衛宮家に泊まった翌日、違和感を感じて飛び起きた僕は、衛宮が無事なのかを確認する為に全速力で移動する。
僕が向かった衛宮の部屋で見たものは、衛宮を背後に庇ったアーチャーと戦っている2頭身程度の小さい桜のような何かだった。
「慎二!桜が!ちっちゃい桜が居るんだけど!これは夢じゃないよな慎二!」
そう言ってきた衛宮は物凄く動揺していたが、無理もないだろう。
英霊であるアーチャーと真っ向勝負ができる小さい桜のような何かに、僕も戸惑いを隠せない。
「ああ、夢じゃないよ衛宮。僕も現実だと認めたくけど、これは現実だよ」
「そんなことを気にしている場合ではないぞ!早く手伝え慎二!こいつ相手に私一人では小僧を守りきれん!」
僕と衛宮の会話に割り込むようにアーチャーが救援を要請してきたので、小さい桜の背後から僕が接近してみると、僕を警戒して距離を取った小さい桜。
僕の方を見ながら「ニイサーン」とか言って指差してくる小さい桜は、声も桜だった。
しかしアーチャーと真っ向から戦える戦闘力は桜にはなかった筈だから、この桜に似た小さい生物は桜ではないと僕は思う。
正体が判明していない今は桜に似た何かだと考えるしかないが、とりあえず敵ではあるらしい何かを倒してから考えるとしようか。
それからアーチャーと僕が連携して相手をしていくと、あっさりと気絶させて倒すことができてしまったのは拍子抜けだったが、小さい桜のような何かは、僕のことを特に警戒し過ぎて動きが鈍っていたような気がする。
一応倒したとしても油断することなく僕の糸で小さい桜のような何かを縛っておき、身体の動きを封じておいた。
戦ってみてわかった小さい桜のような何かの身体能力では切ることができない糸で縛ってあるので、もう逃げることもできない筈だ。
気絶している小さい桜のような何かを揺さぶって起こしてみると、目の前に居る僕を見て「ニイサーン!ニイサーン!」と言いながら怯えているようだった。
怯えている桜のような何かが可哀想になったのか、衛宮が「お前が襲ってこないならこっちも何もしないぞ」と優しく話しかけて頭を撫でると「ウエヒヒヒヒ!センパーイ!」と喜んでいるようだった小さい桜のような何か。
小さい桜のような何かの反応が桜にそっくりだから、この謎の生物が明らかに桜に関係があるのは確かだろう。
実際に桜に話を聞いてみる必要がありそうだと判断した僕達は、衛宮家を出て間桐家に向かおうと玄関を開ける。
そこで僕達が目にしたのは、ピンク色に染まった空と、逃げ惑う男性達を追いかけ回している女性達の姿だった。
「大丈夫!大丈夫だから!大好きだから!」
なんてことを言いながら男性に飛び付く女性。
引き裂かれる男性の衣服。
「いやああああああああ!」
悲鳴を上げる男性。
そしてお姫様抱っこで全裸の男性を抱えると運び去っていく女性は満面の笑みを浮かべていた。
そんな惨状が至るところで行われている。
とりあえず僕達は、そっと玄関を閉めて衛宮家の中に戻っておくことにした。
「何だよあれ!何で冬木の女性があんな感じになってるんだ!桜や遠坂やイリヤにセイバーだけじゃなかったのか危険な女性は!そんなのは嫌だぞ!」
「落ち着け小僧!こんな時は騒いでもどうにもならん!騒いでどうにかなるなら幾らでも騒いでやろう私がな!」
「衛宮もアーチャーも落ち着こうか、ちょっとテンションがおかしくなってるよ。2人は冬木の女性が、あんな凄まじいことになっていたことについて何か知っているかな?」
「何も知らない。知ってたら直ぐに慎二に教えてるよ」
「知っていれば、とっくに私は小僧と共に冬木から出ている。あんな肉食獣のような女性達は、凛達以外では冬木で見たことがない」
「まあ、そうだろうね。僕も冬木在住だけど、あんな物凄い女性達は桜達以外では見たことがないよ僕も」
冬木で起こっている明らかな異常事態は、女性が男性を性的に狙っているというものだ。
どう考えても原因となるものがあることは確かだろう。
あれが普通の冬木の女性ということは間違いなくない。
「状況を整理しようか。まず最初に小さい桜のような何かが衛宮家に現れて、襲いかかってきた。その目的は衛宮だ。この小さい桜みたいな何かは明らかに衛宮を狙っていたからね」
「ああ、そうだ。確かに小僧を狙っていた」
「俺が狙われてた理由は何なんだろう」
「多分桜と同じ理由で衛宮を狙ってたんだと思うよ」
「そういえば俺が撫でたら桜と同じ笑い方してたな」
「もっと危機感を持て小僧。不用意に触れるな」
「はいはい、とりあえず衛宮に危機感が無いのはわかったから話を戻そう。僕達は小さい桜みたいな何かは桜に関係があると思って間桐家に向かおうとした。そうしたら女性達が男性達を追いかけ回しているのを目撃。危険だと判断して一旦衛宮家に避難。ここまではいいね」
「慎二の判断は、正しい判断だったと私は思うぞ」
「俺もそう思う」
「うん、ありがとう。それで問題はこれからどうするかだけど」
僕達がそこまで話したところで、衛宮家の呼び鈴が鳴る。
どうやら誰かが来たことは間違いないようだ。
僕が先頭で警戒しながら玄関を開けたところで、玄関の前に立っていたのは衛宮に似た髪の色をした女性だった。
「あっ、はじめまして藤丸立香と申します!」
挨拶をしてきた女性は、まともな状態であるらしい。
とりあえず僕達は彼女に話を聞いてみることにした。
「協力してくれそうな人が居ますよ」と言っていたらしいギルくんによって衛宮家に導かれたようである藤丸さんが言うには、この冬木が異常な状態になっているのは全て、誰かが持っている聖杯の影響であるそうだ。
また何か厄介事のような気がするが、藤丸さんに協力することに乗り気な衛宮とアーチャーだけを送り出す訳にはいかない。
僕も一緒に行くとしよう。