1986年…ある一つの種族が、人間界へと侵入した。その名はファンガイア。
硝子細工のような模様が施された者達がライフエナジーを求めて人間を襲う。だが、人間だけじゃない…別の種族にさえもその牙を立てる。
彼らはファンガイアを封印することで、事なきを得たが…人間はそうではなかった。
とある協会…そこではシスター達が神へ祈りを捧げていた。神へと祈りを捧げるのはいつもの日常…だが、其処に悪魔の手が忍び寄ってきていた。
「神父様…?」
一人のシスターがそう言う。いつもは微動だにしない程の神父が、今日に限って俯いているのだ。
もしかしたら具合が悪いのでは…?そう思って声をかけたのだが、それが間違いだった。
「…餌の、時間だ。」
「…え?」
その瞬間、シスターの後ろから牙が突き立てられ倒れる。倒れたシスターは体が透明になっていき、やがて服だけ残して消えた。
その瞬間、他のシスター達から悲鳴が上がる。逃げようと入り口の扉に手を掛けようとするが、何故か開かない。
必死に逃げようとしているシスター達の目の前で神父は、蜘蛛のような姿をした『スパイダーファンガイア』へと変貌した。
そう、この協会は既にファンガイアによって格好の餌場と化していたのだ。
「いやあぁぁぁぁ!!」
「助けてぇぇぇぇ!!」
叫ぼうと、涙を流しながら足掻こうと…助かる術などありはしない。非力な少女達は神に祈る事すら許されずに捕食されていく。
残った数人のシスターも、次は自分なのかと…絶望していた。
「神よ…どうか…我々に救いを…!」
そんなシスター達を嘲笑うかのようにスパイダーファンガイアはゆっくりと近づいていく。もう駄目かと…そう思っていた時、突然ドアが開くと同時に何かが飛んできた。
それはスパイダーファンガイアを数歩ながらも後退させ、怯ませる事に成功した。
その何かで攻撃したのは、シスターの服装をしたじょせいであった。
「神は…一つだけ大きな過ちを犯した。それは、貴様達のような悪魔を産み出した事だ!ファンガイア!その命を、神に返せ!」
そう言いはなった女性に対してスパイダーファンガイアが襲いかかる。女性は身を翻して攻撃を避けて、再び何かで攻撃を仕掛けてくる。
が、一度喰らえば次は警戒するものだ。スパイダーファンガイアは糸を作り出して外へと脱出する。女性は後を追い掛けるも、もうそこにファンガイアの姿など無かった。
時は進んで2008年…ファンガイアの驚異など全く感じさせない時代で、鋭い程の音が鳴らされた。
「2度と話し掛けないで!この最低男!」
「はっ!俺の素晴らしさが分からん馬鹿女に興味なんざねぇんだよ!
それに、はなっから俺と付き合う気すら無い癖して良くもそんな事が言えるもんだな!
お前との付き合いなんざこっちから願い下げだ!」
男女の喧嘩…それにしては自棄に中身がドロドロしてそうでしてないような喧嘩だ。女性は青年に踵を返すようにして去っていく。
青年は自分の部屋に寝転がる。
「(どいつもこいつも金目当てに寄って来やがって…!あんな女と付き合うなんざ考えただけでも寒気がするぜ!)」
この青年は、所謂金持ちだ。だからと言って無駄遣いするわけでもなく、節度を保って正しく使っている。
何処からか家の情報を仕入れてきた女性を突っぱねながらも、裕福でも貧乏でもない生活を送っていた。
『なぁ、東司。お前ってホントに女運が無いよな。』
「違うんだよ、キバット。世の中の女が俺を見る目が無いだけさ。
金だけに目が眩むような馬鹿共なんかと付き合いたくないからな。」
『だから女運が無いって言ってるんだよ…ハァ。』
今喋っているのは蝙蝠のような機械生物であるキバット。俺の友達であり、同居人だ。俺が幼い頃から一緒に居るため付き合いは長い。
因みに俺の名前は月影 東司だ。
「何だよ、そのため息。」
『別に?』
俺は何処か可笑しなキバットから目をそらして飾られているバイオリンを見る。
「(……親父が作ったバイオリン。未だに、これ以上のバイオリンなんて見かけたことなんて無い。)」
俺の親父はバイオリン作りの天才だったらしく、作られた作品の中にも億単位で取引される程のやつも有るらしい。
その代わり、演奏は全然駄目だったらしいけど。
『このバイオリンか。確かにすげぇよなぁ…。」
キバットもまたこのバイオリンには関心を示しており、会ったこともない親父の作品が他にどんなのがあるのかが知りたくなった時期が有ったことを思い出した。
とても懐かしい思い出だ。
思い出に浸るのもこれくらいにして…
「じゃ、バイオリンを作るか。」
そう言って早速、作業に取り掛かる。東司は自分の父親に追い付くために今日もバイオリン作りに正を出す。
が、それを阻むかのように不協和音が鳴り始めた。
「……またか。」
少しイラついたように立ち上がった東司は外に出る。キバットもまた俺に付いていくかのように外に出て空へと羽ばたいていく。
東司の目は、真っ直ぐの道を見ている。その先に何が居るのか分かるかのように。
「…ふぅぅぅぅ。」
どしゃっと音を立てて崩れ落ちる体。それは女性の体であり、透明になっていた。
「餌…もっと餌を…!」
あの時、女に邪魔をされ餌を食べ逃してしまった。シスターのような純粋な心を持った者のライフエナジーが何よりのご馳走だと言うのに…!
スパイダーファンガイアは、他の獲物で食い繋ぎ、2008年の時代まで生き延びていた。
「あの人間め…!」
と、次なる獲物を探そうとした時に…目の前に東司が現れた。
「お前か。俺のバイオリン作りを邪魔したのは。」
「貴様の事情なぞ知るか!…だが丁度良い。俺の糧となれ。」
「…やなこった。どうせなら腹減ってうるせえ奴がいるし、お前をあいつの餌にしてやるよ。
キバット!」
『よっしゃあ!俺様の出番だぜ!』
天空から現れたのはキバット。そのキバットは、東司の手の中に収まるともう片方の手に噛みつく。
『ガブッ!』
東司の体に噛みついて、『魔皇力』を流し込む。本来、ただの人間にそんなのを流し込めばどうなるかなんて分かったものではない。
しかし、東司は動じない。顔に、硝子細工のような模様が現れると…それを見たファンガイアの表情が歪んだ。
「変身!」
腰に現れた鎖が止まり木のようなベルトを作り上げ、そこにキバットを装着するようにセットする。彼の体は、鎧に包まれ…彼をもう一つの姿へと変化させた。
それは、ファンガイア達に伝わる王の鎧。キングだけに許された筈の鎧…。
人はこう呼ぶ…『仮面ライダーキバ』と。
「!?」
「かなり不本意だけどなぁ…俺は王として、悪さしてるお前らを倒さなきゃならねぇんだ。
恨むとしても俺を恨むんじゃねぇぞ?」