鈍色の銃は射抜かない   作:諸喰梟夜

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視点の切り替えがない回


お騒がせな少女達

 

【ハリカ】

 

「それでは、アビドス対策委員会定例会議を始めます」

 アビドスの五人と、特別ゲストなシャーレの二人。アヤネちゃんの宣言で物々しく始まったはいいものの少しばかり雑談で緩んできた。その空気を、バンッと机を叩いて引き締めたのはセリカちゃん。

「対策委員会の会計担当としては、現在我が校の財政状況は破産寸前としか言いようがないわ!」

 いわく、…毎月利息だけで788万…?はっ!ヤバイまた背後に宇宙を広げるところだった。

「このままじゃ埒が明かないってこと!何かこう、でっかく一発狙わないと!」

「でっかく一発って…たとえば?」

「これこれ!街で配ってたチラシ!」

 そしてアヤネちゃんの質問に対し、セリカちゃんは待ってましたと言わんばかりに一枚のチラシをテーブルの真ん中に置いた。

「…"ゲルマニウム麦飯石ブレスレットで一攫千金"…?」

「前に街で声をかけられて、説明会に連れていってもらったの!運気の上がるブレスレットっていうのを売ってるんだって!」

「「「「「「…」」」」」」

「これ、身に付けるだけで運気が上がるんだって!で、これを周りの3人に売れば…」

「「却下」~」

「ええっ!?なんで!?」

 …完全にマルチ商法ですありがとうございました。食い気味に却下したつもりがホシノ先輩とかぶった。仲間たちに諭されるセリカちゃんに、思わず先生と顔を見合わせた。残念な子だったか…

 

「えっと…それでは、他にご意見のある方…」

「はいはーい」

「はい、ホシノ委員長。…なんだか悪い予感がしますが…」

 ひょいっと挙手したのはホシノ先輩。

「わが校の一番の問題は、全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよねぇ。生徒の数イコール学校の力…トリニティやゲヘナみたいに、生徒数を桁違いに増やせれば、毎月のお金だけでもかなりの金額になるはず」

「そうなんですか?」

「そういうこと~。だからまずは生徒の数を増やさないとねぇ。まずはそこからかなー…そうすれば議員も選出できるし、連邦生徒会での発言権も得られるしね」

「ああ…そういえばそういうシステムでしたね、ここって」

「鋭いご意見ですが…でも、どうやって…?」

「簡単だよ~?他校のスクールバスを拉致ればOK!」

「ちょっと待って」

 あれ私急に知能落ちた?なんか理解が追い付かなくなったんだけど。さっきまで真面目な話をしてたホシノ先輩が急に変なことを言い出したような。いやいや、まさか…

 

「スクールバスをジャックして、転入届にサインしないと降りられないようにするの!」

「あの、本当に待ってもらえません?どこの脱出ゲームですか?」

「興味深いね、それ」

「シロコちゃん!?」

 現実は非情だった。それどころかシロコちゃんが乗っかる始末…シロコちゃん!?寡黙で冷静な女の子だと思ってたんのにそっち側なの!?いやあの真面目に作戦練らないで?

 …アヤネちゃんの制止でもちろん却下になった。ホシノ先輩は冗談半分だったみたいで叱られてる。アヤネちゃんの悪い予感当たるんかい……風紀委員といえばチナツちゃん、ゲヘナの外も全然特殊みたいだよ…。

 

「私にいい考えがある」

「シロコちゃん…」

「はい、2年の(すな)(おおかみ)シロコさん」

「銀行を襲うの」

「…」

 無言で頭を抱えたけど、あろうことかシロコちゃんは目的とする銀行を選出済み、警備員の配置や現金輸送車のルートまで全部調査済みの準備万端だった。すごいこの子、遵法精神以外が完璧。

「5分で1億は稼げる。覆面も用意しておいた」

「おお~いいね~!人生一発で決めないと!ね、セリカちゃん!」

そんなわけあるかー!却下、却下ーっ!!」

「そうです!犯罪はダメです!」

「…むう」

「そんなふくれっ面してもダメなものはダメです!」

 …すみません、もうキャパオーバーなのでこの姿勢*1を続けることにします。正直倒れそうですが無用な心配はかけたくないのでリアクション放棄だけにします。心が折れました。もはや折り鶴になって芸術点を狙う―――。

 なお、この後ノノミちゃんがスクールアイドル「水着少女団」なるものを考えて却下され(徹夜で考えたって…それ深夜テンションって言うんじゃない?)たり、あまりのグダグダ具合にアヤネちゃんがキレたりしていた。真面目な子が怒ると怖かったです。

 

 

「…なんでもいいんだけどさ、なんでウチに来たの?」

 呆れ顔でそう言うのは、店のユニフォームに身を包んだセリカちゃん。そう、私たちは柴関ラーメンを再訪していた。ホシノさん達がアヤネちゃんをなだめる目的で。…アヤネちゃんのラーメンにチャーシューが集まってる。アヤネちゃんそんな現金なタイプとは思えないけどな…言わないけど思いつつ塩ラーメンをすする。

「あっ、いらっしゃいませー!」

 接客のために離れていったセリカちゃんを何の気なしに目で追った。店の入り口でライフルをしっかりと抱き締めた紫髪の女の子に話しかけてる…あの服暑そうだな…。不躾に見てるのもアレだから、視線を前に戻すことにした。

 それにしても、本当にこの街はなんなんだろう?いくら店が空いているとはいえ、向かいの先生以外にヒトの男性が見当たらない。女の子orヒト以外なのだ。あんまり触れない方がいいのかもしれないけど……待って、なんかさっきのあの子声がデカいな?

 

「そんな、お金がないのは罪じゃないよ!胸を張って!」

 思わず見るといつのまにか隣のテーブル、しかも三人増えていて、セリカちゃんが紫髪の子をなだめるというか、説得するというか…している最中だった。

「そもそもまだ学生だし!それでも、小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ?そういうのが大切なんだよ!もう少し待っててね、すぐ持ってくるから!」

 まあ、学生の身分ってそういうものだよね…たぶん。私の常識が通用するかはわからない。でも私の常識ではそう。(シャーレ)の私の財布がけっこう潤ってるのは棚に上げる。

 

「お待たせしました~!」

 そして、戻ってきたセリカちゃんを何気なく見たらその手には立派な大盛りラーメン…!?

「こ、これオーダーミスなのでは!?こんなの食べるお金、ありませんよぅ…」

「いやいや、これで合ってますって!580円の柴関ラーメン並。ですよね?大将!」

「ああ、ちょっと()()()()()()量が増えちまったんだ。気にしないでくれ」

 …凄いこれ、滅多にお目にかかれないリアル施しだ…心暖まるやつだ…!いつの間にか私だけじゃなくホシノさん達も、四人がラーメンを口に運ぶ様子を無言で見つめていた。

「おいしい…!!」

「なかなかイケるじゃん!こんな辺鄙な場所なのに、このクオリティなんて!」

「でしょうでしょう?美味しいでしょう!?」

 あ、ノノミちゃんが話の輪に飛び込んだ。コミュ力高いとは思ってたけど躊躇ないな?

「ここのラーメンは本当に最高なんです!遠くからわざわざ来るお客さんもいるんですよ?」

「ええ、わかるわ。いろんな所でいろんなのを食べてきたけど、このクオリティのラーメンにはなかなかお目にかかれないもの!」

「えへへ…私たち、ここの常連なんです。他の学校の皆さんに食べていただけるなんて…なんか嬉しいです」

「その制服、ゲヘナ?遠くから来たんだね」

 アヤネちゃんとシロコちゃんまで…。結局、テーブル二つの間で会話がとても弾んでいた。

「あはは…伸びちゃう前に食べなよー?」

 …白っぽい二人がひそひそ話してたのがちょっと気になったけど。

 

 そして、数十分後。

「あれ?ラーメン屋の…」

「うぐぅ…っ!」

「誰かと思えばあんたたちだったのね!?ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」

「あっはは、その件はありがと~!でもそれはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさあ?」

「残念だけど、公私ははっきり区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」

 アビドスは彼女たちと、敵同士として対面していた。

 

 

 

「こ…これで終わりと思わないことね、アビドス!」

 …いかにも悪役然とした台詞を残し、「便利屋68(シックスティーエイト)」と名乗る彼女たちは去っていった。もはや安心と信頼のアビドス。爆発する鞄投げてくる子にはヒヤッとしたけど…やはり先生の判断が早いのもあってか、みんなうまいこと避けて回ってた。

 …それにしても、「傭兵」。向こうの原作(魔法科)でさんざん読んだ気がするけど、ガチで耳にするときが来るとは思わなかったな…。

「妙な便利屋にまで狙われるとは…先が思いやられます。何が起きているんでしょうか」

「まあ、少しずつ調べてみよう。まず、社長のアルって子の身元から洗ってみたら?何か出てくるよ、きっと」

「はい。皆さん、お疲れさまでした。一旦帰還してください」

 りょーかーい☆とよく通るノノミちゃんの返事を聞きつつ、…手は自然とポケットの中に向かっていた。なんか…本当に、私はここにいる必要があるんだろうか。

 

 

 

 さて、次の日。この日はちょうど利息の返済がある日らしい。いつも通り先生より早く学校を訪問したらホシノさんやシロコちゃんがすでにいて、準備があるとかで慌ただしくしていた。

「それにしても、どうしてカイザーローンは現金でしか受け付けないんでしょう?」

 …で、今はやって来たカイザーローンとかいう業者に現金¥7,883,250支払い、走り去る車を見送ったところ。ノノミちゃんがふと口にした疑問についてぼんやりと考えた。なんか金額とは別に途方もない数字*2が聞こえた気がしたけど気のせいとして…確かに、向こう(魔法科)ではキャッシュレスが一般的だった。普通に考えてその方が迅速に済むし。それなのにわざわざ嵩張る現金で、輸送車まで用意して…

「シロコ先輩、あの車は襲っちゃダメだよ」

「うん、わかってる」

「計画もしちゃダメ」

「うん…」

 脳裡をよぎった頃には、もうセリカちゃんが先手を打っていた。シロコちゃんはしょんぼりしてる。日頃の行いってやつだぞ。

 

 

 さて、色々と調査の結果。

 まず、昨日傭兵を率いて襲撃してきた「便利屋68」。ゲヘナ学園の中でも素行不良な問題児集団として名が通っているらしい。…となると、あの風紀委員にとってはまさしく天敵になるわけか?…ゲヘナにいる間はそんな名前聞かなかったけど、たまたまなんだろう。代わりに「温泉開発部」ならめちゃくちゃ名前が出てた。どういうこと?何もわからん。

 

 そしてもうひとつ、セリカちゃんを襲ったヘルメット団…その黒幕について。

「ブラックマーケット…」

 セリカちゃん救出作戦の中で回収した向こうの兵器。それらを分析したところ、現在は取引されていない型番だったらしい。そんなものを手に入れられる場所といえば、"ブラックマーケット"しかないとのこと。

 …それは闇市ということでOKですか?ねえゲヘナが特殊って聞いてたんだけど嘘じゃない?改めてキヴォトス全体の治安レベルが不安になってきた。無法地帯こあい…

 …こんなこと言うのもなんだけど、防御特化型の私でよかったよ。ことによってはあの優等生の妹でも厳しいかも…いや、なんとかしちゃうのかな。どうだろ。お兄様は無問題(No problem.)として。

「それから便利屋68も、ブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしていると聞きました」

「あ、そこ繋がるんだ…」

「では、そこが重要ポイントですね!」

「はい。二つの出来事の関連性を探すのも、ひとつの方法かもしれません」

 無法地帯で騒ぎ起こすあの子達すごいな…と変に感心してしまった。…まあそんなこんなで、ブラックマーケットの調査に向かうことになったよ!全然不安なまんまだけど頑張るよ!!(白目)

 …それでは、生きてたらまた会いましょう。

 

 

 

 

 

*1
(Γlll-_-)7

*2
309年





・ハリカ
色々とキャパオーバー。しんどいよね、ごめんね。もっとしんどくなるよ☆
完全に言及し忘れていたのに気づいたけど特化型(小銃形態)のほかに汎用型(ブレスレット)も持ってる。ブレスレットは怪しまれなかった。特化型は決まった系統(ハリカのは収束系単独)しか入れられないので…
便利屋とエンカウント。立ち位置はまだ先生の隣。まだ。

・アヤネ
ちゃぶ台返しをしっかりと決めた。真面目さんが怒ると怖い
後方支援担当なのはわかるんだけど度々わからなくなる彼女の立ち位置ェ…

・セリカ
攫われるわポンコツが盛大に判明するわ恩が仇で返ってくるわここまでさんざんな目に遭い続けている。残念なツンデレ

・ホシノ
悪ノリするタイプの先輩だった…

・シロコ
【急募】倫理観、遵法精神
"クールなようでアグレッシブ"もいくところまでいっている

・ノノミ
それ深夜テンションって言うんじゃない?(大事なことなので二回言いました)

・先生
苦笑するほかなかった。そして悪ノリに乗っかってアヤネを怒らせた。ハリカはあきれたカオしてる

・便利屋68
残念美人・愉快犯・狂信者・クール&ドライの四人でお送りする公認コメディリリーフ
カヨコは一人だけ違う制服の生徒がひそかに気になってた


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