本体ではないけれど僕の世界の桜がサーヴァントとしてカルデアに呼び出されたことによって、冬木組のサーヴァントの中でもアーチャーとライダーが精神的なダメージを受けていたようだ。
ライダーは桜を見る度に「あれは平行世界の桜、あれは平行世界の桜」と自分に言い聞かせて平常心を保とうとしていたみたいだが、桜がいつも通りの言動と行動をすると「どうしてあの桜は、ああなってしまったのですか!」と頭を抱えていた。
アーチャーはアーチャーで、桜を見る度に「だいじょうぶだよとおさか、おれもこれからはがんばっていくから」と震え声で言いながら白目をむいていて、使いものにならない。
アーチャーとライダーがそんな感じになっていても全く気にしていない桜は平常運転であり、今日も少年の姿をしたサーヴァント達を狙っていた。
「そこの道行くショタっ子くん!ちょっとお姉さんとラブラブしませんか!お姉さんとしっぽりぬっぽりずっぽりとしましょう!具体的に何をするかは、実際にやってみてのお楽しみです!さあきみもレッツトライですよ!」
そんなことを言いながら少年の姿をしている諸葛孔明さんに近寄ろうとしていた桜の後頭部を掴んだ僕は、まるで万力のように徐々に力を加えていく。
「兄さん!頭が、頭が割れますってこれは!物凄く痛いです!」
「痛くしてるから当然だよ」
「ぐわああああああ!更に力が強くなってますって兄さん!」
「徐々に強くしてるからね」
「どうして妹に、こんな仕打ちをするんですか兄さん!」
「自分の行動に問題があることは自覚してないのかな」
「私の心に一点の曇りなしです!全てが正義ですよ兄さん!」
「じゃあ、どんな正義なのか言ってみなよ」
「ショタっ子の生足が見える半ズボンは正義ですって、おぐあああああああ!力が更に強まってえええええ!」
「うん、聞いた僕が馬鹿だったねこれは」
小一時間くらい桜への制裁を行ってから厨房に移動した僕は昼食を作っていった。
カルデアに居る面々全員分を作るのには慣れているので全く問題はない。
結構評判の良いデザートも忘れずにおまけにつけておき、全員にしっかりと昼食が行き渡ったことを確認してから、手早く自分の分の昼食も作っておく。
今日は本当はアーチャーが担当だったんだけれど、ちょうど朝に桜を見てしまったアーチャーが使いものにならなくなってしまったので僕が代わりに厨房を担当することになったが、原因の桜にあまり自覚がないところが何ともいえないね。
僕は変態でショタコンな桜しか知らないけれど、アーチャーやライダーが知っている平行世界の桜は、多分まともなんだと思う。
だからこそ、アーチャーとライダーは、そのギャップに苦しんでいるんじゃないかな。
それでもこの桜がショタコンの変態であるということをやめさせることは、聖杯を使っても不可能らしいから、それに関しては諦めてもらうしかない。
辛くても耐えてくれとしか僕には言えないけど、あんなのが身内じゃなくて良かったとでも考えておけば良いと思うよ。
僕は桜の身内だから、カルデアで身内が馬鹿をやらないように止めないといけないからね。
他の業務と合わせると結構多忙になったけれど、僕以外には桜が止められないんだから仕方ない。
僕がダ・ヴィンチに頼んで作ってもらい、少年の姿をしたサーヴァント達に渡しておいた防犯ブザーの音が今日もカルデアに鳴り響いたので、僕は音が発生している場所に向かって全力疾走する。
桜のターゲットにされていたのはラーマさんだったようで「僕には愛している妻がいるんだ!だから貴女に迫られても困るからやめてくれ!」と動揺しながら逃げていたラーマさんは、いつもの余という一人称ではなく僕と言っていて完全に素が出てしまっていた。
「ウエヒヒヒヒヒヒヒ!こんな美ショタが他人のものだと思うと興奮してきますね!みなぎってきました!私は身体だけの関係でも問題はありません!むしろばっちこいですよ!肉体的な接触をしましょう!沢山ねっちょりとしましょうね!」
なんてことを言っていた桜に、走っていた勢いをそのまま乗せたドロップキックを叩き込む。
「おぐふぁっ!」と声を上げて吹き飛んでいった桜。
「助かったぞ慎二!ありがとう!本当にありがとう!」と感謝をしてきたラーマさん。
「今の内に逃げといてください」
「ああ、そうしよう!助けてくれてありがとう慎二!」
逃げることを促した僕に再び感謝してきたラーマさんが逃げ去っていく姿を見送ってから、立ち上がってきた桜の前に僕は立ち塞がっておく。
「兄さん!立ち塞がるなら兄さんすらも私は倒していきますよ!すんばらしい美ショタっ子を兄さんのせいで逃してしまった私は激しい怒りに満ちています!覚悟しておいてください!今の私は阿修羅すらも凌駕する存在です!」
「そうなんだ、それじゃあ試してみようか」
僕と戦うつもりであるらしい桜の前で複数の蟲の力を解放して異形と化した僕を見た桜は「ヒィッ!兄さんが本気!」と完全に怯えていた。
さっきの威勢は何処に行ったんだと言いたくなるくらい腰が引けている桜は、微振動して震えているようだ。
「さあ、始めようか桜」
硬質な両拳を打ち合わせて、やる気充分な僕を前にして冷や汗で凄いことになっている桜が目の前にいる。
「あ、あの、手加減をお願いしてもいいでしょうか兄さん」
完全に怯えた様子でそう言ってきた桜は、どうやら僕に手加減をしてほしいらしい。
「じゃあ桜は、カルデアで美しい少年が目の前に居ても我慢できるかな」
「それはもう、勿論、全身で飛び込んで美ショタっ子を隅々まで堪能しますよ!」
「手加減なしで良いみたいだね」
「ああっ!つい勝手にこの口が本音を!許してください兄さん!悪気はないんです!」
「悪気はなくても欲望に正直過ぎるのが駄目だと思うかな。それじゃあ覚悟は良いね。お仕置きの時間だよ」
「いやああああああああ!消えたくないです!私はまだカルデアのショタっ子に何も出来ていないのにぃぃぃぃぃぃぃ!」
断末魔のような悲鳴を上げた桜に容赦なく連続攻撃を叩き込んでおき、結構ぎりぎりまで追い込んでおいた。
これで少しは懲りればいいが、サーヴァントでも桜は桜だから復活したらまた少年の姿をしたサーヴァントを狙いそうな気がする。
消滅させても桜本体が死ぬ訳でもないんだから、サーヴァントの桜は消滅させちゃっても良いんじゃないかと思わなくもないけどね。
まあ、勝手に僕がカルデアのサーヴァントを消滅させる訳にはいかないから、サーヴァントの桜への制裁は消滅しない程度にしておくとしよう。