クソ面倒なショタでも、救ってくれるんですか!?   作:ノイマンⅡ

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そろそろ戦闘したい…戦闘したくない?(ウズウズ)


第六話(前編)

「さぁーー炊き出しよ!!」

 

 久しぶりの快晴を迎えた都市、北のメインストリートの一角にアリーゼのいささか元気が溢れ過ぎている声が響き渡る。

 

 『暗黒期』という闇派閥による無差別な襲撃が行われ職を失った人間たちや、家を無くした人々にとって定期的に開かれる炊き出しは重要な役割を担っていた。

 

「頼むから、もう少し声を下げてアリーゼ……俺の頭に響く。ほらリオンたちも顔しかめてる」

 

「私、たぶんそれは咲人に向けているものだと思うのだけれど……?」

 

「あ、いえ……失礼しました!」

 

 まるで宇宙の真理を垣間見た猫のような表情をするリューを咲人は不審に思う。咲人自身、()()()()()()()()調()()()()()()()()()()でこんな反応をされる訳がないと思っている為、尚更不思議だ。

 

 そんなこんなでわちゃわちゃしている内に他の団員たちは咲人の変化に後ろ髪を引かれつつ手伝いのために散らばっていった。

 

 姉の輝夜とライラも慈善活動など似合わないと言い、早々に離れ料理を行っている天幕に消えていく。

 

「おぉ!相変わらず騒がしいなアリーゼ・ローヴェル」

 

「あ、ガレスのおじ様!!」

 

 【ロキ・ファミリア】所属、レベル5のガレス・ランドロックがその巨体を揺らしながら前からやって来る。

 

「いつ何が起こるか分からぬからな、今日は警備のためにやって来た」

 

 そう言いながら自身の防具に覆われた胸を叩き、完全武装した姿を見せる。

 

「ガレスのおじ様が居れば百人力よ!」

 

 今度は咲人もリューと同じように宇宙猫にならざるを得なかった。現在都市最強派閥の第一級冒険者を相手に今なんと呼んだのか。

 

 困惑しきった顔の2人が顔を見合わせ、頭を傾げている横でアリーゼとガレスは息の合ったノリとツッコミを繰り広げている。

 

 

(ーーーだが都合がいい。彼に同行させてもらおう)

 

 

 ガレスの登場や、彼とアリーゼが親密だったことは些か予想外だったものの咲人にとって彼はアリーゼ達と離れるちょうどいい口実だった。

 

「【重傑(エルガルム)】、付いてってもいいか…?俺は料理の方は苦手だし、ちょっと肩身が狭くて……」

 

「ふむ……いいだろう」

 

 周りの配膳を手伝う女性冒険者を見渡しながら、そんな事を曰う咲人に【アストレア・ファミリア】内だとほぼいつも同じ状況なのでは?と一瞬思ったガレスだったが、すぐに許可を出す。

 

 未だ少年と言っていい若さで、レベル3へと到達し、一つの魔法で自身のみへの回復や、武器を作り出す特異な魔法を保有する咲人にガレスは少なからず同じファミリアの金髪の少女と重ねていた。

 

(ーーーそれにこの小僧、どこか瞳に宿る危うさもアイズと似ているかもしれん……)

 

 

◆◆◆

 

 

「小僧、お主はなぜ戦っている?」

 

「なんでそんなことを聞く……?」

 

 ふと炊き出しで集まっている人々の周りをガレスと見回っていると突然質問が飛んでくる。

 

「うちのじゃじゃ馬娘でさえ、儂らはこの戦いに参戦させるのは止めておる。同じ歳である筈のお前はなぜ戦っておる?」

 

「初めは確かに色んな人に止められた。特に姉さんなんかは俺を殴り倒す勢いで止めてきた」

 

 当時のことを思い出し、咲人の顔に少し影が差す。衝動に突き動かされていた当時の咲人は不器用に心配してくれた輝夜やアリーゼ、他の団員を押し退けて例え1人でも戦いに行くと脅したのだ。 

 

「昔は1人置いていかれることが、開き続ける差が怖くて無理矢理参戦したんだ」

 

「けど今はちょっとだけ違う……かも」

 

 そう言いながら咲人は、目線を人一倍騒がしく元気な様子を見せ配膳を手伝っているアリーゼへと向ける。

 

「ふん、マセガキめ……」

 

 そんな咲人を髭をしごきながら、ニヤニヤとガレスは見つめる。まだまだ若いながら、男の顔をし始めていると感じとった。

 

 何やら生暖かい目線をガレスが向けていることに気付き、咲人は慌てて視線を外す。

 

「はぁ……まぁいい。そんなことより忠告だ【重傑】。今回の炊き出し、俺の予測だと「いーーいやぁぁぁぁぁぁぁあッ!?」……遅かったか」

 

「はやく行くぞ!闇派閥の襲撃じゃ!」

 

「あぁ…!!」

 

 2人は穏やかな陽だまりを切り裂く叫び声が聞こえた方へ、風となり駆け抜けて行った。

 

 

◆◆◆

 

 

 辿り着いた先で、行われていたのは【殺帝(アラクニド)】ヴァレッタと白装束達による鏖殺の宴。

 辺りには抵抗さえ許されずに殺された民衆が物言わぬ骸となり転がっていた。先に駆けつけた冒険者たちの無惨に殺された死体も上に折り重なるようにして倒れている。

 

 突如として現れた悪夢に必死で抵抗するアリーゼとリュー。

 

 2人の気高き正義の咆哮は純粋な(レベル)の差に押し潰されようとしていた。

 

「バカがよぉ!!Lv. 3が2人集まったごときで、Lv. 5のこの私に勝てるとでも思ってーーッ!?」

 

 驕る悪に向けられたのは冷徹なまでの殺意。

 

 「ーー歪・柳生新陰流勢法【アイヌキ】……」

 

 相抜という互いに互いの命を握った状態における両者の膠着状態。これを剣気で相手を包み、精神を削ることで強制的に引き起こす剣を使わない剣技。

 

 未熟にも程がある咲人は柳生の記憶においてこれを使っていた灰色の剣士には程遠い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()。一度も使ったことさえもない技は当然普通ならば発動しない。

 

 だが、今の咲人でもこの技は発動した。

 自身の大切が傷付いた結果引き起こされた莫大な殺意が剣気の肩代わりとなった。

 

 感じたことの無い程の殺意に冷汗を流しつつ、身体が一切動かないヴァレッタは刀を構えたまま同じく膠着状態に陥っている咲人を見つめることしかできない。

 

 生み出された貴重な一瞬の膠着は横からガレスが全力の拳をヴァレッタの顔面に入れるには充分過ぎる隙だった。

 

「ごふぁッ…!!??オマエらぁ!!私を守れぇぇッ!!」

 

 回避行動も取れず、完全に無防備な状態で殴られた衝撃により鼻が潰れ、折れた歯が目立つひしゃげた顔で必死に命令する。

 

 本来冷静な状態にあれば、周りの逃げ遅れた民と白装束を利用し賢く逃げることができた筈が、思いもよらぬ一撃を受けたことで自身の保身に全力で走る。

 

 同時に膠着が解かれた咲人は殴られた勢いに任せて逃れようと転がるヴァレッタを追撃しようとするがーーー

 

(邪魔だな……!!)

 

 そうはさせまいと白装束達が行く道を阻む。

 質よりも数を生かし、文字通り肉壁となり妨害をしてくる。

 

 ()()1()()()()()()()()()()追撃に向かいたいところだが、民衆や仲間の目がある以上残念なことに殺すことは出来ない。

 

「咲人とガレスのおじ様は先に行ってて!!こっちの白装束は私たちが抑えとく!!」

 

 遅れて横に並んできたアリーゼたちは追撃を咲人とガレスに任せ、無理矢理人の壁に突破口を開ける。

 

「助かるわい!!」

 

「ありがと!!」

 

 感謝しながら、空いた人1人分の隙間をガレスの背後につきながら押し通っていった。




ちなみに当時アストレアが反対しなかったのは咲人のスキルに現れるほどの嫉妬が爆発すると心配しての判断です。
(多分、リュー追放時のことを考えるとこんな判断しそう……しない?)

最後に更新遅れてすみません(殴)
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