クソ面倒なショタでも、救ってくれるんですか!? 作:ノイマンⅡ
え?実際咲人のことどう思ってるのって?
正直、初めて見た時は凄く怖かったわ!
だって、彼の使う魔法はそうだけど、魔法を使う時のいつもと違う、あまりにも暗く濁った瞳と鬼気迫った表情が人間じゃない怪物のように見えてしまったから。
今では副団長を務めている輝夜と同時期に彼はこのオラリオにやってきた。二人とも極東では高貴な家の出で立ちみたいだったけど、その頃のことをあまり語ってはくれない。
アストレア様は全部知っているみたいだけど、私が知っているのはゴジョウノ家が、二人にとってとても暗い過去で、今も忘れがたい記憶っていうことだけ。
姉に影響されて、少し辛辣な様な気はするけど、そんな過去からは考えられないほど純粋で物静かな少年だった。
それが彼が成りたい自分として作り出した『仮面』だと気づけたのは、彼が私達の前で偉業を達成したあの時、あのダンジョンの奥底で起きた
◆◆◆
ーーダンジョン12階層
珍しく見回りメンバーから外された輝夜、アリーゼ、咲人たちは、ステイタス上げと駄賃稼ぎ代りにダンジョンに潜っていた。
辺りは一面、白い草が生い茂り、所々ポツンと枯れた白い木が立っている。霧が出て視界は良好とは言えないが、天井や壁が薄く灯り、戦闘には問題ない。
「ここ、駆け出しの僕にはまだちょっと早すぎない…?」
「まさかまさか、私の愚弟たる者が怖いのでございますかぁ?たわけが、たかがこの程度の雑魚モンスター相手に苦戦などするな!」
「大丈夫よ、百人力の私が着いているもの!どんな相手にも安心して戦えるわ!」
「だって二人ともさっきからそうやって、後ろで応援しかしてないじゃん…」
若干、一人応援かどうかも怪しい罵倒が飛んでくるが、発破の類いだと信じたい。
たしかにレベル2が二人とレベル1が一人。
上層のボスとも言える
既にレベル2に上がった輝夜とアリーゼは【
「ふざけろ!!こんな
「インファントドラゴン!!それもかなりデカいわね!!」
「
思わず『仮面』がズレ落ちるほどの衝撃が咲人を襲う。
一同はダンジョンの洗礼である異常事態、それもとびっきりのものに見舞われていた。
希少種であるインファントドラゴンの強化種。
それも同時に
白銀に煌めく鱗で身体を覆い尽くした一体と、黄金に輝く鱗に身を包んだ一体。
もはや希少種とは何だったのかと言いたくなる様な絶望的光景が3人のパーティの前に広がっていた。
二体は身体を寄せ合い、逢引きを邪魔した不届者たちを睨む。
「団長、あれ一体相手にどの程度時間を稼げる?」
「うーん、『魔法』を使っても三分が限度かしら?それ以上は正直逃げに徹しても難しいわね…」
「十分だ、三分以内に愚弟と共に銀色の方を倒してから、合流する!!」
「わかったわ!!」
打てば響くようにでてくる頼れる団長と副団長の迷いなき判断。
「こっちを見ろ!糞トカゲ!!」
輝夜がその辺に落ちていた石ころをレベル2の身体能力をふんだんに使い、白銀の地竜目掛けて
淑女らしからぬ足癖より放たれた一撃は、銀竜の顔面にぶち当たる。
堪らず一瞬顔を背けるが、自身に不快な一撃を放った小人を見据え、放たれた咆哮が開戦を告げる号砲となった。
「グルルルルルァァァァァッ!!」
◆◆◆
「グルルルルルァァァァァッ!!」
耳障りな咆哮を上げ、地面を揺らし、弾丸のような速度で、銀の影が咲人と輝夜に迫って来る。
「構えろ、来るぞ!!手早く終わらせて、団長の方に行かねば!!」
「そうだね、分かってるよ姉さん…」
四足歩行で、豪脚を振り回し、地面を削りつつ進むその姿は正しくモンスターそのもの。
一気に距離を詰めて来る銀竜相手に咲人と輝夜は、瞬時に左右へとバラける。
「はっ、先ほどぶつけた一撃がさぞ気に食わなかったように見える!ほら、悔しかったらこっちに来い!」
輝夜が相手を挑発し、蓄積されたヘイトを保つ。レベル2となり、強化された俊敏を使い、舞のようなステップで、地面を滑るように避けていく。
一方、弟の咲人はへとモンスターの後方へと位置どりを変えていく。未だレベル1の駆け出し冒険者が真正面から挑むのは自殺行為に等しいが為、ヘイトを姉に買ってもらっている間に、急ぎ移動する。
(相変わらず、速くて上手い…)
可憐に、優雅に避けながら、相手の手足に刀を躍らせる姉の姿を見つめ、自身との差を痛感する。決して同じレベルに到達したとしてしても、どれほど鍛錬を積み重ねても、使えることにはならないであろう姉の絶技に心が騒つく。
「愚弟、その気色悪い視線を私に送っている暇などあるならば、まずは貴様から斬るぞ?」
「ごめん…ちょっと呑まれてた…」
慌てて目線を外し、集中する。
武装は刀一本、ギルド支給のオンボロナイフ、そしてなけなしの金を使って購入した火炎石が一つ。
姉の生み出した切創を見ても、ほとんどが浅い。レベル2の力でもってしても致命傷を与えられない頑強な鱗。
恐らく闇雲に火炎石を投げても大したダメージにはならない。それどころかすぐさま反撃され、死ぬのが落ちだ。
(反撃することの出来ないほどの攻撃を一度に放つ!!)
刀を両手に後ろ足の鱗の生えていない関節部を目掛けて、全体重を乗せた突きを放つ。
すぐさま引き抜き、空いた2セルチほどの穴に火炎石を捩じ込む。
突然の苦痛に喘ぐ銀竜。
生まれた一瞬の隙に、すかさず安全な距離へと離脱し、ナイフを片手で空いた穴を目掛けて投擲する。
衝撃を与えられた火炎石は、内に秘めた莫大な量の火の魔力を外へと解き放つ。
左後ろ足が文字通り爆発した。
内部からの肉体破壊。対策も出来ない一撃に竜の足が大きな穴を開け、爆風により血肉が飛び散る。
突如、絶大な巨体の体重を支えていた一本の足を無くしたことにより、身体は動きを止め、後ろ側に倒れ込んでいく。
「愚弟め、やればできるではないか。なら、姉である私も魅せなくてはな!!」
姉が弟を賞賛しつつ、位置が低くなった顔、その口内へと刀を深く突き刺す。
「去ね、糞トカゲ!!」
そのまま刀を下から上へと口内から脳天へと斬り裂く。逆風により顔上部から真っ二つに割られ、肉体が灰になる。
二人はすぐさま少し離れた場所で戦っているアリーゼの方に向かおうとするが、目にした光景は想像を遥かに上回って悪い状況だった。
◆◆◆
(しくじったわ…強化種に至ったことで麻痺属性の毒を獲得してるなんて思いもよらなかった…)
鱗全体が麻痺毒に濡れているなど誰が想像できただろうか。
軽く腕を掠った一撃、本来なら最低限の『耐異常』発展アビリティを持っていれば、特には問題無いほどの毒。
しかし、アリーゼがレベル2に上がった際、獲得したのは別のアビリティ。
獲物が、自身の毒で動けなくなっている姿を見て怪物は嗤う。
必殺を確信し、勢いよく助走をつけ、地面を揺らしながら全速力で自身の身体をぶつけに行く。
地面を削りながら、巨躯が麻痺状態で碌に動けないアリーゼに迫る。
咲人はその光景を前に、衝動的に凄まじい速度で思考する。
詠唱は?このままだと間に合わない
距離は?このままだと届かない
普通の方法では、アリーゼがこのまま死んでしまう。
(なら全部無理矢理、普通じゃない方法で、押し通してでも届かせる!!)
回数を重ねた『才能』は詠唱の省略が可能となる『魔法』から逸脱している特性を活用する。
引き出すのは臆病で弱かった自分が最も使い、最も頼りにならなかった『才能』。
「才能:不死の兵」
既に火炎石は使い尽くした為、自身の足下に、記憶の中で手榴弾と呼ばれていた爆弾を『魔力』を使い生成する。体内の『魔力』が六割も激減するのを感じ取るが、無視する。
「おい!!何をしている!?バカな真似はよせ愚弟!!」
姉が制止する声も無視し、目を閉じ刀でピンを抜く。
爆発。
閃光と爆音が鳴り響き、耳が潰される。
両足が弾け飛ぶが、身体が凄まじい勢いで吹き飛ばされる。
全身から流れ出る血液さえ、推進剤に変え、紅い血をあたりにばら撒きながら突き進む。
(速く、早く、はやく!!)
永劫にも感じられた数瞬が過ぎ去り、ついにアリーゼに追いつき、計算通りアリーゼと金色のインファントドラゴンの間に入る。
片足を大地に突き刺し、固定。
熱した鉄でヤスリを掛けられるような凄まじい激痛が片足に走る。
「がぁぁぁぁァァァァァッ!!」
身体の異常を訴える激痛を無理矢理、叫ぶことで押し込む。
インファントドラゴンはそのまま突っ込んでくる。
鋭利な鱗を使い、既に動けなくなった人間諸共轢き殺す。
既に魔法を使い、『才能』は引き出した。
肝心の再生速度は記憶で見た船坂という男の
新しく小銃や手榴弾を作るにも『魔力』が足りない。
刀も爆発の衝撃時に手から離れてしまった。
「ーーなら、残る
絶望的状況でも咲人・ゴジョウノは諦めない。
諦めることなら、もう何度もあの家でしてきたから。
「使え、咲人!!」
取りこぼした刀を全力で姉が投擲する。
正確に飛んできたそれを腕を伸ばし、掴み取る。
極東の頃から使ってきた何の変哲もない刀。
既に爆発によって刃こぼれし、所々にヒビが入っている。
たが同時にもっとも頼ってきた自分だけの武器だ。
使うは魔法による『才能』ではなく、己の武器。
生涯を掛け、無縫を目指し、剣の極致を志した女剣士が、剣聖たちと鎬を削り合うことで編み出した剣術。
魔法を通してという歪な方法ながら
既に幾多もこの身で放った。
既に幾多もその記憶を見てきた。
その屈辱も、その想いも、その熱意も
誰よりも近くで見てきた。
ならば、できるはずだ。
(例え
「歪・柳生新陰流勢法【転】!!」
勢いよく頭を前に飛び込んできた竜の先端、口先が刀に触れる。そこから刀が真円を
(ーーー重いッ!!)
それも当然、本来は自らの刀で相手の刀をいなし、弾き、返す為の技。竜の体当たりなど想定されていない。
その余りの衝撃の大きさに武器が手から溢れ落ちそうになるのを、手の肉が潰れるほどの強さで握り離さない。
突っ込んで来た頭を刃の上を走らせる。
足りない技量は【恩恵】で得たステータスを使い、無理矢理、技を進める。
左から右へと竜の頭、首、体がいなされていく。
何が起こっているのか全く分からないモンスターはそのまま勢いよく倒れていくことしかできない。
すかさず体勢を崩した竜を相手に、未だ骨と肉が見える再生途中の足で駆け出す。
息を合わせ、姉の輝夜も同時に飛び出す。
二人の刀使いが、接近する。
「「はぁああああああああ!!」」
断頭台にて首を掛けられた罪人のように、怪物は二人の刀が首へと振り落とされるのを見つめ、己の死を確信した。
斬首。
黄金の怪物はその逆鱗だけを残し、灰へと還った。
◆◆◆
これは、あの後アストレア様から聞いたのだけれど、咲人は自分の嫉妬の感情に呼応するレアスキルを持っていて、それについて誰よりも悩み苦しんでいるらしい。
そんな咲人から目を離さないで欲しいとも頼まれた。
私は彼の『仮面』に巧妙に隠された苦痛に気付けなかったことを悔いると同時に、あの日ダンジョンで見た彼の一面に納得がいったわ。
けど、才能溢れる姉や私に嫉妬し、憎悪しているならあの時ダンジョンで私たちを見捨てればよかった。
あなたはそんなことを考えもせず、平気で自分の命を賭けてまで私たちを守ろうとしてみせた。
それは決して成りたい自分の『仮面』じゃなくて、あの時、自分の心の奥底からそう思ったから、あなたは救ってくれたんじゃないのかしら?
今もそう。
『未練』があるということは、まだ『諦めていない』証。
ただ一人鍛錬の途中で刀を放り投げ、嫉妬に身を任せないように必死に心を抑え込んでいる。
本当に超えたいなら、あなたはあのスキルをそのまま使えばよかった。
全力で嫉妬に身を任せればいい。
そうしなかったのは、矛盾しているから。
矛盾することが出来るのは人間の証。
咲人、あなたは
矛盾しているあなたは間違いなく人間よ。
嫉妬に狂って緑色の眼をした
誰かのことを想って行動できる勇気ある人。
私にとっての【憧憬】
心の底から、尊敬してる。
真っ直ぐ、自分の信じる道を進んで。
例え、間違った道に進んでしまっても、その時は私が何があっても止めてみせる。
まだまだ不確かな私の正義じゃなく、私自身が貴方にそうしてあげたいと想うから…
作者、輝夜の口調と言い回しマジで分からん…
たぶん後々、変えます。