ごちゃまぜメガテン レギュレーション<ロバ> 作:FD一枚ケルベロス
リンゴ「仲魔GO!」
フリン「持ってますよね、まだお金。ほら跳びなよ、あ、動けないんだったね、ごめんごめん。で? まだもってるんだっけ?」
ヒロト「シェルターをまず漁ります」
フツオ「こんなところにアサルトナイフが~」
ピアス「学校の備品は生徒のものだろ?」
今日も今日とて幽霊団地で境界線を
あのLV13スライムみたいなリスキーエネミー*1さえ回避すれば、凄い気をつければ勝てる。
最初の数日で飛鳥もLV2まで上がり、引き続きLV1のスライムを狩りながら、次にLV3のガキをもアイテムを使いながら連日倒し続けた。
ガキの大半は火炎弱点仕様でかえんびんが特に通じたし、スライムは特に弱点の破魔もさすがに破魔矢(一般販売品)では効果がないことが確認出来た。
「やっぱり既製品のお土産ものじゃ駄目だな。アナザービジョンでなら破魔相性入ったはずだけど、年季のある神社とかで作ったやつか奉られてた奴じゃないと魔力足りてないっぽい」
「玲衣は破魔矢拘るよな。楽に倒せるのはいいけど、そんな欲しいもんか?」
「初期の破魔矢なら
「なんだって??」
とそんなことをいいながら、互いのお小遣いをじわじわ溶かしながら悪魔を殴る。
手に入るドロップ品は大体魔石ぐらいだが、悪魔との会話も出来なければ、精々割合ぐらいのダメージ回復では今のところ使えない。
ごくごく稀に悪魔からこぼれ落ちたきずぐすり……アナライズした結果、キズぐすり(劣化)と表示されたものが出てくるぐらいで、それも消耗品。
ゲームと違ってお金は落とさない。宝石を落とす最弱悪魔のピクシーは見当たらない。
これがドラクエだったら宝石類とかが魔物の核になってるとかそういうのだけど、手に入るのは黄金のようなコイン……マッカだ。
魔界で流通している通貨であり、欲望の溜め込まれた結晶品。
様々なことを利用も出来るが、何かに使える時も来るだろうと飛鳥と山分けしてちょびちょび溜めていく。
そんな悪魔退治に慣れた頃。
「レベル3から上がらないんだけど」
飛鳥のレベルアップが止まった。
玲衣のレベルが6に上がり、そろそろガキ以外も探さないとなと考えていた矢先のことである。
団地の奥にいけ? 回復アイテムも仲間一人だけで奥に行ったらパトる未来が見える。
「なんで? ボク普通にレベル上がったんだけど」
ビックバンバーガーで安いハンバーガーをもそもそ齧りながら玲衣が首を傾げる。
転生して前世の時代よりも前なのにスマホもネットも普及化してるこの世界で、唯一平成初期らしさを感じさせる値段だった。
「ナビだから早めにレベル上がりやすいかも? っていってたけど、俺だけストップしてるのおかしいと思うんだ」
「ふむ? う~ん、レベルが停止かぁ」
(……レベルが上がらない? 上がらないといえば初期シリーズの悪魔だけど、飛鳥は人間だし、メシア教徒とかガイア―ズ、あとイシュタル信者とか狂人みたいな人間の仲間カウントされてる? いやそれはゲーム仕様だろ、それならそもそも3まで上がる方が不自然……リアルで考えろ)
「ちょっとまってね」
カバンにいれているチャート用の手帳をめくる。
「5レベルじゃなくて、3レベル……確かなんかそれっぽいネタがあったような……あ。原因わかったかも」
「原因って?」
「
「れ、霊格?」
「うん。多分飛鳥はさ、覚醒が中途半端だったのかもしれない」
手帳に記入したレベル1~3【愚者】というメモを指でなぞって、玲衣は飛鳥の目を見ていった。
「おし、明日はレベル上げじゃなくて探索にいこう」
「どこに?」
「上野」
その翌日。
ガタンゴトンと揺れる電車の中で二人はいた。
東京吉祥寺から二駅、山手線に乗り換えて遠出していた。
「さて、本日はここで探索します」
上野駅の改札を出て、くるりと振り返りながら玲衣は告げた。
吉祥寺にある聖城学園から数十分程度の距離だけど、見慣れない街だと思うと遠くに来た気がする。
(山手線内だから*3出来れば立ち寄りたくなかったけど、ここで得るものが今後のボクたちには必要になる)
そのためのリスクを覚悟する。
「探索って、何を探すんだ?」
言われるままに用意した大型のナップザックを背負って、飛鳥は首を傾げる。
「古物商とか質屋、あと古本屋かな。あともしかしたら露天にもあるかも、定番だし」
「……定番?」
飛鳥の横に近づいて、玲衣は小声で囁いた。
「マジックアイテム探しだよ」
魔力の籠もったアイテムがいるのだ。
覚醒するためには。
◆
真・女神転生RPGという最初期のメガテンTRPGがあった。
基本システム、誕生編、覚醒編などのバージョンがあって、その系譜というかスピンオフとして新世紀黙示録とかもあった。
一番メジャー? だった魔都200Xシリーズや、ちょっと影が薄かった真3ノクターンのTRPGもあったけれど、どれもこれも基本はマニアックなルルブ。
そして、真・女神転生RPGは現代伝記アクション……当時の現代だけどを背景に、コンシューマー版とは関係なしに遊べるようにルールや設定が設計されていた。
どっちかというと原案のデジタル・デビル・ストーリーとか、ディープなオカルティズムに密着していた奴というか、<霊格>という概念が出てきたのもここからだ。
いわゆる
プレイヤーキャラとなる悪魔と戦える人間はレベル0の愚者から、レベル1になった異能者になって、そこから少し強くなって覚醒者って呼ばれる上位の霊格になる。
それの足切りラインがLV5だった。
PCキャラが5レベルの異能者から覚醒イベントを踏んで、その次の覚醒者として霊格を上げられるようになる。ちなみに超人は40レベルから成れるけど、それは当分先だからおいといて。
だからレベル上げとかでひっかかるなら5レベルだと思っていたのだ。
だけど飛鳥はレベル3で止まった。
となれば考えられる理由は一つ。
200Xとか、コンシューマーじゃなくて、真・女神転生RPG準拠。
それでは
そうしなければレベル自体上がらない、はず?*4
(まあ検証データがまだボクと飛鳥しかいないんだけど、うん)
実際にどうなっているかは検証するしかない。
この世界に攻略本はないのだ。手探りに探すしかない。
上野に来たのもそう。
真・女神転生 光と闇の鎮魂歌*5において、上野にはマジックアイテムが入手しやすいという設定があったからだ。
(まあそこから先はノープランなんだけど……わかんないって言うわけにはいかないもんね)
そう。
自信満々に勢いで上野まできたが、玲衣に根拠はない。あるのはメガテン知識だけだ。
精々覚醒した人間だからとか、一応ナビタイプのペルソナに目覚めてるからそれでなんかひっかかるじゃろうーみたいなノリで。
ついこの間から、現在進行系でただの女子高生である玲衣にそういうオカルトがわかるとか鑑定知識があるわけがないのだ。
「おほ、おほほ」
「?」
自分を鼓舞するように笑う玲衣に訝しげな目で見つめて、まあいつものことかと飛鳥は流した。
まあ本当に困ったらなんか言ってくるだろという幼なじみの悟り。
それから二人は駅前からウロウロと上野を巡った。
ネットが使えても玲衣にとっての衛星からのナビはまだ使えないし、メジャーな観光スポットとかでない骨董品屋なんて足で探すしかない。
人の流れに従って、ほえーとなんかあるかなっと路地を覗き込む玲衣に、あっこれノープランだと気づく飛鳥。
それでも雰囲気がありそうな古本屋に入って、なんもわからんと唸りながらも手が出せない値段に二人でびっくりしたり。
骨董品店の店前に置かれた大きな古狸の置物に、こんなのがリアルに! とぺちぺち触る玲衣に、写メで取る飛鳥だったり。
覚醒してもなんとなく疲れる足休めに、いい感じの喫茶店に寄ろうとして値段が高いハイソな雰囲気に恐れおののいたり。
そんなこんなで。
「なあこれ、マジックアイテム見つけてもバイトかなんかして稼がないと無理じゃね?」
「ふふふ、気付いてしまったか」
「わかるわ」
結局いつものファストフード店で足休め。
オープンテラス席でシェイクを啜りながら玲衣が唸った。
「まあなんとかなるはずなんだよ」
「根拠は?」
「異能者までの覚醒方法ならね。魔力を秘めたアイテムとのせ――あ、まただ」
外を見ていた玲衣が、ふっと視線を下に目を落とす。
両手で抱えるシェイクに見つめる玲衣の反応に、被っていた帽子のつばを摘みながら飛鳥は小声で囁いた。
「またか?」
「うん……覚醒者がいる。それも
声を潜めるように囁いたのは慎重さと僅かな恐怖。
上野の町中に、何人ものレベルが高い人間が歩き回っていた。それも結構なレベルの
「――<ヴォルヴァ>」
呟くは北欧神話、名もなき預言巫女の名。
探るのは反応、エネミーソナーの意識。
(……店の外に1人……向こうの道路に2人と2体……駅前に6,いや8人。周囲の探索用? 悪魔が飛んでる、認識を下げるスキル? どれもレッドだ)*6
戦えば死ぬようなレベル差がある怪物が何人も町中を歩いている。
自分たちがまだザコ助だとしても、それだけでれっきとした確証がある。
(共鳴は、ない? ペルソナ使いはいない……共鳴を隠せるだけの達人がいるかもだけど……ここはメガテン世界なのは間違いない。問題はこの数……やっぱりデビサマルート? 真シリーズ路線なら、ゴトウ食い止められるほどの悪魔使いは多くなかった、かもしれないけど)
普段の地元だとそこまで目立たなかったが、都心部の駅前まで出るとやはりいる。
覚醒した人間が。
レベルのない愚者――一般人に紛れるように強大な力を秘めたものが、遠目に見れば奇抜な格好で、妙に美しい男女のパートナーを連れている。
――ANALYZE――
(種別……造魔。あっちは英雄? 小説版ソルハカのウラベタイプが主流ってこと、悪魔を連れてる。レルムじゃないのにそういうもんなの?)
どれも見た目からしてただの人間のカップルにしか見えないが、ペルソナに覚醒し、アナライズの霊視能力を得た玲衣から見れば異質感は隠せない。
まだサポートスキルも初歩の初歩の僅かな回復と、<エネミーサーチ>*7もどきを使えば、浮かび上がるように位置がわかった。
この上野だけでも愚者以外の力がある人間がいる。
ただし、その大半が飛鳥や自分たちと同じかそれ以下だ。
(一般悪魔使いならこんなもんなのかな……? てことはあの強い反応はファントム幹部とか、クズノハ幹部とかだった?)
「……い、おい」
「やっべ下手したら遭遇して町中なのに万能合戦祭りとかしないよね」
「おーい、玲衣」
「キョウジスペシャルはやばい、キョウジスペシャルはやばい。まだ装備揃ってないのに、うごごご」
「おい」
「あいた!」
チョップを食らう。
「正気に戻ったな、そろそろ混んできたしいくぞ」
「う、うん」
二人分のトレーを持って立ち上がる飛鳥の後を、慌ててパーカーを羽織り直しながら玲衣が追いかける。
「あんまり深く考え過ぎんなよ」
ゴトンとダストボックスに残った紙くずを放り込みながら、飛鳥は言った。
「な、なにが?」
「なんかあっても壁ぐらいにはなれっからさ。もうちょい頼れよ」
飛鳥は歩き出す。
「ん、どした」
五歩も歩いて、すぐに後ろに玲衣がいないことに気付いて振り向いた。
玲衣の足が止まっていた。立ち止まっていた。
「おい、なにかあったか?」
左右を軽く見てから慌てて駆け寄って。
「ばか」
軽く飛鳥の胸を叩いた。
「うぼふっ?!」
つもりだったが、レベルが違う。
思わずむせる飛鳥の横をすれ違うように玲衣は飛び出した。
「飛鳥のくせに調子のんなー!」
その顔は真っ赤だった。
「そういえば聞き損ねたんだけどさ、なんとかなるってどうすんだ? 金ならないぞ」
「お金がなくても多分なんとかなるんだよ。ケースにさえ入ってなければ」
「……盗むのか? いやあ、さすがにそれはちょっと」
「違うわ! 覚醒は簡単なんだよ」
「魔力の籠もったアイテムに接触さえすれば愚者は覚醒するから」
愚者が覚醒するルートは9つ
・悪魔の一時的憑依
・悪魔に襲われたショック
・事故
・祖先霊の出現
・導師との出会い
・前世の夢の暗示
・修行を体験する
・アルコール含む薬物のトリップ
そして、魔力を秘めたアイテムに触れること。