アパートの部屋で眩い光に包まれたかと思えば、いつの間にか見知らぬ場所に立っていた僕。
「名乗りとしてはサーヴァント、ファイターでいいのかな。何か気がついたら此処に居たんだけど、久しぶりだね藤丸さん。いやマスターって読んだ方がいいかなサーヴァントとしては」
そんな僕の目の前には藤丸さんが居て、僕の頭の中には何故かサーヴァントになっている自分の情報が流れており、ファイターのサーヴァントとして呼び出されたことがわかった。
「来てくれたんですね慎二さん」
僕が召喚されたことを喜んでいた藤丸さんは、以前特異点となった冬木で出会った藤丸さんであることは間違いない。
また別の平行世界の藤丸さんじゃなくて良かったと思っておこう。
藤丸さんが言うには此処はカルデアという場所であり、現在は特異点から聖杯を回収して、人理を修復していくことを目的としているらしい。
人類最後のマスターとしてサーヴァントを呼び出し、特異点で戦う藤丸さんは、呼び出したサーヴァント達と良好な関係を築けているようである。
出会うサーヴァント達が皆、藤丸さんと笑顔で会話している姿をみると、好かれていることが良くわかった。
藤丸さんとの約束を守る為に、案内された厨房でアーチャーと出会ったが、冬木に居るアーチャーと同一の存在でも、別人だと思っておいた方が良さそうだ。
ちなみに厨房のアーチャーは僕のことを見た瞬間に、卒倒した。
何でアーチャーが卒倒したのかがわからず、戸惑う僕に、気まずそうな藤丸さんが教えてくれた内容を聞いて納得する僕。
以前冬木の特異点に藤丸さんが向かった時、おかしくなった冬木の様子をモニターで見ていたアーチャーが精神的なダメージを受けて倒れたらしい。
僕を見たことでその時の記憶を思い出してしまったことが卒倒した原因だと推察できるが、アーチャーは硝子のように繊細な心を持っているようだ。
アーチャーが卒倒したことで厨房が稼働しなくなってしまったようで、食事を食べに来たカルデアの職員達やサーヴァント達が困っていた。
僕のせいではあるようなので、代わりに僕が厨房に立ち、料理を作ることにしたが、お詫びとしてデザートを1品追加してみると、物凄く好評だったことは確かだ。
「やっぱり慎二さんは料理上手ですよね」
なんてことを言いながら和食を食べ終えた藤丸さんに、約束通りおはぎを持っていく。
「やっぱりとっても美味しいですよ!このおはぎ!」
おはぎを食べてそう言うと嬉しそうに笑った藤丸さんに、自然と僕も笑っていた。
「約束、守ってくれてありがとうございます慎二さん」
「こうしてまた会うことになったからね。約束はちゃんと守るよ僕は」
「また会えて、嬉しいです」
「僕もそう思うよマスター」
「前と同じ呼び方で良いですよ」
「それじゃあそうしようかな、藤丸さん」
僕が藤丸さんと交流を深めている姿を見ていた2体のサーヴァントが、剣呑な視線を僕に向ける。
確かあの2体のサーヴァントは清姫と源頼光だった筈だ。
ぽっと出の僕へ藤丸さんからの好感度が高いことが気に入らないのかもしれない。
実際どうなのかは聞いてみないとわからないが、僕のことを敵を見るような目で見ているのは、気のせいではないだろう。
2体のサーヴァントから感じられる視線の種類は、嫉妬であることはわかる。
問題は、女性である藤丸さんを、清姫と源頼光が、どう考えてもそういう目で見ていることだ。
衛宮を見ている桜の目と完全に一緒ということは、あの2体のサーヴァントが藤丸さんを性的に狙っていることは確実だと僕は思う。
それでも今まで藤丸さんがそういう被害にあった様子がないのは、他のサーヴァントがストッパーになっていたということなのかもしれない。
あの2体のサーヴァントは今夜あたりに間違いなく行動を起こすつもりだ。
変態の相手と戦い過ぎて、何故か変態の行動まで予測できるようになったけど、正直あまり嬉しくはないね。
でもまあ、これから一緒に戦っていく藤丸さんが変態の餌食になるのは、僕は嫌だな。
まともな人には普通に幸せになってほしいと僕は思うよ。
だから、藤丸さんを狙う変態は僕が止めておくとしよう。
その日の夜、清姫と源頼光を止めようとするサーヴァント達よりも早く行動を起こした僕は、藤丸さんを狙う2体のサーヴァントの前に立ち塞がった。
「今日召喚されたばかりのサーヴァントが何の用ですか。これから私は身も心もぐっちょんぐっちょんにますたあと溶け合うのです。そして子を孕み、一姫二太郎と産み育てて幸せな家庭をますたあと築いてから沢山の孫に囲まれて大往生を」
「いや、女性同士では普通に無理ですよ」
家族計画を語る清姫に、僕は冷静に言葉を返す。
「道を塞ぐものは全て斬り捨てます。そして母は、愛する愛する我が子であるマスターと結ばれるのです。母はもうその時を考えるだけで果ててしまいそうで、ああ、母の愛する我が子。待っていてください直ぐに母と蕩けるまで愛し合いましょう」
「貴女は貴女でヤバい人ですね」
刀を構えながら身悶え、藤丸さんを我が子呼ばわりしているにも関わらず性的に狙っている源頼光に普通にドン引きながらも、僕は拳を握った。
なんてことがありながらも藤丸さんを狙っている2体のサーヴァントと僕の戦いは始まる。
勢いよく放たれる業火も鋭く振り下ろされる刃も、僕の守りを突破することはない。
真っ正面から突っ込んだ僕は拳を連続で叩き込んだ。
容赦なく全身に満遍なく拳を叩き込んで動けなくした僕は、糸を使って2体のサーヴァントを一纏めにして、清姫の部屋に叩き込んでおく。
ファイターのサーヴァントとしてマスターである藤丸さんを守る仕事をこなした僕は、用意された自分の部屋に戻っておいた。
アパートに戻る様子もないので、これからもサーヴァントとしてカルデアで頑張ることになるのかもしれない。
まあ、サーヴァントとしてだけではなく、間桐慎二としても藤丸さんには幸せになってもらいたいところだ。
だから、とりあえず僕ができることをしっかりとこなしていくとしよう。
さて、それじゃあ明日も頑張っていこうかな。