大変長らく……おかしい、文字数が異常だ 本当に私は一時期前回とこれと次回とで4本立てなんてことも企てていたのか
はい、つまりまだ次回があります 本編まで死ぬほどお待たせしてしまう……うちの締め方迷子癖がどうもすみません
「えへへぇ…やはり先生はいつ見ても飽きませんね…」
――皆さんどうもはじめまして。レッドウィンター連邦学院2年生の天見ノドカです。今週もこうして自治区を抜け出して、趣味である先生の観察をしています。
現在、先生はD.U.地内でパトロールか何かの活動をしており、シャーレオフィスを観察していた場所からそれほど移動せずとも眺めていることができました。遠くまで行ってしまわれないのはありがたいですね。持ち慣れているとはいえ、重たい荷物ですし。
…なんて、思っていたのですが……
「そこで何をしているのかしら」
「っ……!?」
…とん、と左のこめかみに突きつけられた冷たい感覚に、高揚していた気分は急降下しました。
…い、いつの間に!?た、確かに周囲が見えなくなるときはありますけど、こんな、隣まで近づかれて気づかないなんて…!?
「いや…さっき先生とかなんとか言ってたから、先生を見てたのはわかる。質問を変えるわね。
低めの冷ややかな声に、背筋が粟立つ感覚がして…ど、どどどうしましょう!?あ、あぁでも、でも…!先生が、先生が画角から出ていってしまいます!!
こ、こうなったら、動くしかありません…!私の出せる全力で、素早く、まずは突きつけられた銃を払いのけて―――
「っあ、うわ!?……っ!?」
あ、あれ…今、何が…?銃は確かに払いのけて、けれど手首を掴まれて……気がつけば、銃口が目の前に…!?とっさに左手を背背中に伸ばしましたけど、銃を握ろうとした手は空振りで……そこで気がつきました。目の前の銃口…
「へっ!?な、なんでぇ!?」
「動きはいいけれど無駄が多くて隙だらけ。ゲヘナじゃやっていけないわね…それにしても、この
私の
よく見れば、左の肩に掛かっている…恐らくこの人のメインウェポンには二脚銃架がついていて、えっまさか本業
「ひ、っ…!?」
目の前にあった銃口が動いて、眉間に強く押し当てられて…喉から情けない声が漏れてしまいました。
「…それで、そろそろ吐いてもらえる?…私、ただでさえ今日はまだ一度も引き金を引けてないの。この状況でおとなしく待っていられるほど良い子じゃなくてね…?」
「ひっひぃいっ!?ご、ごめんなさいごめんなさい!!」
…正直に、誠心誠意を…途中から若干の私情も込めて話すうち、赤毛の少女の険しい顔がだんだん緩んで…なんだか、あきれ顔みたくなってきました。
「…わかった。わかったから一旦落ち着いて」
「えっ…あ、すみません……」
「とりあえず…あなたは先生の熱烈なファンであり、ストーカーであるという認識でいいかしら?」
「ふぁ、ファンですけど…!っ、は、はい…弁明の余地もないです……」
「そう……だって。聞こえた?」
ヒィ…こ、怖い…熊なんかよりもよっぽど怖いんですけどこの人主に目つきが!……けど、そういえば、すっかり気にするのを忘れてましたけど、この人って…?
そう思った矢先、赤毛の少女は胸ポケットに入っていた携帯を取り出して話し掛け…ま、まさか、聞かれてました!?今のが、誰かに…
「そう…それは悪かったわよ。ん、じゃあ
―――っ!?!?
「っせ、先生…?あ、あの…あなたは……」
「…?あぁ、そういえば言い忘れてたわね…私は連邦捜査部"
「あちゃ~交戦しちゃったか~」
「あぅ……」
…そして、ところ変わって現在。寒々しい227号特別クラスに戻ってきました…今日はいつにもまして寒いです。外と同じくらい、心も冷えきっています…。どうしよう…
「そりゃまた災難だったね~よしよし」
同じ特別クラスで幼馴染みのシグレちゃんは、いつも通りに出迎えてくれて、話もゆっくり聞いてくれましたけど……あのシグレちゃん、なぐさめてくれるのは嬉しいんですが、頭を撫でられるのは恥ずかしいです…。
「ど、どうしよう…私、シャーレを敵に回しちゃったかも…」
「まあでも、相手が誰だか知らなくて、普通に反撃しようとしちゃったんでしょ?」
「うん…」
「なら、大丈夫だと思うよ?たぶんだけど」
「たぶんなんだ…」
「向こうも先生の身に危険が迫ってるって思っちゃったんだろうけど、いちおう話し合いで解決してはいるわけだし。ゲヘナ生ってすごく過激なイメージだったけど、マトモな人でよかったね」
「それは…たしかに…すごく怖かったけど…」
「うーん…でもやっぱり気になるのは、どうしてかその子にモモトークを押さえられてるってとこだよねぇ」
…そう。すっかり縮み上がった私に
"降旗チサキ"…アイコンは未設定のシルエットのまま、自己紹介も一切なし。ちょっと不気味なプロフィール画像をなんとなく眺めていたら、「…お、いいもん見っけ」とシグレちゃんの声。
「ノドカ~ちょっとこれ見て」
「へ?何?」
シグレちゃんが開けていたのは、写真や動画をメインとする有名なSNSでした。私もアカウントを持ってはいますが…通信データ量を節約したいので、あまり開けてません。そこでシグレちゃんがスマホ画面に出して私に見せたのは、一枚の…
「…集合写真?」
「そうそう。これシャーレ公式アカウントなんだけど、今いる部員の集合写真になってるみたいでさ。この中にいる?」
「えっと……えっとぉ………あ、いた!」
外の景色からして、たぶん7階あたり。大きな窓を背に収まった二十数人の生徒…その中、一番後ろの端っこにチサキさんが写っていました。隣の軍服みたいな出で立ちの生徒に首根っこを掴まれています。
「あ~…なるほど、けっこうキツそうな子だね。逃げようとして捕まってるっぽいけど」
「もうほんと、クマのほうがかわいいって思えるくらい怖かったよ…背丈、シグレちゃんと同じくらいのはずなのに…」
「そういうのよく分かるよね…ん?なんか鳴ったよ今、そっち」
「え?……えっ??」
シグレちゃんに指摘されて視線を戻せば、ちょうどモモトークが来たところ。…チサキさんから。…内容は、端的に一文だけ。
チサキ:明後日、シャーレまで来られる?
「お呼び出しだねぇ」
「…ど、どうしよう…」
「まあ…行くしかないんじゃない?」
そして、二日後。特別クラス送りが決まったときにも感じたことのないような重苦しい気分で、私はレッドウィンター自治区をあとにしました。数日前までの私なら、まさか先生とお近づきになれるなんて!!と舞い上がっていたところでしょうけど…今のこれは、かなり最悪に近い流れで…。
本当ならもっと軽い足取りで来たかった道を進んで…見えてきました。今までよく遠目に見ていた建物。D.U.郊外にそびえ立つシャーレビル……こうして近くで見上げると圧倒される高さです。
そして…その正面入口に、見覚えしかない赤髪の姿がありました。
「え、えっと…お久しぶりです、チサキさん」
「ええ。久しぶりね、ノドカ。前はごめんなさい」
「いえっ!?あ、謝るのは私のほうじゃ」
「まあいいわ。ついてきて。今回は私のカードで入るから、遅れないように」
「あっ、は、はい…」
チサキさんはあっさりと私に背を向けて、
ピッという短い電子音が鳴ったあと、正面入口の扉が静かに開きます。ちら、とチサキさんが軽く振り向いたのは目配せのよう。カバンを背負い直して、私も歩き出しました。
そうして、エレベーターに乗って3階へ。きびきびと迷いなく歩くチサキさんに、私は小走りになりながら……たどり着いた、両開きの扉。『連邦捜査部S.C.H.A.L.E執務室』の札が掛けられているそこで、チサキさんはまたIDカードを取り出しました。
「先生、私よ。入るわ」
「ん?チサキ?」
チサキさんは簡潔にそれだけ伝えると――簡潔すぎて伝わってなさそうですけど――、カードをかざして、扉を開けて………
「やあ、今日もクールだねチサキ…ひょっとして、その子が例の子かい?」
…窓が大きくて開放的な空間。ここがあのシャーレオフィス!
そして、低めの声がしたほうを見たら――たくさんの書類が積まれたデスク。そこに腰掛けて苦笑いしている、
「褒め言葉として受け取っておくわね…ほら、固まってないで」
「ハッ、そうだった…あ、天見ノドカです!はわ…ず、ずっと望遠鏡越しで見てた、あの先生で合ってますか?私、感激です…!」
「ははは、そうだよ。ようこそ、連邦捜査部S.C.H.A.L.E.へ」
「思ってたよりヤバイ子が出てきたな…」
「完全に呼吸止まってたわよ…」
…よ、よかったぁ。ここに来るまでの流れは全然よくなかったけど…先生への自己紹介、何も噛まずに言えてホッとしまし、アッ先生の笑顔がまぶしい―――ぃ、いや、その前に…!
「ええっと…あなたは?」
「あ、私は
「せ、専属!?」
「私の事情もあるけど、何よりシャーレは多忙だから…」
後ろにまとめた黒髪と、紫っぽい瞳、対照的に真っ白な制服姿の生徒が一人。デスクの真横で先生の手伝いをしていた様子の彼女は、にこやかに自己紹介を…専属!?う、うらやましすぎる…よく一緒にいるなぁとは、思ってましたけど……!
…あれ?でも、待てよ…?私、今日ここに連れてこられたのって…?
「まあまあ、私のことは置いといて。今はノドカちゃん…あ、名前で呼んでいい?ノドカちゃんのお迎えだから」
「お、お迎え?」
「そうだね。チサキから推薦って聞いて、ちょっとビックリしたよ」
「すい、せん??」
お迎え?水洗?な、なんの話でしょう…?チサキさんを見たら、なんたかあきれ顔で……
「何よその反応…あれだけの熱意があるなら、正式に仲間になってもらうべきって思っただけよ」
「…な、仲間?仲間って…えっ?ええっ!?」
「…チサキちゃん、もしかして何も説明してないの?」
「………説明って、必要?そうでもなきゃ、こんな場所まで通すわけないじゃない」
「………」
「素直に"忘れてた"でいいんだよ、チサキ」
「余計なお世話よ」
「…ごめんねノドカちゃん、うちの暴れ馬が」
「誰が暴れ馬よ!?」
…なんだか、目の前の3人の様子がカオスになってきましたけど……せ、
「ちょ、ちょっと待ってください!?それじゃあ、今日私がここに呼ばれたのって…」
「あぁ…うん。チサキの推薦を受けて、君をシャーレの一員として迎え入れることにしたんだよ、ノドカ」
「ヒュッ!? えっ…えぇぇぇ~~~っ!!?」
「おぉ~よかったじゃんノドカ。おめでとう」
「うん、よかった…んだけど、なんか素直に喜べないっていうか…」
「まあねえ。なんにも準備してないけどサプライズ~!みたいなことだもんね」
…いろいろ話して、教わったりして、そうして帰ってきた雪の中。心配してメッセージも送ってきてくれていたシグレちゃんは、私の話を楽しそうに聞いてくれました。
…なんとなく開けたモモトークの画面は、すっかり様変わりしています。シャーレのグループが2つと……念願叶って繋がれた先生!!はわわ…も、もう見ただけで、心臓が飛び出しちゃいそうです…!
それからハリカさんと…チサキさんは前からですけど、帰り道の途中で新しいメッセージが届いていました。3つの吹き出しと、何かのキャラクターが「返信不要」と言っているスタンプが。
チサキ:今日はごめんなさい
チサキ:他人を推薦するなんて初めてのこ
とだったから、色々うっかりして
たわ
チサキ:とはいえ、これからよろしく
「と…"とはいえ"、って…」
「律儀なんだかマイペースなんだか…まあよかったじゃん?いい人そうで」
「そう…なのかなぁ…」
「そうだと思うよ~?まあ何はともあれ…おめでと、ノドカ。晴れてうわさのシャーレ部員だね」
「!…そっ、か」
ポケットの中、今朝にはなかった薄くて固いものを取り出してみる。それは、驚きの早さで作ってもらえたIDカード。
チサキさんが持ってたのと同じに見える、シンプルなデザインだけど…その中には『レッドウィンター連邦学園2年 天見ノドカ』の文字列が、しっかりと記されている。
……受け取ったときの感激は、やっぱりまだ冷める気配がなくて―――
「…わ、私…これからは、先生のもっと近くで……えへへ…ふへへへぇ…♡」
「あれ、ノドカ~?おーいノドカさんやーい。…こりゃ聞こえてないねぇ」
【ノドカ⇒カヨコ】
「こちら便利屋68の事務所ですね?
「…はい?」
何気ない平日の昼下がり。事務所のドアがノックされて、「依頼人かしら!」と目を輝かせた社長が意気揚々と向かっていったけれど…なにやら、そんな妙なやり取りが聞こえた。それで私たちも様子を見に行ってみると、
「あ!イコイちゃーん!」
「おや、お久しぶりですムツキちゃん、カヨコさんは昨日ぶりですね」
橙色の中に花弁が舞い散る柄の浴衣。人懐っこい童顔から視線を上にずらせば、いびつな獣耳とピンクの
「お、お2人はご存じで…?」
「シャーレの同僚だからね」
「そういえば運び屋さんだって言ってたね~」
「運び屋っ!?」
「正規の運送業ですよ?ハヤブサ運送の有能アルバイターとは私のことなのです。むふふ♪」
「あ、そうなのね…?」
ムツキの言葉に社長の目が輝いたけど、ほどなくスンッと大人しくなった。…ムツキの言い方のせいで、アウトロー仲間だと思ったみたい。
それに対して、イコイは嫌な顔ひとつせず笑ってる…いや、そもそもイコイが嫌な顔してるのは見たことないか。柔軟でおおらかで、いつもブレずにむふふと笑っているから。…まあ、そんな雑談はさておき。
「それで、イコイ。
「あ、はい。実はゲヘナに入る手前くらいで、お出掛け中のお友達とたまたま出くわしまして。この箱について『胸騒ぎがするから気を付けて』とご忠告をいただいたのですよ」
「そう…なんだ?」
…何かと思えば、友達からの忠告?それを届け先で開口一番、はっきり言ってしまうのもどうなのか。とも思うけれど……私たちはわかりやすく怪訝な顔をしていたと思う。でも、イコイはいつも通り、あざとさすら感じる仕草で笑うばかり。
「むふ、まあ不思議に思いますよね?でもけっこう当たるんですよ、ホムラちゃんの直感」
「そう、なんだ…その荷物、品目は?」
「"書籍"になってますね。重さも確かにそれっぽさはあるんですけど、それにしてはちょっと箱が大きすぎますし、揺れたりしてもなーんの音もしないのが妙なのです」
「書籍?じゃあ私知らないや」
「わ、私も…」
「社長、何か啓発本とか注文した?」
「いや、してないわよ!?…ってことは、まさかこれ、勝手に送りつけられてる、ってこと?」
「む、そうなんですか?着払いになってますよ」
「はいぃ!?ウソでしょお!?」
…ただでさえ金欠なところに、着払いで届く謎の荷物。間違いなく今日は厄日だな…。頭を抱える社長に駆け寄るハルカと、興味深そうに箱を見に来るムツキ………割と通常運転かもだけど。
「お知らせされてないんですね?その感じ。着払いの場合、受取人の同意を得るのが一般的なんですが…むぅ。濃厚な厄ネタの匂いです」
「匂いっていうかもうクロでしょ。十中八九書籍じゃないだろうし、送り主も適当書いてるかもね」
「ですねぇ。まあ強制力はありませんし、受け取り拒否で構いませんけど……いちおう中身だけ確認してみますか?ここで」
「やめた方がいいと思うけど…」
「私は気になる!アルちゃんも気にならない?」
「へ?それは…ならないと言ったら、嘘になるけれど…」
じっと箱を見下ろしていたイコイは、どうも中身が気になるらしい。…友達から忠告を受けておいて、見えてる地雷だってわかっておいて…?なんて、呆れてる場合じゃなかった。しまった。社長がムツキに乗せられた。
「でも、何も玄関先でやらなくてもいいんじゃない?ちょっと上がるくらいいいわよ?」
「いえいえ。何かあった場合を考えると外でやったほうが経験上、後々の被害が少ないので…そうだ、ここの窓開きますかね?…開きますね。いちおう開けときますね」
…手に持った荷物を一旦床に置いたイコイは、すぐ近くにある微妙に建て付けの悪い窓をガタガタと開けた。何かあった場合のことに余念がない。運送業も大変なんだな…そりゃそうか。
開いた窓から、そよ風と喧騒が流れ込んでくる。…プラックマーケットが目と鼻の先にあるわりには、今日はとても平穏な日だ。少なくとも今、目の前にある箱以外は。
「では…ちょっと、開けてみますよ」
イコイはそう言って、持ってきた箱に手をかけた。とはいっても、手際は丁寧のそもの。変に破けたりしないようにテープを剥がしていく……ここまで破かずに剥がせるものなんだ。普段から扱い慣れてるんだなって…
「――ぇ」
…流れるようなイコイの手際で、しれっと開かれた箱の中身は…白いスチロールの詰め物で固定された、黒い機械。隅のほうで赤いランプが点って、『ピーーーッ』という高い音―――が、急速に遠ざかっていって―――
「「「「っっ!!?」」」」
――ズドンッ!!という爆発音は、窓の外から。とっさに身を低くしたら…目の前にさっき開けた箱がない。あれ…?な…何が起きて……
「……ふぅ。間一髪でした…『屋内なら、なるべく窓は開けておいたほうがいい』って、このことだったんですね」
目を丸くしてる私たちの一方で、窓のほうを見てるイコイは訳知り顔……相変わらず、底が知れない。信用できないってほどじゃないけど…
「…もしかして、それもホムラちゃんって子の忠告?っていうか今の、もしかしなくても爆弾だったよね?」
「あ、開けると即爆発するトラップだったわよね!?あなた、本当にただの配達員なの…?」
「本当にただの配達員ですよ?ただちょっぴり修羅場に慣れてるだけなのです。今回はさすがに焦りました」
目をぱちくりさせる社長に、イコイはいつも通り、にっこりと微笑んで言う……焦ったようには全然見えないんだけど。
いや、でも…うん、何度か当番で一緒になったから知ってるけど、イコイはこういうやつだ。なんでもないことのような顔をして、わりと何でもそつなく処理してしまう。ムツキも苦笑いしていて…
「なので、ひとまずその子だけ押さえててくれませんか?」
「ハッ!?お、落ち着いてハルカ!大丈夫だから!どこに突撃する気!?」
「怪しいやつは全員です!!社長を狙ったことを後悔させます!!」
……その背後で、ハルカがいつの間にか遠征準備を済ませていた。社長が慌てて止めに入るいつもの光景…私たちにとってはいつもの光景だけど、これを困ったような笑顔で見ていられるイコイって……まあいいや。
「…ん?これって」
「あ、一応剥がしておきました。結果的にはこれだけ残っちゃいましたね…さすがにブラックリスト案件なので、持ち帰って一応報告なのです。フェイクでしょうけど」
そこでふと、足元に落ちているものに気がついた。イコイが箱から剥がしていたらしい伝票。あの一瞬で…とか思いながら、拾って見たら。
「…社長、みんな。ちょっと来て」
「へっ?カヨコ、どうかした?」
「何かあったのー?」
「多分これ、送り主そのまんま書いてる」
…差出人の欄に、見覚えのある名前。ただし、個人ではなく組織の……確認した社長も、目を見開いた。
「"くらくらヘルメット団"…って、たしか先週壊滅させたとこじゃない!」
「壊滅?便利屋はそういったことまでやってるのですか?」
「なりゆきよ、なりゆき!物流倉庫を狙う強盗グループがいるから護衛依頼が来て、その犯人がこいつら!」
「そうそう、普通に襲ってきたから返り討ちにしてあげたけど…ヴァルキューレに突き出したよね?」
「残党がいたのかもね…隙を見て逃げ出したのか、留守番してたのか」
大胆なことするやつだとは思ってたけど、まさかここまでとは……ただ向こうの大きな誤算は、私たちがダメージを受けずに済んだことと、伝票もちゃっかり回収されてしまったことだろう。
「ふむぅ…なるほどつまり、これは犯行声明ということですか。殊勝なことで」
「いや、本来なら燃えちゃってるはずだよ…イコイが回収したから、結果的にそうなってるだけ」
そう…本当なら、この薄っぺらな伝票はもはや復元不可能なほどに散り散りになって、私たちも瓦礫の中で伸びて目を回していたはず。この、謎にハイスペックな配達人の介入がなければ…。
「むしゃくしゃするわ…!なんて往生際の悪い奴らなの!」
「わかりましたアル様!お任せください!」
「いえ、待ってくださいハルカさん」
「どいてくださ、っ!?」
猛然と立ち上がったハルカを、社長…よりも先にイコイが制止した。ハルカが容赦なく銃を構えたら、イコイは
そのままスッと銃を下ろされ大人しくなったハルカ*1に、社長が走り寄って。緊迫した空気を作ったイコイはというと……普段通り、むふふ♪︎とイタズラっぽい笑顔を見せた。
「みなさん。ここはひとつ、『目には目を』でいきませんか?」
「…つまり、まったく同じ爆弾を向こうに送り返す、ってこと?」
「ええ。ぶっちゃけムツキちゃんなら朝飯前でしょう?爆発物の扱いに長けておいでですし」
「それはもちろん!もーっと派手なヤツだって作れちゃうよ?」
ここまで玄関先に立たせっぱなしというのは外聞も悪いから、招き入れた応接間にて。"目には目を"…イコイが提案した作戦はつまり、そういうことだった。
名指しされたムツキはかなり乗り気そう…というか、たぶんムツキなら乗ってくることを見越しての提案だろうな。それで、ムツキもたぶんわかってて乗ってる。この二人が意気投合してるのは割とよく見る。
その一方で、社長はまだ目をぱちくりさせている。…私も、正直まだそっち側。
「それを、あなたが提案するのね…しかも、自分で運ぶっていうんでしょう?」
「むふ♪︎私はアウトローの運び屋じゃないですけど、イコール人畜無害ってわけでもないのですよ。…それに、こんな危険な荷物を知らず知らず運ばされたことにも、私はちょっと怒ってますからね」
「その危険な荷物をもう一回運ぶことになるけど?」
「知らずに運ぶのとは大違いですから、お任せください。それに、これは言い出しっぺとしての責任でもあるので…代わりにといってはなんですが、あなた方はブラックリストに入らないようにしておきますよ。これで共犯なのです♪︎」
「楽しそうだね…」
…そう、こっちで作った爆弾はイコイが向こうまで運ぶらしい。イコイ自身の発案だし、本人もああ言ってるから、あんまり心配はしてないけど……なんというか、イコイもそんな顔するんだな。ムツキと馬が合うわけだよ。
「よ~し!それじゃ、早速やっちゃおっか、ハルカちゃん!」
「は、はい!」
「急がなくても大丈夫ですよ。今日の配達分はおしまいですから」
同じくらい楽しそうなムツキが、ハルカを連れて奥に引っ込んでいく。基本的に爆発物はあっちの2人任せだから、今回もその形……それはいいとして。
「…他の配達はちゃっかり終わらせてきてるんだね、イコイ」
「時間指定とかもありますからね、厄ネタは最後にしておきませんと。会社にもちゃんと報告してますよ、"ちょっとアヤシイ荷物がある"とは」
「それ、ヴァルキューレに持っていくものだと思われてるんじゃないの?」
「まあ、誰が見てもダメそうなブツだったらそうするんですけど、今回見た目はなんの変哲もない箱でしたので」
「…イコイ。何か考えてる?これ、あんたにメリットがあるようには思えないんだけど」
「なんにも?ただどうせやり返すなら、ちょっと趣向を凝らしちゃおうってだけですよ-☆」
「…そう」
………私としては真剣に、真面目に疑問だったから訊いたんだけど、イコイには星のエフェクトが飛びそうなウインクを返されてしまった。…また威圧しちゃったかな、とか、考えるだけ無駄なんだった。
「まあでも確かに、そう訊かれても仕方ないって自覚はあります。なんだかすみませんね、正式な依頼を持ってきたわけでもないのにこんな…なんでしたら、今回のこれを私からの依頼ってことにしましょうか?」
「…いいえ、それはできないわ。今回は元を
「共同戦線、ですか……むふ、いい言葉ですね♪︎わかりました。しっかりお届けして、ちゃんとやり遂げますよ」
真ん丸にした目をぱちくりさせたイコイは、ご機嫌そうに目尻を下げた。…初めて見たかもしれない、イコイが困惑してるところ。それもそっか……自主的に支払うって提案されて、断っちゃうんだもんな。そういうとこだよ社長……らしいっちゃらしいけどさ。
オリキャラメイン回だからだけどびっくり人間博覧会みがある感じになった あと前後どっちも出てるキャラいないの珍しいかも
・ノドカ
停学処分くらいではへこたれない熱狂的ストーカー
放課後スイーツ部もそうでしたが、pixivのファンアート(マンガ形式)で推されてて出したくなってしまった安直なやつです はい
このエピソード自体はかなり前から考えていましたが、ふと『応募制導入したらこの展開なくなるよな…?』と思ったので急遽引っ張ってきました。計画が無計画
なおお察しの通り本作は『革命のイワン・クパーラ』には触れません。ハリカが行く気ないし、事件自体はよくあることのようなので大丈夫でしょう。(添付画像:赤冬モブ「レッドウィンターでは日常茶飯事だぜ!」)
自分用メモ:観測手であって狙撃手ではないことに注意 サジタリウスナイトはSMGだしスキルも命中値の底上げ
・チサキ
思いがけず"熱"を浴びせられて半目になった
マイペースと気分屋を遺憾なく発揮する回でした なんというか、彼女もしっかりゲヘナ生という感じで 最近ゲヘナが動いてるらしいのまだ全然見てないケド……
なおモモトークのアイコンは絆エピソード3話「親しみやすさ」を終えてようやく設定されます(存在しない記憶)
・シグレ
お馴染み未成年飲酒疑惑オコジョ
特別クラスコンビの関係性が尊いと話題 尊みはあまり出せてないと思う
・ハリカ
シャーレ専属
今ごろになって所属についてちょっと軽微な変更を加えようかな、と思ったけどそれで変える必要あるとこ意外となかったです とりあえず学籍を失くしててもシャーレには所属できることが判明したので…
・先生
熱視線も笑って済ませていた図太い大人 まあ普段からキヴォトス全土の注目の的ですし…
・カヨコ
クールな参謀…感は出せているのだろうか……なんたか翻弄されっぱなしで……
視野が広くていろいろしっかり見てる感じはある そして理性的で理知的なので個人的には書きやすい部類
・イコイ
にこにこミステリアス配達員
スペック高め&クソ度胸。どのくらいかと言うと、某パワータイプ救護団長をよく知っていてもなお止めに入りそうなレベルのクソ度胸 別に百鬼夜行はそこまで波乱万丈ではない…と思いたいのですが
なお筆者は配達系に疎いので何か変なところがあるかもしれないです オハズカシナガラ…
・ムツキ
エミュ難易度高めな愉快犯 だいぶ大人しめになっちゃったかもしれぬい
イコイとは相性が良いようで仲良し
・アル
カリスマと実力は本物の社長
便利屋68はいつも波乱万丈です(公式) くらくらヘ(ryはオリジナルですが
便利屋漫画最終巻、前半の締め方迷子してる間に入手できたけどまだ読めてない…
・ハルカ
エミュ難易度がかなり高い狂信者
モモイとかもそうだけど頭より体が先に動く子が苦手 今後の課題
くらく(ryの末路はお察し
・ホムラ
その他オリキャラの中におります たまたまイコイと会った葦之原生
公式と名前被りしてしまう前に出したい 急がねば…