クソ面倒なショタでも、救ってくれるんですか!?   作:ノイマンⅡ

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ごめんなさい嘘言いました。あと2話くらい挟むかもしれません。許してクレメンス。
パーフェクトコミュニケーション回です。


第五話

 あの後、静止するアリーゼを振り切って駆け出した。

 集まる衆目の目線など気にもせず、ただ走った。

 

 自分の全てを見透かしてくる超越存在から、みっともなく逃げ出したのだ。

 

 神エレンの言うことに間違いなど、どこにも無かった。

 

 声を荒げて反論したかった。

 そんなことはないと声高々に胸を張りたかった。

 

 けど自分の中で、どこか彼の言うことに納得してしまったのだ。心の奥底に眠る黒い火が、自分を焦がす醜い嫉妬が何よりの証明。

 

 こんなモノを持った人間が『正義』である筈が無い。

 

 ふと頭に思い浮かんだそんな考えさえも、振り払う様に街を走り抜ける。

 

 走って、走って、走って、走った先、息が切れ足が止まり、辿り着いたのはオラリオを覆い外敵から守護する城壁。

 

 導かれるように城壁内の階段を登り、城壁上へと上がる。

 

「綺麗だな……」

 

 都市内に目を向けると、既に日が落ち、暗くなったオラリオを数多の魔石灯が光り、照らしていた。まるで宝石箱に散りばめられた宝石の如くキラキラと輝き、人を魅了する何かがそこにはあった。

 風にあたり、こうしてオラリオを見渡していると少しだけ自分のことを忘れられる。

 

 少しの間見入っていると、後ろの階段から足音がした。

 

 一瞬、闇派閥かと思い刀に手を掛けるが揺れる緋色の髪を目にし、慌てて手を離す。

 

「はぁ……はぁ……やっと見つけたわよ咲人……」

 

 そこには息を乱し、疲弊していたアリーゼが居た。

 

 

◆◆◆

 

 

「初めて来たけど、綺麗な場所ね。気持ちいい風が吹いてる」

 

 荒れた息を直しながら、暗い夜を輝かせる街の方を見つめながら呟く。そんなアリーゼの横顔を直接見ることが出来ず、同じ様に街の方に目を向ける。

 

「ごめん……さっきは急に逃げ出して……」

 

「ううん、仕方ないわよ!あっんな舐め回す様に視姦してくる変態神様相手なら逃げ出したくてもしょうがないわ!今度アストレア様にでもチクってやりましょうかしら…?」

 

「いつになく強気だね…?」

 

 悪態をつくアリーゼについ苦笑が漏れるが、すぐに口が一文字に戻る。

 城壁に前のめりに寄りかかり、目を伏せながら問いただす。

 

 

「アリーゼはさ、聞かないの…?」

 

 

 昼間の裏路地で、ちょっとしたきっかけを機に出会った不気味な神エレン。そこで彼に自分の在り方を断言された時、彼女も一緒にいた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 問われたアリーゼは考え込むように、腕を組み目を閉じる。

 

 無限に思えるような時間が過ぎていく。

 

(アリーゼに嫌われたらどうしよう死ねる…)

(ていうかあの神、何暴露してくれてんだ)

(辛い泣きたい無理お酒飲みたい)

(今ここで飛び降りよう、いや恩恵のせいで高さ足りない)

 

 いよいよもってとんでもない方向へと思考が回転して行こうとした時、ようやくアリーゼが目を開けたかと思うと、軽い溜息を吐きつつ口を開いた。

 

「腹芸なんて私にはやっぱり無理無理。だから正直に言うと、あんなこと始めから知っていたわ」

 

「え……えぇ〜〜〜〜〜!?いつから???どうやって???」

 

 最近、緩々の『仮面』が吹き飛ぶような衝撃を受けた。茹る様な熱が顔に上がり、真っ赤に染まっているのが自覚できる。今なら顔から火も吹けるだろうという謎の自信が沸々と湧く。

 

「咲人が初めて偉業を達成した時、アストレア様からちょっとだけね」

 

「アストレア様ァァァァァッ!!!!????」

 

 何してくれてんだあの女神ぃぃぃぃとつい主神への尊敬や忠誠を忘れ、叫び掛ける。よりにもよって一番知られたくない相手に本人の了承を聞かずに何をしでかしてくれているのだろうか。

 

 自分の知らない所で、意図も容易く行われるえげつない公開処刑に頭を抱えて嘆くことしかできない。

 

「咲人のスキルについても、アストレア様は仰ってたわ。なんでも手のかかる子だから、よく見ていて欲しいってね」

 

 ついに口から魂が漏れ出し、自分の意識が遠のいていくのが分かる。信じ難い現実から目を逸らしたい。

 

 無理矢理、漏れ出ていた何かを口の中に押し込み戻すと、ようやく羞恥心で火照った身体が、夜の冷たい風に冷やされていく。

 

「なら…『魔法』のことも…?」

 

「ん?咲人の『魔法』って()()()()()()()()()のことかしら?そっちについては特に聞いてないわ。ていうか、いつも思ってたんだけど、そんなかけ離れた二つの効果を持つ『魔法』なんて聞いたことないんだけど……」

 

 どうやら本当に最悪の事態までは、避けられた様だ。さすがのアストレア様も()()()()()()()()()()()()()()()であろう厄ネタは心にしまってくれていたことに安堵する。

 安堵するが、同時に強い疑問が心の奥底から浮かんでくる。

 

「なんでアリーゼは僕のことを追い出さなかったの…?」

 

 そう。全て知っているならファミリアを追い出せばよかった。姉も恐らくはこういったことには関与しないだろうし、いつでもできた筈だ。

 すると、その言葉を聞いたアリーゼは何を当たり前のことをと、首を傾げると当然の様に言い放つ。

 

「私たちは『正義』である以前にファミリアよ。神の眷属となり、お互いに家族となった。なら見捨てず、支え合うことなんて当たり前だわ」

 

「大体そもそも、別にいーじゃない。咲人だってこのファミリアのこと大好きでしょ?」

 

「そんなことない……結局いつもみんなの輝かしい背中を見て、妬んでいるだけ……」

 

 本心から、誰かの為に手を差し伸べられる仲間たち。未だ『正義』に辿り着かずとも、自分の正しさを信じた行動をファミリアの誰もがとってきた。

 

ーー俺以外は………

 

 決して変わることのない自分の愚かしい性に、自然と拳に力が入り、地面を睨む。

 するとアリーゼが、頬を暖かい両手で包み込み、顔を正面に向けさせ話しかける。

 

「妬んでるだけなんて、嘘嘘!今日の朝だってみんなの為に怒ってたじゃない!私たちが守ってきた人たちから、弓を引かれることに咲人は誰よりも怒ってたわ」

 

 暗に大切に思っているからこその正当な怒りだと、アリーゼは肯定する。

 

「大体そもそもそんなこと言ってたら、ファミリアに入る以前の私なんてずっと怒りんぼだったわよ?何にも教えてくれない神様たちに、いつも心のどこかで憤りを感じてた」

 

「けど、アリーゼはそこから変われた……変わって今の優しいアリーゼになれた……!!そんなの俺には出来ないよ……」

 

 

「ううん、変わることも大切だけど、変わらないことも大切なのよ……今は無理に変わる必要なんてない。止まっても、留まったとしても大切な家族であるっていう事実に変わりはないわ」

 

 

 どこまでも暖かく肯定してくれる存在に涙が溢れてくる。

 

「例え背後から切られることになっても、民衆は私たちが守ってみせるわ!だから咲人は無茶する私たちを守ってちょうだい!今の自分の『正義』を信じられないなら、あなたが家族を、ファミリアを大切に思う気持ちを信じて、ね?」

 

 

 偽りの『正義』をもってして行動を成す必要なんてないと、確かにある仲間を大切に想う気持ちでもって行動しろというアリーゼの言葉が胸にストンと入ってくる気がした。

 

 フフンと胸を張り、自信満々にアリーゼは語る。

 

「それに例え咲人が悪さをしても、その時はファミリア全員で止めてあげるわ!私と仲間たちを舐めないでちょうだいよね!」

 

 両腕を下ろすと左手をそっと握り、引いてくる。

 

「さ、もう帰りましょう、私たちのホームに。きっとアストレア様も心配してニコニコしながら怒ってるに違いないわ!」

 

「それは怖いね……」

 

 待っているであろう恐ろしい主神に震えが止まらない。なんなら姉も怖い。ちょっと帰りたく無くなってきた。

 

 けど確かな家族が待つホームに帰れることにささやかな幸せを覚える。

 

 

 だから神様。どうかこの『仮面』を投げ捨てることをお許しください。きっとこの家族なら、受け入れてくれるような気がするから……

 

 

「あ、あと僕って一人称とその口調、死ぬほど似合ってないわよ?」

 

「それ今言う必要あった!?」




心ノ描写ムズイ。オデ、コミュ障、人ノ心、ワカラナイ。

アリーゼのパーフェクトコミュニケーションにより自分を偽ることを辞めた主人公くん。パーフェクト過ぎた結果、別ベクトルにめんどくさくなります。

ちなみに描写していない所は基本原作通りなので、アリーゼは主人公を探している間に、合流したリューとアーディの3人でもう一度エレンと出会って、その後『顔無し』とも出会ってます。その足でアリーゼは主人公のことを探していました。
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