「って感じでみんな酷いんですよぉ、アーチャーも全然味方って感じがしないし、途中変なのに銃で脅されるし、もう散々! こんなん嫌やぁ!」
バーのカウンターでメイド服の女、
「ありがとう、やっぱあてぃしの味方はリーダーだけなんだよなあ」
しみじみとグラスを眺め、椎名はグラスに口をつけた。
「って、これただの水なんですけどぉ⁉ リーダー、いろいろ入れるの忘れてるよぉ!」
「だってお前、お代払わねえし」
「お金より大切なものがあるでしょう!」
「ない」
「ひどいよ……」
目をウルウルとさせた椎名は助けを求めて辺りを見回した。
右、アーチャー、こいつはマスターに水を飲ませて自分ではカクテルを飲むいけ好かないクソヤロウだ。
左、こちらには赤毛の少年が座っている。少年は俯き、グラスに注がれたミルクをじっと見つめていた。
「あっくん、あっくん聞いて!」
椎名は即座に赤毛の少年ににじり寄った。
「おっとっと……聞くよ、聞くから落ち着いて、ね?」
少年は身を乗り出した椎名の体に触れないよう体を反らしつつ言った。
「聞かなくていいぞ」
バーのマスターが言う。
「ああ、聞かない方がいい。その女は少しでも自分の話を聞いてくれる優しい者がいれば、その者を仲間だと勘違いしてつけあがる。自分が失敗すれば容赦なく仲間のせいにするのだろうな」
アーチャーはぐっとグラスをあおった。
「いい? あっくんはこんな冷酷な大人になっちゃだめだからね」
生温かい目で椎名は少年の頭を撫でたが、これは流石にやんわりと振り払われた。
「どの口が言うか貴様! 『教会見張って弱そうなやつがいたら襲っちゃいますかぁ!』と言ったのを忘れたか!」
「え……そんなこと言うたっけ?」
椎名は首を傾げた。アーチャーは雷を宿した拳を握り締め、無表情で席を立ちあがる。
「まあまあ。けどみんな、独断専行とはいえ、収穫はあったと思うけどな」
「私のクラスがばれたが?」
「いやぁ、でもまあ、二組と交戦して無傷で帰れたんでしょ? 僕たちが繋がってることも向こうは知らないし、悪くないと思うんだけど……」
「そうだそうだ! 椎名さんはよくやったよ!」
と椎名が拳を上げて主張する。
「貴様は永遠に黙っていろ」
しゅんと肩を落とす椎名を鼻で笑いはしたものの、アーチャーは少年の言葉を認めていた。ため息をついてまた席に着くと、グラスの酒を飲み干す。
「リーダー、もう一杯頼む。舌の痺れるようなものを」
「はいよ。あんま呑み過ぎんなよ」
「わかっているとも。酔いつぶれれば天才も凡人と変わらない。天才であるがゆえに私はサーヴァントなのだから、凡人になるわけにはいかないだろう?」
バーのマスターはカクテルを作っていく、そのさなかに視線を少し上げて、アーチャーに尋ねた。
「アーチャー、あんたの雷を防いだサーヴァントについて、もう少し聞いていいかな?」
「うむ。立ち居振る舞いからして貴族だろう、武人の風もある。クラスの推察は出来ぬが、戦うとすれば、そうだな。遠距離攻撃の手段も持ち合わせているようだが、離れていれば私の相手ではないだろう」
「へぇー、ひょっとして王様かな」
話に入るようにして少年がアーチャーの隣に腰掛けた。
「かもしれんな」
「会って話をしてみたいなー」
そう言いつつ少年の視線はバーのマスターの方へ移った。
「わかったわかった。話を聞く限り向こうのマスターも手強そうだし? 私たちが四人、向こうが二人の状況を作れば少しくらい話をしてもいいんじゃねーの?」
「リーダーも臆病だね」
少年は笑う。バーのマスターもほほ笑みを返した。
「そこは椎名と同じだよ。やりたいこともたくさんあるし、今の生活も気に入ってるとこあっからさあ、死にたくないんだよね……まあ、死にたくないなら聖杯戦争に参加すんなって話かもしんないけど」
「うん、私と同じだぁ!」
椎名が腕を組んで頷く。その様子にアーチャーは舌打ちし、少年は声を上げて笑った。
〇
童顔の青年と少女は見つめ合っていた。お互いの姿を忘れないように、しかし忘れないということが不可能であるとも知っている、そんな憂鬱を宿した瞳で。
二人は同時に回想し、確信を強めたに違いない。
「僕たちは」
「私たちは」
やはり出遭うべくして出遭ったのだと。
童顔の青年が手のひらから流れる血をなめとって魔法陣の中央へ歩いていく。青年の歩む先には一冊の本が浮いていた。
青年が手を伸ばし、本に触れようとしたとき、ひとりでに本が開く。風と共にページが次々と捲られていき、開かれたページが淡く光り出した。
そして、その光の中からロリータファッションの少女がぽんっ、と投げ出されるように現れた。少女は浮かぶ本をキャッチすると、少年に向き直り、言った。
「こんにちはマスター。あたしはアリス。クラスはキャスター。よろしくね」
青年はキラキラした目で返した。
「こんにちはアリスちゃん! 僕はましろ。ましろ