桜の許可なく僕に近付くことを令呪で禁じられていた筈のライダーが、僕の住んでいるアパートまでやってきた。
ライダーは桜を説得する為に、お人好しな衛宮に頼んで様々な衣装を着てもらって写真を撮影し、それを編集した写真集を桜にプレゼントしたらしい。
困っている人がいたら助けるのは当たり前だと思っている衛宮に手伝ってもらって成果を出したライダーは、桜が欲しいものを的確に用意したのだろう。
衛宮の写真集が欲しかった桜は妥協案として今日1日だけであるならと、ライダーが僕に近付くことを許可したようだ。
「お久しぶりですシンジ。まずは部屋に入れてくれませんか」
「アパート壊さないならね」
「邪魔なものでなければ壊したりはしませんよ」
「ドアノブとドアは邪魔じゃないと思うんだけど」
「私とシンジを遮る、悪いドアノブとドアでしたので」
「ライダーを僕の部屋に入れるのが、少し不安になってきたよ」
「大丈夫ですシンジ。私を信じてください」
そんなやり取りをしながらアパートの部屋にライダーを招き入れると、いきなりライダーが深呼吸を始めていく。
「どうしたのかな」
「いえちょっと、初めてシンジの部屋に入ったので、シンジが普段生活している部屋の空気を吸いこみたくなりまして」
「衛宮の部屋に入った桜と同じこと言ってるよライダー」
「なるほど、きっとサクラもこんな満たされた気持ちになったのでしょうね」
「何が満たされてるのかは分からないし、知りたくもないから言わなくていいよ」
「私の肺の中がシンジで」
「僕は言わなくていいって言ったよね!」
やっぱりライダーも変態なんじゃないだろうかと僕が思いながらもお茶を用意していると、今度は僕のベッドに勝手に寝転んだライダーが僕の枕に顔を埋めて匂いを嗅ぎ始めていた。
「より濃いシンジの匂いがしますね、これは良いです」
「いや僕のベッドで何してんだライダー!」
「会えない日々で想いが募り、考える前に身体が勝手にシンジの匂いを求めて行動をしてしまっていました」
「身体が勝手に動いてすることがそれってどうなんだろう。襲いかかってこられるよりは、かなりマシだけどさ」
「シンジ無しでは生きられない身体にされてしまいましたね」
「人聞きの悪いことを言わないでほしいね、いや本当に」
「私を惑わせるいけないシンジには私とあんなことやこんなことやそんなことをずっぽりとしてもらうしかありません」
なんてことを言いながら僕に飛びかかってきたライダーを拳で迎撃する。
やっぱりこんなことになったかと予想通りではあったが、アパートが壊れない程度の力加減で迎撃したことが良くなかったのか、ライダーは直ぐに復帰してきた。
「大丈夫ですよシンジ、優しくしますからね」
「初めては好きな人としたいって決めてるんで断るよ」
「おや、私は好きな人ではないのですね。これはとても傷つきました。傷ものにされてしまったので責任を取ってもらいましょう!」
「素早く服を脱ぎながら、にじり寄ってこないでくれるかな!」
服を脱ぎ捨てたライダーが迫り来る最中にもアパートを壊さないように手加減していると、ライダーに組みつかれてしまう。
上着を奪われて上半身だけ裸となった僕を見たライダーが、興奮で顔を赤く染めながら「やはりシンジは、とても良い身体をしていますね」と微笑んだ。
上半身裸で外に出る訳にもいかなくなったので、アパートの中で戦うしかない。
加減の必要がある此方が不利だが負ければライダーに、僕の貞操が奪われてしまうことは間違いないだろう。
まあ、負けてやるつもりは全くないけどね。
アパートを壊すような強い力が使えなくても僕には身に付けた技がある。
葛木先生から学んだ特殊な武術の動きで、必要なだけの力を込めた両腕を使い、ライダーを圧倒していった僕は、拳でライダーをノックアウトした。
その後はライダーに服を着せて、糸でぐるぐる巻きにしておき、間桐家にまで俵担ぎで運んでおく。
ライダーのそんな様子を見て「やっぱりそうなりましたか」と言っていた桜。
どうやら今回のライダーの行動は全て桜の予想通りだったらしい。
今回得したのは桜だけなような気がしたが、桜は今回何も悪いことはしていないので、僕も特に何か言うことはなかった。
まあ、次に衛宮を桜が襲おうとしたとして、僕が桜を止める時に、いつも以上に力が入ってしまうかもしれないが、それは些細なことだろう。
変態送り込んできやがってという気持ちがない訳ではないからね。