僕のヒーローアカデミア Legend of Chimera 作:夢野飛羽真
今回から少しずつ主人公が覚醒していきます。
さて、小学校入学の日が迫っていたとある日の昼下がり。
僕は桃香姉さんとバスに乗ってお遣いに行っていた。
少し家から離れたスーパーに母さんの欲しい食材があるらしい。
セールで安くなってるアイスも序でに買っていいと言われてるのでかなりワクワクしている。
「姉さん、そのお供お気に入りだね。」
「そうそう、このライタが1番カッコイイし強いんだもん!」
姉さんはバスの座席に座る自分の膝の上に黄色い毛並みのお供を乗せている。この子の名前はライタで電気属性らしい。
「確かにカッコイイし、電撃攻撃とかもできるし強いんじゃないかな?」
「でしょでしょ!もっと可愛がってもいいんだよ〜」
姉さんの言葉に反応するようにその四足歩行の可愛い生き物は僕に擦り寄ってくる。こんな可愛いことされちゃったら僕も頭を撫でるしかないよね。生き物のセラピー効果ってスゴイな…僕がいた大学の1番結果出てた研究室にもアクアリウムはあったし。
我が家はしばらく姉さんのお供達にお世話になろう。
「けど、私ちょっと心配…」
「どうしたの……?」
「アンタの個性のことよ。いつになっても出てこないじゃない……」
この世界の人々は皆個性と呼ばれる特殊な能力を持っている。例えば姉さんのお供とか…
個性は大体幼稚園の間に発現するらしく、自分が通う幼稚園の他の園児達も既に個性が発現している。父さんや母さんと病院に行ったところ個性が無い人に見られるような兆候は僕の身体にはなかったが……
「そうだね。けど出るって信じ続ければきっと何とかなるって!」
「そうね、悩むよりも信じた方がっ…」
姉さんと話していれば突然バスが急ブレーキで止まり、慣性の法則で僕に頭が前の座席に当たってしまう。
「イテテ…」
「大丈夫?」
「うん、何とか……」
こっちは怪我こそなかったけどなんで急に止まったんだろう…?
「動くな!」
そう思った刹那、銃を持った黒ずくめの服を着た2人の男がバスの扉をこじ開けて入って来る。
「全員音を立てるな!警察に通報もするな!すればこのガキの命は無い!」
「響香ッ…!」
恐らくバスジャックというやつだろう。
前の席に座っていた龍也と同年代ぐらいのショートボブの髪型の少女が人質に取られてしまい、僕と姉さんに加えて他の乗客は恐怖と騒いだらあの子の命が危ないという危機感から黙って彼らの言葉に従う。
「今から俺たちの言う場所にバスを走らせろ…」
バスジャック犯が運転手に銃を突きつけてバスを走らせると本来走るべきルートを徐々に離れていく。離れれば離れるほど周囲の建物が減った自然が多くなり、30分ぐらい走って辿り着いた場所は森に囲まれた廃工場の様な場所であった…
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「ガキはこの部屋だ!」
バスジャック犯の仲間達はバスに乗っていた人々を降ろすと自分達の拠点である廃工場の中に彼らを押し込んでいった。
龍也と桃香、それに人質に取られていた少女は大人達と違って1つの会議室の様な部屋に警備担当と思われる男と共に押し込められていた。
「パパ…ママ……」
人質に取られていた少女は不安からか涙を流していた。彼女の耳たぶからはイヤホンのコードの様なものが伸びており、ジャック部分を握り締めながら蹲っている。
「大丈夫だよ。僕と姉さんが居るから。」
「あ、ありがとう…」
不安そうにしている彼女の肩をポンポンと叩いて龍也は少しでも不安を和らげてあげようとしていた。今の自分と同じ年齢の少女が辛い思いをしてしまっているのは彼にとっても嫌なことである。
「て言ってもどうすんのよ…?」
「僕に考えがある…姉さん、ライタ出して。」
龍也には既に反撃の準備が出来ていた。そしてその作戦の第1歩も既に頭の中にあった。
「何をコソコソ話している!」
彼らの会話に気付いた警備担当の男が彼らの所に近づこうとしたが、それも既に龍也の想定内だった。
「姉さん!ライタ出して!」
「わかった!」
「ライタ!あいつにタックルして放電だ!」
桃香が手を翳すとそこから放たれた光が具現化し彼女の個性であるお供の内の1匹のライタへと変化する。彼が龍也の指示通り警備の男に飛びつくと、その身から電気を放って彼の身体に流し込む。
「痺れるぜ…」
幸いこの男は電気系統の個性持ちではなかったため、攻撃を防ぎきれずに感電して倒れ込む。
「今のうちに縛っちゃおう。姉さん!縄みたいなものない?」
「縄みたいなものは無いけど縄はあったよ!」
恐らく後で龍也達を縛るために用意されていたと思われる縄を桃香が持ってくるとその警備担当者を縛り上げる。
「警備担当がコイツだけで助かったよ…」
「そうね、けどなんでアンタがライタの力こんなに引き出してるのよ…?」
「うーん、何となくかな?」
龍也は前世で特撮を見たり研究ばかりしていただけでなく息抜きとしてモンスターを育て、指示を出して戦わせるジャンルのゲームもしており姉のお供を使った戦い方に関しても何度かシミュレーションはしていた。
「さて、とりあえず僕のことを君に教えないとね。僕は大崎龍也、こっちは桃香姉さん!」
「よろしくね。君、名前は?」
「ウチ…耳郎響香…」
「響香ちゃんって言うんだ〜よろしくね!」
ひとまず龍也達はこの場で出会った少女、耳郎響香と共にこの場からどう逃げるか考えていた。
「とりあえずこっからどうすんの?」
「決まってるじゃん!ヒーローを呼ぶ!」
と言ってもここにいる3人は齢10にも満たない子供である。なんなら内2人は未就学児だ。正面から戦えば返り討ちに合うのは目に見えている。
「そっか!お母さんに預けられたこれで呼べば良いんだ!」
桃香は小学校入学時より連絡を取る手段として携帯電話を渡されており、それで警察に電話をしようとしたが…
「ダメ…通じない…」
「妨害電波が出てるのかな…?こっちはどうだろう?」
とその場に倒れていた警備兵の持つスマホを操作しようと龍也が触ってみるがライタの放った電撃のせいで動かなくなってしまっていた。
「仕方ない。他の部屋で使えそうな物を探すしかない。姉ちゃん、お供達とも協力していくよ。」
「分かったわ。」
そう言うとライタ以外のお供達も複数体召喚されて彼らの周囲を守る。
「響香ちゃん、大丈夫。僕達が君をお父さんとお母さんに会わせてあげるから。だから一緒に行こう。」
「うん!」
頼もしい龍也の言葉に響香は頷き彼が差し出した手を握る。
3人の子供とお供達の小さな作戦が大人達を救おうと動き出していた。
「レイコ!凍らしちゃえ!」
桃香のお供達が周囲の敵兵を攻撃しながら3人は廃工場内を移動していく。
敵が妨害電波を発しているならそれを止めてしまってからヒーローを呼ぶというのが龍也の作戦である。
氷属性のお供レイコと電気属性のお供ライタの活躍で自分達を見つけて捕まえようとしてきた敵は撃破して、機械のある部屋を探していた。
(にしても姉さん、お供に指示出して戦うの既に上手くなってるんだけど…姉さんも結構天才だね。)
先程龍也がライタに指示を出して戦わせる戦法を桃香も既に使いこなし始めており、その適応力に龍也も舌を巻いている。
「出口どこッ!?」
「全然見つかんないんだけど!」
ただ彼らが建物内の構造や出口の位置を把握する前に徐々に警備担当の人間が集まって来ている。
その様子に少しずつ龍也の中に焦りが生じ始めてしまう。
「いたなぁ…ガキ!」
「見つかった!」
また1人敵が来たのを見て桃香のお供であるライタがすぐに臨戦態勢を整えて桃香自身も攻撃の指示を出そうとするが…
『コング!』
「ば、バイスタンプ!?」
その男が懐から取り出した印鑑状のアイテムの存在に龍也は驚きを隠せない。それは彼が前世で何度も見てきた仮面ライダーリバイスに登場するアイテムであり、まさかこの世界で目にすることになるとは思っていなかった。増してや実在するとすら彼は思っていなかったが現に龍也の目の前にいる男が使おうとしている。
「嘘だろ…!?」
更にそのバイスタンプを男が押印すればゴリラの様な姿をした悪魔が現れて桃香のお供達に襲い掛かる。
「放電して!」
ライタがコングデッドマンに飛び掛かって電撃を放つが、その電流は悪魔の体には流れていないようで、コングデッドマンがそれを払いのけるとライタの身体が地面を転がる。
「ライタ!」
ライタを庇うようにレイコを始めとする他のお供達がコングデッドマンに飛び掛かるが彼らも次々とその悪魔から叩き落とされて身体が地面に転がってしまう。
「2人共逃げるよ!」
怪人が出てきてしまえば、彼らには為すすべがない。その場から逃げた方が良いと判断した龍也は2人の手を引いてその場から走り出す。
「逃がすかァ!」
だが自分達に抗う者ならば子供であろうと彼らは逃がす気はない。逃げる3人をコングデッドマンが追いかける。建物内の曲がり角をうまく使って何とか2人が逃げようとするが…
「い、行き止まりッ!?」
先頭を走っていた耳郎が自分達の向かっている方向にこれ以上進める道がないことに気が付き足を止める。
「ど、どうすんのよ!龍也!」
「どうするって言ったって…」
完全に万策が尽きてしまった。デッドマン相手では今の彼らは抗うことすらままならない。
このまま迫って来るコングデッドマンの手によって死を迎えるのを待つのみだ…
「このままじゃ…」
追いつめられる3人…そして死への恐怖からか耳郎響香の頬を涙が伝う。
(ダメだッ…!こんなところで諦めたらッ…!!)
助けると約束した少女の涙。
龍也はそれを見て黙っているような男ではなかった。
何とか打開策がないかと必死で頭を働かせている。
「龍也…?それって…?」
その時彼が握りしめた拳が白く光を放っている。桃香にそのことを指摘された龍也が手を開くと、目の前に白い光の門が形成される。
「とにかく入ってみよう…」
もう後がない3人は咄嗟に門の中に入っていく。
「何処だッ…!?」
彼らが居た場所にたどり着いた男とデッドマンは辺りを見回すが子供たちの姿がどこにもない。
「まあいい、すぐに見つけてやるからな~」
コングデッドマンを引き連れてその男は龍也達を探そうと周囲をうろつき始める。
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「何とか逃げれたみたいだけどここって…」
白いゲートを潜ってあの場から逃げることは出来た。
けど、僕達が居るのはまた違う建物だ…
それに幾つか不審な点がある。まずは僕達以外の人間が誰もいないこと。次に窓の外には何もなくただただ白い空間が広がっていること。そして、この場所は僕にとって見覚えがある…というより馴染み深い場所だ。
(ここ、僕の研究室じゃね…?)
そう、ここの内装は僕が前世で通い詰めていた研究室だ。因みに僕がベルトの実験に失敗したのはここの隣にある筈の実験室だ。研究室内には幾つかデスクトップパソコンがありよく使っていた机の上には普段使いしていたノートパソコンそのものが置いてある。
「ねえねえ、龍也。ここってどこなの…?」
「分かんない、けど…なんかいける気がする…!」
機械が多い場所となれば完全に僕の独壇場だ。何の因果か分からないけど周りにあるのは使い慣れた機械だらけだ。とりあえず椅子の上に登ってノートパソコンを開いて電源を入れてみる。
(やっぱり、これ僕のパソコンだ!)
電源が開きホーム画面が表示されるがそれは生前に使っていた仮面ライダー1号の壁紙だった。完全に僕のパソコンだ。
今の身長では机の上にあるパソコンを操作するのは難しいので姉さんと響香ちゃんの協力を得て地面にパソコンとマウスを下ろして作業を始める。
「これって…?」
ただ、このパソコンの画面に幾つか知らないソフトが入っている。その内の1つを開けてみれば映像の様な物が映し出される。
「これって確か、ウチらがさっきまで居た…」
映像に映し出されているのは響香ちゃんの言う通りさっきまでデッドマンズと逃走劇を繰り広げていたあの廃工場内の一角だった。この機能では自分達がこの空間に入った場所の周囲を監視することができるのだと思われる。
「さて、2人はそれで外の様子を監視しててよ。僕は他のとこを見てくるから。」
「うん、分かったわ…」
やるべきことは分かっている。現状自分達が居るこの空間についての把握と脱出方法及び人質に取られてしまった大人達の救出方法の模索である。と言うよりはヒーローを呼ぶための外部への連絡方法か…
一先ず今自分がいる場所が前世で使っていた研究室ならば隣に機材がいっぱい置いてある実験室がある筈だ。過去に命を落としてしまった因縁のある場所でもあるがそう言っていられる状況でもない。
僕は皆を助けるために実験室に向かうのだった…
解説
大崎桃香
龍也の姉で個性でお供と呼ばれる生き物たちを召喚・使役できる・
お供達の見た目と能力はどう見てもポケモンのブイズ達である。
耳郎響香
龍也達と共にバスジャックにあってしまった少女
一先ずは彼らと共に脱出を目指す。