真剣でうつけに恋しなさい!   作:ごえもん

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プロローグ

とある寮

 

ある一室で、紫がかった髪の少女が息を潜めてうっとりとした表情をしながら、彼女の側で未だイビキをかきながら寝ている少年を眺めている。

その表情を見ただけで少女が少年に恋をしていることがよーくわかる。

すると見ているだけじゃ物足りなくなったのか少女は少年の布団に潜り込もうとする。

少女が布団に手をかけようとした瞬間

 

パシ

 

少年の手が少女の手を掴んでいた。

だからといって少年が完全に起きたわけではない。

 

「京…自分のとこで寝ろ…」

 

ほとんど寝ている状態なので声はとても小さく、耳を澄ませていないと聞こえないくらいだが少女にははっきりと聞こえていたようだ。

 

「ごめんね、部屋間違えちゃった」

 

少女は少年の耳元で囁くようにそう言うと

起きているわけでもないのに少年は

 

「そうか…ならしょうがない…」

 

そういった否や直ぐにいびきが聞こえてきた。

 

「(ちょろいよ良晴…。一階とニ階なのに部屋間違えるわけないよ。でもそんなとこも可愛くて好き)」

 

「(さてと、寝る許可も出たし寝よう)

 

さも当然のように布団に入っていくが、少年は寝ることを許可した覚えはない

 

 

 

そして翌朝

 

少年こと良晴が眼を覚ますと

 

「おはよ良晴」

 

そこには京の顔があった

起きていきなり異性の顔が目の前にあるとビックリするのが普通の反応だと思う。

しかも京は可愛い部類の人間だ。

だが良晴の顔には驚きや嬉しそうな感情はなく、ただまたかといった

諦めの表情だった。

 

「重いから退いてくれ京」

 

「これは私の愛の重さだよ」

 

「お前の愛は重いなー」

 

「迷惑?」

 

「別にこれくらいなら余裕」

 

「ああん!大好き!結婚しよ良晴」

 

「お友達でお願いします」

 

「あぁこの流れならいけると思ったのに…。また振られてしまった」

 

「てかいい加減降りろよ京」

 

今の良晴の心境としては一刻も早く跨っている京に退いて欲しい。

なぜなら男子諸君ならわかると思う。男の朝の生理現象。

 

「学校もあるんだからな?」

 

もっともらしい理由で全く動こうともしない京に説得しようとするが

 

「良晴のジュニアが朝から元気なのは知ってるよ?溜まってるなら私が出してあげるのに」

 

手を頬にあてくねくねと腰をくねらせている京を掴むと

 

「で・て・け!」

 

問答無用で京を部屋の外へと放り出した

 

 

学校の制服に着替え食堂にいくと

 

「毎度毎度朝から騒がしいなお前は」

 

今話しかけてきたのは源忠勝。川神一のツンデレ屋。

 

「いやいやそれは違うよ源さん。京が布団に潜り込んでくるのが悪いんだって」

 

「朝からお暑いこったな。あとさっさと食わねえと遅れるぞ」

 

「まじか!もうそんな時間かよ!」

 

俺の分に用意された食事を急ぎつつも味わって食べたら、ホントにちょうどいい時間だった。

 

 

 

変態橋には今日も多くのギャラリーが集まっていた。

 

「モモ先輩!今日も素敵です!」

 

「モモ先輩ー!頑張ってください!」

 

と武神である我が風間ファミリーの唯一の年上、川神百代が毎日と言っていいほど武神の称号目当てに挑んでくる不良や武道家を河原で相手しているからだ。

 

「よくも毎日戦う相手がいるもんだよなー」

 

「そうだよねー。それにしても相変わらずの人気だねモモ先輩」

 

「俺様にも一人くらい分けてもらいたいぜ」

 

「ま、姉さんの人気は今に始まったことじゃないし」

 

「私も早くお姉様みたいに強くなりたいわ!」

 

「そうだなー頑張れワン子!」ナデナデ

 

「くぅーん」

 

「………」ギリギリギリギリ

 

「うぅ…。京が恐い」

 

「京、歯ぎしりやめい」

 

「おっと、これはうっかり。」

 

「何がうっかりだよ…」

 

「大体お父さんはワン子に甘すぎる。ワン子にはもっと厳しくいかなくちゃ。ククク」

 

「………」ガクガク

 

「恐いお母さんだなワン子」

 

「お父さんって否定しなかったってことは!これはすなわちプロポーズ!?」

 

「いやいやいやどんな思考回路だよ京」

 

「ねぇあなた、子供は何人がいい?え、サッカーチーム作れるくらいだなんてそんな…。私頑張るね」

 

「なぁ大和…」

 

「どうした良晴?」

 

「これって話に乗った俺が悪いのか?」

 

「うん」

 

「よし!学校行こう!」

 

「あ、逃げた」

 

「うるせ!」

 

 

どうやら勝負が終わったみたいでモモ先輩が飛んできた。

飛んできたとは文字通り河原から橋の上までだ。

 

モモ先輩がきても話に夢中なのか誰も反応しなかったので、取り敢えず声を掛けておいた

 

「モモ先輩。どうもお疲れっす」

 

俺の言葉をきっかけに皆はモモ先輩に気がついたようで、各々声をかけている。

 

するとモモ先輩が肩に手を回してきて

 

「おい、良晴」

 

「んー?」

 

少し気のない返事をしてしまったと反省。年上に対する礼儀はちゃんとしないとね

 

「お前やっぱり強いだろ?戦おう!」

 

まただ…。時折モモ先輩は俺にこう言っては絡んでくる。

 

「だーかーらー。何回も言ってますけど、せいぜい俺の強さなんてモモ先輩と比べたら月とすっぽん、鯨とミジンコみたいな差がありますって」

 

「いいや!私ほどの美少女の勘が間違えるわけないだろ?」

 

「どんな理由ですか…」

 

若干しらけた眼で見つめていると

 

「ま、まぁそれは冗談だが。さっきお前私に気付いたよな?」

 

「そりゃ近づいたら気付くでしょ」

 

そう俺が答えるのを待っていたみたいにニヤリと笑い

 

 

「それがおかしいんだよ。さっきの私は普通の人では見えない速度で、しかも気配も消して近づいた」

 

俺の背中に若干の冷や汗が流れる

 

「つまり私に気付いた良晴は強い。どうだ?反論はあるか?」

 

俺は別に力を隠しているわけじゃない。ただモモ先輩とは武の面で関わりたくないだけだ。

だってこの人戦闘狂だもん。下手すると毎日戦おうとするよこの人…。

 

と答えにつまってしまった俺の行動は

 

「さらだばー!」シュッ

 

「待てぇ!」

 

この行動が答えみたいなもんだと思ってしまったが、すぐ後ろから迫ってくるモモ先輩に今は絶対に捕まりたくないので全力で逃走。

 

怖い怖い怖い!笑いながら追いかけてくるー!

 

 

「なぁ…良晴って絶対強いよな…」

 

あっという間に視界から消えた良晴とそれを追った百代

 

思わず呟いた大和の言葉に誰も反論はしなかった。

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