僕のヒーローアカデミア Legend of Chimera 作:夢野飛羽真
雄英高校1年A組を襲ったヴィラン連合によるUSJ襲撃事件は、多くの生徒たちの活躍でこの事件は幕を閉じた。
爆豪、切島、轟、尾白らは各々が飛ばされてしまったエリアのヴィラン達を次々と撃破。
緑谷も個性を使った影響で、指を負傷しながらも危機を乗り越えた。
そして怪人脳無を撃破し、敵の総大将を撤退に追い込んだ龍也は、保健室のベッドの上で眠っていた。
「龍也!龍也!」
龍也が眠る保健室に1人の少女が駆け込んでくる。
その少女は彼の姉である、大崎桃香だ。彼女は弟より2年先に雄英高校に入学しており、3年生の1人として在学していた。弟が重傷を負ったと聞いて、保健室に駆け込んでいた。
「おやおや、アンタも来たのかい。」
家族が倒れたと聞いて駆け付けた桃香を、リカバリーガールが迎え入れる。
室内に入っていけば、ベットに横たわる彼の姿と、その横で龍也のことを見つめる少女の姿があった。
「あれ…?あなたって…」
桃香はその少女に見覚えがあった。
それは以前弟と共に巻き込まれたバスジャック事件で出会った少女であった。
「そう…ですよね…昔の事件の時に一緒にいた…」
耳郎はこれまでの龍也の発言から、バスジャック事件の時に自身を助けてくれた姉弟のことを思い出していた。彼らは間違いなく今目の前にいる龍也と桃香であると確信していた。
「覚えてたみたいだね。久しぶり。君も雄英の生徒になったんだね。」
「は、はい…彼とも同じクラスです。」
眠っている龍也を見ながら、久々の再開を果たした2人。
「そうなんだ、龍也のことよろしくね。こいつたまに無茶しちゃうから。」
「はい…今日も結構、無理しちゃったみたいで…」
「そうだろうね、リカバリーガール。龍也の状態って今どうなっていますか?」
そっと桃香が龍也の手を握って、リカバリーガールに容体を聞く。
「体力もほとんど無くなってるし、治癒には時間がかかるかも知れないわね。けど、今のアンタならなんとかできるんじゃないかしら?」
「ええ、任せちゃってくださいよ!おいで、フィアー」
桃香が自分の個性であるお供の1体、フィアーを召喚する。彼女はピンク色の毛をしており、耳にはリボンの様なものが付いている。その子が龍也の眠るベッドの上に登れば、ピンク色のオーラを放ち、龍也に流し込んでいく。
「これって…?」
「フィアーの治癒能力。ちょっとだけだけど、体力とか傷を治癒できるんだ。リカバリーガールほどじゃないけど、微力ながら治療できるわ。」
そのオーラを浴びると、龍也の身体に付いた傷が幾つか塞がっていく。
「ん…姉…さん…?それに…耳郎さん……?」
フィアーによる治療は功を奏したと言っても過言ではないだろう。
龍也は目を覚まし2人の少女の方を見る。
「龍也!」
龍也が目を覚ました嬉しさから、桃香が彼のことをぎゅっと抱きしめる。
「ちょっと姉さん!痛いって…」
「へへ、ごめーん」
龍也の復活に喜んで、少し騒ぎすぎてしまったところをリカバリーガールに注意されてしまうが、龍也が回復し、体力も戻ったことで、リカバリーガールの個性を使った治療を受けて各々教室に戻る様に指示される。
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「耳郎さん、お見舞いに来てくれてありがとね。」
「ううん、気にしないで。」
桃香は先に自分の教室へと戻り、龍也と耳郎も1年A組の教室への帰路についていた。
「さっきも助けてもらったし、こんぐらいしてあげないとね…」
「そっか、僕が耳郎さんのことを助けたのはさっきで2回目か。」
「ううん、本当は3回目なんだ…」
「え…?」
龍也の記憶では彼が耳郎のことを救ったのは、雄英の入試とUSJでの一件の2回であった。
だが、耳郎の記憶の中では、幼少期にも一度龍也に救われていた。
「覚えてない?昔バスジャックに遭って…」
「バスジャックって確かスタンプと…あ!あの時の!」
そして龍也も彼女の言葉で、自分の古い記憶を1つ思い出していた。
嘗てデッドホークに誘拐された際に、自分と姉が助け出し、共に行動した1人の少女のことを…
「そう…だよね…今思い出したよ。前から会ったことあるなって思ってたんだけど、あの時一緒にいた子だったんだね。」
「思い出してくれたんだ…」
そのことに耳郎は頬を赤くしながら、嬉しそうに龍也の手を握る。
「あの時果敢に挑む大崎達を見てウチ、ヒーローになりたいって思ったんだ。だから大崎は、ウチがヒーローになるキッカケなんだ…」
「ぼ、僕が…」
「ずっと会いたかった…」
誰もいない夕日に照らされる教室で、耳郎は突然龍也を抱きしめた。
「耳郎さん…」
「ご、ゴメン!つい…」
龍也の声に少し冷静に戻った耳郎が、思わず抱きしめていた彼の身体を離す。
「だ、大丈夫だよ…」
「うん…」
突然抱き着いてしまった自分の行動に耳郎自身も気恥ずかしさから顔を紅潮させ、心拍数を加速させていく。抱き着いたままらならこの鼓動が龍也にも伝わってしまっていただろう。
「それじゃあ僕…着替えてくるから…ま、またね…!」
気まずい状況に、しばらく沈黙が続くが、龍也は自分がまだコスチュームを着たままであることに気付くと、着替えという名目でこの場から離れていく。
(ウチ…ホントになにやってんだろ…)
自分が突発的にしてしまった行動に後悔しながらしゃがみこんでしまう。
(ようやく、会えたのに…だってウチはあの時から……)
悪の組織デッドホークによるバスジャック事件。
その時に自分を助けてオールマイトを呼び、自分達を救ってくれた龍也のことがずっと気になっていた。
彼と再会するまで、その淡い恋心に自分自身気付いていなかった。
だが、雄英生活の中で2度彼に助けられたことから、その心は再び湧き上がってきてしまっていた。
「ウチ、気まずいことしちゃったかな…」
彼に嫌われてしまっていないかだけ心配しながら、彼女も家に帰っていくのだった。
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(何だろう…この気持ち……)
更衣室で着替えながら、僕は胸に手を当ててそこから発せられる鼓動を感じていた。
(初めてだ…女の人に抱きしめられるなんて……)
母さん以外の異性に自分の身を抱かれるのは初めてだ。
胸の中にあるこのザワザワした気持ちは何だろう…?
唾を飲んで冷静さを保とうとしても収まることはない。
「耳郎さんは僕のこと…」
僕のことを抱きしめた彼女の気持ちを考えてしまえば、胸の鼓動はまた高鳴ってしまう。
女の人が異性のことを抱きしめるなんて…相当な感情が無いとできないことだ。
(考えれば考えるほどドキドキする…)
明日から面と向かって彼女と話せるか、不安でしかない。
他のことを考えよう…他の事…他の事…
(そういえばトライキメラバイスタンプ上手く使えたな~)
話を一度バイスタンプの方に移そう。
先程使用したトライキメラバイスタンプは、僕の考えた理論ほど余剰エネルギーが発生しなかった。
というより最終調整のお陰で無事に使いこなせたって感じかな…
今後またヴィランが来るかもしれない…しっかりと使えるように更なるトレーニングと、調整をしていかないといけない。
(耳郎さん…)
ダメだ、また彼女を意識してしまう。
とりあえず姉さんも待ってるし、早く着替えて帰らないと…
(はぁ…今度からどんな顔して学校行って耳郎さんに会えばいいんだ…)
今悩んでも仕方がない。
今日は家に帰って、ゆっくり体を回復させるとしよう……