コミュ症を拗らせ過ぎた結果、もうひとりの人格を生み出してしまったぼっちちゃんの話   作:モルモルネク

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山田リョウはよく見ている

 

「アー写を撮ろう!」

 

「あーしゃ……?」

 

『……ってなんでしょう?』

 

 下北沢の駅前に集った結束バンドのメンバー達、全員集合したことを確認するなり虹夏さんはそう本日の目的を告げてみせる。指でフォーカスを作って見せる虹夏さんの姿は掛け値なしに可愛らしいが、聞き馴染みの薄いその単語にわたし達は揃って首を傾げていた。

 

「アーティスト写真のことだって」

 

「な、なるほど……」

 

 喜多さんがすかさず補足を入れてくれたことで、その意味を理解できた。アーティスト写真、いわゆる宣材写真を撮るということ。確かに、アー写という一般人には縁の無い代物を用意するのはかなりバンドっぽい気がする。それに結束バンドが発足したこの瞬間だからこそ、写真という形でその姿を残しておくのは大事なことだろう。理に適った虹夏さんの提案に、意識の底で何度も頷きたい気分である。

 

「今ある結束バンドのアー写には、ぼっちちゃん写ってないしね」

 

「今ある……?」

 

「この前ライブやる為に撮ったやつだけど、見る?」

 

 こちらが返事をするまでもなく、リョウさんは自分のスマホに写したアー写をこちらに見せてきていた。明るくピースをする虹夏さんに、それに合わせることもなくマイペースに撮られているリョウさん。そして端っこに後から合成された真顔の喜多さんという、一目で何か不都合があったのだと理解できてしまう悲惨なアー写がそこには写し出されていた。

 

「ほら喜多ちゃん逃げちゃったから……」

 

「ごめんなさい!」

 

『こんな酷いアー写初めて見た……でも、もう一人の私が居なかったら学校の集合写真とか、私もこんなのばっかになってたんだろうな。目に見える黒歴史を生み出さなかったことに、感謝!』

 

『いや、流石にそんなことは……あるかもしれませんけど』

 

 ひとりさんはいたって真面目、だからズル休みをすることはないと思う。しかし、緊張や対人経験不足から意識を失って集合写真に写り損ねる姿は容易に想像できてしまって、その自虐を否定し切ってあげることができなかった。

 

 ひとりさんの言う通り、小学の後半や中学校の集合写真には大抵わたしが写っていて、集合写真の中で一人だけ宙に浮いてるようなひとりさんの姿は一つも存在していない。安心してアルバムを見れるとひとりさんは喜んでくれているけど、それが本当に良いことだったのか。最近のわたしには、わからなくなってしまっている。

 

「そういう訳で今日は天気も良いし、皆の予定も空いてたからアー写撮っちゃおうかなって」

 

「あっ、え、外で撮るんですか……?」

 

「スタジオで撮るのはお金がないから無理」

 

 ひとりさんの懸念を、虹夏さんが間髪入れずにぶった斬る。本格的な宣材写真のようにフォトスタジオを借りて、プロのカメラマンを雇うのには相当お金がかかる。ライブをする為にバイトでお金を稼いでいる結束バンドには縁遠い話であり、外で自主撮影というのは当然の選択だった。

 

 お金がなくても不自由なりに、皆で工夫してやり繰りをしていく。ひとりさんにとってはハードルが高いかもしれないけれど、青春っぽくてわたしは良いと思うのだ。

 

『下北の街中で写真撮るなんて陰キャにはハードル高すぎる……!で、でも、今回はもう一人の私を頼るのも良くないよね……』

 

『そうですね。ずっと形として残るものですから』

 

 結束バンドの一員であることを自覚して、多少困難でもそのバンド活動は自分が進んで行うべきなんだという前向きな意思表示。少し前のひとりさんなら発することがなかったであろうその一言に、大きな成長と少しばかりの寂しさを感じながらもわたしは小さく頷いた。

 

「まぁ外じゃなくてSTARRYでも良いんだけど、アー写ってバンドの方向性とかメンバーの特徴を一枚で伝える大切なものだからさ。どんな所で使われてもインパクトがある感じにしないと」

 

「だそうだ」

 

『そういう訳ですので、ここは一つ写真撮影も一緒に頑張ってみましょう?』

 

『う、うん!』

 

 虹夏さんがアー写の重要性を語り、リョウさんがそう取ってつけたかのように結論付ける。わたしとしてもそんな大切な写真に部外者として写り込んでしまうのは忍びない。ひとりさんにそう持ちかけると、戸惑いつつもはっきりと肯定をしてくれた。

 

「わ、わかりました。私も覚悟を決めます」

 

「覚悟……?」

 

 ひとりさんの声音は真剣そのもので、まるで大一番の試合に挑むかのような覚悟で満ち溢れていた。写真の撮影に臨むには大袈裟過ぎるかもしれないが、やる気があるに越したことはないだろう。空回りしたとしても、その瞬間だって青春の一枚となるはずだ。

 

「よーし!それじゃアー写撮影の旅に、レッツラゴー!!」

 

 本日もいつも通り、リーダーの虹夏さんによる号令でつつがなくアー写撮影のための下北沢巡りは開始された。

 

 階段、フェンス、植物の前にそして公園、あと良さげな壁。虹夏さん曰く、金欠バンドマンのアー写撮影の定番スポットを巡りながら、その都度思い思いの構図で四人での集合写真を撮っていく。

 

 ひとりさんも不慣れな写真撮影におっかなびっくりとしながらも、友達と一緒に街を歩いて同じ写真を共有するという初めての出来事に感動しているようだった。喜多さんや虹夏さんと交流し時折笑みを浮かべていて、純粋に楽しんでいる様子が伝わってわたしとしても一安心だ。

 

 肝心の写真写りに関しては、猫背で俯きがちな姿勢と長めの前髪のせいであまり良くはなかったけれど、それも含めてまたひとりさんの特徴であり個性とも言えるだろう。ひとりさんにとって既に結束バンドの活動は日常で、今更わたしがフォローできることなんて多くはないのかもしれない。

 

 なんて、そんな油断をわたしが抱いた時に、唐突に事件は起こったのである。

 

「それにしても、喜多ちゃんはどの写真も可愛いね〜」

 

「そんなことないですよ」

 

 撮影のために訪れた公園。そこで今までに撮った写真を振り返りながら、虹夏さんがしみじみとそう呟いた。喜多さんは一緒にスマホで撮影した写真を覗きながら謙遜して、リョウさんはあまり興味がないのか一人で気ままに遊具で遊んでいる。

 

 リョウさんと一緒に遊具で遊ぶような勇気はまだないのか、ひとりさんも自然と虹夏さん達に近寄っては控えるようにして話に耳を傾けていた。

 

『確かに。喜多さんの写真写りは抜群に可愛いですね』

 

『よ、陽キャと陰キャの格の違いを見せつけられている……』

 

 結束バンドはアイドル売りをしても通用してしまいそうなほど皆さん可愛らしく綺麗だけれど、こうして写真で見ると喜多さんが頭一つ抜けて煌びやかに見える。自分の魅せ方を熟知しているというか、撮影に対する圧倒的な余裕と強者の風格が喜多さんからは感じられた。恐るべし、SNS担当大臣の実力である。

 

「あるある!なんていうか、写真慣れしてるって感じで」

 

「ああ、それは良くイソスタに写真あげるからかもです。ほら!」

 

「おおー、流石SNS担当大臣」

 

 話の流れのままに、喜多さんはわたしたちにも見えるようにスマホでイソスタのページを見せてくれる。その内容は圧巻で、映えを意識したスイーツや友達とのテーマパークでの一時等の画像が煌びやかに並んでいた。そんな中に、ギターの画像やひとりさんの一部だけを写したツーショットが並んでいることがなんだか嬉しい。喜多さんが大切にしているものの内に、バンドやひとりさんが含まれていることが肌で感じられるから。

 

『うっ、直視し難い……イソスタどころか、私は友達と写真なんて一度も撮ったことないし。これが人生の積み重ねの違い?残酷すぎる……』

 

『……ひとりさんはこれからじゃないですか。今日から結束バンドの皆さんとたくさん思い出作っていきましょう、ね?』

 

 しかし、その輝きはひとりさんの目には毒だったようで大きな精神的ショックを受けてしまっていた。ひとりさんのプライベートの写真は殆どなくて、スマホのフォルダにあるのはふたりと撮ったものがごく僅かだけ。わたしが協力しようにも、現実としておかしな自撮りが増えるのみで虚しいだけだった。

 

 ひとりさんは今が青春真っ盛り。暗い過去で苦しむことはせずに、これからの楽しい時間を大切な人と歩んでいって欲しい。そうしてくれたらきっと、わたしという存在も報われるはずだから。

 

「そうだ、ぼっちちゃんもイソスタ始めてみたら?喜多ちゃんと仲良いんだし!」

 

「是非!イソスタでも友達になりましょ。今後バンド活動をしていくなら、メンバー個人のアカウントあった方が良いと思うし!」

 

「私が……イソ、スタ……?」

 

 話の流れで、なんの悪気もなしにひとりさんにイソスタを勧めてくる虹夏さんと喜多さん。だが、ひとりさんにとってSNSとは敢えて避けてきていた話題であり、その承認欲求を刺激して止まない劇物である。それが突然に、ひとりさんをダイレクトに横殴りしてしまっていた。

 

 わたしがマズいと思った時には既に手遅れであり、いつの間にかわたしの視界は小さな衝撃と共に、澄み渡る青空を映し出していた。直立していたひとりさんの身体がゆっくりと穏やかに後ろに倒れて、その身を地面に投げ出してしまっているのである。

 

「あばばばばばばばばばばば……!!?」

 

「うわっ!?ど、どうしたのぼっちちゃん!?」

 

「後藤さん大丈夫!?しっかりして!!?」

 

 突然ぶっ倒れて、奇声を上げながら痙攣するひとりさんを目の当たりにして、虹夏さんと喜多さんも非常に混乱してしまっている。ある程度ひとりさんの変わった部分を知っている虹夏さんはともかくとして、喜多さんの狼狽えようは凄いもので。今にも泣き出しそうなほどひとりさんの身を案じてくれており、大事ではないと知ってしまっているわたしとしては罪悪感で胸が痛かった。

 

 そう、最近は鳴りを潜めていたけれど中学生まではこういうアクシデントがよくあったのだ。青春コンプレックスを刺激されショックを受けたひとりさんが一時的に意識を手放し、わたしが慌てて身体を引き継ぐという事件が。本来なら倒れる前にわたしが身体の主導権を得るのだけど、久しぶりということもあり対応が遅れてしまった。完全にわたしが油断していたせいであり、猛省するしかない。

 

『ひとりさん、もしもーし……やっぱりダメそうですね』

 

「あばばばばばばばばば」

 

 一縷の希望を持ってひとりさんの意識確認をしてみるも、返事はなし。経験則として、これくらいのショックなら数十分程度でひとりさんの意識は戻るので大きな問題ではない。問題があるとすれば、その数十分をどうやって繋いでいくのかだ。

 

「せ、先輩!救急車、救急車呼ばないと!?」

 

「喜多ちゃん落ち着いて!多分だけど、ぼっちちゃんのコレそんな緊急事態じゃないと思うから」

 

「そう。ぼっち、面白いからたまに変になるだけ」

 

 慌てふためく喜多さんを、虹夏さんと騒ぎを聞き付けて戻ってきたリョウさんが落ち着かせてくれている。二人の言う通り、時間が経てば元に戻るので喜多さんが心配するようなことは何もない。しかし、このまま放置では本当に喜多さんが救急車を呼んでしまいかねないし、何より申し訳が立たない。

 

 緊急事態故に仕方なしと判断。わたしは意を決し、身体の主導権を得てその身体をむくりと起き上がらせた。

 

「お、ぼっち復活した」

 

「うぇっ!?ちょ、ちょっと怖いかも……」

 

 脈絡なく再起動を果たしたわたしの姿を見て、虹夏さんが少し怖がっていた。他人から見れば前触れもなく人間に電源が入ったかのような奇妙さを感じるだろうし、虹夏さんの反応も仕方ないものだろう。この場合、何事もなく受け入れてしまっているリョウさんがあまりに大物過ぎる。

 

「後藤さん、身体は大丈夫?痛いところとかない?」

 

「は、はい。大丈夫です……身体は何ともありませんので。心配かけてしまって、すいません」

 

「そう……よかったぁ」

 

 尚も心配し続けてくれる喜多さんに向けて、ぺこりと頭を下げて何ともないと身体の無事を告げる。すると喜多さんは心の底からほっとしたように安堵の表情を浮かべてくれて、やはりひとりさんは大事にされているのだとわたしの胸の内は温かくなった。それと同時に、そんな人の前に別人のわたしが立ってしまっている気まずさのようなものも、ひしひし感じているけれど。

 

「ぼっちちゃん今のってアレだよね。前言ってた青春コンプレックスがどうたらってやつ」

 

「はい。SNSはどうにもわたしには眩しすぎたみたいで……ご迷惑をおかけしました」

 

「やっぱり。ぼっちちゃんってこういう一面もあるから、喜多ちゃんも気にしすぎないように!」

 

「は、はい!今日はもうイソスタの話はやめておく事にしますね……」

 

「ぼっちの生態、相変わらず面白い」

 

 地面に倒れたことで付いてしまった土の汚れをハンカチで払いながら、虹夏さんの言葉に同意する。流石はひとりさんについての理解が深い結束バンドの面々、先ほどのおかしな挙動すらもあっさりと受け入れて流してくれるのは本当に頼もしい。

 

 ひとりさんだけでなく、わたしも個人的にSNSについては苦手意識が強いので控えてくれるのは正直ありがたい。匿名を維持したまま全世界に自分のことを発信できるツールなんて、わたしが触れてしまったら一体どんな嵌り方をしてしまうか自分でも想像がつかない。ひとりさんの健全な生活を守るためにも、わたしが手を出すことは生涯ないだろう。

 

「じゃあぼっちちゃんも復活したことだし、アー写撮影再開しよっか!」

 

 虹夏さんのその一言に、思わず顔が引き攣りそうになるのをなんとか抑える。わたしがこうして皆さんの前で表に出てくるのは、バイト初日以来のことで。あの頃と比べて虹夏さんとリョウさんはずっとひとりさんのことを知ってくれただろうし、その上に普段から一緒に過ごす機会の多い喜多さんまで加わってしまっている。端的に言ってしまえば、ひとりさんのフリを貫き通せる自信が今のわたしにはこれっぽっちもなかった。

 

 でも、そんな泣き言を吐いたところでわたしには頼れる相手なんていない。このアー写撮影を無事成功させるためにも、ひとりさんが戻ってくるまでの数十分程度、なんとか気合いで持たせて見せようと思う。

 

 わたしもひとりさんに倣って、写真撮影には分不相応な程の覚悟を決めるしかなかった。

 

 

 ◇

 

 

「はい、後藤さんはコーラで良かったよね?」

 

「……ありがとうございます」

 

 撮影スポット探しの道中、丁度良く自動販売機を見つけたので水分補給がてら休憩を取る事になった。わたしが何か言う暇もなく、喜多さんはわたしの分のコーラを購入して手渡してくれる。ひとりさんの好物で、わたしはあんまり得意じゃない微妙な関係にある飲み物。それを一思いに呷っては、バレないように息を吐く。

 

 あんな歌詞を書いてしまった昨日の今日で、皆さんの前にのうのうと顔を出してしまっているのが本当に肩身が狭い。わたしは今どんな表情を浮かべているのだろう、ちゃんと笑えているのだろうか。

 

 いやだから、そもそもとして常にニコニコしているのは本来のひとりさんの実像からは程遠い。無意識で愛想笑いを浮かべた無様な現状に思い至り、わたしは激しく引きこもりたい衝動に駆られた。この体たらくでは、本当に間を持たせられるのか早くも先が危ぶまれる。しっかりしよう、わたし。

 

「後藤さん、そんな日差しの強い場所にいちゃダメよ。ほら、こっち来て?」

 

「ど、どうも……あの、喜多さん。わたしこれでも結構身体は丈夫なので、そんなに心配していただかなくても大丈夫、といいますか」

 

 喜多さんに手を引かれては日陰に誘導される。人見知りしがちなひとりさんに喜多さんがあれこれと世話を焼いてくれるのはいつものことだけど、今日は過剰なまでに甲斐甲斐しい気がしてならない。やはり先ほどの事件が尾を引いているのだろうかと、わたしは元気ですとアピールをしてみる。

 

 実際、ひとりさんの身体は健康そのもので、体調を崩したりするようなことは滅多にない。強いて言うならば、ずっと部屋に引きこもりギターを弾いているせいであまり体力がないくらいだ。

 

「そ、そうよね……私ったら余計なお世話ね、ごめんなさい」

 

「いえ、気遣っていただけるのは嬉しいですから」

 

 楽しげに談笑する虹夏さんとリョウさんの隣で、わたし達の間にどこか気まずい空気が流れている。ひとりさんだったらこうはならない。ひとりさんは暗くて自虐的だけれど、それを重苦しく感じさせない不思議な人柄の良さがあって、それをわたしは持ち合わせていないのだ。

 

 せめてもっと気の利いた言葉を言えたら良かったのだけれど、喋りすぎれば今度はわたしという人格のボロが出てしまいそうで、行動に移す決断はできなくて。八方塞がり、その代価を喜多さんに押し付けてしまっているようで心苦しかった。

 

「今の後藤さん、なんだか学校で一人で過ごしている時に似てるっていうか……いつもより儚げでつい、心配になっちゃって……私、変なこと言っているわよね、後藤さんは後藤さんなのに」

 

「……それは」

 

 喜多さんはわたしの想像以上に、ひとりさんという人物についての理解を深めているのかもしれない。それこそ学校でのわたしを見て、後藤ひとりのパーソナリティに違和感を抱いてしまうくらいには。その違和感が目の前にも急に現れて、戸惑っているのがはっきりと感じ取れてしまう。わたしは結束バンドの皆の前に極力現れるべきじゃない、改めてその考えを補強するべき材料となった。

 

「……心配しないでください。わたしはわたし、ですから」

 

「うん、そうよね」

 

 せめて少しでも喜多さんを安心させられるように、一つだけ確かな言葉を告げて見せれば、喜多さんは浮かない表情を拭って頷いてくれた。わたしは単なる補助で、ひとりさんの人生がひとりさんのためにだけあるのは変わらない。喜多さんの友達を濁らせるようなことはしない、それだけがわたしの確約できる唯一普遍の事実だから。

 

「それはそれとして、もう夏も近いし後藤さんも帽子とか用意してみるのはどうかしら?後藤さんの髪は長くてとっても綺麗だし、麦わら帽子とか映えると思うのよね。合わせて服装もガーリーに仕上げれば……もうっ!一緒に買いに行きましょ!」

 

「き、機会がありましたら……是非」

 

 湿気った雰囲気を振り払うように、喜多さんはファッションの話題を出しては陽キャ特有のキラキラ視線かつハイテンションでそう持ちかけてきた。喜多さんと夏服の調達がてら一緒にショッピング。とても魅力的で心惹かれる内容だが、そう思うのはあくまでわたしだけなので安易に頷くわけにはいかない。

 

 季節の変わり目の衣替えが理解できず、万年ジャージで過ごしているひとりさんにとっては非常に危険なイベント。それこそ、今日のように何度気を失ってしまうかわからない。いつかそういうのにも慣れて、喜多さんと仲良くショッピングできるようになる日が来ることを祈るばかりだ。

 

「そ、そういえば、今日楽器を持ってこなかったのは少し勿体なかったかもしれませんね」

 

「確かにねー。楽器を構えてた方がより一層バンドらしくなったかも……」

 

「君たちはね!」

 

 話を逸らすために、話題を再びアー写撮影へと戻すと意外にも虹夏さんが力強く割り込んで来ていた。珍しくもしかめ面を浮かべて、物申したいことがあるとその態度がありありと表現されている。心当たりが全くなく、わたしと喜多さんは顔を見合わせて首を傾げるしかなかった。

 

「絵になるのはギターとベースだけで、ドラムは可哀想なことになるんだよ。手に持つのはドラムスティックだけになっちゃうんだから!」

 

「可愛いじゃん」

 

「自分は関係ないと思って好き勝手言いおってからに……」

 

 まさにバンド内でのドラムあるある、とでもいうのだろうか。わかりやすいまでに可愛く拗ねている虹夏さんの姿を見ると、くすりと笑みが溢れてしまう。しかし、各々が楽器を構えている中で一人だけがドラムスティックを構えている光景にどこか強い既視感も覚えて、ここ最近の記憶を振り返ってみることにする。

 

 その結論はすぐに出た。というか昨日の出来事であり、わたしの描いた絵の中の虹夏さんがまさにその状況にぴたりと合致してしまっていた。可哀想なドラムをこの手で再現、重罪である。

 

「ごめんなさい、虹夏ちゃん」

 

「え、何でぼっちちゃんが謝るの?」

 

「わたしは虹夏ちゃんにだけドラムスティックを持たせた重罪人です……」

 

「一体何の話!?」

 

 虹夏さんがこれくらいのことで怒らないのは十分に理解しているが、若干でも他人のコンプレックスを刺激したケジメとして謝罪をしておいた。バンドの楽器の中ではドラムだけ飛び抜けて持ち運びにくく、扱いづらい。他にもドラム故の孤独はいくつもあるのかもしれない。今度描く機会があるのなら、面倒くさがらずにドラムも描いてあげようと心に決めた。

 

「ああいえ、妹にバンドの絵を描いてあげたことがありまして。……その時に、つい手間だからとドラムの描写をサボってしまったんです」

 

「なるほどそういう……いいよいいよ!ドラムの絵なんて描くの大変だろうしさ。というか、やっぱりぼっちちゃん真面目だねぇ」

 

「ぼっち、妹いたんだ」

 

「今いくつくらい?きっと後藤さんに似て可愛らしいのよね!」

 

「あ、はい。名前はふたりで今年五歳に――」

 

 それからしばらくの間、わたしとひとりさんの妹であるふたりの話題で持ちきりとなった。写真を見せたり、ふたりの可愛らしいエピソードを紹介したりと、正直に言えば妹語りをすることを心の底からわたしは楽しんでしまっていた。

 

 でも、ふたりに対する気持ちはひとりさんもきっと同じ。だからコレはわたしとひとりさんの総意とも言えるはずで、多少は許されるだろう。そう信じたい。

 

「ぼっちちゃんみたいな優しいお姉ちゃんがいつも一緒に遊んでくれてさ、ふたりちゃんは嬉しいだろうねぇ……」

 

「それが、わたしが逆に元気付けられることも多いくらいで。わたしの自慢の妹です」

 

「ぼっちちゃんのその表情、久しぶりに見たかも。……ぼっちちゃんもさ、立派なお姉ちゃんだよ、うん」

 

 あの打ち上げの時に見せてしまったわたしの面影、忘れかけていたそれを虹夏さんは再びわたしを通して思い出してしまっている。本来は忌むべきことのはずなのに、満更でもないと感じてしまっている自身の心の内がどうしようもなく気持ち悪い。

 

 そして、そんな優しげな言葉をかけてくれる虹夏さんの表情は言葉とは裏腹に、どこか遠い過去を懐かしむかのように寂しげなものだった。それは初めて出会った日、家族の話をした時の表情とよく似ていて。そんな隠れた虹夏さんの内面に、踏み込む勇気も権利もわたしは何一つとして持ち合わせていなかった。

 

「よし!そろそろ休憩は終わりにして、撮影場所探しに戻ろっか」

 

 気が付けば、虹夏さんの顔は既に結束バンドのリーダーとしての明るいものに戻っていて。再び先導して前を歩く虹夏さんに続くようにして、わたしも黙ったままその後ろをついて歩く。

 

 今更他人の内面に触れる権利が欲しいなどと、駄々を捏ねるつもりはない。ないのだけれど、誰にも気付かれることなくただ覆い隠された虹夏さんの感情がどこかわたしの存在とだぶついて見えて。何となく、悲しげな気分に浸りたくなった。

 

 

「あっ、こことかどうですか?結構下北沢らしいと思うんですけど」

 

 しばらく街並みを歩いていると、喜多さんが一つの空き屋に目を付けて足を止める。空き家の外壁には様々なバンドのポスターやフライヤーが貼られていて、その退廃的な雰囲気はまさに下北沢らしいと言える様相であった。

 

「そこ、前までよく行ってたCDショップだった」

 

「えっ?」

 

「レコードショップもライブハウスも、どんどんなくなるねー」

 

「昔ながらの店が、どんどん消えて行く」

 

 リョウさんは眉一つ動かすことなくなんてことないように告げていたけど、わたしには少しだけその声色が悲しそうに感じられてしまった。自分は変わらず好きで居続けたはずなのに、周囲は絶えず変化し続けていく無情さへの悲哀とでも言うべきか。わたしにも馴染み深い感情で、つい共感してしまう。

 

 仕方のないことだということは理解している、この世は変わって移ろいで回っていくものだから。それでも、わたしが変わらないと信じていたいひとりさんやふたりとの関係ですら変わってしまうのだと思うと、やるせない気持ちが溢れて収まらなくなってしまう。

 

「あの……なんだかごめんなさい」

 

「……寂しい、ですね。変わらない自分が、どんどん何もかもに置き去りにされてしまっているみたいで」

 

 喜多さんの謝罪に続いて率直な感想を漏らすと、その後に不自然な沈黙が立ち込める。どうしたのだろうと周囲を見回すと、喜多さんと虹夏さんが呆気に取られたようにわたしの姿を窺っていた。そこでようやくわたしは、自分が失言をしたのだと思い至った。

 

 明らかに、今のわたしの発言はひとりさんの発言からズレてしまっている。ひとりさんの会話は暗く自虐的な部分もあるけれど、それは一貫して自分の失敗や至らなさについて言及するものだった。今のわたしのように、周囲への不満を吐き出すようなことは一切ない。今更気付いたところで、漏れ出た発言は撤回できず後の祭りだった。

 

「ぼっちは、変わっていくのは嫌い?」

 

「そんなことはっ……決してないん、ですけど……」

 

 唯一、いつもの憮然とした表情でわたしを見つめていたリョウさんが、そう問いかけてくる。変わることを否定するつもりはない。ひとりさんがギターにのめり込むようになったのも、結束バンドと出会いバンドを組むようになったことだって素晴らしいことなのだから。

 

 本当に嫌なのは、変わらないわたしだ。変わらぬ存在で居続けると決めたはずなのに、変われないことに勝手に傷付く子供じみたわたし自身の心が、どうしようもなく嫌いだった。そんな内心をぶち撒ける訳にもいかず、途中でただ押し黙ることしかわたしには出来なかった。

 

「こら、適当言ってぼっちちゃん困らせたらダメでしょ!」

 

「別に適当言ってるつもりはない」

 

「そんなこと言って、新しい本屋できた時に喜んでたじゃん」

 

「うん、B&C好き」

 

「喜多ちゃんもぼっちちゃんもさ、リョウの言うことあんまり真に受けすぎないようにね。その場のノリで喋ってることが殆どなんだから」

 

 虹夏さんが間に入り、空気を和ませてくれたことでリョウさんのわたしへの問いは有耶無耶となった。あれ以上続いていたら、何を口走っていたかわからないので本当に感謝しかない。しかし、その虹夏さんですら内心では違和感を抱いているのだろうし、大失態にも程がある。

 

「後藤さん、今度私と出掛けましょうね!絶対、寂しい思いはさせないから」

 

「……ありがとうございます、喜多さん」

 

 喜多さんの純粋な優しさが、傷ついた心に染み渡るようだった。その優しさはきっと、これからもひとりさんを支え続けてくれるだろう。わたしには勿体無くて、その言葉と気持ちだけで充分だ。

 

「あの、あちらの方に良さげな壁がありましたので……一度向かっては見ませんか?」

 

「おっ、でかしたぼっちちゃん。早速行こう!」

 

 先程の失言を忘れるためにも、わたしは見繕っておいた撮影スポットを自分の口から提出することにした。本当はひとりさんが戻ってきてから提案するつもりだったのだけど、背に腹は変えられない。虹夏さんも直ちに乗っかってくれて、なんとか窮地を脱することができそうだ。

 

『……はっ!!』

 

『お帰りなさい、ひとりさん』

 

 目的地に向かって歩き始めた所で、タイミングよくひとりさんが意識を取り戻す。情けないことながら、わたしはひとりさんが戻ってきたことに心の底から安堵の気持ちを噛み締めていた。結束バンドにおいてひとりさんの代わりを担うのは、綱渡りをするような危険行為であることを嫌という程に思い知ってしまったから。

 

『ご、ごめんもう一人の私!承認欲求がぁ……私の中の承認欲求モンスターが、暴れ出しそうで〜!!』

 

『気にしないでください。こういうのはもう慣れっこですから』

 

 実態は慣れないコミュニケーションの連続で真面目に落ち込むような出来事が複数回あった訳だが、ひとりさんの前ではそんな失態を感じさせないように努める。フォローしているわたしが消耗していると知ってしまえば、ひとりさんも気を遣ってしまうだろうから。もちろん、カッコよくて頼り甲斐のある存在で居たいというわたしなりの強がりも、多分に含まれてはいる。

 

『何事もなく、とはいきませんでしたが。なんとか場は繋いでおきましたので、後はお任せしますね』

 

『ありがとう、もう一人の私。私も、もう一人の私を見習ってまた覚悟を決め直さないと……』

 

 決意を新たにしたひとりさんの意識が表に出て、ようやくわたしの定位置である意識の底に帰還を果たす。表に出ていた時間は数十分程度のはずなのに、今までのどんな頼み事よりも疲労を感じている気がした。

 

 それなのにもかかわらず、わたしの気持ちに後悔や無念といったものはあまり存在していなくて。心の内は、不思議な高揚感や充実感で満たされているのだから奇妙なものだ。歌詞で認めたように、憧れの存在に触れた気にでもなって舞い上がってしまっているのだろうか。

 

 そんな度し難い自身の感情を整理する方法がわからなくて、わたしは内心でまた一つ大きなため息を吐き誤魔化すことしか出来なかった。

 

 

 ◇

 

 

「じゃ、今日はありがとね。かいさーん!!」

 

 その後ひとりさんが表に出てからは大きなトラブルもなく、アー写撮影は完了し無事解散する運びとなった。途中ひとりさんのスカートの中がちらりと写り込んでしまって、わたしだけが少々恥ずかしい思いをすることになったのもご愛嬌だろう。でも、さすがにひとりさんはそっち方面に対してドライ過ぎるような気がしてちょっとだけ心配だ。

 

「私がこんなに青春溢れる写真を撮れる日が来るなんて……か、家宝にしないと!」

 

『帰ったら、プリントして部屋に飾りましょうか』

 

 ベンチに座り、虹夏さんから送ってもらったアー写の完成品を眺めてひとりさんは珍しくも顔を綻ばせている。全員で手を繋いで、ジャンプをしたその瞬間を収めたその一枚は贔屓目バリバリではあるけど、素晴らしく絵になっていた。ひとりさんの言う通り宝物として相応しい。丁重に飾るためにも、フォトフレームを後で用意してあげようと思う。

 

『そういえば出来上がった歌詞、見せなくてよかったのですか?』

 

 既に解散をしてしまった以上、もはや手遅れ。しかし、こうして四人で集まる機会こそ歌詞を見せる絶好の場だったはず。単純に忘れていたのかはたまた見せたくない理由があるのか、気になったのでひとりさんにそう問いかける。

 

「うっ、それは……がっかりされたり、気を遣われて励まされたりした時のことを考えると気が重くて……」

 

『気持ちはわかりますけど、後回しにすればするほどハードルが上がっていくのでは……?』

 

「首を絞めてしまっている!?……ど、どうしよう」

 

 最近の成長が目覚ましいとはいえ、こうしたひとりさんの引っ込み思案な面はまだまだ健在。放っておけばいくらでも後回しにしそうな気配すら覗いているので、ここは一つわたしが後押しをしてあげるべきだろう。

 

『まずは誰か一人だけに見せてみるのはどうでしょうか?精神的な負担は幾分か軽くなるかと思いますし』

 

「それだっ!もう一人の私、ナイスアイデア。でもそうなると……まずは誰に見せるべきなんだろう?」

 

『わたしはリョウさんが良いと思います。作詞作曲という関係ですし、何より忌憚のない意見を貰えそうですから』

 

 真っ先に歌詞を見せるべき人間として、わたしの頭に即座に思い浮かんだのはリョウさんの顔だった。ひとりさんに語った理由はもちろんとして、やはり思い返してしまうのは教本を見ていた時のあの表情だ。リョウさんは音楽に対しては誰よりも真摯に向き合ってくれそうという、不思議な信頼感がわたしの中に芽生えていた。

 

「そうしよっかな、リョウさん気とか遣わなそうだし。まずは連絡して……ひあっ、へ、返信が速い!?」

 

 ひとりさんが歌詞を見せたいとロインを送ると、リョウさんらしい簡潔さとスピード感で返信が返される。リョウさんは現在地から徒歩数分程度の飲食店に居るらしく、合流するために早速下北沢の街並みへとわたし達は歩き出すことにした。

 

 

「うっ、おしゃれカフェ……」

 

 リョウさんに指定された場所まで辿り着くと、そこで待ち受けていたのは新装開店したばかりの上品な雰囲気を感じるカフェだった。祝開店と来客歓迎ムードで溢れているのに、後退りをしているあたりにどれだけひとりさんが尻込みしているのかが表現されていた。

 

「こ、こんな店に私が入ったら摘み出されるんじゃ……」

 

『ひとりさん、世の飲食店はそんな怖い場所じゃないですから』

 

 入り口を前にしてガタガタと震え出しているひとりさんを安心させるために、優しく声をかける。ドレスコードが存在したり、一見さんお断りといったカフェなんて今の日本にはまず存在していないだろう。ひとりさんのおしゃれカフェに対する心象が物騒過ぎる。

 

「でっでも、どうやって入ったら……あっ、ドラマみたいにヘイ大将やってるーみたいな感じ……?」

 

『何も特別なことはせずに、普通に入店して大丈夫ですよ。そんなに広いお店ではないですし、すぐリョウさんも気付いてくれるでしょうから』

 

 そんな奇天烈な入店をしたらしたでリョウさんは喜んでくれる可能性もあるが、それはひとりさんの黒歴史という代償を払ってまで得るものでもない。ひとりさんの今後のバンド活動のためにも、外食に対するトラウマは回避しておくに越したことはないだろう。

 

「し、失礼しましゅ……」

 

「ぼっち、こっちこっち」

 

「あっ、はい!」

 

 小さな声でぽそりと挨拶し入店するひとりさん。窓際の席に座っていたリョウさんがすぐにこちらに気付いて、手招きしてくれる。そのお陰で、ひとりさんは特に店員とやり取りをすることもなくリョウさんの隣に腰を落ち着けることができていた。

 

 隣にひとりさんが座ってもリョウさんは特に大きな反応をするでもなく、注文していたカレーを再び食べ進めていく。窓際に一人佇んで、カレーを黙々とスプーンで口に運ぶ。そんな何気ない所作すら格好付いてしまうのだから、つい目に焼き付いてしまう。喜多さんがあれだけ熱を入れるのも、少しだけ分かってしまうような気がした。

 

『気まずい……何か気の利いた話とか私から振った方がいいのかな。で、でも私の振れる話題なんて天気とギターのことくらいしかないし……』

 

『リョウさん相手ですから。まどろっこしい話は抜きで、直接本題でわたしはいいと思いますよ?……なんでしたら、ひとりさんも何か注文してみるのも良いでしょうし』

 

『あっいや、今店員さん忙しそうだし迷惑になりそうだからちょっと……』

 

『一応、ひとりさんから注文を取るのも店員さんの仕事ですよ?』

 

 なんともひとりさんらしい気の使い方に、内心で少しだけ笑ってしまう。そういえば、ひとりさんがタッチパネルの店以外で注文しているのを見たことがないかもしれない。店員さんの迷惑にならないように、それもひとりさんなりの優しさの発露だと思うと微笑ましかった。

 

「ご馳走様でした」

 

 そんなやり取りをひとりさんとしていると、リョウさんの食事がいつの間にか終了していた。手の空いた絶好のタイミング、歌詞の話を切り出すのならまさに今しかないだろう。

 

『ひとりさん、今です。勢いのままに、リョウさんに歌詞を見てもらいましょう』

 

「あっあの、リョウさん!か、歌詞を書いてきましたので、もし良かったら目を通していただけたらと……お願いします!」

 

「うむ、拝読いたす」

 

 ひとりさんは中身も確認せずにトートバッグの中から一冊のノートを引っ張り出すと、まるで賞状でも贈与するかのようなポーズでリョウさんにそれを差し出す。貫禄たっぷりにノートを受け取ったリョウさんは、ページをペラペラと捲り一番後ろまで到達したところでようやく歌詞を見つけたようで。その瞬間から、脇目も振らずにただ歌詞に没頭し始めた。

 

 先程とは別種の、どこか重苦しい沈黙がこの場に流れる。

 

『……やっぱり、私なんかの書いた歌詞じゃリョウさんの期待に沿えないんじゃ』

 

『感想の一つも聞いてないのですし、悲観するにはまだ早いと思いますけど……』

 

 沈黙に耐えかねたひとりさんがぽつりと弱音を溢す。励ましの言葉をかけるけど、ひとりさんがそう言いたくなる気持ちも理解できる。リョウさんの端正な横顔の眉間に、確かな皺が寄っていた。いつもクールで、滅多なことでは表情を変えることがないリョウさんが、理解に苦しんでいるかのように僅かにでも顔を歪めている。こんな表情を見てしまえば、ひとりさんでなくとも不安になって当たり前だ。

 

 リョウさんはわたし達を一瞥することもなくただノートの内容を、食い入るように見つめていて。その様子はまるで、深淵でも覗き込んでしまっているかのような異常な集中力だった。ひとりさんが書いてきたのは、良くも悪くもある程度無難な歌詞だったはずだ。それがどうして、リョウさんをここまで鬼気迫る様相に上り詰めさせているのかが、わたしにはさっぱりわからない。

 

 いや待て、ちょっとおかしくないだろうか。リョウさんが今破れてしまうんじゃないかと疑うくらいに熱心に見ているノートのページは、完璧に最後のページだ。ひとりさんが歌詞を書いていたのは、あんな場所だっただろうか。

 

 そんな筈はない。ひとりさんは歌詞を書くためにノートを新調していたのだから、自然にその最初のページに書き込んでいた筈だ。ひとりさんは中身を確認しないでノートを取り出したから、きっと間違って別のノートを渡してしまったのだろう。じゃあ、今リョウさんが手にしているノートとそこに書かれてしまっている歌詞の正体とはなんなのか。

 

 それは、わたしが移動時間にいつも活用している勉強用のノート。そして、その最後のページに書かれている歌詞は『星座になれたら』に違いなかった。

 

『ひとりさん!ノート、ノートを間違えてしまっています!?』

 

『どういうこと、もう一人の私?』

 

 どうして今日までわたしのノートを持ってきてしまったんだとか、そもそもあんな歌詞はすぐに捨てるべきだったんだと、今更過ぎる後悔が無限に沸いてくるが今はそんなことに構ってられない。とにかくこの現状をひとりさんに説明し、あの歌詞は間違いだったのだとリョウさんを説得する義務がわたしには課せられていた。

 

『今リョウさんの見ているノートはわたしのもので、気まぐれに歌詞も書かれてしまっていて……とにかく間違いなんです!』

 

『う、嘘っ!?で、でも今更どどどどどうすれば……!?』

 

「ぼっち」

 

「ぴ、はいぃぃっ!?」

 

 しかし、わたしには弁解して策を弄するような時間も残されていなかったようである。歌詞の内容を吟味し終えたリョウさんがこちらに向き直り、その口から何らかの感想を告げようとしていた。

 

 落ち着こう、わたし。見られてしまったものはどうにもならない。だから、リョウさんがたとえ今どんな感想を言おうとも、その後にやる対応なんてものは一つだけだ。わたしの醜いエゴが結束バンドの曲として世に放たれるなんてあってはならないのだから、間違いだったと懇切丁寧に釈明するしかない。ひとりさんと一時的に代わってでも、その責任をわたしが取ろう。

 

「この歌詞は、本当にぼっちが書いたの?」

 

「……え」

 

 そんなわたしの甘い考えは、リョウさんの発した第一声により呆気なく打ち砕かれていた。

 

 どうして、そんなことが分かってしまうのだろう。その質問はわたし達の核心をあまりに突き過ぎていて、まるで心臓を鷲掴みにされているような苦しい感覚に襲われる。頭の中は一瞬で真っ白になり、ひとりさんにかけるべき言葉すらも見失ってしまい、ただ茫然とリョウさんの顔を見つめ返すことしか出来ずにいた。

 

「ごめん、言い方が悪かった。別にぼっちが自分で歌詞を書いてこなかったとか、そんなことを疑っている訳じゃないんだ」

 

「は、はい……」

 

 リョウさんもまた、涼しい顔をしているが冷静そのものではないのかもしれない。ひとりさんの困惑の表情を見ては、食い気味に発言の訂正をしていた。わたしもほんの少しだけ、その一言にほっとした。わたしのせいでひとりさんの努力が疑われたとあっては、もはやどんな方法で詫びても自分を許せなくなってしまうだろうから。

 

「この歌詞から感じるイメージがぼっち……いや、私のよく知るぼっちと一致しなくて。だから、これが本心からぼっちが書きたかった歌詞なのかなって、気になった」

 

「それは……」

 

 虹夏さんにノリで喋っていることが殆どとまで称されたリョウさんが、慎重に言葉を選びながら喋っている姿は新鮮だった。リョウさんがそれだけひとりさんのことを日々理解してくれていて、だからこそ生じている違和感を咀嚼しようとしているその証拠。別の形で見られていたならば、素直に喜ぶこともできたのかもしれない。

 

「本心から書きたかった歌詞かと言われれば、違うと思います……」

 

「そっか」

 

 ひとりさんはわたしの書いた歌詞の内容を知らないけれど、本来見せようとしていた歌詞も若干無理をして書いたものだったから。ひとりさん個人としても図星を突かれた形になるのか、俯くようにしながら頷いていた。

 

 その返事を聞いたリョウさんは、どこか安心したような表情を浮かべていて。一体何に対しての安堵なのだろうか、星を冠したわたしの歌詞に込められた意味が明るいものばかりではないことに気付いているのかもしれない。だとしたら、本心ではないと聞いて安心してしまうのも当たり前のこと。わたしの内面の歪さは、ひとりさんに不釣り合いなものだから。

 

 なんにせよ、話の流れ的にリョウさんがわたしの歌詞を気に入ったり採用しようとしている素振りはない。ならば、このまま二人に話を任せていた方がきっとスムーズに事は進んでいくだろう。わたしが今表に出ては、リョウさんのその目に見透かされてしまいそうで恐ろしかった。

 

「言ったっけ、私昔は別のバンドに居たんだ」

 

「えっ、あっはい。喜多さんから薄っすらとだけ聞いたことが……」

 

 リョウさんは突然に、ひとりさんに対して自分語りを始めていた。他人の心に踏み入るのなら、まずは自分の心を曝け出してから歩み寄る。ひとりさんが喜多さんに対して行ったコミュニケーションと同じ、倣うようにしてリョウさんがそれを実践していた。

 

 バンドの青臭いけど真っ直ぐな歌詞が好きだったこと。いつしか歌詞が売れるためだけのものに変化していって、それに嫌気が差してバンドを辞めたこと。辞める時に揉めたこと。バンドそのものが嫌になっていた頃に、虹夏さんに救われて結束バンドを始めたこと。リョウさんらしくもなく饒舌に、本心のその一端を赤裸々に語ってくれていた。間違いなく、ひとりさんのために。

 

 CDショップの件すらも、違わずリョウさんの本心であることを知ってしまった。好きだった居場所が形を変えていって、いつしかなくなってしまうことへの恐怖。その感情をあの時、わたしとリョウさんは少しだけ共有できていたのかも知れない。その相手がひとりさんではなくわたしだったことが、ただただ申し訳なかった。

 

「個性捨てたら、死んでるのと一緒だよ」

 

「リョウさん……」

 

 最後に、リョウさんはそう締めくくり自身の過去を語り終える。その言葉はバンドとしての在り方だけでなく、わたしの心にも深く刺さり込んでいた。わたしがわたしらしく居られるのは、ひとりさんとふたりの前でだけだ。ひとりさんの心の内だけがわたしの生きられる場所であり、それ以外ではわたしは死人で存在していない。

 

 それでいい。ひとりさんがその個性を発揮して生きるために、わたしが居なくなるのは自然なことだ。だから、リョウさんはそれ以上わたしの生きた痕跡に触れないで、目の前のひとりさんだけを見ていて欲しかった。

 

「だからぼっちも、本心から書きたい歌詞を書いてよ。ありのままの、心の底からのぼっちの叫びを」

 

「で、でも、私の本心なんて暗くってどうしようもない部分ばっかりですし……」

 

 ひとりさんの好きなように歌詞を書いて欲しい。どうしてもわたしが言えなかったそれを、真っ直ぐにリョウさんはぶつけてくれていた。ひとりさんと結束バンド、双方のために。音楽に対しては誰よりも真摯な頼れる先輩、そんなわたしの見立ては間違いではなく、今まさにひとりさんを教え導いてくれている。

 

「大丈夫。暗くてどうしようもなくて、でも人の心の弱さに寄り添ってあげられるぼっちの叫びは、ちゃんと郁代に届いたんだから。……私にも、響いたよ。だから聞かせて欲しいんだ、ぼっちの心からの歌を」

 

 それは思わず泣き出しそうになってしまうくらいに、ひとりさんの在り方を認め肯定してくれる言葉だった。ひとりさんの弱さや強さ、積み重ねてきた経験を知り受け入れた上で、リョウさんは良い歌詞を書いてくれるのだと信じてくれている。わたし以上にその信頼は、ひとりさんの心に深く響いている筈だった。

 

 リョウさんはただ、ひとりさんの歌詞を見るのを楽しみにしていたのかもしれない。そんな所に、わたしの歌詞が飛んできたものだからリョウさんだって混乱するに決まっていた。

 

「あっ、リョウさん……私、その、頑張ります!これが私ですって胸を張れるような歌詞を、書いてきますから!」

 

「うん、楽しみにしてるよ」

 

 それでも、こうしてひとりさんが自分らしい歌詞を書く決断をして、二人の仲が深まるきっかけになれたことを思えばギリギリ自分を許せるような気がした。リョウさんが今日見せてくれた気遣い、その優しさと音楽への真摯さをわたしは生涯忘れることはないだろう。

 

 ひとりさんとふたり以外には誰にも自慢できやしないけど、わたしにはとても尊敬できるとびきりカッコイイ先輩がいるのだと、誇らしい気持ちで満たされていた。

 

「後もう一つ……こっちの歌詞についてなんだけど」

 

「あっはい」

 

 このまま解散という流れを望んでいたのだけど、リョウさんがわたしのノートを再び持ち出したことで心臓の鼓動が跳ね上がる。それはもう捨て置いて欲しい、肯定だろうと否定だろうと、わたしの隠したかった感情への批評なんて聞きたくない。出来もしないのに、激しく耳を塞ぎたくなる衝動に駆られた。

 

「本心でないのなら……ぼっちにとってこの歌詞は、なんなんだろう?」

 

 リョウさんが発したのは良し悪しの感想などではなく、純粋な疑問故のものだった。その答えをひとりさんは知らない。わたしが如何に鬱屈とした願望をそのノートに書いてみせたのかわからないのだから、答えられるはずがない。

 

「あっ、はっきりとは言えないんですけど……絶対、大切なものです。それだけは、間違いないんです」

 

「ありがとう、参考になった」

 

 なのにどうしてか、ひとりさんは迷うそぶりすら見せずにそう言い切ってしまっていた。実際そうなのかもしれない、わたしの浅はかな願望を吐き出した所でひとりさんはそれすら包み込んで、わたしを好いたまま一緒に歩もうとしてくれる可能性もあるのかもしれない。

 

 都合の良過ぎる妄想を振り払い、緩みかけた自分の禁忌の箱に蓋をする。誰にも言わないはずだったわたしの孤独、それを知られたことでひとりさんとの関係に歪な線を走らせる愚を犯すわけにはいかない。わたしにはひとりさんの人生を守る義務がある、優先順位を間違えてはいけないんだ。

 

「この歌詞、貰ってもいい?私もまだ解釈が追いついてない部分があるから」

 

『もう一人の私、リョウさんにあげちゃっても大丈夫……?』

 

『え、ええ、もちろんです。ただの気まぐれで書いたような歌詞ですから』

 

「あっはい、是非……リョウさんが持っててくれたらと」

 

「ありがとう。そろそろ出よっか」

 

 リョウさんがわたしの歌詞を書いたページだけを切り離した後に、ひとりさんにノートを返却して立ち上がる。そのまま返却されて、ひとりさんが歌詞を見てしまうのが一番危険だったので願ってもない話である。リョウさんの手元で願わくば、二度と他の人の目に触れぬように葬って欲しいものである。

 

 リョウさんは席を立つと、淀みのない足取りで出口のドアに手をかけていた。あろうことか、会計のレジを通り過ぎながら。

 

「えっあのリョウさん、お会計……」

 

「ごめん、今お金ないから奢って」

 

 慌てて引き止めるひとりさんに対して、リョウさんはさっきまで頼り甲斐すら感じた表情そのままに、とんでもなく恥知らずな申し出を口走っていた。

 

 いくら目を疑ったところで後輩にお金を無心する最低な先輩バンドマンの姿しか、そこにはない。そもそもお金がない状態でどうして喫茶店に入ろうなどと思えたのだろうか。ひとりさんがもし連絡しなかったのならば、虹夏さんでも呼んで会計を済ませるつもりだったのか。本当にこう、どうしてこの人は立派な姿を見せた側から、だらしない面でそれを台無しにしないと気が済まないのだろうか。

 

「で、でも、リョウさんがここに誘ったんじゃ?」

 

「最近お腹減ってて限界で。……それにこの店オープンしたばかりでどうしても食べたくて。お願い、奢って」

 

 先程までの感動も何処へやら。リョウさんのだらしなさを直視してドン引きしてしまっているひとりさんに、追い討ちをかけるようにリョウさんは懇願を続けている。

 

 認識を改めよう。確かにリョウさんはカッコ良くて音楽に真摯な、尊敬すべき先輩であることに間違いはない。それと同時に、仕事をサボりがちでマイペースでお金にすらだらしない、ほんっとうにしょうがない人なのだと。数分前とのギャップが激しすぎて、頭がおかしくなりそうだった。

 

『ひとりさん、代わってください』

 

『えっ、良いけど……だ、大丈夫?』

 

『ひとりさんとリョウさんの間に借金なんてさせるわけにはいきません!ここはわたしが間に入らさせていただきます!』

 

『いつになくもう一人の私が必死だ……っ!?』

 

 金の切れ目が縁の切れ目ともいう。少額ではあれども、金のいざこざで人間関係が拗れるなんて事例はいくらでもあるのだ。特に、引っ込み思案のひとりさんが先輩であるリョウさんからきちんとお金を取り立てられるとは思えない。二人のこれからの良好な関係のためにも、わたしが代わりにお金を貸す形にした方がいいに決まっている。

 

 わたしの理想の先輩像と情緒をめちゃくちゃにしてくれたリョウさんを恨めしく思いながら、緊急時に使うわたしの財布を取り出してリョウさんのカレーの会計を行う羽目になるのだった。

 

 

 ◇

 

 

「本当にごめん、来月返します」

 

「来月必ず、ですからね……本当に、よろしくお願いしますよ」

 

 喫茶店を出た先で、わたしの目の前にリョウさんが立ち申し訳なさそうに眉を下げている。わたし自身の意志でリョウさんの目前に立つというあり得なかった状況が、お金のだらしなさで再現されているのだから風情も何もあったものではない。

 

 殊勝な態度を見る限り、踏み倒したりするつもりはなさそうに見えるのが唯一の救いだろうか。わたしとひとりさんの理想の先輩像のためにも、どうかその一線だけは越えないで欲しいと願うばかりだ。

 

「私は置いて行かないから」

 

「え……?」

 

「じゃあまたね、ひとり」

 

「は、はい。……また、会いましょう」

 

 わたしの失言に対する、時間をたっぷりと空けた突然の励まし。呆気に取られている内に、リョウさんはどうしてかひとりさんをファーストネームで意味ありげに呼んで見せていて。借金を回収するのだからまた会う、そんな思考から言えないでいたまたねという約束すらも、気付けばわたしは口走ってしまっていた。

 

 リョウさんは一体、あんな少ないわたしの生きた断片を見ただけでどれほどの事実に気付いたのだろう。気が緩んでいたところに一気に畳み掛けられたせいで取り繕うことも、どういうつもりだと引き止めることすらもできなかった。既に、リョウさんの姿は夕暮れの雑踏に消えてしまっている。

 

 もしかしたら、わたしの核心にまで触れられているかも知れないのに。別に問題ないんじゃないかと、そんな楽観的な思考に包まれてしまっているのが、あの人は本当にずるい人だと思う。

 

『帰りましょうか、ひとりさん』

 

『う、うん。リョウさん、凄い人だったね……良い部分、悪い部分引っくるめて』

 

『本当に、しょうがない人です』

 

 まともな時とダメな時のギャップが酷過ぎる。その極端にも過ぎる人間関係へのバランス感覚のせいで、どうにも壁を作れなくて気付けばこの状態だ。あのお金にだらしない素振りを見せたのだって、その後の前振りのために敢えてやったんじゃないかと疑ってしまうのはわたしの考え過ぎだろうか。

 

 止めよう、他ならぬあの虹夏さんが言っていたのだ。あまりリョウさんの言うことを真に受けて振り回されるなと。ひとりさんの頼れる先輩で仕方のない人、それくらいの雑な認識でいた方が気楽だ。

 

『でも、リョウさんのことを沢山知れて嬉しかったな……私、歌詞を頑張って書いてみる。リョウさんに、これが私ですって伝えて認めてもらえるように!』

 

 結束バンドの中では独特な距離感があったひとりさんとリョウさんの仲も、今日という日を経て深まったのは喜ばしいことだ。リョウさんの心強い後押しを受けて、ひとりさんの作る歌詞がどんな仕上がりになるのかわたしも楽しみにしている。

 

『だから、もう一人の私も手伝って欲しいんだ』

 

『わたしが手伝うと、ひとりさんらしい歌詞にならなくなってしまうのでは?』

 

『ううん、そんなことない。私を一番知ってくれているのはもう一人の私だから。あと、もう一人の私が居てくれないと、自分を保てる気がしないし……』

 

 他でもないひとりさんがそう言ってくれるのならば、わたしにも信じられるような気がした。わたしとひとりさんの個性が混ざり合っても、お互いの輝きを損なわずに、色とりどりの光を放てるようになれるのだと。

 

『では、今日から一緒に作詞を頑張りましょうか。もちろん、夜更かしし過ぎないよう程々に、ですけどね』

 

『うん!』

 

 今日からの夜は、忙しくなりそうだった。空を見上げると、日没を迎えている空に一番星が姿を覗かせている。未だにその存在とは距離が離れ過ぎていて、手に届くような気はしないけれど。ほんの少しだけ、近づけているような気もするのだ。

 




かなり難産でした。今回も投稿までかなり時間がかかってしまい申し訳ないです。ここからお話もどんどん動いていきますので、是非これからも応援していただけると幸いです。
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