桜が逃げた場所の特定をするのにそれほど時間はかからなかったが、僕達が桜の元に向かうことをギルくんが止めてきた。
僕が居るから桜に負けることはないとしても、普通に倒しただけでは桜を元に戻すことはできないようだ。
聖杯で変化している訳ではない桜を元の状態に戻すには衛宮の力が必要らしい。
より正確に言うと、衛宮が投影できるキャスターの宝具、破戒すべき全ての符が必要みたいだ。
それを使わなければ特異点を攻略しても、桜は元の状態に戻ることはないようで、それはギルくんも避けたいようだった。
確かに妙な力を手に入れて無駄に強くなっている桜が、今後も冬木で野放しになるのは問題がある。
明らかに少年達を狙うであろう無駄に強い桜、そんな危険な桜を放置してカルデアに戻る訳にはいかない。
問題を解決できる衛宮と合流する為に、衛宮の居場所を知っているギルくんの案内の元、向かった先は間桐が保有している土地にある隠れ家。
間桐家に何かあった時の為の避難場所だと、以前お祖父様に教えられていた隠れ家に近付いたところで家から飛び出してきたのは、お祖父様であり、迷わず僕に抱きついてきたお祖父様。
「慎二!24時間23分54秒ぶりの慎二じゃ!冬木が妙な状態になって、桜が奇妙な状態になってしもうて困っておったところじゃったが、慎二が来てくれたのならわしは頑張れる気がするぞい!」
嬉しそうなお祖父様に僕がされるがままになっていると、隠れ家から素早くもう一人飛び出してきたが、それが衛宮であることは間違いないだろう。
「慎二!来てくれたんだな!」
僕が来たことに喜んでいる衛宮は無事であるようで、僕は少し安心することができた。
お祖父様と衛宮に詳しく話を聞いてみると、突如として冬木に異変が起きたことを悟った2人は、原因が何かは分からなくとも影のような何かに狙われていた少年達を助ける為に動いていたみたいだ。
少年達を助けている間に共闘することになったお祖父様と衛宮だったが、消耗してきた衛宮を休ませる為に間桐家ではなく隠れ家を選んだのは、少年達を狙っていた影のような何かを見て、桜が異変に関わっているとお祖父様が気付いたかららしい。
どんな時も冷静に判断できるお祖父様は、流石に歴戦の魔術師だと言える。
衛宮の力が必要であると頼んだ僕に、迷わず了承した衛宮は「友達に助けを求められたら助けるのは当然だ」と言った。
「わしも行くぞ慎二、人手は多い方が良いじゃろう」
お祖父様も着いてきてくれる気のようだが、僕と手を繋いでにこにこしているお祖父様を見た衛宮が競い合うかのように僕の手を握って手を繋ぐ。
更に何故か飛び乗ってきたギルくんを肩車することになり、そのままの状態で間桐家に向かうことになった。
「人気者ですね慎二さん」
微笑ましいものでも見るかのように僕の姿を見て、そう言ってきた藤丸さん。
「慎二さんは、カルデアでも子供系サーヴァント達に大人気ですからね」
少年の姿をした存在達に囲まれている僕の姿を見て、納得して頷いているマシュ。
「非常時に何やってんだお前」
呆れたような顔で僕を見ながら言う諸葛孔明さん。
そんなこともありながら辿り着いた間桐家。
カルデアからの通信によれば、聖杯の反応は間桐家からしているようで、間桐家の中に居るであろう桜が聖杯を持っていることは間違いない。
間桐家の中に入ろうかと考えていたら扉が開き、家から出てきた白髪で黒い服を着た桜が、お祖父様や衛宮とギルくんに囲まれている僕を見ながら血の涙を流す。
「兄さんはいつもそうですね!私に見せつけるかのようにショタっ子達に囲まれていて!何なんですか!ショタっ子逆ハーレム築いてるんですか兄さんは!妬ましい!恨めしい!そして何よりも羨ましい!その場所私と代わってくださいよ兄さん!」
「そうやって邪な目で少年を見ているし、邪な目的で襲おうとするから少年達は、皆お前から逃げていくんだよ桜」
「だってしょうがないじゃないですか!あんなにショタっ子達が可愛すぎるのがいけないんです!私はショタっ子が大好きなんですよ兄さん!だから私がショタっ子の膝をペロペロするのも当然のことですし、股間に顔を押し付けて未成熟な匂いを堪能するのも仕方のないことなんです!私は悪くないんですよ!」
「いやそれやったら、どう考えてもお前が百パーセント悪いよ桜」
こうして会話をしていると、僕の義理の妹は、やっぱり変態だとしか思えない。
話していると桜の義理の兄であることが嫌になってくるから、さっさと桜を元に戻して聖杯を回収してしまおう。
そう考えた僕は、お祖父様と衛宮に目配せして、間桐家に到着する前に決めていた作戦を実行することにした。
「キイイイイイ!ショタっ子と目で会話して仲睦まじさを見せつけるとか許せませんよ兄さん!今日こそ生まれ変わった私の力で兄さんに勝ってみせます!そして週6で私に謝らせ続けてやりますよ!覚悟の準備をしておいてください兄さん!」
影のような何かを操りながら僕に襲いかかってきた桜は、僕だけを狙っているようだ。
それは僕達には、とても好都合であったので、攻撃を僕だけに集中させるように派手に陽動することにした。
できるだけ僕が目立つように動いていき、お祖父様と衛宮の行動の隠れ蓑になるように、桜から伸ばされた影のような触手を乱暴に引きちぎっていく。
前に前に進んでいく僕だけに気を取られていた桜に、横合いからマシュと諸葛孔明さんが攻撃していくと、大きな隙ができた。
その瞬間に、お祖父様と衛宮が動き、衛宮が投影した歪な短剣である破戒すべき全ての符を持たせたお祖父様の蟲が桜へと向かう。
それを食い止めようと人の形をした影のような何かを幾つも生み出した桜。
しかし影のような何かはギルくんが放った武具達によって、纏めて消滅する。
お祖父様が操る蟲が持った歪な短剣が桜へと突き刺さると、桜が着ていた黒い服が消滅していき、桜の髪が白髪から元に戻った。
意識を失っている桜の隣に、黄金の杯が落ちており、今回の異変が起きた原因の一つである聖杯を僕が回収。
特異点はこれで元の冬木に戻るだろうが、桜という変態がいることには変わりはない。
それでも桜の戦闘力は下がったので、現在冬木に居る面々でも対抗可能な筈だ。
多分大丈夫だと思いたいところだけど、実際どうなるかはわからないかな。
まあ、大丈夫だと思っておこう。
聖杯を回収したことでカルデアに戻った僕達は、藤丸さんの召喚に立ち会うことにした。
今度は、どんなサーヴァントが呼ばれるのかと思っていたら、予想外の相手が召喚される。
「サーヴァント、アルターエゴ、ショタの気配を感じて参上しました!上質なショタの気配がしますね!これはもう堪能しなければなりませんよ!さあ、待っていてくださいショタっ子達!お姉さんとえっちなことしましょうね!」
なんてことを言いながら現れた白髪で黒い服を着た桜に僕は、とりあえずアイアンクローをかましておいた。
「イッタイ!アタマガァ!ここに兄さんもいるとか聞いてないんですけど!」
「僕もお前が召喚されるとは思ってなかったよ」
「本体じゃないとはいえ優しくしてくださいよ兄さん!」
「本体じゃないなら消滅しても構わないということだね」
「やぶ蛇でした!」
カルデアにまた変態が呼ばれてしまって、対処するのが物凄く嫌だなと僕は思ったけど、一応こんなのでも身内だから僕がどうにかしないといけないね。
うん、サーヴァントということは頑丈だから、もっと痛くしても大丈夫だろう。
僕は、桜に容赦することなく様々なプロレス技をかけていき、失神するまで技をかけ続けた。
それから少年の外見をしているサーヴァント達に、桜に絡まれたら僕を呼ぶように言っておく。
今後は、間違いなく彼等にも呼ばれることになると思うけど、それは仕方のないことだね。
桜の始末は、僕の仕事だ。