Fate/DebiRion.   作:遥野みしん

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13.お茶会(静)

「チャイカさんお茶いる?」

「ああ、いただこう」

 

 椎名はバッグの中から水筒と紙コップを取り出すと、コップにお茶を注いでみんなに配り始めた。

 五人は柳洞寺中庭に面した縁側に腰掛けていた。

 

「なんか眠くなってきたな……」

 

 お茶を啜る椎名の目がゆっくりと閉じられていく。

 

 肌に触れる空気は冷たいものの、その日は風もなく、柔らかな陽射しが降り注いでいた。

 

「ここ、一応敵地なんだけどなあ」

 

 とライダーは苦笑する。笑いながらも茶を啜る。

 

「結構な、お点前じゃないか」

 

 と花畑チャイカは茶を味わっている。

 

「なかなか風流な庭であったが……」

 

 アーチャーが名残惜しげに言った。

 

「えぁ~」

 

 中庭の中央では寺の木材を集めて火が焚かれていた。

 そこにおもちぃなたちが怪しげな魔術礼装を次々と放り込んでいる。

 しめ縄が火を囲うように張られ、縄には椎名が実家から持ってきたという(ふだ)がセロハンテープでぺたぺた張り付けられていた。

 

「私はここで誰か死ぬかもって思ってたんだけど……」

 

 炎を見つめながら、チャイカは不安を吐露する。

 

「え、遠足じゃないのぉ?」

「ばかやろ、笹木はどうした」

 

 椎名のブラックジョークかと思ってツッコんだ花畑だったが、椎名の顔を見て態度を一変させる。

 

「なんだその顔は。まさか忘れていたのか」

 

 椎名はサッと目を逸らした。

 

「いや、階段とかきつくて、それで休めるところがあったから……」

 

「えぁ~」

 

 周囲に助けを求めた椎名は初めてそこにいた夜見に気づいた。

 

「あ、あれ夜見ぃ、ここにいていいの?」

「えぁ? ええ。おもちぃなさんたちと視覚を共有しているので大丈夫ですよぉ。魔術礼装の山はまだ半分も無くなっていません。いくつか貰っていいですか⁉」

 

 椎名とチャイカは顔を見合わせる。

 

「いいんじゃね?」

「いや駄目だろ」

 

 軽いノリで言った椎名にチャイカは真顔で答えた。

 

「おーい、そこのおもちぃな、こっち来てぇ」

 

 椎名は炎に礼装をくべようとしていたおもちぃなを呼びつけた。おもちぃなの抱えていたものは干からびてミイラ化した腕だった。

 

「これ何に使うんやろ……アーチャー分かる?」

「ふうむ、生体電気は感じないが、この物体の含有する魔力の量は中々の物だ。食せば大量の魔力が得られるのではないかな?」

「はぁ、天才が聞いて呆れるわ……」

 

 椎名はアーチャーを哀れむような瞳で見つめた。アーチャーはため息をつく。

 

「マスターに相応しい使用法だと思ったのだが……」

「これ、触ったらやばい奴?」

「いや、魔力は内に閉じこもっている。表面を触るだけなら問題なかろう」

 

 アーチャーの答えを聞いて椎名は干からびた腕に手を伸ばした。

 すると、腕は突然動き出して椎名の手を強く払いのけた。

 

「は?」

 

 何が起こったかわからず椎名は払われた手を見つめた。やがて腕の方に視線を戻すと、腕はゆっくりと動きだし、椎名に向かってそっと中指を立てた。

 

「燃やせ! おもちぃな燃やしてぇ! そんなもん燃やしちまえ!」

「やめてくだいよぉ先輩ー」

 

 激昂(げっこう)した椎名を夜見が止めに入る。

 

「ほら、見てくださいよ、こうやって、白い手袋をはめれば……ほら! 私の新しい助手の誕生です!」

 

 夜見がお披露目したのはマスターハンドみたく勝手に動く白い腕だった。腕は夜見の握手に応じて仲良しげに握手していたが、椎名の視線に気づいてすぐ椎名の方に向き直り、ぴんと中指を立てた。

 

「このやろっ、もう我慢できひん!」

 

 椎名は夜見から腕をぶん取ると、腕と揉み合いになりながらも助走をつけ、思いっきり炎の中に投げ込んだ。

 

「えぁ~……」

 

 途方に暮れる夜見とは反対に、椎名はせいせいとした顔で汗を袖で拭った。

 

「それにしても、さっきから運ばれてくる礼装、みんな趣味が悪いものばっかだね」

 

 縁側で足をぶらぶらさせながらライダーが言った。

 

「ふぅむ、興味深くはあるが嫌悪感も凄まじい。これは魔術の洗練された体系ではない。もっと原始的で暴力的、死の匂いのするものばかりである。そら、今運ばれていった木箱も恐らくは人を呪い殺している礼装……いや、呪具の類であろう」

 

 それを横で聞いていたチャイカはげっそりとした顔で茶を啜った。

 

「こんなん集めてるのってよっぽどやばい奴でしょぅ? ほんっと、空き巣でよかったわ……」

 

 するとライダーは耳を疑うようにチャイカを見た。

 

「えぇ、もったいないよ。こんなものばっか集めてる人がどんな人なのか、僕は知りたいけどなあ」

「未来の王よ、人の上に立つのなら不要な冒険はほどほどにしておくがいい」

 

 アーチャーが笑って諫めると、ライダーも肩を落としながらも笑った。

 

「だよねー……」

 

―――――――

 

 夕方になり、ようやく仕事を終えたらしい、おもちぃなたちは中庭に整列した。それを見て夜見が立ち上がる。

 

「みんなご苦労様ー。椎名さんたちも。あと残ってる礼装はおもちぃな越しに触れても危険なものばかりですので、このお寺ごと完全焼却するのがいいと思いますっ!」

 

「よし、それでは私が」

 

 と立ち上がったアーチャーを夜見が押しとどめた。

 

「いえいえ、大丈夫ですよぉ。ここは私にお任せあれ」

 

 夜見が後ろ足を引いて妙に気取ったお辞儀をしたので、最初は譲る気のなかったアーチャーも半笑いで貴方がやればいいと手で示した。

 

「はい! それではみなさん、お寺の正面に参りましょう! 夜見のマジックショーならぬ、魔術ショー‼ 呪われた礼装も浄化間違いなし! 恐らく今世紀最初で最後ですよー?」

 

 椎名とライダーは目を輝かせながら、チャイカとアーチャーは苦笑しながら、夜見の後についていく。

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