ライダーと僕の戦いは肉弾戦となり、凄まじい速度と威力で拳や蹴りの打ち合いをしていく僕達に近づけない様子だった他の全員。
此処が異界と化した間桐家でなければ余波で倒壊していたことは確実な攻撃を繰り返す僕達。
拳と拳が打ち合わされて、打ち勝った僕の拳がライダーの拳を弾き飛ばす。
そのまま蟲の力で強化された筋力で、僕は拳をライダーの腹部へと叩き込んだ。
吹き飛ぶライダーに追撃として振り下ろす蹴りを打ち込むと、床をバウンドして転がっていくライダーだったが、直ぐに立ち上がってきた。
打たれ強さが凄まじく強化されているところは冬木の女性達と一緒であるが、元が英霊だからか強化され具合が尋常ではない。
以前戦ったバーサーカー並みに強化されているライダーを相手に、僕以外では真正面から戦えないだろう。
しかし以前よりも僕は強くなっているので、対処できない相手ではない。
ライダーと組み合う形になった際に、僕の顔に自分の顔を近づけようと怪力まで発揮してきたライダーへと、頭突きを叩き込んで怯ませてから、ライダーの身体を持ち上げていき、異界と化している間桐家の床へとパワーボムで頭から叩きつける。
多少はダメージになったようで、ふらついていたライダーを再び持ち上げて、垂直落下式のブレーンバスターで床に頭をめり込ませておくと、流石にライダーも動かなくなった。
「それじゃあ先を急ごうか」
ライダーを倒してから皆に先を急ぐことを促していた僕に、間桐家内部を移動しながら話しかけてきた藤丸さん。
「見事なパワーボムとブレーンバスターでしたけど、慎二さんは、プロレス、お好きなんですか?」
僕がトドメに使った技がプロレス技だったので藤丸さんは、そう思ったのだろう。
「まあ、嫌いではないですよ」
嘘を言う必要はないと考えて、僕は正直に藤丸さんに答えておく。
なんて会話をしながら進んだ先にある桜の部屋から強い聖杯の反応があると通信が入ったと藤丸さんが教えてくれた。
やっぱり桜が原因なんだろうかと思ったが、冬木の女性がおかしくなった理由に説明がつかないような気がすると、落ち着いて冷静になった今なら考えられる。
衛宮狙いの小さい桜と間桐家が異界と化しているのは多分桜が原因だと思うけど、それ以外のことはまた別だと僕の勘が言っていた。
聖杯は本当に1つだけなんだろうか、なんて予想も思い浮かぶ。
まあ、桜が聖杯を持っていることは確かな事実であるようなので、後のことは聖杯を回収してから考えるとしよう。
という訳で桜の部屋の扉を開いてみると、小さい桜に椅子に縛りつけられた桜が、目の前で小さい桜達に衛宮グッズを好き放題にされながら血の涙を流しているという光景が目に入ってきた。
いや、うん、どうしてそうなったのかな。
とりあえず衛宮の写真やらぬいぐるみやらを舐め回していた小さい桜達を倒しておき、椅子に縛りつけられていた桜を解放してみる。
「兄さん!私の先輩グッズの仇を取ってくれたんですね!」
助けられた第一声が、それでいいのかと思わなくもなかったが、桜だからなあと納得した僕は追求したりはしない。
「桜は聖杯を持ってるんだろう?回収に来た人達がいるから渡しておきなよ桜」
「ああ、これですか。小さい私と先輩ならベストカップルになれるんじゃないかと願ったら物理的に小さい私が現れてびっくりしました。私の分身みたいなものなんですかね。何か沢山出てきましたけど言うこと聞かなくて困ってたんですよ」
なんてことを言いながら黄金の杯を取り出した桜は、明らかに使えない物を見るかのような目で聖杯を見ていた。
「こんなので良ければ渡しますよ拾い物ですし」
あっさりと藤丸さんに聖杯を渡した桜は、全く聖杯に執着してはいない。
聖杯が回収されたことで間桐家の異界化は治まり、元の間桐家には戻ったが、ピンク色に染まった空は変わらずそのままであり、冬木の女性達は相変わらず男性を襲っていた。
まだ終わりではないということだろう。
藤丸さんに再び通信が入ったようで、聖杯の反応があと2つあると藤丸さんに言われたが、僕の予想は正しかったみたいだ。
あと2つの聖杯を回収しなければ冬木は、ずっとこのままの状態ということになる。
それは避けたい、というか普通にこんな冬木は嫌だ。
それから僕達は一旦休憩ということで間桐家で料理や菓子を作り、藤丸さん達に振る舞っておく。
食べきれない分はタッパーに保管しておき、これから移動した先で食べようということになった。
聖杯の反応があるという場所を藤丸さんにナビゲートしてもらって向かった先にあるのは、アインツベルンの城に繋がる森。
広い森を抜けて辿り着いたアインツベルンの城は、明らかに外観が変わっていて、どう見ても豪華なラブホテルにしか見えない。
聖杯の反応が、あの城からすると言っていた藤丸さんとシールダーは、全くラブホテルを知らないようで特に反応はしていなかった。
衛宮もよくわかってはいないようで、アインツベルンの城の外観が何か変わったと思っているだけみたいだ。
実際にあれがラブホテルだとわかっているのは僕とアーチャーだけであるらしい。
「入りたくねえ!」という気持ちになっているのは、どうやら僕達だけのようである。
一応実年齢的には衛宮に話しても問題はないと判断して、こっそりと教えておくと「ここってそういう場所なのか」と顔を赤く染める衛宮。
知っておいてもらわないと将来連れ込まれそうになりそうだから、衛宮に教えておいたのは間違いではないと思う。
アインツベルンの城だった筈のラブホテルらしき建物に侵入することになった僕達は、入り口らしき場所で受付として待ち構えていたサーヴァントと対峙することになった。
「休憩コースでしょうか?お泊まりコースでしょうか?それとも私としっぽりずっぽり楽しむことをお望みですか?私としては是非とも最後を選んでほしいものです」
なんてことを言ってきたサーヴァントは尼僧のような姿をしていたが、顔は普通に大学での僕の友人の顔をしていた。
こんなところで何してんですか殺生院さん、と言いたいところだったが、英霊であるサーヴァントということは、平行世界の殺生院さんということだろう。
僕の知り合いの殺生院さんは、歳上に見られることを気にしているだけの、真面目で素敵な女性だ。
何かもう存在がアレな感じがしているこのサーヴァントの女性と殺生院さんを同じだと考えないようにしておくとしよう。