様々なサーヴァント達が存在するカルデアで、僕が子供系サーヴァント達に頼まれたホットケーキを作っていると、視線を感じる。
見られていることはわかっているので、視線を感じた方向を見てみると桜の姿があった。
食堂からじっと厨房に居る僕を見ている桜は、僕と目が合うとにっこりと笑う。
多分桜もホットケーキを食べたいのかもしれない。
何故なら桜は「私にもおやつ作ってくださいよ兄さん」と言わんばかりな顔をしていたからだ。
食堂で待つ子供系サーヴァント達にホットケーキを持っていってから、桜の元にもホットケーキを運ぶと嬉しそうな顔をしていた桜が「ありがとうございます兄さん」とお礼を言ってきた。
「やっぱり兄さんが作ってくれるおやつは、いつも美味しいです」
ホットケーキを食べながら笑顔でそう言ってきた桜に、僕も悪い気はしない。
昔もこうやってせがんでくる桜におやつを作ってあげたら、とても喜んでいたかな。
ホットケーキを食べ終えたらしい子供系サーヴァント達が、僕を囲んでお礼を言いながら背中に飛びついてきたり、真正面からぎゅっと抱きついてきたりしたが、それを見ていた桜は面白くなさそうな顔をしていた。
僕と触れ合っていた子供系サーヴァント達に向ける桜の視線には確かに嫉妬が混じっている。
「兄さんの妹は私ですよ」と桜の顔が間違いなく言っていたが、流石に子供系サーヴァント達に怒るのは桜も大人げないと理解しているようで、桜は我慢しているみたいだ。
しかし、子供系サーヴァント達が立ち去ってから現れた殺生院さんの発言と行動によって、怒りを抑えていた桜ダムは一瞬で決壊することになったらしい。
「私が注文するのは貴方です。さあ、部屋に行きましょうか。大丈夫です、何も心配はいりません。直ぐに気持ちよくなりますよ。気持ちよくなったらもう合意の上での行為と見なしても構わないという有識者からの情報もあります。合意でなければ合意にしてしまえばいいのですね。私、滾ってまいりました!これは是非とも静めてもらわなければいけません!」
なんてことを言いながら僕に飛びかかろうとしてきたサーヴァントの殺生院さんへと、桜から伸びた影のような触手が巻きつき身体の動きを一時的に止めた。
「兄さんに何しようとしてるんですか!」
怒っていた桜は殺生院さんに影のような触手を更に巻きつけていき動きを完全に止めようとしていたが、影のような触手を引きちぎったサーヴァントの殺生院さんは素早く僕に近付いてくる。
「脆いですね、この程度では私は止まりませんよ」
笑みを浮かべながら接近してくるサーヴァントの殺生院さん。
僕はサーヴァントの殺生院さんを拳で迎撃すると同時に、糸を伸ばして殺生院さんを縛り上げていくと、口にも糸を巻いておき喋れないような状態にしておいた。
喋れないようにしておかないと運んでいる最中に変態発言が連発されてしまうからだ。
サーヴァントの殺生院さんを運ぶ前に、一応僕を殺生院さんから助けようとしてくれた桜にも礼を言っておこうと思った僕。
「僕を助けようとしてくれて、ありがとう桜」
それだけ言ってサーヴァントの殺生院さんを担いだ僕に向かって、若干照れている桜が誤魔化すように早口で喋りだす。
「べ、別に兄さんがその人とそういう感じになったら嫌だなって思った訳じゃないですからね。そうです、これはカルデアの風紀を保つ為に行動しただけですので、実は兄さんに最近構ってもらえなくて寂しい私の前で何やってんですかという怒りがあったなんてこともありませんよ。そこらへんは勘違いしないでくださいね兄さん」
早口で言い切った桜は、完全に本音が漏れていたが、そこは兄として追求しないようにしよう。
ジャガーマンが桜を止めてくれるようになったので、確かに最近は桜に構うことが減っていたのは確かだ。
義理だとしても兄と妹ではあるので、たまにはもう少し桜を構ってあげてもいいかもしれないね。
という訳でサーヴァントの殺生院さんを彼女の部屋に運んでから、桜を構ってあげることにした。
食堂から部屋に戻っていた桜の部屋に行くと、僕が部屋に来たことを驚きながらも嬉しそうに迎え入れた桜。
「桜はカルデアで生活していて困ったことはないかな?」
まず最初に桜に聞いてみたのは、カルデアで生活していて困ったことがないかどうかだ。
何か困ったことがあって、それが改善していけるものなら改善していきたいからね。
僕からの問いかけに少し考えた様子だった桜は、はっきりと答えを口にする。
「カルデアでの生活で特に困っていることはありませんね」
桜は本心から言っているようなので本当に困っていることはないのだろう。
「まあ、藤村先生や兄さんのせいでショタっ子達と懇ろな関係になれないのは不満と言えば不満ですけど」
これも桜が本心から言っていることは間違いないけど、内容が内容だからなあと思いながらも「それについては諦めようね」と言っておく。
「私が諦めるのを諦めてください兄さん」
何故か自慢気にそんなことを言ってきた桜の頭に軽いチョップを入れておいた。
「痛いじゃないですか兄さん」
「うん、何か自慢気に言ってきてたから、自慢気に言うことじゃないよって僕からのツッコミだよ」
「うう、兄さんが苛める」
「そう言いながらも顔が笑ってるよ桜」
こうして落ち着いて桜と会話をするのも久しぶりで、自然と僕の顔も穏やかになっていたらしい。
しばらく桜と会話を続けていき、様々なことを話したが、そろそろ夕食を作らなければいけないので桜の部屋から出ることにした僕。
部屋を出ようとする僕に桜が最後に問いかけてきた内容は真剣に答えるべき内容だった。
「兄さん、兄さんには、大切な人はいますか」
桜からの問いに、思い浮かんだのは沢山の人々の顔。
だから僕は、こう答える。
「沢山いるけど、その沢山の中にはお前も入ってるよ桜」
そう答えた僕は桜の頭を一撫でして桜の部屋から出た。
僕の答えを聞いた桜は、とても嬉しそうな顔をしていたかな。
そんなことがあった日の翌日、いつものように子供系サーヴァント達に囲まれていた僕のところに突っ込んできた桜が、子供系サーヴァント達と張り合うかのように僕にくっついてきた。
「兄さんの妹は私です!」
ぐりぐりと頭を僕に擦り付けながら子供系サーヴァント達に言い放った桜は、晴れやかな顔をしていたことは確かだ。
うん、でも大人げないからちょっと落ち着こうか桜。