鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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お待たせしております 四半年以上も空けてしまった 並行をしすぎですよ(呆れ)



闖入テロリスト

 

「…はぁ…」

 本日二度目の助手席から下りて、ため息をひとつ。視線の先では倒れ伏した不良が大勢、捕縛され次第風紀委員会の車両へポイポイ投げ込まれている。…あまりにも不良を荷物扱いしているもので、博愛の精神に定評のある硝子(ねえ)が見たら絶句して腰抜かすかもな、なんて益体もない感想を抱いた。

 …この夏の昼下がりでも薄暗いスラムが阿鼻叫喚になってから、おおよそ2時間ほど。私たちは主に数的不利の状況をなんとかひっくり返して、ヘルメット団の鎮圧を達成していた。

 

「これで、ようやく鎮圧完了、ですね…はぁ」

「みんなお疲れ…まあここからが私ら裏方の仕事なんだけどね。この物量じゃ私も動かなきゃかぁ~めんど…」

 後処理でしばらくゴタゴタしてるみたいだし、ついでに散らばる弾丸を拾っておくとしよう…。

 

 

 

 …で。オペレーションルームに帰還したら、先客――イオリちゃんと先生がいた。どちらも一人用のソファにぐったりと背中を預けて天井を仰いでいる。

「…あ、おかえりハリカ、チナツ…」

 …反応があったので無事ではあるらしい。先生はずっとホテル(周辺)に待機してたけど、イオリちゃん一足早く戻ってきてたか。…まあ、そりゃなぁ…。

 

『皆さん、生きてますか…?』

「なんとか…」

 ザザ、という小さなノイズが聞こえたと思うと、通信に乗ったのはまだここへ戻ってこられていないアコさんの声。アコさんもずいぶんお疲れのご様子なのが、声だけで伝わってくる…言わずもがな。直接視認できない場所から2部隊(+ヒナさんを対応する先生)の指揮とってたもんね…。

 

『あら…フユコは?』

「フユコさんは、事後処理のため遅れるそうです。車輌班はヘルメット団の方へ総動員している状況なので。オートマタやヘリまで出されてしまいましたから…ここまでの勢いとは、予想外でしたね……」

 そうなのだ。チナツちゃんがげんなりした様子で回顧する通り、ヘルメット団側の戦況はすさまじかった。苦労して重戦車を何台かお釈迦にしたかと思えば、オートマタ…はみんなに任せて*1、ヘリを乱気流で(極力安全に)墜とすほうに専念するはめになった。

 当たり前のようにぽんぽん出てくる別アプローチ…これ、実際に全面戦争が起きてたらヘルメット団の圧勝だったんじゃないかと思う。名前はダサいのに。

 …予算が潤沢すぎて何かウラを感じちゃうけど、まあ今言っても仕方がないので置いとこう。ヒナさんどころじゃなくなってしまう…あとで覚えてたら調査、ということで。

 

「…けどまあ、これで」

『はい。スケバン集団『破茶滅茶』ならびに『びしょびしょヘルメット団』、どちらも完全な退却を確認しました。インターネット上でも、全面戦争は中断という話が広まっているようです。無事に作戦終了です。お疲れ様でした』

「ようやく終わったぁ~!」

「はぁ…本当に、せっかくビーチまで来たのに大変でしたね…」

 やや柔らかな口調になったアコさんによる終結宣言――それを受けて、室内の空気が一気に緩んだようだった。

 イオリちゃんは一度起こした上体をふたたびソファの背もたれに投げ出して、チナツちゃんはため息をひとつ…この子いっぱいため息ついてるけど、今回は満を持して(?)安堵の。先生も伸びをして深く息をついている。やれやれ…一時はどうなることかと思ったけど、意外となんとかなるもんだな……。

 

 

 

 

 

「風紀委員会の皆様、ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

 支配人ロボから熱烈な感謝を告げられた*2あと、歩行訓練まで1時間ほどの休息をとることになった。…まあ、アコさんは相変わらず万魔殿の対応に忙しそうだったけど。なんか悪評ばっかり聞いてるから、変に権力があるだけの問題児集団としか思えなくなってきたな……。

 それで、チナツちゃんたちと話し込んでる先生はさておき、一足先にヒナさんのところへ行――

「っ!?!?」

 ……こうとしたところで不意に、爆発音が窓を震わせた。

 

 

「ねえ、どうして誰もいないわけ!?ここでお祭りが始まるって言ってたじゃん!」

「お祭りと言いますか、()()()()ですけどね。まあ似たようなものですけど☆」

「どっちでもいいわよ!とにかくこの状況、どういうこと!?」

 …窓の外の砂浜。砂煙が上がるその中で、何事か騒いでいる人影が4つ……どうしよう見覚えしかない。具体的にはあの夜、石畳の街の中で………

「っあ、ハリカ!」

 呆然としているところに声をかけてきたのは、廊下を駆けてきたフユコさん*3。どうやらヘルメット団アジトの事後処理から戻ってきたばかりらしく、かなり息を切らしてる。

 

「はぁ、はぁ…美食研究会、来やがった…厄日すぎじゃない今日、っ…!」

「う、うん…大丈夫?」

「はあっ、ふぅ…大丈夫。SNS見てて、美食研究会が嗅ぎ付けてるのは見たけど…さては、中止になったっての見てないなあいつら…」

 意外にあっさりと息を整えたフユコさん*4は、忌々(いまいま)しげに窓の外を睨み付ける……私としてはあっ()()なんだ、完全にやめるつもりはないんだ…ってとこが引っ掛かったけど、閑話休題(言ってる場合じゃないね)

 フユコさんの向こう、廊下をイオリちゃん*5が、通信機に怒鳴りながら走っていくのが見えた。アァーこれはもう流れが読めた。また相対することになるのか…彼女たちと……。

 

 

 

 

 

「海辺やお祭りなどで食べる焼きトウモロコシは、なぜあんなにも美味しいのでしょうか…その理由、気になりませんか?同じトウモロコシのはずなのに、海辺だというだけで、お祭りだというだけで、あんなにも味が違うなんて…ただ考えるだけでは仕方がありません。それを解明する方法はただ1つ。そう、試してみればいいのです」

 他よりやや遅れて砂浜へ出ると、風紀委員会と対峙する美食研究会の姿があって…銀髪に黒い帽子の生徒が長広舌をふるっているところだった。フユコさんいわく彼女が会長の黒舘(くろだて)ハルナ。金髪黒ずくめが鰐淵(わにぶち)アカリ、水着姿で両手にトウモロコシ*6を持ってるのが獅子(しし)(どう)イズミ。赤髪ツインテの子が一番新入りで(あか)()ジュンコというらしい。フルネームは今初めて知った。

 …風紀委員会の面々はポカンとしているようだけど、話を聞く限り今回は『()()()()()』の名前通りの活動を真面目にやってるように見える。背後にはトウモロコシが描かれた麻袋が積み上がってるし、コンロとガスボンベがあるのも見える。そっちも一人だけ水着なんかいというのはさておき。

 

「つまり、実際に作ってみましょうと。ちょうどここで、私たち以外のサンプルも確保できそうでしたし」

「そういうことです☆今日ここで全面戦争があるとインターネットで話題でしたし、海でお祭り騒ぎなんて、ちょうどいいなと思いまして!」

「けっこう規模の大きい抗争らしいし、見物人もたくさん来るって言ってたし!ここで焼きトウモロコシなんて売ったら大繁盛間違いなし、ってね!」

 まあもっとも、私がポカンとしないとは言ってないのだけど。…SNSの様子を見たときも思ったけど、抗争が野外イベントと同列の扱い。これがキヴォトス基準ですかそうですか…。

 

「そう、思っていたのですが…どうしてこんなにも閑散としているのでしょうか?」

「いや、お前たちの事情とか知ったこっちゃないし…お祭り騒ぎは中止になったから!帰った帰った!」

 ともかく、話題は美食研究会の活動から現在軸に戻って。ジト目のイオリちゃんがしっしっと手を振って見せたのに対し、相手…ハルナさんは悠然と微笑むばかり。

「あらあら、つれないですね☆」

「私たちは美食研究会。美食の追求において如何なる障害があろうとも、背を向けるなんてことはいたしません」

「ハルナも言っている通り、まあそういうことです☆…それに見たところ、どうやら今は風紀委員長がいらっしゃらないようですし…?」

 目を細めるアカリさんを前に、イオリちゃんはギクッ!と肩を震わせ…それ教えたようなものなのでは?イオリちゃんがチョロすぎて心配にな…ってる場合じゃないんだわ。ヤバ、と呟くフユコさんの声が聞こえるが早いか、美食研究会一同が銃を取り出して*7――

 

「ふふ…せっかくですし。私たちの美食の執念、あらためてお見せいたしましょうか!」

「ああもう!ようやく問題が片付いたと思ったら…!風紀委員会行くぞ!!」

 …こうして、「()()()()()()()」とかいうなんとも締まらない理由で、新たな戦端が開かれることになった。

 

 

 

 

 

【✳⇒ 】

 

「ちょっ、普通に戦車出てくんの!?」

「どこから引っ張り出してきたんでしょうか…」

『あの大荷物運んでたんじゃない?』

 通信の向こうから聞こえてくるフユコさんの声。前線には出ないので、微力ながら先生のサポートに徹すると言っていました。その先生の指揮も聞こえてきて、日頃の訓練の賜物以上のものへと風紀委員会の動きが整えられていきます。

 加えて、先ほどまでフユコさんによって混戦から遠ざけられていたハリカさんが、今は隣にいます。お互い後方支援向きなので戦場を俯瞰的に見て、私は回復支援を、ハリカさんは――

「うわぁっ!?」

「あらら~?」

 …狙撃と呼んで差し支えない遠距離射撃と、たまに魔法による支援を*8。おそらく今しがた、アカリさんの榴弾が跳ね返って戦車が1台スクラップになったのがそれだと思われます。ですが…

 

「ハリカさん、大丈夫ですか?確か、使いすぎると倒れるのでは…」

「大丈夫だよ、まだ全然。これくらいは軽いから」

 思い起こされたのは、ハリカさんに初めて会ったときのこと。…倒れて気を失うハリカさんを、抱き止めたときのこと。

 同じシャーレ所属になってからふと尋ねてみたところ、『使える量の制限がある』とのことでした。回数ではなく量と言うあたり、おそらく液体燃料のように魔法を行使するたび減っていくリソースがあると推測されますが…

 …まあ、確かにバイタルは正常なようですし、本当に大丈夫なのでしょう。…大丈夫だと思います。残念ながらひと目見ただけではわからない例*9が身近にいるので、絶対的な保証ができるかは……やはり、言動が怪しくなったら止めましょうか。

 

 それはそうと――先生の指揮を受けているおかげで、唐突に現れた戦車群に対しても少ない消耗で対処できています。淀みなく的確で、それによって私の回復支援の出番も普段に比べて少なく済んでいます。…先生の指揮能力は、これより少ない人数で私たち(風紀委員会)の部隊複数を壊滅に追い込んだこともありますから、もはや不思議とは思いませんが…。

『お…後続の戦車はもうないっぽい。こっからラストスパートだね』

『みんな、落ち着いて確実にいこう』

「了解っ!」

 どうやらもう大詰めのようですね。ただ、相手はゲヘナ屈指の問題児集団。先生のおっしゃる通り、気を引き締めていくとしましょう。

 

 

 

 

 

「ふふ…やはり、先生がいらっしゃる以上は厳しいですわね…では、一時撤退ということで!」

 照りつける太陽の下に、スクラップと化した戦車群と負傷兵、砂まみれの焼きトウモロコシ(?)…ただでさえ穏やかでなかった砂浜が輪をかけて混沌とした状況になりましたが、それはそれ。…敗色濃厚と見た美食研究会は、普段通り驚異的な速さで撤退していきました。

 

「あっ待て、逃がすか!」

「いえ、待ってくださいイオリ。ここで追いかけて事態を大きくしてしまうと、委員長に気づかれかねません」

「うっ…!そ、そっかぁ…くそぅ」

『ひとまず、あまり大きな騒ぎにならなくてよかったよ。みんなお疲れさま…焼きトウモロコシ、美味しそうだったな…

「聞こえてますよ先生…」

 ハリカさんを苦笑いさせる先生はともかく。逃がしてしまうのは非常に惜しいですが、突発事象の対処はこれにて完了です。…心なしか疲労感が強いのは、向こうが話の通じないタイプだったからでしょう。

 

『皆さん、お待たせしました…あら?なんだか疲れた顔をしていますが、どうかしましたか?』

 そんな中で、再び通信が繋がったアコ行政官の声。…まだ戻ってこられそうにありませんか、と気になったのを一旦呑み込んで、状況を説明するため口を開きました。イオリやフユコさんと不毛な言い合いが始まってしまう前に。

 

 

 

 

 

*1
『偏倚解放』は効きが悪いし、『輻輳点(コンバージェンス)』を使うことも考えたけど…挙動があまりにも不審すぎるよなぁ……というわけで

*2
お礼として管轄区にオープン予定の温泉チケットが進呈されていた

*3
走っているところは珍しいのでちょっと驚いた。たぶんゆさゆさ揺れるからなんだろうな……何がとは言わないけど

*4
これがキヴォトス人クオリティ…?

*5
相変わらずの水着姿

*6
なんか得体の知れない真っ赤なソースかかってるんだけどあれ何…何?

*7
イズミちゃん今どこにトウモロコシ仕舞った??

*8
遠距離射撃も魔法によるものだそうですが

*9
現在はホテルの一室にて強制バカンス中





・ハリカ
リアクション担当⇒後方支援
倒れたのはマジで右も左もわからない中で必死の乱発だったので…

・チナツ
軽い気持ちで始めたけどこの子視点の戦闘描写難しすぎるっピ ほら、同じSPECIAL枠でもハレとかカリンみたいに立ち位置が定かなわけじゃないから…。

・フユコ
素の身体能力は高くない(キヴォトス比)。

・イオリ
on前線
得物がSRなの忘れそうになりがち

・アコ
《SOUND ONLY》
っていうか今どこ?居たら騒ぎに気づいてるはずだし、まだ戻ってこれてないってコト…?

・美食研究会
本物のアウトロー()があらわれた!お祭りの環境がなくなっても帰らないあたりが筋金入りの………何??(困惑)

・先生
思ってた以上の激務な特務にそこそこグッタリ

・ヒナ
ホテルの一室にて強制バカンス中



参考動画が熟練の自キャラでやる方(メインストーリーとは別の方)の動画だったため、美食研が文字通り一撃で倒されててワロタ ワロタ…    あれがデスモモイか…


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