孤独(?)のクリスマスグルメ ~ノーチキン&ノーサーモンなあんかけ焼きそば~   作:3S曹長

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 どうも、クリスマスには特に予定が無いので2日後に放送される「SASUKE」が今一番の楽しみになっている、作者の3S曹長です。
 クリスマスまであと1週間というところですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

「2022年を締めくくる作品を作りたい!」
「クリスマスに井之頭五郎が喧嘩両成敗のアームロックをかける作品を作りたい!」

そんな思いから生まれた作品です。短期連載ですが、楽しんで読んで下さると幸いです。

 当作品に出てくる井之頭五郎は、漫画版でもドラマ版でも無く、「他作品のキャラと平気で同調して何かあるとアームロックで解決しようとするコラ画像の井之頭五郎」として見ていただけると違和感が少ないかと思われます。一応、原作に出てきた彼の思想は出来る範囲で反映させております。


注文編

12月25日(クリスマス)都内某所

 

「おお、注文の品で間違いないですな。この度は助かりましたよ、井之頭さん」

 

「いえいえ。こちらこそ、ご注文ありがとうございました」

 

 礼の言葉を口にして、俺は向かいに座る取引相手に頭を下げる。

 俺の名前は井之頭(いのがしら)五郎(ごろう)。個人で輸入雑貨の貿易商を営んでいる。クリスマス当日である今日も仕事で、注文を受けた品を届けるべく顧客の元へと足を運んだのであった。

 

「そう言えば井之頭さん。今日はクリスマスですな」

 

「ええ、そうですね」

 

「井之頭さんもやっぱり、クリスマスは特別なごちそうを食べたりするんですかね?」

 

「どうでしょうね…。まだ何も決めてないんですが」

 

 俺は取引相手に曖昧(あいまい)な返事をする。別にテキトーにあしらっているワケじゃ無い。言葉通り、今日何を食べるかはまだ決めていないのだ。

 俺は食事の時間というモノをとても楽しみにしている。何を食べるか、その日の自分の欲求と向き合い、店を探すのだ。時には方針が決まらず辺りをウロウロする日もあるのだが、そうして店を探すのもまた面白い。

 そんな俺の考えなど知らない取引相手は、俺に言葉を返す。

 

「やっぱりクリスマスと言えばチキン、だなんて言う人が多いと思いますが…」

 

そう言ったかと思うと、彼は某蟲柱のように片手を口の横に当て、続きを口にする。

 

「クリスマスにチキンなんて考えはシロウト。あれはダメ。クリスマスと言えば(シャケ)!これが今のトレンドですよ」

 

「クリスマスにシャケ!そういうのもあるのか」

 

 思った事が思わず口に出てしまった。

 

 

 

時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たす時、つかの間、彼は自分勝手になり自由になる。誰にも邪魔されず、気を遣わずものを食べるという孤高の行為。この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の癒やしと言えるのである。

 

 

 

 客との取引を終え、俺は建物の外へと出た。今日の対人の仕事はコレで終了。午後からは資料をまとめようか?それとも年末に向けて倉庫の整理でもしようか?

 そんな仕事の予定は早々に頭から離れ、俺は先の取引相手の話を思い出していた。

 

「クリスマスのごちそう…か」

 

 実の所、俺は「クリスマスと言えばチキン」という考えが好きでは無い。別にチキンが嫌いなワケじゃ無い。「クリスマスと言えばチキン」という考えは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。

 まず大前提として、俺は行列の出来る店で食事をするのが嫌いだ。そういう店で俺は食事をしない。並んで食べるのが嫌いと言うより、俺が食事をしている最中に後ろから「早く食べ終わってくれないかな」という無言の圧が来るのが嫌いなのだ。

 この前提を踏まえて、クリスマスの飲食店を想像してみよう。あちこちの店で、チキンを主役にした()()()()()()()()()()()が用意される。そして「クリスマスと言えばチキン」と考える人達が限定メニュー目当てに集まってくる。結果として店は混み、俺の選択肢が狭まる事になるのだ。

 それだけに留まらず、クリスマス限定メニューに注力するためにレギュラーメニューの販売を休止する店まで出てくる始末だ

 自分がその日食べたいものを食う、と言う考え自体は大いに正しいのだが、何もクリスマスに無理してチキンを食べなくても、と思う。美味いチキンはクリスマス以外の日でも美味いのだ。

 

「かと言ってシャケもなぁ…」

 

 俺がシャケに難色を示している理由はもっと単純だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。魚介類を食うにしてもシャケ以外が良い。

 いかん、そんなことを考えていたら…

 

「腹が、減った…」

 

 

 

 

「よし、店を探そう」

 

 俺は昼食を求めて、早足で歩き始めた。

 最初に俺の目に入った飲食店は蕎麦(そば)屋だった。麺類という線は良いのだが、う~ん、蕎麦よりももっとガッツリとしたモノが食いたい。それに蕎麦は年末に食うから良いじゃないか。

 ちなみに、「『年末と言えば蕎麦』という考えは良いのか」とツッコミを入れたい人もいるかもしれないが、そこは問題ない。日本には「客に早く蕎麦を提供すること」に特化した店、立ち食いそばの店があるからだ。それに「年末の食事は豪華にしたい」と考える人も多く、そういう人達はもっとしっかりとした蕎麦屋に向かう。だが俺の一年を締めくくる蕎麦は、立ち食いそばの店で十分なのだ。

 閑話休題。そういうワケで俺は蕎麦屋の前を立ち去った。しかしこの判断は失敗だったかもしれない。

 蕎麦屋を抜けた先は若者向けの店が集まる通りとなっていて、飲食店といえばジャンクフードのチェーン店やクレープ屋のようなスィーツの店ばかりだった。日本のジャンクフードの店ってなんでこんなにガキ臭いんだ。俺はこういう店では食べたくない。無論、クレープなんかが昼食になるわけも無い。

 クリスマスという事もあってか、通りがいつにも増して騒がしい。特にジャンクフード店の周囲は大騒ぎだ。飯を入れる店を探して奔走(ウロウロ)する俺の耳に、通り過ぎていく人々の会話が入ってくる。

 

「ふざけんなよ!あのギャングラー怪人のせいでチキンが食えねえじゃねえか!!」

「クリスマスと言えばチキンだろ!」

「いや、別にシャケでも良くね?」

「クリスマスにシャケも有りだと思ってんすがね…」

 

何だ何だ?さっきの取引相手との会話のせいか、やけに「チキン」と「シャケ」の単語が聞こえてくるな…。でも今日はチキンもシャケもNGだ。もっと別の何かを食べたい。世の中に2種類しか食材が存在しないワケでもあるまいし。もっと別の何かを…。

 そんな俺の考えなどお構いなしに、人々の会話が次から次へと耳に流れ込む。

 

「何でクリスマスにチキンがねぇんだよ!教えはどうなってんだ教えは!!」

「『クリスマスにはシャケを食え』私の好きな言葉です」

「知るかバカ、そんなことよりずんだもちなのだ」

「この世の終わりみたいなMISO食べたい」

 

 あぁクソ、食べ物の話を聞くと余計に腹が減ってくるじゃないか!最悪、どこかのコンビニで何か弁当でも…。

 そんな最悪手が頭にちらついてきたその時、俺の目に一件の店が飛び込んできた。落ち着いた(たたず)まいの一軒の店が。何の変哲も無いその店が俺の目に飛び込んできた理由は、掲げられている()()()にあった。

 

『あんかけ焼きそば あります』

 

おお、あんかけ焼きそば!「蕎麦(そば)」と「焼きそば」は別物だ。「インド」と「インドネシア」みたいなものだ。ご丁寧にのぼりには(ブタ)海老(エビ)のイラストも描かれている。豚とエビのあんかけ焼きそば、良いじゃないの良いじゃないの。「チキンとサーモン」に対抗して「豚と海老」、ガッツリいきたい俺の腹にピッタリのあんかけ焼きそば!よし、ここに決めた!

 店の入口に足を踏み入れようとした俺の横目に、何やら奇妙なモノが映った。「シャケの塩焼き」と乱雑に書かれた紙が、何やらポスターを隠すようにして貼られている。一瞬気になったが、関係ないことだとすぐに思い直す。

 

「いらっしゃいませ」

 

 店に入ると同時に店員が俺の前に駆け寄ってくる。何やら浮かない顔だ。

 

「申し訳ございません、お客様。クリスマス限定の(とり)唐揚げなんですが、現在提供できない状態でして…」

 

「あ、えっと、あんかけ焼きそばを食べに来たんですが…」

 

「あ!それでしたら大丈夫です!カウンターの席へどうぞ」

 

 良かった良かった。この店も限定メニューのみの取り扱いかと一瞬思ったが、そうでは無いようだ。

 俺は店員の言うとおりカウンター席に座り、メニューを手に取る。食べるものはあんかけ焼きそばに決めているのだが、一応のルーティーンだ。

 麻婆豆腐、酢豚、回鍋肉(ホイコーロー)…。なるほど、ここは中華料理屋だったのか。店の中は焦げ茶色の木材を基調とした落ち着いた雰囲気で「いかにも街中華!」という感じとは正反対なのだが、こういう店で中華を食べるのも悪くない。あんかけ焼きそばの名前は麺類の項目にあった。塩あんかけ焼きそば!そういうのもあるのか。もちろん、普通のしょうゆ味のあんかけ焼きそばもある。どちらにしようか迷ったが、店に入る前に俺が想像していたしょうゆ味の方にすることにした。

 

「すみません」

 

 俺の呼びかけに店員が駆けつける。

 

「はい。お決まりでしょうか?」

 

「しょうゆ味のあんかけ焼きそばをください」

 

「かしこまりました」

 

 注文を終えて一息ついたその時、店の中に新たな団体客が入ってきた。




次回、私が今一番推しているキャラクターが登場します。

当作品に出てくる中華料理屋は架空の店舗です。

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