僕のヒーローアカデミア Legend of Chimera 作:夢野飛羽真
濃密な内容を楽しんでいって下さい。
一通り戦闘訓練を終えればいよいよ龍也の出番がやって来る。
「さて、大崎少年。パートナーに選ぶのは誰かな?」
「そうっすね…緑谷君が気になるんですけど怪我しちゃったみたいなんで…轟君ですかね。」
龍也が選んだのは圧倒的な実力で彼の友人である尾白を撃破した轟焦凍であった。
彼の確かな実力を間近で見てみたい。個性把握テストで自分よりも高順位だった男を指名した理由はそれだけで十分だろう。
「良い選出だ。では相手は私から選ばせてもらおう…爆豪少年!切島少年!いけるな…?」
「あたりめーだ!!」
「行けます!」
一方オールマイトに選ばれたのは爆豪と切島であった。
彼らは一般入試をかなりの高順位でクリアしており、今日の訓練でもある程度の戦闘能力をしっかり示していた。
「じゃあいこっか、轟君」
「ああ…」
龍也と轟はヒーローチームで、爆豪と切島はヴィランチームで行うことになりそれぞれの持ち場に向けて移動していく。
「戦う前に聞いておきたいんだけど轟君の個性、氷だけじゃなくて熱とか炎も使えるんだよね?」
「まあな…」
ここまで轟は氷を主に戦闘などで使ってきていた。だが、その後に氷を解かすのに左手から火を放っているのを龍也はしっかり見ていた。
「なら、爆豪君の対処は任せれるかもね。」
「いや、俺は左は使わねえ…」
「使わない…!?」
炎と氷を使いこなせば爆豪を封じ込めることは容易であろう。
しかし、彼にそのつもりは無かった。
「何で使わないんだい?」
「それは…言えねえ……」
彼の左半身を覆うような氷のアーマーはその意思を強く表しているようにも見える。
その理由を聞き出そうにも口を開かなさそうな様子の轟に、龍也は一度身を引いて作戦会議に話を移すことにした。
「まあ、やれるだけやってみればいいんじゃないかな?開幕はビルを大凍結で問題ないよ。その後屋内に乗り込んで上に上がっていく。先に現れたヴィランは僕が抑えるよ。」
「ああ、その作戦でいこう…」
「けど、実戦では君の信念がどこまで通じるか分からないよ。自分の信念と勝利、どっちを優先するかは君次第。けどその選択が動かすのは自分の運命だけじゃないってのをしっかり肝に銘じてね…」
「ああ…」
半分の力だけで戦うというのはヴィランと戦うのならかなり危険なことであった。
自分がそれで負けてしまえば救うべき人々の命が危うくなってしまう。
だが、今の轟の視界は狭かった。彼の視界の中には未だ誰かの危機と云うものがまだ入っていなかった。
『では、そろそろ始めるとしよう。』
演習を行うビルの前に着いた時、2人の耳に付けられたインカムからオールマイトの声が伝わってくる。
「いつでもいけますとも…」
『それではッ…!始め!!』
オールマイトの号令と共に轟の右手から氷の波が一気に広がっていってビルを覆いつくす。
「まだくるよ!」
普通なら体を氷で覆われてしまえば動けずリタイアしてしまうところだろうが、次の瞬間ビルの中から爆音が轟けばすぐに龍也達も屋内に雪崩れ込んでいく。
『ツインキメラ!』
『キング!ダイル! Come on! キメラ!キメラ!キメラ!』
「変身!」
『スクランブル!キングクラブ!クロコダイル!仮面ライダーキマイラ!キマイラ!』
「さあ…起つ時だ!」
階段を駆け上がりながら龍也はツインキメラバイスタンプとキメラドライバーを操作して仮面ライダーキマイラの装甲をその身に纏っていく。
「来たなァ!大崎!」
「切島君、僕が相手するよ。」
ビルの中間階まで上がってくれば先に前に出て来た切島が彼らの前に立ちはだかる。
恐らく爆豪は上の階で核の防衛をしているのだろうと思い、そちらに轟を向かわせた龍也は全身を硬化させて身構える切島と向かい合う。
「いくよ!」
ヒーローの戦いに試合開始のゴングは無い。
路上での戦闘も戦いの火蓋は突然切られるものだ。
ならば自分が戦いの火蓋を切れば良いと言うように龍也の方から切島目掛けて殴りかかっていく。
「来やがれ!」
切島の拳と龍也の拳がそれぞれ繰り出されて、お互いの身体にぶつかる。
個性で硬化した切島の肉体と仮面ライダーキマイラの装甲にはそれぞれの一撃が響かない。
ならばとお互いが拳を連続で繰り出していく。
「クソッ…!」
龍也は中学時代によくキックボクシングの試合に出ていたがアグレッシブに相手を攻め立てて拳や蹴りを次々と繰り出していくのが彼の戦闘スタイルであった。
切島も勢いで負けぬ様に腕を振るって拳を繰り出していくが、拳を打ち出す技術は龍也の方が上手であった。
小さく振るったフックが1発、2発と切島の顔面部に当たっていく。
「ヤベッ…」
全身を硬化させていたが、流石に頭部への攻撃で脳が揺れ始める。
龍也は視界が揺らぎだした切島のその隙を見逃さない。
「耐えさせないよ!」
切島の方に右足を一歩足を踏み出して左ストレートパンチを切島の額に繰り出す。
「まだまだ!」
次に繰り出されたのは左足からの回し蹴り。
脇腹に向けて繰り出され一撃を体を丸めるような体制にして硬化して防ぐが少し体制が崩れた彼の右こめかみに容赦なくキマイラの拳が突き刺さる。
「クッ…!」
このダメージで切島は立ってられるのがやっとだった。
次にキマイラが放った前蹴りが顎に突き刺されば、遂に後ろに倒れこんでしまう。
硬化でかなりの防御力を発揮する切島に対して頭部への攻撃を着実に決めて脳を揺らして地面に背を着かせる。
「一気に決める!」
倒れた状態の切島に引導を渡すために高速用のテープを手に飛びつこうとするが…
「まだッ…まだッ…!」
切島の闘志はまだ燃え尽きていなかった。
根性だけで立ち上がり、龍也にタックルを繰り出す。
「気合がすげえな…」
組みついてくる相手を受け止め、その場で踏ん張る。
「フィジカルッ…!強すぎるだろッ…!」
組み付く切島の腹部に何度も膝蹴りを繰り返すが、ビクともしない。
何とか彼を引きはがして壁に投げ返す。
「どうだッ…!?俺の気合と根性!」
「中々硬いし厚さは伝わってくるよ…だから、僕の最強の一撃は受け切れるかな…?」
『キングクラブエッジ!』
キングクラブのエネルギー体を自分の拳に纏わせて切島に拳を繰り出す。
「来い!」
全身を硬化させて自身の顔の前で両腕を交わらせた状態で構える切島。
だが、容赦なく突き刺さった龍也の拳は切島を壁まで吹き飛ばし、壁にぶつかった切島の身体がめり込んでしまう。
「クソッ…」
切島の身体は重力に従い壁から剥がれ落ちると床とぶつかって鈍い音を立てる。
「切島君、確保だよ。」
自身の必殺技を受けて気絶してしまった切島の身体を拘束用テープで縛れば、今度は轟の援護に向かうべく上に向かう。
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「こんなもんかッ…!」
「…ッ!」
轟は爆豪相手に苦戦を強いられていた。
轟が生成した氷は全て爆破で打ち砕かれてしまう。
右から氷、左から炎を放つのが轟の個性ではあるが右しか使っていないので爆豪は"轟は右からしか撃てない"と認識して轟の左側を中心に攻め立てる。
(大崎ごと巻き込んじまうかも知れねえがッ…!)
追い詰められた轟は炎を使う選択どころか仲間を巻き込んで爆豪をビルごと凍らせようと大氷結を繰り出そうとしたが…
「テメエは動きが大振りなんだよ!」
轟が腕を振るい氷の波を繰り出そうとするのに合わせて爆豪は自身のコスチュームにある手りゅう弾型の籠手のピンを抜く。
この中には爆豪のニトロ成分を含んだ汗が入っており、ピンが抜かれると共に一気に爆発する。
「クソッ…!!」
轟が放った氷ごと爆破が打ち砕き、轟の身体が地面を転がる。
「やっぱ苦戦しちゃってるね…轟君…」
爆豪が拘束テープで轟を捕まえようとしたところに、龍也が現れる。
「大崎…」
「轟君、ここは僕に任せて!」
新たな敵の出現に爆豪は自身の掌で爆破を起こしその推進力で一気に龍也に距離を詰める。
「君こういうの弱いでしょ。」
爆破を放とうと突き出された左腕を掴むと、背負い投げで彼の身体を地面に叩きつける。
推進力で進んでいた爆豪は勢いよく地面に背中をぶつけ宙を向くことになってしまう。
「ッ…!」
掴まれた左腕の掌を爆破してキマイラにぶつけるが、その装甲はビクともしていない。
多少その体が揺れだただけでダメージはあまり受けていない様子だ。
だがしかし、爆煙は龍也の視界を遮るのに充分で一度後ろに下がって距離を置かせる。
「テメエもここで沈めてやる!!」
初戦で緑谷に負けた爆豪は少し躍起になっていた。
龍也の方に突進しながら掌から爆破を何度も放つ。爆煙で相手の視界を塞ぎながらあわよくばダメージを与えてしまおうとしていたが…
「まだまだおおざっぱ!」
だが、炎や煙は上方向に逃げていくものだ。
辛うじて視界が明瞭な下の方に屈んで、龍也は爆豪の右足に向けてタックルをする。
右足を掴まれてバランスを崩した爆豪はそのまま倒れこんでしまう。
「まずは一本!」
足首を掴み爆豪の膝を曲げさせて、そこに自身の足を絡ませて動きを封じる。
「今だ!轟君!」
「ああ…」
ダメージを受けて倒れていた轟がこの間に立ち上がり、核兵器に触れて確保する。
『ヒーローチーム!WIN!』
最後は龍也が爆豪を抑えている間に轟が核兵器を確保するという連係プレーを見せて龍也らヒーローチームの勝利となった。
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「お疲れ~あの足固める技スゴくね?」
「大崎君、グラッピングの技まで練習してたんだね。」
演習所に隣接する待機室に龍也達4人が戻ってくれば上鳴や尾白と言った面々が出迎える。
特にこの試合大活躍でった龍也の下に集まる者は多い。
「さてさて、本日最後の講評を行うとしよう。」
テンションが上がってきて騒がしくなってきた生徒達をオールマイトが制すると、早速講評を開始する。
「早速だが、今回のMVPは間違いなく大崎少年だ!理由は分かるかな?」
「はい!」
「では、飯田少年。」
挙手をした者の中からオールマイトは飯田を指名する。
「大崎君は下の階で切島君を抑えて最後は爆豪君も抑えて味方が確保するタイミングをしっかり確保しました。先に現れた敵もしっかり倒しておくことで後顧の憂いなく攻めに転じて上の階での勝利を演出しました!」
「ウム、その通りだ!それに戦闘スキルもしっかり磨いているようで少し感心してしまったよ。」
「格闘技も結構やってたんで。」
「なるほど、それは素晴らしいことだ!では!今日の授業はこの辺で…皆、しっかり怪我を治しておくんだぞ!」
「「「はい!」」」
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「大崎の戦い凄かったけど、格闘技って何やってたの?」
授業の後僕達は教室に集まって今日の反省会と云う名の駄弁りをしていた。
クラスメイトの顔や名前に加えてどういう人物かを把握するにはいい機会だったので僕も参加している。
今僕の隣には耳郎さんが居て、丁度格闘技に関する質問をしてきてくれたところだ。
「中学までは空手やってたけど、それ以降はキックボクシングとMMAだね。」
「MMA?」
「そう、日本語で言えば総合格闘技ってやつ。パンチやキックだけじゃなくてレスリングのタックルとか柔道の固め技なんかも使う格闘技だね。さっきの固め技みたいなグラッピングも活用して戦うんだ。」
キックボクシングだけじゃなくて小谷さんに叩きこまれたMMAも中学の間に何度か試合をさせてもらったことがあった。こういう試合では普段の打撃だけじゃなくて絞め技や固め技でよく相手から一本勝ちを収めてた。
「大崎はなんで格闘技を始めたの?」
「父さんがジムやってたってのもあるけどやっぱ、ヒーローになる為かな。」
ヒーローになると決めた日にはいつの間にか父さんに頭を下げて格闘技を教えて欲しいとお願いしていた気がする。肉体と技術を鍛えるために練習に打ち込んだ日々は確実にヒーローになった時に生きてくると信じている。
「大崎はさ、なんでヒーローになろうと思ったの?」
「ヒーローになろうと思った理由?やっぱオールマイトかな。昔ちょっと助けられたことがあってね。」
数十年に渡る仮面ライダーへの思い出は勿論だが、この世界に来てから僕が一番憧れてるヒーローは間違いなくオールマイトだ。バスジャック事件の時に彼に助けられてからずっと目標にしてきていた。今日の授業も内心興奮しっぱなしだった。
「奇遇だね。実はウチもオールマイトに助けられたことがあってそれでヒーロー目指してたんだ。」
「凄い偶然だね。流石オールマイト!」
オールマイトに救われた人が間近にいるなんて驚きだ。
凄い偶然…ん?待てよ…
確かあのバスジャック事件で僕らと一緒にいたのって……
「どうしたの?大崎」
「いいや、何でもないよ…」
「なあなあ、大崎~さっきのあの技どうやったか教えてくれよ~」
もう少し耳郎さんと話をしたかったが上鳴君が来たので一旦そちらに話を移す。
自分の技解説をしながらの反省会も時が流れていき終わりを告げた。
ヒーロー科としての日々はまだ始まったばかりだ。明日からもまた頑張っていくとしよう…