ドールズフロントライン ~サムライ/ドライブ~   作:弱音御前

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今年も差し迫ってきました今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
どうも、弱音御前です。

本日より当方のドルフロシリーズ新作、〝サムライ/ドライブ〟のスタートとなります。
あらすじから、やろうとしている事がなんとなく分かる方もいるとは思いますが・・・とりあえずは、いつも通りお暇潰しにでも読んでいただけたら嬉しく思います。
それでは、今回もごゆっくりとどうぞ~


サムライ/ドライブ 1話

 ドールズ・フロントライン ~サムライ/ドライブ~

 

 

 ELID感染者。コーラップス放射の影響で細胞が変異し、死して尚、本能のままに地上を徘徊する異形である。

 その昔、まだ世界に娯楽が溢れていたころの様々な作品でお目見えしていた怪物、〝ゾンビ〟を想像してもらえれば分かりやすい。ほぼそのものである。

 一般人のELID感染者であれば、危険性はさほど高くはない。生物を察知すると襲い掛かってくるとはいえ、所詮はヒトの身体であり、移動速度も遅い。戦闘の心得が無いものでも、対処は難しくは無いだろう。

 しかし、軍所属兵のELID感染者となると話が変わってくる。

 戦闘訓練を積んでいる彼らの身体は、一般人とは筋力も体格も優れる。加えて、変貌した際に

所持していた武器を持ったまま徘徊しているのだ。

 意思は無くとも、なにかのキッカケで敵味方関係なく銃弾をバラ撒く徘徊者が、数えきれないほどいると考えれば、誰だって背筋を凍らせるものだろう。

 さて、現在は鉄血部隊の制圧任務を主に請け負っているグリフィンであるが、最近はELID感染者が徘徊するエリア内での戦闘任務も増えてきた。

 対人形戦闘はお手のものな彼女らの中でも、ELID感染者との戦闘経験がある者はまだ少ない。

 そういった現状を見据え、此度、戦闘経験のない人形に対してELID感染者を相手にした実戦訓練を行うことと相成った。

 無論、経験が無い者に教えるには、相応の知識を経験を有した者が居なければならない。

 どんな分野にもエキスパートというものが存在する。

 今回、彼女たちに技術を叩き込む、対ELID戦闘のエキスパート人形。

 その3人を交えた実践訓練が始まるのが、まさに今日、この日だった。

 

 

 

 

 

 

 旧市街地 ELID感染者徘徊区

 

 

「HQの設営良し、と。観測班、解析班の皆さんも設備は大丈夫ですか?」

 

 指揮官の言葉に、基地から同行していた馴染のスタッフはみんな元気な返事を返してくれた。

 本来、基地勤務である皆を、基地から数百キロも離れたこんな僻地に、大量の機材を抱えてもらいながら連れてくることになったのだ。

 仕事とはいえ、少なからず申し訳なさを感じていた指揮官だったが、皆一様にヤル気十分な雰囲気で取り組んでくれているのは、本当にありがたい限りである。

 

「オーケー。それじゃあみんな、ミーティングを始めるよ」

 

 設営が終わるまでの間、お茶をしたり雑談したりとくつろいでいた戦術人形達が、その声に反応して指揮官のもとへ駆け寄ってくる。

 どことなく緩いその雰囲気は、戦闘部隊というよりは学校行事で旅行中の学生みたいな感じである。

 

「はい、指揮官の前にお行儀よく整列~。え? 順番? そんなのテキトーでいいから、さっさと並ぶ」

 

 副官UMP45の呼びかけで指揮官の正面、横一列に並ぶ戦術人形達。

 ビシリ! という擬音からは程遠いユルさを感じるが、指揮官としてはこれくらいで良いと考えている。

 指揮官は、彼女達とは上司と部下というよりも良き戦友として過ごしていきたいのである。

 

「既に把握している事だと思うけど、あと数分で対ELID特殊部隊の人形達が到着する。これから

君達6人には、その人形達のもとに就き、このエリアのELID掃討任務にあたってもらう。掃討任務とはいえ、主目的は対ELID戦の経験値を積んでもらう事にある。各員、無理はせず仲間と助け合いながら任務を進めること」

 

「対ELIDのエキスパートっていうけど。この戦闘のスペシャリストである私に敵うものなのかしら? 先に言っておくけど、私以下の練度だったら好きにやらせてもらうから」

 

 指揮官の話の切れ間で真っ先に差し込んできたのはネゲヴ。ELID戦の経験は無いながらも、相変わらずかなり自信満々なスペシャリストである。

 

「特にUMP45、アンタに負ける気は無いからそのつもりで」

 

「私はここで指揮官の補佐なので、どうかお構いなく。しきか~ん、今日も楽しくお仕事しよう

ね~」

 

「くっ・・・いつか目にモノ見せてやるんだから、覚悟しときなさい、UMP45」

 

 指揮官に抱き着き得意顔でネゲヴに見せつける45。そんな二人の仲もいつも通り、もうツッコむ気すらも起きない指揮官である。

 

「ネゲヴの言葉に乗るわけじゃないけど、本当に私達よりも練度が低い連中で、得るモノも何もなかったらそれは困るのよね。手ぶらで帰るとFALが五月蠅いの」

 

「鬼隊長の補佐は大変ですわね。心中お察しいたしますわ~」

 

「そうなったら怒られるのはアナタ達も一緒だから。まだValkily小隊所属だっての忘れないでよね」

 

「それは一兵卒の役目ではなくってよ!?」

 

 最近、同じ部隊で活躍中の57とタボール。これまで、あまり交流のなかったらしい2人も、今ではすっかり仲良しさんだ。

 

「ほら、ファマスさんもなんとか言っておやりなさい」

 

「ん、そうですね。タボールの意見に賛成です」

 

「何ですの、その気の無い返答は? 全く、大嫌いなゾンビが相手だか・・・」

 

「タボール、シャラップ!」

 

「んむむぅぅ~~~!?」

 

 目にも留まらぬ速さでタボールの懐に踏み込み、強引に口を塞ぐファマス。

 身体の方は問題なさそうだが。

 

「やっぱり気が乗らないかな? なんなら、ここで補佐をしてもらってもいいけど」

 

「そそそそんな事はありません! 不肖ファマス、指揮官殿の為にゾンビ退治の極意を会得してくる所存でございますわ!」

 

 動揺しまくっているせいで口調がおかしなことになっているファマス。

 部下のステータスをある程度把握しておく、ということも指揮官の大事な仕事だ。

 ファマスがどういったモノを好み、苦手にしているのかというのも指揮官は知っている。

 本来は不向きな任務なのだが、参加したいと自ら申し出られては無下にするわけにもいかない。

 支障が出ない限りは、遠くから見守ってあげるのも指揮官の役目というものだろう。

 

「私の事よりも、ワルサーはどうなのです? こういうの、苦手なのでは?」

 

「はぁ? アンタみたいなビビりと一緒にしないでくれる?」

 

 ファマスに話を振られ、心底不機嫌そうなワルサー。

 まぁ、彼女が不機嫌そうにしているのは割といつものことなのだが。

 

「私は別にオバケとかゾンビとか、そんなの怖くなんかないし。ってか、ELIDなんて人間の感染者のことでしょ? この世に実在してるものなら怖くもなんともないんだから」

 

 愛銃を胸に抱いたまま、ワルサーは堂々と言い切る。

 しかしその言いっぷりだと、オバケとかは怖いと言っているようなものでは? というのはこの場に居る一同揃っての思いだが、どうか心にとどめておく方向でひとつ。

 

「私には怖いものなどありません。指揮官の為にどんな相手でも確実に始末してみせます。ああ、でも指揮官が私を見なくなってしまうのはとてもとても怖いです。なので、ずっと私の傍で、私をちゃんと見ていてくださいね」

 

「っとぉ!? 9A91、いつの間に周りこんだの?」

 

 ついさっきまで目の前に六人全員並んでいたかと思えば、知らぬ間に9A91が指揮官の背中にすり寄っていた。

 こんなに明るい下だというのに、夜戦で猛威を振るうステルススキルは伊達ではないという事か。

 指揮官がぼーっとし過ぎで気づかなかっただけだ、とツッコんではいけない。

 

「もちろん、キミの働きもしっかりモニターしてるから。頑張って任務にあたってね」

 

「はい、私がんばりますね、指揮官」

 

 言って、目の前の列に9A91を押し返してやる。

 6人いずれも優秀な戦績を誇る人形達だが、ELID戦の経験はゼロである。

 これまでの戦闘経験がどこまで通用するのか? これは、指揮官にとっても非常に興味深い任務になる事だろう。

 

「あらかじめ言っておくけど、HQを置いているここはELID徘徊区の境界線にほど近い。一応、

防衛線は張ってあるけど、それでも指揮官が安全だという保障は無いわ。アンタ達が討ち漏らしたELIDのせいで指揮官が危ない目に合う事もあるっていうのを頭に入れて任務にあたりなさい。まぁ、万が一そうなっても、ここに控えてる私とスパスでどうにかするんだけどね」

 

「その時は私も頑張るから、みんな、安心して行ってきてね~」

 

 せっかく45が皆にクギを刺したのに、指揮官の後ろに控えているスパスのおかげでほわほわとした雰囲気になってしまう。

 

「スパスはHQで待機なの? ショットの娘なんか、前に出て戦う事が多いんだから、ELID戦は

経験しておいた方がいいんじゃない?」

 

「57の言う事も尤もだね。でも、今回は対ELID戦、中でもオフェンス技術の習得を目的としているんだ。今回の実践訓練が上手くいったら、ディフェンス技術の実践訓練を実施する事になるだろう。その時は、ショットの娘達をメインに配置する」

 

「じゃあ何で連れてきた? 配給だけ無駄に消費するのは勘弁なんだけど」

 

「うぅ・・・ヒドイよ、ネゲヴちゃん」

 

 ネゲヴの厳しいツッコミに涙目なスパス。そんな様子を見て人形達に笑顔が伝播する。

 戦闘に赴く前の緊張の時ではあるが、少しくらい、こういう和む瞬間というのも必要なものである。

 

「スパスには銃器技術のオブザーバーとして、一緒にデータ採りをしてもらうんだ。今後、ELID戦で効果的な銃器カスタムの参考にしてくれればと考えている」

 

「そうだよ! 私だって、食べて寝るだけの為に来てるわけじゃないんだからね!」

 

 グリフィンきってのガンスミスであるスパスの腕前は、ここにいる誰もが認めるほどだ。

 一朝一夕で、とはいかないだろうが、今後、ELID戦が楽になるのならば、スパスの活躍に存分に期待したいところである。

 

「ところで、コイツ等はもとより、副官である私も、これから来るELID戦のエキスパート部隊のことを何も知らないんだけど、どんな奴らが来るの?」

 

「ああ、実は、その部隊は表立ったものじゃないらしく、開示されている情報はほとんどないんだ。俺も簡単な事しか知らされていないんだけど・・・っとか話してる間に来たみたいだな」

 

 遠くからでも分かるヘリのローター音が指揮官の耳に届く。

 テントの下から出て、音の聞こえる方角の空へと視線を移すと、指揮官達の方に向かってくる

黒いヘリが一機視認できた。

 

「あのヘリに、特殊部隊の人形達が乗っているの?」

 

「まあまあ、ヘリでご登場とは良いご身分ですわね」

 

「私達なんか車で何時間も揺られてきたってのに、ホント信じらんないわ」

 

 各々、感想を零している間にHQの仮設へリポート上空までヘリが到達。

 着陸姿勢を安定させるためにホバリング状態に入ったので、指揮官たちは再びテントの中へと引っ込む。

 

「生意気な奴らね。弾丸を撃ち込んでちょっと脅かしてやろうかしら?」

 

「指揮官の命であれば、私も参戦します」

 

「ネゲヴも9A91も、笑えない冗談ですよ。味方に向けて銃撃なんて、許されることではないし、指揮官殿はそんな命令は下しません」

 

 おふざけでヘリに向けて銃を構えてみせるネゲヴ。

 その間に、空中で姿勢を整えたヘリがようやく降下を始めた・・・その時だった。

 突如としてヘリが大きく揺れたかと思えば、コントロールを失って機体が回転を始めたのだ。

 

「おわぁ!!? ど、どうしたんだ!?」

 

「ネゲヴ! アンタもしかして本当に撃った!?」

 

「ち、違うわよ! 私、撃ってないもん! だって、みんな銃声聞いてないでしょ! ねっ!? ねっ!?」

 

 焦りつつ同意を求めるネゲヴに、一様鋭い視線を向けている。

 しかし、ネゲヴの言う通りである。これだけ近くにいるのに、ネゲヴの銃声は聞こえなかった。

 何か、別の要因でヘリはコントロールを失ったのだ。

 横向きに回転しながら、ヘリが急下降する。

 

「指揮官、早くみんなの退避を!」

 

「いや、落ち着いて。みんなも、退避はヘリの墜落先を見切ってからだ」

 

 無闇に退避して、その先を追ってヘリが墜落してきたら意味は無い。

 移動を始めようとする戦術人形とスタッフを、指揮官が一言で制してみせる。

 コントロールを失ってはいるが、ヘリは下降しながらもHQから離れて行こうとしている。

 避難せず、ここにいる方が安全だという目途が立った。

 

「あ、あれ! ドアが開いて誰か出てきたわ!」

 

 57の言う通り、開いたドアハッチの淵に、3つの人影が視認できる。

 そう気づいたのも束の間、その3人は回転降下する機体からあっさりと飛び降りたのだ。

 

「あの人達、振り落とされた!?」

 

「いえ、自ら飛び降りたようにも見えましたが」

 

「下はヘリポートだ。45、医療班を連れてきてくれ」

 

 ヘリを乗り捨てた高さは、人形であれば致命的なものではない。

 ただ、負傷の可能性を考えて医療班を呼ぶように指示を飛ばし、指揮官はヘリポートへ。

 先に着地点に到着した指揮官が、3人の様子を見上げる。ロープもパラシュートも無しのフリーダイビングで、まず指揮官の目の前に降り立つのは。

 

「っ! ふぅ・・・」

 

 地面との接触の瞬間に身体を丸めて地面を転がり、見事な分散着地を披露したポニーテールの

人形。

 続いて。

 

「ぃよっとぉ!」

 

 衝撃などなんのその、といった感じで両脚から乱暴に着地する、赤毛の人形。

 最後に。

 声ひとつ発せず、片膝立ちのような姿勢。俗に言う〝ヒーロー着地〟を華麗に決めたブロンドの人形。

 ヘリはHQから遠く離れた位置に墜落、噴煙をあげているが、飛び降りてきた3人は見たところケロッとしている。

 

「あ、その装いはもしかして、貴方がグリフィンの指揮官でしょうか?」

 

 今しがたの墜落の件など無かったかのように、ポニーテールの人形が指揮官に問いかけてくる。

 

「へ? あ、うん、そうだけど」

 

「お見苦しい到着を披露してしまい、申し訳ございませんでした。私達は」

 

「ちょっと待って! まず、3人ともヘリから飛び降りてきたけど、ケガは無い?」

 

 つい流れに乗せられて気のない返事を返してしまったが、真っ先に確認しなければいけない事はこれである。

 

「ええ、かすり傷ひとつありません。2人とも、今回も無事ですね?」

 

「もちろん」

 

「ん」

 

 みんな、特に無理している様子も無く答えてくれているので、その通りなのだろう。

 45が引き連れてきた救護班に、戻ってくれるよう合図を出す。

 

「ご心配をかけてしまったのであれば、申し訳ありませんでした。いつもの事ですので、私達も

対処法は心得ています。どうかご安心ください」

 

 黒髪のポニーテールに凛とした表情の戦術人形は、胸に手を添え、いかにも誠実そうな口調で

指揮官に話す。だが、その様子とは裏腹に、話の内容がなんかオカシイ事に指揮官もすぐ気づく。

 

「い、いやいや。いつもの事って、ヘリの墜落が? もしかして、敵部隊に攻撃されたとか?」

 

 指揮官の言葉を受けて、グリフィンの戦術人形が一瞬で戦闘態勢に切り替わる。

 

「そういった事ではなくて。私達の乗ったヘリはよく墜落するんです。特に何か理由があるわけではなく」

 

「・・・・・・なんで?」

 

「さあ? それを見越して、ヘリは簡素な装備にしていますし、操縦はオートモードにしていますので、その点もご安心下さい」

 

 やはり、真っすぐにそんな訳わかんないことを言い切るポニテの人形に、指揮官を含めた一同、警戒態勢を解除して、頭の上に幾つも?マークを浮かべている。

 

「さぁ、お時間が押してしまっていますので、よろしければ、ミーティングに入っても?」

 

「ん? あ、ああ・・・そうデスネ」

 

 清流のように清らかな、それでいて、疑問の余地すらも挟む間もないあっさりとした雰囲気に流され、指揮官達はHQテントへと引き返す。

 最中、指揮官に並んで歩く45が自分の頭を指さしてクルクルと回す仕草を送ってきたので、そういう事を言うんじゃありません! という意味で頭をひっぱたいておいた。

 

「それでは、ミーティングの初めに私達の紹介をさせていただきます」

 

 ブリーフィングエリアの正面に並び立つ3人、それと正対する位置に、戦術人形達と指揮官が並ぶ。

 

「私達は対ELID制圧部隊。部隊名は〝STARS〟と名付けられています」

 

 意味は〝星々〟といったところか。部隊名というのは、隊員士気向上の意味も込め、響きが

カッコ良かったり、意味にゲンを担いだりというものが多い。

 いい名前だな、と指揮官は内心で頷く。

 そうして、きっとここからが指揮官にとって、今回の実践演習において一、二を争うくらい・・・正直に言えば、一番気になる点である。

 

「私達3人はIOP製のエクストラオーダー〝サムライエッジ〟3モデルの戦術人形姉妹。まず、私が長女、モデルネームをもじって、〝クリス〟とお呼びください」

 

「指揮官、サムライエッジって銃知ってる?」

 

「知らん。エクストラオーダーって言ってたから、特殊モデルの銃なのか?」

 

 ガンマニアな指揮官にとって、新しい銃を携えた戦術人形との出会いというのは、至極の喜びである。

 相応の知識があるつもりでいた指揮官だったが、その名前は指揮官の脳内ライブラリを掘り返しても、欠片すらも見い出すことができない。

 

「私の隣にいるこの娘が」

 

「サムライエッジの次女〝バートン〟って呼んでくれ。みんな、よろしくね」

 

 身長は指揮官とほとんど同じくらい、戦術人形の娘達の中でも抜きんでて背が高い、ライオンのようなふっさりとした長い赤毛が特徴の人形は見た目の通り、笑顔が似合う快活な性格だ。

 

「サムライエッジっていうと、古来の武器、刀のことなんだろうけど」

 

「それ、銃じゃないじゃん。アイツ等、本当にIOPの戦術人形なの?」

 

 相変わらず失礼な事言いまくりな45だが、小声なので聞こえてないだろうし、特に戒めることはしない指揮官である。

 

「そして、最後に」

 

「三女〝ウェスカー〟。よろしく」

 

 背の中ほどまで伸びた鮮やかなブロンドの彼女は、バートンとは逆にとても小柄だ。

 前髪をあげておでこを出し、とても可愛らしさも感じるが・・・切れ長のサングラスをかけていたり、クリスとバートンが身に着けているタクティカルベストとは違い、黒いロングコートの襟で口元まで隠していたりで、表情も性格も詳しく読み取ることができない。

 グリフィンが他を言えた義理ではないが、ちょっと変わった娘達だな、というのが指揮官の第一印象であった。

 

「・・・・・・えっと、こちらの自己紹介は以上なのですが」

 

「ん? ああ、そっか、今度はこっちの番だね」

 

 脳内ライブラリで発掘作業をしていたせいで、つい反応が遅れてしまう。

 初対面の相手を不安にさせないためにも、この場を仕切る立場の指揮官はしっかりとした対応をとらなければいけない状況だ。

 反省しつつ、気を取り直して言葉を続ける。

 

「改めまして、当グリフィン支部の指揮官だ。今回の実践演習に関してはもちろん、それ以外の事でも、気付いたことがあれば遠慮なく言ってくれて構わないよ。そして、この娘達がうちの支部所属の戦術人形だ。まず、45から自己紹介を」

 

 エッジ三姉妹に倣って、自己紹介が進んでいく。

 他支部との共同戦線は何度か経験しているが、こうして自己紹介から始まったことは今までになかったので、傍から見ていて新鮮な気分である。

 そうして、一通りの前置きが終わり、ようやく作戦内容の説明が始まる。

 この実践演習は、教官であるSTARSの主導で行われる。作戦の立案や進行などは

 全て彼女達に任せる事になっているので、指揮官はその内容を全く知らされていないのだ。

 

「この区域は過去に商業区として栄えていたエリアで、戦争の際には激戦区の一つだった。その為、多くの軍人崩れELIDが今でも徘徊している危険地帯だ。実践演習という名目を兼ね、この区域のELIDを掃討するのが我々の今回の任務となる」

 

 ブリーフィングの壇上に立つのは、もちろん長女のクリス、と思いきや、三女のウェスカーなのは指揮官としては意外な事だった。

 抑揚のない淡々とした、機械を思わせるような口調での説明は、無駄が無く簡潔でとても分かりやすい。

 ここにいる全員が同じように理解できる説明として満点といえるだろう。

 ただ、指揮官が普段やっているようなものよりも余裕がないせいか、グリフィン側の娘達は話を聞いていてちょっと飽き気味である。間違っても、居眠りなんてしてくれませんように、と指揮官は傍から見てハラハラものだ。

 

「先にも言ったように、エリアは広大だ。よって、我々9人を3人組3チームに分けて中央と左右翼から進行しつつ掃討を行うという作戦をとる。グリフィンの指揮官、それで異論は無いか?」

 

「作戦に関してはそちらに一任するよ。メンバー分けはどのようにしようか?」

 

「私達3人がそれぞれのエリアに分かれ、2人を率いるようにしたい。誰をつけるかはそちらの好きにしてくれて構わない」

 

 対ELID戦の専門家がいてくれるのなら安心なのだろうが、こういった戦力配分に関しては流石に雑な考えは持ち込めない。

 各々の能力と性格相性を考えて、最適なメンバー配置は・・・

 

「じゃあ、私はクリスのところに就くわ」

 

「私もそうする。一番優秀な娘に就いた方がお得だし」

 

「57さんとネゲヴ・・・さん? 私は構いませんが、指揮官さんの意向を確認した方がいいのでは?」

 

「どうせ許可してくれるんだからいいのよ。ねぇ指揮官、それでいいでしょ?」

 

「はい、どうぞ」

 

 せっかく真面目に考えていたのに、勝手に話を進められたらもう引っ込みがつかない。

 上司なのに、やはり人形達には対してはあまり強く出られない指揮官なのである。

 

「じゃあ、私はそこの青髪と麻色髪の2人にしようかな」

 

「あら、逆指名していただけますの? 私とファマスさんの最強アサルトコンビを指名するだなんて、見る目がありますわね」

 

「いやぁ、すぐ近くにいたから選んだだけなんだけどね」

 

「そういったヒキの強さも、優秀な人形には必要なスキルでしてよ」

 

「タボール、なんだかやたらとはしゃいでますけど、もう少し落ち着きましょう。一緒に居る私も恥ずかしくなってしまいます」

 

 バートンが選んだのはタボールとファマス。指揮官も認める優秀なアサルトコンビなら、問題なく取り組んでくれることだろう。

 

「では、ワルサーと9A91といったか? 2人が私に就くという事でいいか?」

 

「はい、問題ありません。私は指揮官の為に動くまでですから」

 

「静かに、滞りなく進めてくれれば私はどうでもいいわ」

 

 そして、ワルサーと9A91がウェスカーに就くことになる。

 ここは、3人とも落ち着いているというか、大人しい性格なので相性は良さそうである。

 

「内容に関しての説明は以上だ。作戦開始は30分後。それまでに各員、補給と食事を済ませておく事」

 

 ウェスカーを中心としたブリーフィングが終わり、一同解散する。

 みんなが散り散りになってしまう前に、指揮官は部下の戦術人形6人に声をかけて招集させる。

 

「今回、みんなにはこれを付けて作戦に取り組んでもらいたい」

 

「? これ、イヤリング?」

 

 指揮官が差し出した手の上には、イヤリングが6つのせられている。

 小さな宝石のようなチャームがあしらわれたそれは、6つ全て色違いになっている。

 

「作戦行動中の映像を記録できるように準備した、イヤリング型のカメラなんだ。この宝石みたいなところがカメラ機器になっていて、撮った映像をリアルタイムでHQに送ってくれる」

 

「へぇ~、こんな小さいのにスゴイね。しかもこれ、6色に分けてるってことは、私達それぞれに色分けしてくれたの?」

 

「あくまで、俺がキミたちに対して持ってるイメージカラーだけどね。気に入らなかったらゴメンね」

 

 57は黒、ネゲヴはピンク、タボールは青、ファマスは赤、9A91は銀でワルサーは紫。

 指揮官のおよそのイメージ通りにいってくれたのだろう、それぞれ、迷いなくその通りの色の

イヤリングに手を伸ばしてくれたというのは、指揮官としても嬉しい限りである。

 

「わざわざこんなの用意しなくたって、基地にある携行式の小型カメラでも間に合ったんじゃないの?」

 

「あの首掛け式カメラだと行動中に気になるっていう意見もあったから、試験的に作ってもらったんだ。送信機能をオフにすれば、そのままアクセサリーにもなるから、面倒な任務に引っ張ってきちゃったお詫びに、みんなにプレゼントってことで」

 

「そ、そういうことだったら、遠慮なく貰っておくけど。・・・えへへ、指揮官からのプレゼントだぁ」

 

 話の後半は指揮官に背を向けて、ワルサーとしては聞こえていないつもりだったのだろう。本人の意向にそって、聞こえないフリをしておく指揮官である。

 

「な~に~? もしかして、アンタはイヤリング持ってないの~? 残念だったわね、任務に参加できなくて~」

 

「くぅ~~~~っ、指揮官、やっぱ私もあれ欲しい!」

 

「試作で人数分しか作ってもらえなかったから、って。さっきはそれで納得してくれたじゃんかよぉ」

 

「ネゲヴにあそこまで言われたらもう黙っていられない! 欲しい欲しい欲しい! ほ~し~い~の~!」

 

 子供のように駄々をこね始める45に頭を痛める指揮官。その傍で、火種となったネゲヴは上機嫌で高笑いを決めている。

 ここまで機嫌を損ねられたら、すぐにはどうこうできないと分かっているので、頭が冷えるまでしばらく放置するしかないだろう。

 

「あの~、指揮官さん」

 

 げんなりしている指揮官のもとに、エッジ三姉妹の長女クリスがやってくる。

 

「どうかした? 何か伝え忘れたことがあった、とか?」

 

 情けないところは見せられない、と表情を引き締めてクリスに向き直る指揮官。

 45とネゲヴによって場は荒れ放題だが、そこはクリスが大人な対応をしてくれることを祈ろう。

 

「いいえ、改めてご挨拶をしたいなと思いまして。此度の実践演習、よろしくお願いします」

 

 クリスが差し出した手を、こちらこそ、と笑顔を添えて握り返す。

 

「はぁ~・・・本物の指揮官だぁ~」

 

 なかなか手を放してくれないな、と思っていたら、クリスの口からそんな言葉が漏れ出した。

 指揮官の事を見上げる眼は、まるで宝石のようにキラキラと輝いていて、つい今しがたの45に負けないくらいの子供らしさである。

 

「お~い、クリスさ~ん? 聞こえてますか~」

 

「はわぁ!? ご、ごめんなさい!」

 

 声をかけられ、飛び上がって我に返るクリス。

 恥ずかしがっているその仕草が可愛らしくて、つい指揮官の口元も緩む。

 

「初めて指揮官さんに会えたのが嬉しくて。私としたことが、お恥ずかしい」

 

「初めて、会えた・・・?」

 

 その言葉に妙な違和感を覚える。

 どういう意味なのかと、クリスに問おうと口を開く指揮官だったが。

 

「そっちの人形達はちゃんと面倒みるから、安心して待っててな。んで、姉貴はいつまでも喋ってないで、早いとこ出撃の準備しよ」

 

「そうですね。では、また後でお会いしましょう」

 

 傍らからやってきたバートンがクリスの事を攫っていってしまい、うやむやになってしまう。

 無理に気にすることはない、と追って聞くことまでは指揮官はしなかった。

 

「クーねぇとバーねぇ共々よろしく頼む、グリフィンの指揮官」

 

 それに続いて現れたウェスカーが軽い一礼と共に通り過ぎていく。

 

「クーねぇとバーねぇ、ね」

 

 随分と可愛らしい呼び方。サングラスと黒いロングコートで、どこか近寄りがたい雰囲気を醸しているウェスカーだが、身長は低く、メンタルモデルとしては幼い設定である。

 本来の彼女の性格は、表立っているものとはだいぶ違うのかもしれない。

 

「結局、あの娘達がどんな銃の戦術人形なのかは分かったの?」

 

 思案に耽っている指揮官に45が話しかける。

 ネゲヴが出撃準備で離れたからか、もう落ち着いてくれた様子だ。

 

「分からん。何かの銃の特別モデルなんだろうな、っていうのは間違いなさそうなんだけど」

 

「直接聞いてみればいいじゃん」

 

「いや、それはさすがに・・・」

 

 指揮官的にその問いは、出会ったばかりの女性に年齢を聞く、くらい失礼な事である。

 誰がなんと言おうと、指揮官はそう思っているのだ。

 

「みんなに渡したイヤリングで撮影した映像を見て解析してみるよ」

 

「お好きにど~ぞ。・・・手にぶら下げてないってことは、ジャケットの中に携行できる大きさね。ハンドガンか、小型のサブマシンガン。又は、ショートバレルのショットガンってところかしら? 重火器でも苦労するELID相手に小型火器で渡り合ってきたっていうのなら、エキスパートの名は伊達じゃないわね」

 

 などと、真面目に決める時は決める、そんな優秀な副官と共に指揮官も準備に移る。

 ここまでなんとなく緩い雰囲気で進めてきてしまったが、45の言う通り、ELIDは手練れの戦術人形であって簡単に対処できるような甘い相手ではないのだ。

 HQから指示を出す指揮官も、ここからは気を引き締めてかからなくてはならない。




はい、バイオハザードネタでしたね。
バイオはもともと銃の設定にこだわっている作品だったので、登場する銃をドルフロに持ち込んでみたい、という企みがありました。
中でも有名なものはサムライエッジでしょうか。メインで登場するキャラ毎のカスタムモデルが
存在するので、今回はその中から3モデルにご登場いただきました。
それぞれがどのように活躍してくれるのかは、これからのお楽しみという事で。

次週から定期投稿を行っていきますので、是非あしを運んでやって下さいな。
以上、弱音御前でした~
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