桜のことを見たくないのか部屋から全く出てこなくなってしまったアーチャーに対して、ランサーのサーヴァントであるジャガーマンがアーチャーの部屋に突撃していくと、アーチャーに説教をしているようだった。
「貴方が引きこもっているから慎二くんが、いつも厨房で頑張っているのよ!慎二くんと交代で厨房で料理を作る約束をしていたんじゃなかったの貴方は!1度約束したことを守らないで貴方は何をしているの!あの桜ちゃんが嫌だからって、いつまでも逃げていて良いわけないんだから!逃げるのをやめなさい士郎!」
格好がふざけていても依り代の藤村先生に引きずられているのか、平行世界の衛宮であるアーチャーのことを士郎と名前呼びして説教をしているジャガーマンは、藤村先生にしか見えないだろう。
ジャガーマンに説教をされていても全く部屋から出ようとしないアーチャーに対し、完全に怒った様子のジャガーマンは「ジャガーパンチは破壊力!」と言いながらパンチでアーチャーの部屋の扉をぶち破る。
そのままアーチャーの部屋の中に侵入していったジャガーマンは、部屋の中に居たアーチャーに襲いかかったみたいだ。
「やめてくれ藤姉!」
「アタシは藤村大河という美人教師ではなくジャガーマンなんだニャー!」
「いや絶対藤姉だろ!」
「問答無用ニャー!へたれた士郎を叩いて直す!ジャガーマンがやらねば誰がやる!ジャガーキックも破壊力!」
「叩くというかキックじゃないか藤姉!グハァッ!」
荒ぶるジャガーマンに襲われて、殴る蹴るの攻撃をアーチャーは受けたらしく、部屋から強制的に叩き出されたようである。
そんなことがあったと何故か僕に相談しに来たアーチャーは、ジャガーマンから言われた言葉が気になっていたみたいで、気まずそうな顔で「今まですまない慎二」と謝ってきた。
「誰にだって嫌なことがあるのは当然だから、別にそんなに気にしなくていいよ」
申し訳なさそうに縮こまっているアーチャーに、特に僕は怒っていないことを伝えておく。
その日からアーチャーもまた厨房に立つようになり、アーチャーのその姿を見たジャガーマンも満足気に頷いていた。
ジャガーマンの行動は、それだけで終わりではなく、少年の姿をしたサーヴァント達を狙う桜を食い止めたりもしてくれていて、非常に僕の助けになっていることは確かだ。
「前までのアタシじゃ守れなかったけど、今のアタシならこの子達を守ることができる!桜ちゃんの好きにはさせないんだニャー!」
「この藤村先生何か強くないですか!」
「アタシは、藤村大河という美人女教師ではなくジャガーマンだニャー!さあ、かかって来なさい桜ちゃん!今宵の竹刀、じゃなくてグレート・デス・クローは一味違うわよ!」
「いや、やっぱり藤村先生ですよね!」
僕が到着した頃には、そんなやり取りをしていた桜とジャガーマンだったが、もしかしたらジャガーマンの依代になっている藤村先生は、僕達の世界の藤村先生なのかもしれない。
ジャガーマンとバトンタッチして桜を倒した僕は、気絶した桜を桜の部屋まで運んでいく。
ジャガーマンとの戦いで消耗していた桜は、いつもよりも更に簡単に倒せたので、後でジャガーマンには感謝をしておこう。
桜を運んでいる途中で、壊れた部屋の扉を直しているアーチャーを発見したが、アーチャーは物を直すことは嫌いではないのか楽しそうに作業をして扉を直していた。
こういうところを見ると衛宮はサーヴァントになっても、外見以外は全く変わってないなと思うね。
生き生きとしているアーチャーを邪魔しないように素早く通りすぎて、桜を桜の部屋のベッドに寝かせておき、僕も自分の部屋に戻ることにする。
部屋に戻る道を歩いていくと僕の部屋の前に、珍しい組み合わせのサーヴァント達が立っていた。
それは静謐のハサンとジャガーマンであり、静謐のハサンは何故かジャガーマンに期待の眼差しを向けていて、不思議に思っていた僕に気付いた2体のサーヴァントが僕に近付いてくるとジャガーマンが口を開く。
「静謐ちゃんの頭くらいは撫でてあげてもいいんじゃないかしら慎二くん」
そう言い出したジャガーマンは真剣な眼差しで僕を見ていた。
どうしてジャガーマンがそんなことを言い出したのかが気になったので詳しく話を聞くと、僕とあまり触れ合えていないことを気にしていた静謐のハサンが語った僕への想いを聞いたジャガーマンは、頭くらいは撫でてあげてもいいんじゃないかと思ったらしい。
マスターである藤丸さんに対してそれ以上の如何わしい行為をしようと考えている清姫や源頼光に比べれば、普通に触れ合いたいとだけ考えていた静謐のハサンを、ジャガーマンは手助けしたくなってしまったようだ。
まあ、頭を撫でる程度なら問題はないかもしれないと僕も思うし、そうしないとジャガーマンと静謐のハサンが帰ってくれそうにないので、僕は静謐のハサンの頭を撫でてみることにした。
静謐のハサンの頭に優しく手を乗せると、サラサラの髪の毛が手に触れる。
それすらも毒であるのだろうが、毒が効かない僕なら問題なく静謐のハサンに触れることができる。
僕が優しく手を動かして静謐のハサンの頭を撫でると、満面の笑みを浮かべて嬉しそうな顔になった静謐のハサン。
それを見ながら、うんうんと頷いているジャガーマンも嬉しそうに笑っていた。
もうこの際、静謐のハサンが満足するまで撫でておこうと思った僕は静謐のハサンを撫で続ける。
こうして珍しく落ち着いた時間を過ごしていた僕達の元に突撃してきたサーヴァントが1体。
「兄さん!妹を差し置いて他の女性の頭を撫でるとか兄として許されませんよ!」
現れたサーヴァントは気絶から復活した桜だったが、そんな桜が結構怒っていることがわかった。
原因は、僕が静謐のハサンの頭を撫でているからだろう。
兄である僕に妹の自分以外が撫でられているところを見た桜は、前にも不機嫌になったことがあったからね。
右手で静謐のハサンを撫でているので、左手は空いている。
「じゃあ桜も左手で撫でてあげるからこっちに来なよ」
「そんなことじゃ誤魔化されませんからね!私は怒っているんですよ兄さん!でもまあ、私は妹なので兄さんに撫でられるのは当然の権利ですから、頭を撫でられてあげます!優しくお願いしますよ兄さん!」
僕が桜を手招きすると怒りながらも素直に近付いてきて、頭を差し出してくる桜。
桜の頭も左手で優しく撫でておくと、険しくなっていた顔が緩んでいった桜は、徐々に嬉しそうな顔になっていく。
怒っていた筈なのに今では、すっかりにこにこしている桜は、久しぶりに僕に頭を撫でられて物凄く喜んでいた。
いつもこうだったらいいんだけどなと僕は思うよ。
それから2人が満足するまで頭を撫で続けていた僕は、3時間くらい撫で続けることになったけど、普段より精神的に疲れていないので問題はない。
僕に頭を撫でられていた静謐のハサンと桜を通りすがった藤丸さんが見た時、羨ましそうな顔をしていたような気がするのは、気のせいだったんだろうか。
まあ、実際どうなのかは藤丸さん本人に聞いてみないとわからないだろうし、今度時間があれば聞いてみるとしよう。
僕の勘違いだったら恥ずかしいからね。