孤独(?)のクリスマスグルメ ~ノーチキン&ノーサーモンなあんかけ焼きそば~   作:3S曹長

2 / 3
 2話目の投稿、遅くなって申し訳ございません。色々タグ付けしてたら時間がかかってしまった…。
 
 「何でこのキャラが?」と思われるかも知れませんが、理由は単純、私のお気に入りキャラだからです。
 いわばこの作品は、食べるの大好きな2キャラと「クリスマスにはシャケを食え」というミームを混ぜ合わせたトリノイド作品というわけです。

 一応、「BLEACH」をアニメで追っている人はネタバレ有りなので注意です。  
それと、この作品を読む前に「BLEACH Can't Fear Your Own World」(集英社より発売)を読んでいると良いかもしれません。


邂逅編

 注文を終え、水を一口含んだところで店に新たな客が入ってきた。店員が急いで入口に駆けつけ、俺の時と同様にクリスマス限定メニューを提供できない(むね)を伝える。

 

「はぁ?ざっけんなよ!!ココでもチキンが食えねえってのか!!?」

 

入ってきた客の内の1人が、店中に響き渡るような大声を出した。俺は思わず入口の方を振り返ってしまう。

 客は5人組で、全員10代くらいの少女だ。大声を上げたのは黄緑色の髪の女性、10代後半から20代ってとこか。やけに露出度の高い服装をしてるなぁ。

 

「落ち着けよビッチ。店に迷惑かけてんじゃねえ」

 

 5人の中で最も年下であろう金髪の少女が、黄緑色の女性を制する。まだ小学生程度にしか見えないが、しっかり者のようだ。

 

「おいリル!クリスマスだってのにどこ行ってもチキンが食えねえなんてオカシイと思わねえのかよ!?」

 

「くだらねぇな。美味いモン食えりゃあ何だって良いじゃねえか。さっさとオレに昼飯を食わせろよ」

 

リルと呼ばれた金髪の少女が不満げな顔をすると、5人組の内のピンク髪の女性が同調する。

 

「リルの言うことも一理あると思うの。早くランチが食べたいわ」

 

「ちっ、分かったよ!!」

 

「も、申し訳ございません!すぐに席へとご案内いたします」

 

 黄緑色の女性が引き下がったので、店員が急いで5人を席へ案内する。やれやれ、これから俺が昼飯を入れようとしてる店で騒ぎを起こすのは止めて欲しいものだ。

 

「へぇ~、ココって中華料理の店だったんだ~」

 

 5人組の内、黒髪ロングの娘がメニューを見ながら若干オーバーなリアクションをする。

 

「ああ。あんかけ焼きそばを看板メニューにしちゃいるが、酢豚が美味いって話だぜ」

 

金髪の少女、リルがそう答える。酢豚は確かにメニューにあったが、それほど強調されているワケでも無かった。あの子、俺とは違って事前の調査を(おこた)らない派か。

 

「酢豚ってパイナップル入っているから苦手なんだよなぁ」

 

「でも、リルが美味しいって言うならきっと美味しいハズなの」

 

 黄緑の娘とピンクの娘の反応は正反対だ。

 

「テメエはガキかよキャンディ。ならパイナップルだけ取り除いて食えば良いじゃねえか。お前が残したモンは全部オレが食ってやらあ」

 

「ま、ボクはバンビちゃんと食べれるなら何でも良いけどねー!ね、バンビちゃん!」

 

「うん…、ジジ……」

 

黒髪の娘ジジの呼びかけに「バンビちゃん」と呼ばれた娘が覇気の無い声で答える。どうでもいいが、そのバンビちゃんは顔色が悪すぎやしないか?大丈夫か、バンビちゃん。

 こうして5人組は酢豚を人数分注文した。どうやら一番年下に見える「リル」と呼ばれている少女がリーダー格のようだ。う~ん、ああ見えて一番年上なのか?若い娘は外見での判断が難しい。

 

「ああクソッ!チキンが食いてえなぁ」

 

「またそれかよ。いい加減切り替えらんねえのか」

 

 未練たらたらな黄緑の娘キャンディに対し、リルが呆れた顔を向ける。

 

「でも確かに、クリスマスにはチキンだと思うの」

 

ピンク髪の女性がキャンディに同意する。彼女もまた、クリスマスにはチキン派なのか。

 

「あのなぁミニー。そーゆー考えのヤツらが多いせいで、クリスマスにケンタでサンドが頼めねえっつー、本末転倒な事になってんじゃねえか」

 

そう返すリルに対し、ジジが若干オーバーな驚きの声をあげる。

 

「ええー!?リルってチキン大好きでしょ?好み変わった?」

 

「勘違いすんじゃねえぞジジ。チキンは大好物だ。だが『クリスマスにはチキン』って考えはメシを食うジャマになるから嫌いだ」

 

おお!俺と同じ考えじゃないか。口は悪いがあの子、以外とウマが合うかもしれない。

 と、そこまで俺が思った時のことだった。キャンディと偶然目が合ってしまった。

 

「おい、あそこのオッサン、さっきからコッチのこと見てきてんぞ?」

 

「テメエが店に入るなり大声出すからだろうが、ビッチが」

 

「ウソー!!キモーッ!!!」

 

リルのツッコミをかき消すかのように、ジジがオーバーリアクションをする。マズい!

 俺は慌てて5人組から目をそらす。全く、俺は何をしてるんだ。空腹で冷静さを欠いているのか?慌てるんじゃ無い。俺は昼飯を食べるためにこの店に入ったんだ、決して少女の観察をするためじゃない。

 彼女達に言い訳するかのように、俺は他の客に目を向ける。クリスマス当日ということもあってか、男女のカップルが多い。4組もいる。年齢層はバラバラで、若いカップルもいれば、老年夫婦もいる。

 他には4人家族が一組と、俺の2つ隣のカウンター席で食事をしている男性が1人。年齢は50代くらいで、見た目からしてタクシーの運転手だろう。黙々と天津飯を口に入れている。俺と同じ、男の独りメシってワケか。

ドーン

 ん?外で何か物音がしたな…

 

「お待たせしましたー」

 

 そうこうしている内に、俺の頼んだあんかけ焼きそばが来たようだ。もうお腹が空いて死にそうだ。

 

「こちら、あんかけ焼きそばになります」

 

「…え?」

 

運ばれてきた料理を目にして、俺は素っ頓狂な声をもらしてしまった。

 

あんかけ焼きそば

(茶色に塗り固められた具材の宝庫!体がグツグツと温まります)

 

グツグツ…。そう、グツグツと(あん)が煮えたぎっている!まるで茶色いマグマのようだ。その中から海老(エビ)や白菜を始めとする具材が顔を覗かせているが、麺の姿は見えない。この煮えたぎる餡の下か。物騒なメインディッシュの横には紅ショウガの小皿が付いている。

 

「大変お熱くなっておりますので、気をつけてお召し上がり下さい」

 

 ご丁寧にも店員が注意を促した。

 う~ん、こいつはまいったぞ…。出来たてアツアツの状態で出てくるなんて完全に予想外だ。俺の体はこんなにも食べ物を欲しているのに、餡のマグマがソレを許さない。

バギューン

 また外で音がした。誰かが争っているのか?

 いや、そんなことより目の前の料理だ。とりあえず麺を持ち上げない事には始まらない。割り箸を餡の中に入れ、麺を取り出す。

 茶色の餡が絡みついた黄色い麺からモワモワと湯気が上がっている。このまま食べれば口の中をやけどするのは間違いない。

 一刻も早く腹にモノを入れたいという衝動を必死で抑えながら、俺は麺にふぅーふぅーと息を吹きかける。…ダメだ!全然冷めないぞコレ。原因はこの餡か。

 もう我慢出来ない!覚悟を決めて麺を口に入れる。

 

「あぢ!あぢぢぢぢっ!」

 

ダメだ、熱すぎて味が全然分からない。こんな状態で食べても美味しくないわ口をやけどするわで良いこと無しだ。じゃあ冷ませば良いじゃんって話なのだが、冷めるまで俺の内で沸き上がる食欲を抑えきれない。

バゴーン!

 というか、外の異音が大きくなってないか?店の客がざわついている。誰が争っているのか知らんが、頼むから俺がメシを食っている最中は静かにしていてくれ。

ドゴーン!

そんな俺の頼みを無視するかのように、異音は鳴り続けている。諦めて食べるのに集中しようと、俺は白菜を持ち上げた。

 

「ふぅー、ふぅー、むぐっ、あづづっ!」

 

くそ、麺以外なら行けるかと思ったがそんなことは無かった。具材までアッツアツだ。

 俺は段々イライラしてきた。俺の静かな食事の時間をジャマする外の異音と餡の熱さのせいだ。熱さの方は俺の頼んだ品だから仕方ないとしても、外のイザコザは完全に俺の管轄外だ。

ドッゴーン!!!

 今までで一番大きな音がしたのと同時に、俺の中の何かも爆発した。もう我慢ならん!外のヤツらに物申さないと気が済まない!

 

「はぁ~!」

 

 大きなため息をつきながら俺は席を立つ。外の様子を窓から見ている店員に声をかける。

 

「すみません、すぐに戻りますんでココの料理、そのままにしておいて下さい」

 

店員の返事も聞かず、俺は外へと駈け出した。

 

「お、お客様!?危険ですよ!!」

 

後ろから聞こえる店員の制止には耳も貸さず、俺は争いの現場へと向かった。

 

 

 

 俺が目にしたのは、何やら異様な光景だった。

 

「シャッケッケ!どうだぁ?美味しいダルルォ?」

 

そう言ってシャケのバケモノが全身タイツの2人組を見下ろしている。

 シャケのバケモノ…、そう表現するほか無いだろう。頭は魚の頭蓋骨、胴体はイクラと鮭の切り身で出来ているらしい、シャケのバケモノだ。

 全身タイツの2人組も、うん。全身タイツの2人組だ。1人は緑の全身タイツに緑のフルフェイスヘルメット、もう1人は色が金ピカな以外は緑の方と大体一緒の恰好だ。2人ともダメージを受けているようで、地面に()いつくばっている

 

「確かに…、シャケは素晴らしい食材だと思う…!」

 

緑の方が声をあげた。

 

「ボクも、サーモンは大好物の部類に入るよ…。だけどっ!」

 

金ピカがそう言うと同時に、全身タイツの2人組が立ち上がった。

 

「クリスマスにはチキンでしょうがー!!」

「クリスマスにはチキンでしょうがー!!」

 

 俺は呆れて言葉を失う。まさかこの3人、クリスマスにはシャケかチキンか、だなんて下らないことのために俺の食事を邪魔したというのか?

 世界の平和を守るため、などといった大切な理由があるのなら俺も引き下がったが、これは我慢ならん。子供達は許してくれるかもしれないが俺が許せぬ。これから武力制圧に行く。

 

「待ちなさい!!」

 

俺はシャケのバケモノと全身タイツの2人組に大声を投げかける。

 

「んん?なんだお前は?」

 

「何だじゃ無い!俺の食事をジャマしおってからに…」

 

「あ、危ないっ!」

 

「逃げて!おじさん!」

 

2人の制止には耳も貸さず、俺は言いたいことをぶちまける。

 

「さっきから聴いていればクリスマスにチキンだシャケだのと…。お前達はそんな下らない固定概念を相手に押しつけないと気が済まないのか?」

 

「なぁにぃ?お前もクリスマスにはチキンと言うのか?」

 

「違う!俺はその日に食べたいものを食べる、ただの食通だ!」

 

「食通かぁ…。ならば尚更(なおさら)シャケを食え!」

 

「今日はシャケの気分じゃ無い!一昨日サーモンとイクラの親子丼を食べたばかりだからな」

 

「ほほう…。ならば刺身とは違ったシャケの美味さを教えてやろう!」

 

 そう言うとシャケのバケモノは素早い手つきで鮭の切り身を用意し、俺の口へと投げつけた。

 

「むぐっ!」

 

 俺の口に鮭の切り身が…、美味い!焼き鮭は大好物だ。俺は白飯に合うモノは皆好きだ。

 

「美味いじゃないか!」

 

「だろぉ?」

 

いや、いかんいかん!食べ物で懐柔(かいじゅう)されてどうする。

 

「た、確かに美味しいが、だからといって他人に自分の好きな食べ物を押しつけて良いわけじゃない!」

 

「何だ、まだ文句があるのか?」

 

「ある」

 

俺は堂々と言い放つ。さて、3人にお灸を据える時間だ。




次回、最終回です。クリスマスには間に合わせます。
ちなみに私はクリスマスにはシャケでもチキンでも良い派なのですが、シュトーレンだけは欠かせません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。