間桐慎二は一人で暮らしたい   作:色々残念

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第8話、弓兵

現れたギルくんに向かって突撃していきそうだった桜を、とりあえず糸で縛りあげて動けないようにしておく。

 

「うおおおお!ギルくん!うおおおお!」とか言いながらギルくんに少しでも近づこうと悶える桜は、明らかにヤベー奴だった。

 

そんな桜の惨状を見て苦笑いしながら「ありがとうございます慎二お兄さん。あの人は苦手なので」と言ってきたギルくんは、普段と全く変わらない。

 

サーヴァント2体を数多の武具で串刺しにしておきながら普段と変わることのないギルくんは、普通の少年ではなく、英霊である可能性が高いだろう。

 

ギルくんを見て驚愕しているお祖父様が「第4次聖杯戦争で現れたアーチャー、しかも受肉しておるじゃと!」と言うと「お主ら!相手は英霊じゃ!外見が少年じゃろうと油断するでないぞ!」と他の面々に警告した。

 

「慎二お兄さんには僕から正体を教えたかったんですけどね、御三家の魔術師が混ざっているなら正体がバレるのも仕方ないですか」

 

残念そうな顔をしたギルくんは、そう言いながら指を鳴らす。

 

金色の波紋がギルくんの背後から幾つも広がり、波紋からは数多の武具が切っ先を現していく。

 

身体を貫かれたままのアーチャーが「全投影待機!」と言い出すとギルくんの背後から現れている武具と同じ武具が空中に投影されて浮いていた。

 

「僕が出した原典を複製しましたか、それでは採点をしてあげましょう」

 

ギルくんのその言葉が聞こえた瞬間「全投影連続掃射!」と叫んだアーチャーに合わせるかのように放たれた数多の武具達がぶつかり合う。

 

弾かれた武具が金色の波紋に沈んで回収されていき、弾き返した投影品は砕けて消滅していった。

 

「それほど質の高いものは出していませんでしたが、全て弾き返されましたか、やはり貴方は厄介ですね。初手で動きを封じていて良かったと思いますよ」

 

「くっ、全員逃げろ!私が時間を稼ぐ!」

 

油断の欠片もないギルくんを相手に焦っているアーチャーが全員に逃げろと言ったが、そう簡単には逃がしてくれそうにない。

 

僕達は、そんなことを思っていたけれど、予想に反してギルくんは「そこの糸に巻かれた人を連れていってくれるなら、サーヴァント以外の人は逃げても良いですよ、慎二お兄さんは置いていってもらいますが」と条件を出してくる。

 

よほど桜の存在が嫌なんだなと思った僕は、その気持ちはわからなくもないと考えていた。

 

「慎二を置いていけじゃと!そんなことをするぐらいなら、わしは戦うぞ!」

 

「そうだ!俺だって戦う!」

 

戦意に満ち溢れているのはお祖父様と衛宮だけで、他の面々は逃げたいと思ってるのは丸分かりだったけど、例外として桜はギルくんを見ながら「兄さんだけズルイですよ!」とか言っていたな。

 

桜の口にも糸を巻いておけば良かったかもしれない。

 

「戦うなら戦うで構いませんよ」

 

にっこりと笑うギルくんの背後の金色の波紋からは、先ほどよりも凄まじい数の武具達が姿を現していく。

 

あれだけの数を全て弾き返すのは、今のアーチャーでは不可能であるようで、アーチャーは険しい顔をしていた。

 

「ちょっとギルくんに質問があるんだけど、良いかな?」

 

一触即発の空気を変える為に、ギルくんに話しかけてみると、普段と同じ反応が返ってくる。

 

「何ですか慎二お兄さん、答えられることには何でも答えますよ」

 

「ここで僕がギルくんと一緒に残ったとして、僕は死んでしまうような目にあうのかい?」

 

「そんなことはしませんよ、いつもあの人から助けてもらっている慎二お兄さんに仇で返すようなことはしませんから」

 

「じゃあ僕に残ってほしい理由って何なのかな?」

 

「それは慎二お兄さんに話したいことがあるからですかね」

 

「今は話せないってことだよね」

 

「ええ、現代の魔術師には話せないことです」

 

「ということは現代のじゃない魔術師のキャスターには話せることになるのかな」

 

「お察しの通りです、だからキャスターを助けました」

 

「厄介事?」

 

「厄介事ですね」

 

「そっか」

 

ギルくんから話を聞いてみたいと思った僕は「とりあえず皆は退避してもらってもいいかな、僕は残るよ」と言っておく。

 

「ギルくんは嘘をつかないから、僕が死ぬような目には合わないと思う。だから皆は僕が帰ってくるのを待っていてほしい」

 

それだけ言った僕に言いたいことがあったのかもしれないけれど飲み込んだお祖父様と衛宮は、僕の帰りを待っていてくれるようだ。

 

退避していった全員を見送ってから、ギルくんが用意した結界らしきものに閉じ込められたアーチャーとライダーが苦々しい顔をしていた。

 

キャスターと僕を連れて柳洞寺にあるという大聖杯の元へ向かうギルくんに着いていきながら話を聞いていくと、どうやら大聖杯は汚染されているらしい。

 

それでもキャスター程の魔術師なら扱うことができると言ったギルくんは、キャスターに大聖杯で願いを叶えさせるつもりのようだ。

 

第4次聖杯戦争では願いを叶えられることなく聖杯が破壊されたらしく、魔力は貯まったままで残されていたようで、それが第5次聖杯戦争が早まった理由でもあるとギルくんは語ってくれた。

 

キャスターの願いは受肉であり、その願いだけでは使いきれない魔力が残ってしまうそうだ。

 

「慎二お兄さんには何か叶えたい願いはありませんか?」

 

そう聞いてきたギルくんに答える願いは、決まっている。

 

「桜と遠坂をまともにしてほしいかな」

 

それだけ叶えてもらったら、僕は安心して一人暮らしできるよ。

 

「それは叶えられないみたいですよ。魔力が足りないみたいです」

 

「どれ位足りないのかな」

 

「英霊500体分くらいの魔力が必要みたいですね」

 

「桜と遠坂は、いったい何なんだろう」

 

あの変態をまともにするのに、そんなに魔力必要とか、どういうことなんだろう。

 

こんなの絶対おかしいよ。

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