」
退屈、というよりかは、じっとしていることに不満を抱いているような…アコや委員会のみんなから聞いてたけど、本当に根っからの仕事人間なんだなぁ…と苦笑してしまう。それでもこんな姿を見るのは本当に新鮮で……この姿を見せてくれてるってことは、ちゃんとヒナ
「…まあ、今は先生がいるからいいのだけど……久しぶりに海に来たのに、なんだかずっと部屋にいるのも変な感じ」
「ヒナは、あんまり海に来たことないの?」
「そうね。別に避けていたわけではないのだけれど、普段の委員会の仕事が忙しくて…こういうリゾート地みたいなところにはずっと縁がなかった。訓練とか現場視察とかできたことはあったけど、あくまで仕事の一環で…こうやって、ゆっくり海を眺めるのも……思えば、初めてのことかもしれない」
ぼんやりと窓の外の海を眺めながら、ぽつりぽつりとつぶやくヒナ。その横顔は、ちょっとワクワクしているようにも見えた。…常日頃のワーカホリックがどう作用するか内心不安はあったけど、ヒナも今の(強制)休暇にはけっこう乗り気なのかな。
「ねえ、先生」
「なんだい?」
「先生は…海、好き?」
「そうだね、海は好きだよ」
「そう…」
いいよね海は、雄大で…僕は漁師とかみたいな"海の男"ではない。だから僕にとって海はレジャー、つまりは息抜きで訪れる場所。文明に囲まれて暮らす日常とはまるで正反対の、この広々と開けた圧倒的な大自然に、心が洗われていくのを感じるんだよね…。あと、人の
我ながらいい笑顔を浮かべているだろう僕に、問いかけてきたヒナは…ゆったりと、やや緊張した面持ちで歩み寄ってきた。
「…ねえ、先生。提案があるんだけど…いい?」
「うん、なんだい?」
「アコには悪いけど、内緒で…ちょっとだけ抜け出して、二人で海に行かない?」
「…海に…」
…遠慮がちに、だけど目をキラキラさせているヒナ*3の前で、僕は推定いい笑顔のまま固まることになった。…僕としては、是非ともその瞳に免じて要望を叶えてあげたいところだけれど……困った。今ヒナをホテルから出すのは絶対にマズイ。この部屋は今、多忙なヒナのセーフティゾーンになっているわけで…ここを出たら、ヒナの休暇即終了のリスクが……………
…いや…待てよ、いけるか?みんなは全面戦争に向けて待機中のスケバンやヘルメット団を撃破するために出払ってるから、海は今完全にフリーのはず。…戦闘音が遠くから聞こえるかもだけど、名目上は風紀委員会の訓練中だからそれも大丈夫なはず。
それに、今回の目的はヒナがゆっくりすることだ。この監禁は目的じゃなくて、あくまでも手段。…なにより、このいかにもワクワクしていますという表情を前にして――
「そう、だね…ちょっとだけ待っててくれる?」
――断れるわけがない。これはもはや不可抗力……まあ、きっと大丈夫だと思う。頑張ってくれてるみんなにはちょっと悪い気がするけれど、今なら海は空いてるから……僕はスマホを取り出した。ひとまず報告だけはしておくために。
「わぁ…ふふ、この砂浜の感触、不思議な感じ…」
穏やかな青い海、貸し切り状態の白い砂浜。さっきまでとの違いは、風紀委員のみんなもいなくて、代わりにヒナがいること。ヒナは波打ち際の、海水が混ざって柔らかい砂の感触が面白いようで、「あ、足跡が…」とつぶやいて笑ってる。…ヒナが、笑ってる……もう既に、ここに来てよかった…!!
「波が押し寄せて、引いて…ふふ、当たり前のことなのに、なんだか不思議な気分…」
「ソウダネ…!」
「…なんだか、変な感じ。海に来るだけでも本当に久しぶりなのに、それがまさかこうして、先生と一緒だなんて…」
意を決してホテルを出てみれば、思ったほど派手な戦闘音は聞こえてこなかった。そのおかげか、ヒナは部屋の中にいたときと同様にリラックスした状態でいてくれているみたいだ。…杞憂で済んでよかった上に、普段は絶対に見られないこの無邪気なヒナ。今なら是非ともこのホテルに☆5をつけたい……!
「…その、先生…ん?」
「あ、ごめん…ちょっと待ってて」
…そう感動していたところで、またしてもポケットが震えた。
出てみればどうやら全体通話中のアコ……なんでも、当初の想定より強かったヘルメット団の攻勢に防衛戦が突破されたとのこと。それにより戦力の再配分をすることに加えて、砂浜に出ている僕らにはホテルへ戻るように、との通達だった。…ま、まだ出て5分も経ってないんだけど…!?
…いやでも、と思いながらそっと振り返る。水着に身を包んで、浮き輪を小脇に抱えたヒナ。いつも忙殺されてるヒナがこんなにもリラックスモード。今日のこれはそのための緊急特務で、…このヒナに、ヘルメット団の重戦車を見せるわけには………
「どうかしたの?先生…」
「ホ、ホテルから急に連絡があって。一旦戻ろっか!」
「えっ!?ま、待って先生、まだ私の話は終わってな――」
戦場がかくれんぼ(ヒナから)
・ハリカ
ずっとフユコと同乗してた。あまり目立った活躍出せてなくてごめんな…
ゲンナリ
・チナツ
考えるほど謎の1年生な(推定)医療部
ゲンナリ
・フユコ
車輛班でちょっと特殊な立ち位置の兵站部
ゲンナリ
・イオリ
若干不憫枠気味な斬り込み隊長
ゲンナリ
・アコ
委員長ファースト命のNo.2
たぶん今ゲヘナで誰よりも熱い。できるかなぁ…ちゃうねん強い気持ちで行くねん
・ヒナ
まだ何も知らない空崎ヒナさん(17)
先生に何か言いたい。でもなんだか慌ただしい…
・先生
板挟み中の大人。驚異的な切り替えの早さだ……
なお筆者自身は海に対しこれといって感情はない(沿岸部が工業地帯すぎて縁がなかった)ので、ウェミダー!してた動機の部分がおかしいかもしれませんがご了承ください