「ふーん、それにしても貴方があの虚空教の教祖なんだぁ。へぇ~。噂の割に弱そうですけどね」
剣持は話の矛先が自分に向いたのを感じ取ってすぐに反応する。
「ん? ああ、そりゃもう。ケバい杯なり石ころなりをいつまでも追いかけてる、老いさらばえた魔術家系と比べればね。虚空教も僕も、まだまだなんじゃないですか」
鷹宮のこめかみでピクリと血管が脈を打つ。
「は? なんですか? 今鷹宮家を馬鹿にしました?」
「いえ全然。鷹宮さんには見たところ才能もあるようですし、全力で追いかければ石なんてそのうち手に入るんじゃないですか? もっとも、本人にその気がなければ何にもなりませんがね」
鷹宮の顔が焦りと戸惑い、怒りで歪む。
「っ――! こっちの事情も知らないで……!」
「こっち? それはおかしい。そのお家の事情に納得しなかったからこそ今の鷹宮さんがあるんじゃないですか……大変いいことだと思いますよ、ええ。素直が一番です」
そうして剣持は鷹宮にも問いかける。
「当然、貴方もそう思っているからこそ……」
剣持はゆっくりと腕を持ち上げ、指を指した。
鷹宮は一歩後ずさった。その手が、震えながら首元に触れた。剣持はこの口喧嘩に対する勝利宣言としていやらしく笑みを浮かべ、鷹宮を見下す。
鷹宮が目を見開いて無言で鎌を振り上る。が、剣持は飛び退って距離を取り、鷹宮に落ち着くようにと示した。
「まあまあ、ちょうど人も集まってきましたし、ここいらで貴方の願いを聞かせてもらいましょうか」
言われて初めて鷹宮は視野が狭くなっていたことに気づいた。辺りにはちょうど鷹宮とでびる、剣持を取り巻くように、セイバーとシスタークレアが、馬に乗ったライダーと花畑チャイカ、マジシャン夜見れなが、そして剣持の背後には伏見ガクと魔使マオが、みながこの場に揃っていた。剣持は頷いて言う。
「僕ら虚空教への依頼は聖杯戦争の妨害・及び聖杯の強奪。でも奪った聖杯をどうしろとは言われなかった。そして僕らは薄汚れた願望機などは決して信用しない。で、あるならば、聖杯戦争の参加者を尊重してやるのも一興でしょう。貴方の願いがこの世界にとって、僕ら教団にとって無害なものであるのなら、勝手に叶えればいい」
剣持はこの場に揃ったサーヴァントやマスターたちを両手で示して言った。
「さあ、貴方の願いをこの場にいるみなさんに聞かせてあげてくださいよ」
ふと鷹宮は顔を上げる。クレアと目が合った。クレアの感情は読み取れなかったが、鷹宮が目を合わせようとすると、クレアは目を伏せた。
「でびちゃん……」
小声で名前を呼ぶ。傍らで浮いている悪魔はニシシ……と笑って言った。
「小娘言ってやるがいい、自信を持て。小娘の願いが僕の願いだよ」
悪魔の後押しで鷹宮の表情は晴れ晴れとしたものになる。もう答えは決まっていた。自分でも馬鹿みたいだと思ってはいたが、そうしてみたい、そうしたいという思いに逆らうことはできなかった。
「私の願い、それは……」
鷹宮の唇は笑みを浮かべていた。思いついてからずっと、本当にこれでいいのかと悩み、クレアの願いと比べて罪悪感を憶えすらした。しかし、願いを定め、いざそれを告げようと決めたとき、鷹宮の胸に飛来したのはワクワクした感情だった。きっとみんな、嫌がるだろうな。自分勝手に巻き込んじゃうんだろうな。でも、仕方ないよね。鷹宮は開き直る。だって、悪魔と一緒に叶える願いだもの。
鷹宮はこの場にいる皆に聞こえるよう、声を張って言った。
「みんなを、動画配信者にするっ!」
無言で首を傾げたのは剣持刀也だけではなかった。サーヴァントもマスターも、傍らの悪魔すら目を丸くして鷹宮を見つめていた。この場にいる全員が理解を拒んだがゆえの沈黙が場を支配していた。
「そ、そうか、なるほど。みんな、みんなね……」
冷や汗を浮かべた剣持が声を震わせながら歩み寄ってくる。剣持は明日の方向へと目を泳がせながらも無理矢理笑顔を作っていった。
「みんなで楽しく動画配信……平和でいいじゃないですか。和やかで、賑やかで。ええ……うん、みんなで好きにやればいいんじゃないかな」
他人事のようにうそぶく剣持を鷹宮のあまりに浮ついた目が捉える。
「なぁに言ってんのぉ? 剣持、お前も一緒に楽しく配信すんだよ?」
「僕が配信者に? は、ははははは……」
剣持はからからと笑いたてるが、その目は全く笑っていない。表情筋は死んでいるかのように動かない。虚無の笑いは哀愁の中でしばらく続くかと思いきや、剣持は拳を固く握りしめ、全身をわなわなと震わせて叫んだ。
「配信者になんかなるわけねーだろ! バカがよぉ!」
「バカって言った方がバカなんだよっ! ばーか! ばーか!」
「てめえ下手に出てりゃあ調子こきやがって! 僕は虚空の王なんだぞ! ここまで来るのにどれだけ苦労したと思って――」
「厨二乙~」
「ぶっ殺してやる!」
抜刀した剣持が鷹宮に斬りかかる。鷹宮は鎌でそれを受け止めた。
「おい、お前、なんで……」
剣持は信じられずに何度も刀を振るう。虚空の力を使いながら自分の手に力が返ってくるのが信じられなかった。それどころか、悪魔の力で強化された鷹宮の身体能力に剣持は圧倒されていた。
「なるほど、これは……!」
剣持は鷹宮の鎌の振り下ろしを躱して側面から鷹宮の首を狙ったが、大鎌の特殊な形状がいとも簡単に防御を間に合わせてしまう。鎌の性質も何もかもを無視した鷹宮の動きに武術的な素養を感じることはなかったが、恐らく我流で練習したのだろう。剣持の刀はただ最短なだけの動きにことごとく防がれていく。
(いや、普通だったら虚空がなくてもただの大鎌、背を狙えば叩き折れるはずなのに……)
剣持の切り上げを鷹宮はバックステップして躱す……というより、悪魔が念能力で鷹宮の体を浮かして逃した。剣持はすかさず踏み込んで追いかけ、刀を正面から振り下ろす。鎌と刀がぶつかった。甲高い金属音はなく、嫌な鈍い音が辺りに鳴り響く。
剣持は推察する。虚空と何か、よくわからないものが食い合ってるんだ……!
鷹宮は恐ろしいことに鎌の刃の内側に身を置くことを厭わない。何を考えているのか。何も考えていないのだろうか。剣持には全くもって理解の出来ない相手だった。
鷹宮が鎌の刃を返し、剣持の刀を剣持ごと薙ぎ払おうとする。これを剣持は刀で受け流そうとするが、振るわれた鎌の威力に体が流れた。そこへ鷹宮の鎌の斬り返しが迫る。
「くっ、このっ!」
剣持は悪態をついて後方へ跳ぶ。回避しきれないと悟ると体の側面に刀を添えて鎌を受け止める体制を作る。果たして、横薙ぎの鎌は剣持の側面から襲い掛かかり、剣持は刀ごと鎌の膂力に振り回されて吹き飛ばされた。
「あー、刀也さん、大丈夫すか?」
上から覗き込む伏見ガクに剣持は無言で首を横に振り、起き上がる。衣服の汚れを払いながら、剣持は自分でも呆れた調子で言う。
「きっと、虚空なしで英霊やらなんかと対峙すれば、こうなるんでしょうね」
それを聞いて伏見は表情を明るくした。
「お、やっと俺たちの気持ちをわかってくれました?」
「そうだよ! 恐ろしいことこの上ないんだから!」
これまでの態度に不満でもあったのか、魔使がぷんすかと頬を膨らませ、伏見の背中から躍り出た。
「はぁ、それはすいませんでしたね。……まあでも、今回は大丈夫でしょう」
剣持の言葉に伏見は眉を動かす。
「その心は?」
剣持は辺りを眺め、思わず笑って言う。
「みんな、配信者にはなりたくないみたいですから」
―――
剣持を吹っ飛ばして無邪気に喜びの視線を交わすでびリオンだったが、入れ違いで斬り込んできたセイバーには反応が遅れた。でびるが慌てて魔力の壁を作り、鷹宮がその上から乱雑に宝石の防御壁を重ねる。しかしセイバーの剣の一振りで二重の壁はいとも簡単に斬り裂かれ、セイバーの剣は鷹宮の頭上に迫った。
「う、うわぁぁぁぁ!」
鷹宮は悲鳴混じりに鎌を掲げ、セイバーの剣を受け止めた。
「これっ、重ぉ……!」
思わず声を上げたのはでびるだった。鷹宮の体を包む青い光が激しく明滅する。でびるが汗を流しながら歯を食いしばり、鷹宮に力を送り込むのだが、セイバーの剣は余りに重たく、鷹宮の体は少しずつ押し込まれていく。
でびるは叫んだ。
「小娘気張れ! もっと頑張れ!」
「やってるってぇ! ぐぬぬぬぬ……んんっ、無理ぃぃぃぃ……!」
鷹宮もまた歯を食いしばって呻きながらセイバーの剣を押し返そうとするが、体勢はどんどん悪くなるばかりだった。
「はぁ!」
セイバーが気合一閃、放出された魔力を推進力にして、セイバーの剣は強引に斬り下ろされた。
「きゃっ!」
「ぬわぁ!」
二人はセイバーの剣をなんとか下へ逸らすことに成功にはしたものの、魔力放出の勢いに負けて弾き飛ばされた。
地面にぶつかる寸前にでびるの力が鷹宮の体のコントロールを取り戻す。鷹宮の体はふわりと宙へ浮き、そのままセイバーから逃れるように森を突き進んだ。
「くそぉっ……あの虚空教の奴の剣も、サーヴァントの剣も、今までみたいに斬れなかった!」
鷹宮はなんとか手放さずにいられた大鎌を見て悔しげに言う。傍らのでびるが首を傾げた。
「ケルベロスのときもだったよねぇ。なにかあんのかな~?」
「いや、あの時とはちょっと違うんだよねー。なんていうか、あの時はもっとこう、抵抗がなくて、感触だけなら斬れたときと同じなんだけど……斬れなかったっていうより斬らなかったって感じ? あー、私が何言ってるかわかる? でび?」
「わかんない」
「おや、雑談とは余裕じゃないか」
突然聞こえた第三者の声に二人が振り返ると、騎乗したライダーが雷電を撒き散らしながら二人に向かって駆けてくるところだった。ライダーの騎乗する巨大な黒馬は、開いている距離を一気に詰めようと大きく跳んだ。
「え……」
一度の跳躍で眼前に迫ってくるライダーを前に、鷹宮の体は動かなかった。
ライダーは馬上から身を乗り出し、鷹宮の首を落とそうと剣を振るう。
「バカ、小娘!」
悪魔の魔力が鷹宮の頭を強引に下げさせた。瞬間、剣が鷹宮の頭上を通過する。地面に体を投げ出された鷹宮の耳に雷鳴が鳴り響き、さっきまで聞こえもしなかった蹄の音は遠ざかっていく。
「あれ、外した? 当たるタイミングだったんだけどな」
ライダーは馬上で敵の姿を振り返った。吹き乱れる赤毛の髪の間からは笑みがこぼれている。鷹宮が宝石を差し向けようと手を伸ばすが、でびるが制止する。
「小娘まだだ!」
二人の見上げた樹上には、夜見れなが枝の上に立ち、二人を見下ろしていた。
夜見はトランプの束を二人に向けて投げつける。
「大丈夫……トランプなんて焼いちゃえばいいんだから!」
風を切って向かってくる幾枚ものトランプを鷹宮の生み出した炎の魔術が迎え撃つ。
炎は蛇のようにうねりながらトランプを次々と飲み込んでいく。飲み込まれたトランプは爆発を起こし、煙を辺りに撒き散らした。
その煙から、分身した魔使マオたちが一斉に飛び出てくる。
「やったー! 僕トランプだぁ! 敵を斬り裂いてやるんだ!」
目を瞑りながらまっすぐに落ちてくる魔使たちにでびリオンは一瞬呆然とするが、鷹宮は再び炎を生み出しながら鎌を構え、でびるは鷹宮に身体強化を施しにかかる。
「まおまお! トランプもう終わってる! 目ぇ開けてぇー!」
夜見の一声でバッと魔使たちが目を開けた。
「うわっ、ちょっ、やばぁい!」
魔使たちは各々炎が自分の体をなめる直前に、体を一回転させたり捩じったりして躱し、でびリオンを取り囲むように着地した。
「っていうのは嘘でぇす! 僕ずっと余裕でしたから!」
強気な言葉を吐いて魔使たちはでびリオンに襲い掛かる。
鷹宮は緻密に炎を操り、目の前から迫る分身二人を燃やすと、乱雑に鎌を振り回して横から迫ってきていた分身も斬り裂いた。そして背後に気配を感じ、鷹宮は振り返りざまに鎌の一撃を浴びせようとする。
「って、お前かよ!」
いつの間に背後に接近していたのか、鷹宮の鎌は剣持刀也によって防がれた。動きの止まった鷹宮を見て、剣持はほくそ笑む。
「伏見、僕ごと灼け!」
「オッケーです、任せちゃってくださぁい」
伏見が胸の前で圧縮していた炎を開放する。
「え、聞いてないんですけど! ねえちょっと⁉」
狼狽する魔使たちを巻き込んで、燃え上がる炎は剣持を、そして鷹宮とでびるを飲み込んでいった。
炎の海から上がった剣持は、伏見の背後でぶすっと頬を膨らませる魔使を見て、首を傾げた。
「いや、剣持さん。マオちゃんもあそこにいたから……」
伏見が苦笑して説明すると、剣持は驚いた顔で言う。
「え、いたの?」
「酷すぎる‼」
魔使は思わず地団駄を踏んで抗議する。剣持は落ち着くように促して言った。
「まあ、謝罪と報酬は後程ということでね、切り替えていきましょうね。それより今は奴らのことです」
「あ、どうでした? 俺に言わせりゃあ、あれで倒れてくれる玉ではないですね」
「うん。出てくるよ」
三人は次第に弱まっていく炎を緊張感を湛えた面持ちで見つめる……。
やがて、地面の上で残り火も低くなりだした頃、剣持の言葉通り、宝石の防御壁に守られた鷹宮とでびるが立っているのが見えた。
魔使は不機嫌そうに頬を膨らまし、伏見は「マジで傷つくんだよなー」と頭に手をやって首を振る。剣持は刀の柄に手を落とす。が、刀は抜かれなかった。
剣持の視界には、亡霊たちをまとめ上げ、突撃の指示を出すシスター・クレアが映っていた。
「でび、こいつら何⁉」
その集団は突然にどこかから現れ、なだれ込むような勢いで二人に向かってくる。妙な仮面をかぶった人間味のないそいつらは、みな足音も立てずに静かな殺意を二人に向けていた。
「こいつらは……」
でびるは沈鬱な表情で俯いた。ちらと顔を上げてシスター・クレアの方を見るが、でびるはクレアにまざまざと眼差されて気まずくなってしまう。
「こいつら、死人だよ。あのシスターが喚んでる」
「え、クレアさんが⁉ だってそんな……そんなことできる魔術って」
「うん。あいつは許されないことをしてる。きっと報いが待ってるよ。でもさ、小娘。今はそんなの、どうでもよくない?」
クレアの心配で気持ちがいっぱいになっていた鷹宮は、でびるの言葉にハッとして、でびるの方を見る。でびるもまた鷹宮の方を向いて、鷹宮を試すような目で見つめた。
鷹宮は目を伏せ、後ろ手に指を握って言う。
「……そうかもね」
「そうだよ。大事なのはさ、相手がそれだけの覚悟を持ってるってことだよ。みんなそれだけの覚悟を持ってるのかもしれないねぇ。なのにさ、小娘。お前、本当にあんな願いでいいわけ? ううん、逆に聞きたいんだけど、あんな願いでみんなの覚悟を踏みにじる覚悟、小娘にはあるの?」
かなり意地悪な言い方ででびるは尋ねる。鷹宮は「うん」と頷いたものの、その表情は心細そうだった。
「みんなを配信者にって、単に私がそうしたいだけなんだって開き直ってるけど、私にもまだよくわかんないんだよね……。ただ、あるときから毎日夢を見てるんだ。みんなが配信者になって、視聴者のみんなと一緒に、時にはお祭りみたいにはしゃいだり、時には駄弁ってくだらない時間を過ごしたりするとしたら……何かの些細な言動で誰かが救われたり、あるいは誰かを傷つけてしまったり、そういうことを繰り返しながらも毎日がかけがえのない時間に変わってく……そんなことがありえたら……って、考えて、考えるてると、やっぱりワクワクしちゃって……」
「ふぅん、ああそう。ま、僕はなんだっていいけどね、小娘の言うことならさ」
「悪いと、思わなくはないですけどね。でも、今はこのワクワクを止めずに、行けるとこまで行ってみたい……!」
「テキトーだねぇ」
「我ながらね」
でびるは話し合いは終わったと、迫りくる亡霊たちの方を向いてグッと拳を握った。
「いいよわかった。戦おう、小娘!」
「よし、やるぞでび! 奥の手その1!」
ピンと立つ鷹宮の人差し指を見て、でびるがかわいらしい牙を剥き出しにして笑う。
「おりゃおりゃおりゃ! やったるぞおらぁ!」
いきり立つでびるにぷっと吹き出し、鷹宮も続けて言った。
「やったるぞおらぁ!」
―――
その場にいた一同は皆、頭上を見上げることになった。空まで届きそうなほど巨大化したでびでび・でびるが低くなった笑い声をあげ、足元に群がる亡霊たちをその巨大な爪で薙ぎ払っていく。吹けば飛んでいく砂の山を崩すように、亡霊たちが散り散りになって吹き飛んでいく様を、一同は何も言えずに見守っていた。
「ねえチャイカ、よくわからないんだけどさ、その配信者って奴になってみる気はないかい?」
唐突にいい笑顔で言ったライダーにチャイカはキレ気味に言った。
「なんねーよ! 意味わかんなすぎてやだわ!」
「夜見もやですー!」
夜見も追って主張する。
「しょうがないなあ」
ライダーは諦めて敵と対峙するのだった。
一方、シスター・クレアは少しやつれた顔で巨大化したでびるを見上げていた。
「大丈夫ですか? 少し無理のしすぎでは」
クレアの傍らでそれを見ていたセイバーは、クレアを支えようとして歩み寄るが、クレアはそれを拒絶し、自分の足でしっかりと立って言う。
「心配をかけてごめんなさい。でも、あとちょっとだから。私は大丈夫ですから……。セイバーはでびちゃんとリオンさんを」
セイバーは痛々しいクレアの顔から逃れるように顔を伏せると、「承知した」と告げて怪物と対峙した。
上空では、鷹宮リオンがいつもとは逆にでびでび・でびるの肩の上に立ち、サーヴァントたちや虚空教の勢力が刃向かってくるのを見下ろしていた。鷹宮は最初、くつくつと堪えるように笑っていたが、やがて興奮したように大声で笑い立てた。
「アーッハッハッハ! 戦っ争だよぉ‼」
凶人は悪魔の肩の上で大鎌を振り回し、辺りに宝石を撒き散らしながら叫んだ。