クソ面倒なショタでも、救ってくれるんですか!? 作:ノイマンⅡ
第二話
結局、あの後襲撃のあった『工場』はもぬけの殻、闇派閥たちは一人残らず撤退していた。
市民との協力の末、その後なんとか消火には成功したが、都市の一大産業を築いていた『工場』に残された破壊の爪痕は痛々しく、酷い。
地獄の業火のような炎に晒された建物は黒ずみ、元が何だったのかも分からない部品や破片が辺り一面に散乱している。倒壊こそ、頑丈な
幸い人的被害は起きた事の規模に反して、軽症者、重症者、死者は共に出ていない。
一先ず安全確認をし終えると、伸びている闇派閥の後始末や、現場の検証は遅れてやってきた
◆◆◆
「おかえりなさい、みんな」
「ただいま帰りました!アストレア様!今回も眷族全員無事です!!」
栗色の髪をした大らかな雰囲気の女神が新妻っぽい出で立ちで、団員たちの帰りを出迎える。【アストレア・ファミリア】の主神を務める『正義』を司る
子どものように雁首揃えて、ゾロゾロと団員たちがホームへと入っていく。
「あら?咲人はどうしたのかしら?」
ふと、心配事の多い一番手のかかる眷族の姿が見えず、首を傾げる。
「愚弟なら気配を押し殺して、外から二階の窓に上がっていきましたよ」
「あいついくらなんでもアストレア様を苦手にしすぎだろ」
「愚弟はアストレア様だけでなく、超越存在を全体的に苦手にしておりますからねぇ」
理由は姉である輝夜にも分からない。
軽薄な神々を苦手にするのは分かるが、弟が出会い、まともに話したことがある神は、目の前でそんなことは気にしていないと苦笑している良心的な女神であるアストレアだけのはず。
(まぁおそらくは少なからずここにいる全員、苦手にしている筈だがな)
続く言葉を呑み込み、姉は唯一の弟について思案する。
◆◆◆
悪戯好きなライラや、天真爛漫なアリーゼは普通に誘って来るため、ファミリアの黒一点である咲人は、度々こうして団員達が身を清める際は逃げる。
姉とは肉親と言うこともあり、極々稀に一緒に入るが、それ以外の団員に対しては、いくら歳が9つといえども、一線を引いている。
身体は魔力と体力が尽きかけ、咲人の精神を深い眠りへと誘おうとするのを僅かな理性で堰き止めている。極東出身ということもあり、キレイ好きな咲人は風呂には忘れずに入りたいのだ。
(結局、今回の出撃
純粋な少年を演じていた『仮面』を外し、思い返すのは姉にでしゃばりと言われた行動。咲人は目を閉じ、状況を思い返す。
(アリーゼは既に回避に移っていた、少なくとも俺が居なくても何とかなっていた筈だ。それに加えあの後、敵と接敵していたら…)
サキトの特異な『魔法』は絶大な能力を持つ反面、莫大な量の魔力の消費に加え、解除時に体力の消耗をも引き起こす諸刃の剣。引き出すのが、強力な才能であればある程、必要魔力量や解除時に感じる倦怠感が顕著になる。
まだまだ未熟な肉体であれど体力に関しては身体作りで何とかなる反面、魔力に関しては【恩恵】、ステイタスが上がらない限りはどうにもならない。
ベッドの脇から、クシャクシャになり、所々をインクで塗りつぶした羊皮紙を取り出し、見つめる。
咲人・ゴジョウノ
Lv. 3
力:D 521
耐久:B 786
器用:A 862
敏捷:C 678
魔力:A 899
逃走:H
精癒:I
《魔法》
【リィンカーネーション】
・別世界の死した偉人・罪人の才能を引き出す。
・回数を重ねることで、省略可能。
・代償:■■■
《スキル》
【■■■■】
・■■■■。
・■■■■■■■■■■■■。
・■■■■■■■■■■■。
・■■■■
魔力:A 899
既にステイタスは頭打ち、これ以上は偉業を達成し、器を昇華、つまるところレベルを上げない限りは上がらない。
保持する
あれに頼ることだけは絶対にしない。
主神アストレアに見せられた時から、咲人はそう決意していた。
それに頼ってしまうと、『仮面』を被ることで抑えていた自分の持つ最も醜悪な内面を抑え切ることが出来なくなりそうだから。
眺めていても何も変わらない羊皮紙をまたクシャクシャにして、ベッドの脇に突っ込む。
「はぁ……」
溜め息を漏らしつつ体に鞭を打ち、部屋の片隅に掛けてある刀を手にする。どんよりと重い足取りで
◆◆◆
(命を賭して、偉業を達成するには今のオラリオは危険に満ち過ぎている)
かつて最強の名を欲しいがままにしていた【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の壊滅
二大派閥の消失に伴った闇派閥の活発化
近頃はダンジョンの中ですら、闇派閥が冒険者を襲う【冒険者狩り】が起きている。
これまで何度も闇派閥の邪魔をしてきて、恨みを買っている【アストレア・ファミリア】の一人が、全力を賭した偉業を達成し、疲労困憊になっているところなど格好のエサに他ならない。
咲人もそれが分かりきっているからこそ、今はただ自身の身体を鍛え、体力を増やすことに注力する。
中庭に出ると、既に夜が明けており、東から眩しい朝焼けが目に入る。
咲人の鍛錬は、極東のあの腐った仄暗い家に居た頃から何一つ変わらず習慣として染み付いている。
身体を適度に解し、ある程度身体を温めると鞘に片手を軽く添え、柄を堅く握る。
忌々しい家伝の一刀である居合の太刀の構えだ。
教わったたった一つの型を、自分の記憶を頼りに振っていく。
白兵戦を得意とする姉の必殺と言ってもいい技の一つだが、比べもできないほど不恰好だ。それも当然、咲人が得意とするのは冒険者にとって重要な技と駆け引きの内、駆け引きを好んで使う。
技なら魔法を使えば幾らでも繰り出せる為、必然的に駆け引きを優先して鍛えてきた。
実戦だと、ほぼ使いもしないこの技をわざわざ鍛錬に使っているのは、ある種の『未練』と言ってもいいだろう。
(確信していたいだけだ。
自分にも姉と同じような才能が、やがて目覚めると。
今はただ眠っているだけなのだと。
この鍛錬を捨てられないのもその証…)
自身がついぞ継ぐことが出来なかった『五条』の真髄。
それを悠々と扱えるほどの才器を持った姉の背中が脳裏にチラつく。
姉に対する劣等感から産まれる、黒い感情。
心の奥底に沈めたはずの小火が、火種を与えられたように一瞬で膨れ上がっていく。
背中のステイタスが、
子どものように感情の抑えが効かない未熟な自分を恥じ、咲人の背中が小さくなっていった。
「精が出るわね咲人!!そろそろ情報の整理を始めるから準備ができたら、団欒室まで来て頂戴!!」
突然、アリーゼから声を掛けられ慌てて『仮面』を被り返事をする。
「あ、うん…僕も急いで行くね…?」
(別に見られてなかったよな…???)
不安な顔をして、考えていると先に戻っていたアリーゼがニヤニヤしながら顔を振り向く。
「あ、あとちょっと匂うわよ。ちゃんとお風呂で汗を流してくることね!!」
ガビーン!!!!
吐血しながら、棒人間もかくやという勢いで肩を落とす姿に、アリーゼは笑いながら去っていった。
後書き
何も物語が進んでねぇので難産でした…(震え声)
それはそうとして
や、やめるんだ!!
Twitterだけで、重要情報を発信するんじゃ無い創造神!!しーらーなーいー!!
輝夜妹の存在とかどこから出てきたんだよぉぉぉぉおお!!