学パロのルウタものです。

以前私の二次小説「IF:くまに飛ばされたブルックの行き先がエレジアだった世界」(https://syosetu.org/novel/296857/)のシーンピックアップを漫画化していただいた梅雨まぐろ様がTwitterに投降した漫画を、ご本人に許可を得て小説化させていただきました。


以下リンクになります。素晴らしい絵師様ですので、皆様是非に。
梅雨まぐろ様Twitter
https://twitter.com/2yu___akaunto
該当漫画「初めての友達」
https://twitter.com/2yu___akaunto/status/1601543692241997827


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初めての友達~好きなもの~

 平穏な日常。

 良く言えば、安寧の日々。悪く言えば、起伏のない日々。

 世界に色がついていなければ、その温さにもいつしか慣れてしまい、この脳みそも茹だってしまいそう──。

 なんて。

 出来損ないの歌詞にすらもならない、良くわからない台詞が脳裏に浮かび、わたしはそれを、秒速約三四〇メートルの早さで脳内のゴミ箱へと破棄する。

 今は、学校の帰り道。

 学校は、嫌いだった。

 ──いや、それは言い過ぎか。

 多分、正確に言うなら“あまり好きではなかった”、だ。少なくとも、今は。

 必要なのは分かっている。

 その思考回路の形成や集団生活への対応、そして学んだ知識は直接的ではなくても、何かしら間接的に役に立つことはあるのだろう。

 だけど──。

 わたしの目標は、世界でも有名な音楽家になる事。

 そのためには、いろいろな音楽に触れたり、作詞作曲に試行錯誤したり、外国語の勉強をしたり、日本語をもっと深く知ったり……。

 夢の為にやらなければならないことを上げれば、枚挙にいとまがない。

 その“やらなければならないこと”の時間と、“息抜きにやりたいこと”の時間を割くことになる学校は、正直に言うと窮屈で仕方がなかった。

 わたしの嫌いな物は、窮屈。あと退屈。

 好きな物は、音楽──。

「勝負しようぜ!」

 不意に耳に飛び込んできた声に、わたしの意識は現実へと戻される。

 その声の方に、視線を向けてみる。

 木の葉が色づき始めて、寂びれた印象になった小さな公園。

 そこにいたのは、小さな男の子二人。

 小学校の二、三年生くらいだろうか。

 なんの勝負をしているのかははた目にはわからなかったが、二人とも楽しそうにはしゃいでいる。

 

『おれと勝負しろ!』

 

 ふと、わたしの記憶の中から、鮮明にそんな声が聞こえた。

 あれは──、うん。

 ちょうどわたしが、あそこで遊んでいる彼らと同じくらいの年齢のころの記憶だ。

 わたしはその頃、明確に学校が嫌いだった。大嫌いだった。

 理由は簡単。

 馴染めなかったから。

 当時から音楽が好きだったわたしは、四六時中音楽のことばかり考えていたせいで、周りのクラスメイトが話している“最近のトレンド”の話題が、ほとんどわからなかったのだ。

 音楽に関わることなら話せるが、それ以外はちんぷんかんぷん。

 

『ウタちゃんって、なんか変だね……』

『もう放っておこ。あっち行こうよ』

 

 親の仕事の都合から引っ越しを挟んだこともあり、余計に人間関係の構築は困難を極めた。

 ……今思い返してみると、わたしの人生の中であの時が、一番荒れていた時期だったのかもしれない。

 いつも仏頂面で、用事があって声をかけてもつっけんどん。

 そんな人と好きで関わろうとする人なんているはずもなく(わたしだって、そんな人と進んで関わろうとはしないと思う)、次第に周囲は寄り付かなくなっていた。

 そんなある日のことだ。

 引っ越しで新しい土地に来たが、やはり学校には馴染めず、眉間に皺を寄せて生活していた時のことだ。

 

「おれと勝負しろ!」

 

 学校の帰り道、不意に後ろからそんな声がかけられた。

 振り返ると、そこには黒い髪の子供がいた。

 

「お前この前、近くに引っ越してきたんだろ! 勝負だ!」

 

 何の脈絡もないその提案に、当時のわたしは心底嫌そうな顔をしたんだと思う。

 どうせ離れていくのなら、最初から近づいてこなければ、お互い嫌な思いをしなくて済むのに……なんて。

 

「はァ? いきなり何よ。誰か知らないけど着いてこないで。……ストーカー!」

 

 突き放すために、ちょっと強めの口調で言う。

 そんな返答をされると思っていなかったのか、男の子は「なにィ!」と驚いた顔をすると、だっと駆けだしてわたしの正面に回り込んだ。

 今度はニッと勝気な笑みを浮かべて、言う。

 

「なら! 友達になろう!!」

 

 正直、呆れた。

 多分、友達になればストーカーじゃなくなるから、勝負してもらえるとでも思ったのだろう。

 

「あっ、でも友達になっても、勝負に手は抜かねェぞ!」

 

 なんてのたまっている。

 

『ウタちゃんって、なんか──』

「ははっ」

 

 頭の中にずっとリフレインしていたその雑音(ノイズ)は、彼のその言葉であっけなく消え去っていった。

 

「変なの」

 

 こんなわたしに、屈託なく絡んでくる男の子がおかしかった。

 そして、今更になってみんなが羨ましくって、寂しかった自分に気が付いて、そんな自分もおかしかった。

 自然と、口角が上がる。

 眉間の皺も、綺麗さっぱりなくなっていた。

 

『じゃあ、あたしの家まで競争ね!』

『はァ! ズリーぞ! お前の家なんて知らねェ!!』

「ウタ? おーい、ウター?」

 

 不意に名前を呼ばれて、わたしは再び意識を現実に持ってくる。

 ついうっかり、思い出に浸ってしまっていた。

 声の方を見ると、前を歩いていたはずの学ランの男の子が、立ち止まり振り返っていた。

 彼は少し眉尻を落とし、不気味なものでも見たかのような表情をしている。

 

「どうしたんだ? さっきからニヤニヤして」

 あれをきっかけに、大嫌いな学校も、“苦手”程度にまでは昇格させられた。

 普通に、友達も作れるようになった。

 それでも、今も昔も、親友と呼べる特別な人は、たった一人だけ。

 わたしの初めての、友達。

 

「ううん」

 

 親友の声に、ニヤリと笑ってわたしは言う。

 

「ルフィ! コンビニまで競争! 負けたら肉まん奢りね!!」

 

 言うが早いか、だっと駆け出す。

 わたしたちの勝負は、唐突で早い者勝ちだ。ズルも何もない。

 

「肉まん~!? 負けねェぞ!!」

 

 目を輝かせて、彼がわたしを追ってくる。

 あはは、と心からの笑みが口をついて零れていた。

 わたしは、ウタ。

 嫌いなものは、窮屈と退屈。苦手な物は、学校。

 好きなものは、音楽と、そして──。

 




お読みいただきありがとうございました。
あらすじにも書いたように、こちらは梅雨様の漫画をノベル化させていただいた物になります。
リンクなどはあらすじをご覧くださいませ。

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