僕のヒーローアカデミア Legend of Chimera 作:夢野飛羽真
雄英体育祭の第1種目は障害物競走
参加する1年生全員がスタジアムの外周を走っているが、実況や解説、さらに観客達は先頭集団の方に注目を集めてしまう。
『おっと!ここで先頭が轟に変わった!!』
最序盤は脚力で他の生徒に勝る仮面ライダー2人やB組の宍戸らが先頭にいたが、後ろから地面を凍らせながらその上を滑って進んでいく轟に追い抜かれる。
「おいおい、足凍らせられちまってるじゃねえか。」
「そっちこそ。」
鉄虎と龍也はそれぞれ、轟の氷結に巻き込まれて足が氷に覆われてしまっている。
「て言っても、こんぐらいどうってことないけどね。」
2人にとってはこの程度の妨害、虫がコンクリートの壁にぶつかる程度のダメージしかないだろう。
仮面ライダーダイモンに変身している龍也は、オーインバスター50を研究室空間から取り出して、足元の氷を砕いて再び進み始める。
「先に行くぜ!」
鉄虎は赤い粒子で歯車状の刃を作り、氷を砕くだけでなくその粒子の塊を宙に浮かせて足場にし、その上を歩いて進んでいく。
氷で滑るリスクなく前進できるので、鉄虎は他の生徒を徐々に追い抜いていく。
「早速使ってみようか。」
進んでいく彼の方を見て、龍也もオーインバスター50に新たなバイスタンプを押印する。
『ケツァルコアトルス!スタンピングスラッシュ!』
切っ先を進行方向に向ければ、ケツァルコアトルスの姿をしたエネルギー体が現れ、仮面ライダーダイモンの背がそのエフェクトを背負う。
「一気に羽ばたく!」
そのエフェクトは彼の翼となり、低空飛行で一気に前進していく。
『轟の背後を笠井が追う!おっと!?飛んでいるのは…大崎だ!』
先頭は轟、笠井、龍也の3名が並び各々自身が一歩先に出ようと加速していく。
「おっと、あれって…」
だがしかし、彼らの進軍は自身が思う様には進まない。
障害物競走という名の通り、彼らの前に最初の障害が立ちはだかる。
『ターゲット…タイリョウ!』
『さあ、最初の障害物だァ!!第一関門!ロボインフェルノ!』
緑色に染まる鋼鉄の身を持ち、赤い瞳で生徒達を睨みつけるのは大量の仮想敵である。
それらは入試にて登場したロボット達であり、入試では0ポイントヴィランと呼ばれていた巨大なロボット達であった。入試の際ただでさえ驚異的だった彼らが、何体も並び立っていた。
「どうせならもっとスゲエの用意してくれねえかな…クソ親父が見てるんだから…」
生徒達とポイントヴィランの戦いにおいて、一番槍であったのは轟だ。
彼が右手を振るえば氷が地面からロボの巨体に伝わり、彼らの前にいた仮想敵の全身が氷に覆われる。
「僕達も続くとしよう…」
他のヒーロー科生達も、各々の個性でロボットの集団に対抗していく。
『ホワイトレオ!スタンピングスラッシュ!』
ホワイトレオバイスタンプを、オーインバスター50に押印すれば、召喚されたホワイトライオンのエフェクトを斧に纏わせて一体の仮想敵に向けて振るう。
炎を纏った刃が斧の切っ先から放たれ、0ポイントヴィランの腹部に向かっていく。
その熱は腹部の鉄と回路を焼き切り、前面部から背面部を完全に切り離してしまう。
「一機撃破ッ!」
2つに分断されたその上半身は地面に落ちていき、下半身も何カ所で爆発を起こしながら崩れていく。
「おうおう!俺とリベンジマッチでもするか?」
一方の鉄虎も0ポイントヴィランと向き合っていた。
彼もまた、入試でこの巨大ロボを撃破しており、一度倒した相手を倒すのは容易であった。
4本の鋭利な刃がついた歯車状の円環粒子、デストサイクロンを4つ作り出せば、目の前に立つはだかる個体に向けて振り回してぶつけていく。
その刃に身体を切り裂かれた仮想敵も、地面に崩れ落ちていく。
『A組轟と大崎!それにB組の笠井が次々と仮想敵を撃破!他の奴らも負けちゃいないぜ!』
0ポイント以外の仮想敵達も次々と生徒の妨害に加わるが、生徒達の前に次々と鉄屑と化していく。
特にUSJでヴィランとの戦闘を経験したA組生徒の動きは早い。立ち止まる時間は他の生徒より短く、妨害する敵達を対処しつつしっかり進んでいく。緑谷も敵の残骸を武器代わりに、仮想敵に対処してこの場を凌いでいた。
『おいおい第一関門チョロいってよ!じゃあ、第二関門どうだ?』
龍也ら先頭集団の目には、既に次の障害が映っていた。
『落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!ザ・フォール!』
それは地面に空いた大きな穴であった。
穴の中には幾つか足場があり、その間にロープが張ってあるが、慎重に進まなければ落ちてしまうのが目に見える。
「ここもバイスタンプでいくか。」
先頭の轟は凍らせたロープの上を滑っていき難なく一抜け、その後を生成したデストサイクロンを足場代わりに移動していく笠井、爆破の推進力で飛びながら追う爆豪
『コンドル!スタンピングスラッシュ!』
そして、コンドルのエフェクトを纏い、他の生徒達の上を飛んでく龍也が追従する。
(スロースターターか…)
特に汗を爆発させる個性の爆豪は、その力を使えば使う程汗腺が広がって、より爆破の頻度が上がっていく。
終盤戦に近付くほど、爆破回数が増えて進行速度も速くなっていく。
『早くも最終関門!その実態は…』
先頭を走る轟が目にしたのは広大に広がる平地であった。
所々、土の色が変わっており、周囲の土よりも新しいものだと思われる。
『一面地雷原!よく見りゃ分かるようになってるから目と足酷使しろ!』
地雷の威力は競技用なので、光や音、爆風で進む者を妨害する程度の威力しかないが、踏んでしまえば先に進むのが遅くなり、あとの者に追い抜かれてしまうだろう…
「なるほどな、こりゃ先頭程不利になる障害だ…」
この地雷を先に誰かが踏んでいけば、後の者は地雷が少ない状況で走っていける。
逆に先頭の者からすれば、一番地雷が多い状態の道を進んでいかなければいけない。
「俺は…関係ねえ!」
だがしかし、この障害物で一番有利なのは、地雷源を苦にしない個性持ちだろう。
特に地面に足を付けずに移動できる者、例えば爆豪勝己。
彼は爆破を連続的に放ち、その推進力で低空飛行を続けながら前へ進んでいっている。
この障害物のエリアでも速度を落とすことなくゴールへ向かっていく。
「テメエ!宣戦布告する相手を…間違えてんじゃねえ!!」
『先頭が変わったー!!』
そしてその爆豪は、轟を追い抜いてトップに躍り出る。
「だったら俺が代わりに宣戦布告してやるよ、トップヒーローになるのは俺様だ…!」
「チッ…!」
だが負けじと笠井も、センチュリーの力で円環粒子の足場を何度も作って、その上を走っていく。
やはり仮面ライダーの身体能力は高く、デストサイクロンを踏んだ際の反作用と、備わっている脚力で加速していき、先頭の爆豪を追い抜いた。
『スタンプバイ!オーイングストライク!』
彼らの背後で爆音が轟いた。
龍也がオーインバスター50に、オーインスタンプを押し込んで地面を撃ち、その反動で自身の肉体を進行方向に向けて吹っ飛ばして一気に彼らを追い抜こうとしていた。
だが、3人の目に映ったのは、龍也が起こしたものよりも大きな爆発であった。
『ここで大爆発!何だあの威力!』
オーインバスターの技で起こした爆風に乗り、一気に轟らを追い抜こうとした龍也。
だが、彼の頭を飛び越え、鉄の板にしがみつきながら爆風で進んでいく生徒の姿があった。
彼の名は緑谷出久。地雷を掘り起こして、幾つか貯めこんだ後、それを鉄の板で叩いて爆発させ、その爆風で一気に追い上げてきた。
『A組緑谷!爆風で猛追!!つーか抜いた!!』
「こりゃ一本、取られたね…」
轟は後続に道を作ってしまう形になるが地面を凍らせ、各々必死で緑谷を追っていく。
だが着地と同時に緑谷が再度地面を鉄板で叩き、地雷を爆発させて彼らを妨害、先頭を保ったままゴールに向かって走り抜けていく。
『雄英体育祭!1年ステージ!序盤の展開から、この展開を誰が予想できた!?今、一番に戻ってきた男、緑谷出久の存在を!!』
1番最初にゴールに辿り着いたのは、地雷をうまく活用した緑谷出久であった。
彼の逆転劇にスタジアム中から歓喜の声が鳴り響く中、龍也、笠井、轟、爆豪が次々とゴールしていく。
初めて浴びる歓声に思わず涙を零してしまう出久の肩を一人の男がポンと叩く。
「泣くなよ、ヒーロー。まさか大逆転されちゃうとは思わなかったよ。とりあえず…ナイスファイト。」
「あ、ありがとう…大崎君…」
龍也の心の中では自分が二位に沈んでしまった悲しみよりも、友人の活躍に対する喜びの方が大きかった。
「そんな…運が良かっただけだよ…」
「ううん、緑谷君が僕より良い作戦を思いついたって話だよ。」
ただそれだけでなく、体育祭はまだ1競技目であり、龍也も未だ巻き返せるチャンスがある。
「さて、予選通過は上位44名!!」
これから2つ目の競技が始まろうとしている。
この結果で、龍也含め多くの者が緑谷を逆転することが出来る。
ただしそれは、障害物競走を乗り切った上位44名に限った話であるが…
「そして次からいよいよ本戦!さーて第2種目は~~コレよ!!」
『騎馬戦!』
画面に表示されたのは騎馬戦の3文字であった。
「参加者は2〜4人のチームを自由作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じだけど、1つ違うのが…先程の結果に従って各自にポイントが振り当てられるわ。44位が5ポイント、43位が10ポイント…といった具合で……」
上位になればなるほど与えられるポイントが高くなり、例えば3位の笠井なら210ポイント、2位の龍也なら215ポイントを与えられる。
「そして1位に与えられるポイントはなんとっ……!1000万ポイントよっ!!」
(1000万!?)
障害物競走1位に与えられるポイントは1000万ポイント
そのポイントの奪い合いになるということは、1位の者が狙われやすくなってしまうということだ。
「い、1000万!?」
そして、そのポイントを得たのは緑谷出久。
多数の生徒達の視線が、彼に集中していくのだった。