ドールズフロントライン ~サムライ/ドライブ~ 作:弱音御前
どうも、弱音御前です。
本作、サムライ/ドライブも今回で最終話となります。
ELID退治と称したバイオリスペクトな本作、最後までどうかお楽しみいただければ幸いに思います。
それでは、今回もごゆっくりとどうぞ~
仮設HQミーティングルーム
「今回収取したデータはグリフィンで纏めた後、このアドレスへ送ってもらいたい。ファイル形式もこちらに合わせて貰いたいのだが、可能だろうか?」
「ちょっと待ってね。・・・グリフィンでも使ってる形式だから問題ないよ。一週間くらいで纏めて送るようにするよ」
グリフィンとSTARSの人形達によるデブリーフィングも終わり、仮設HQの撤収準備が速やかに進められてる。
人形達一同がその役割に就く中、指揮官とウェスカーは今後のやりとりに関しての打ち合わせの真っ最中だ。
「ウェスカーもみんなのところに行ってきたらどうかな? 残りの片づけは俺がやっておくから」
「いや、私も最後まで片づけを続けよう。・・・それに、私は指揮官と話をしていたい」
「そっか。俺なんかで良ければ、いくらでも話に付き合うよ」
演習でお世話になったから、という気持ちではない。普段から戦術人形達と接している指揮官にとって、未だ見ぬ人形と交流できるのはこの上なく楽しみな時間なのである。
「では聞かせてもらいたいのだが。幾人もの戦術人形と接している指揮官から見て、私達姉妹はどのように映るのだろうか?」
「どう見えるって・・・普通の戦術人形に見えるけど」
いきなりド直球の質問を飛ばしてきたウェスカーに対して、指揮官はまず当たり障りない答えを返して質問の意図を探ってみる。
「気は遣わなくていい。私達が特殊な立ち位置の戦術人形であることは承知している。ELIDとの
戦闘を専門に受け持つ私達は、周りからすればさぞ気味の悪い存在に見えるのではないだろうか?」
そういうお話か、と心の中で納得。
ELIDは人間が変異した存在だ。元が人間であるELIDを排除して回っている彼女達を奇異の目で見る人間がいても不思議ではないだろう。
「ん~・・・そうだね。ELIDというのは鉄血とは違う非常に特別な存在だ。できれば関わりたくないと考える者は多いだろう」
「やはり、そうなのだな」
表情は分からないが、声色が心なしか沈んでいるように聞こえたのは気のせいではないだろう。
気丈に振る舞っている彼女ではあるが、内面と表面が同じという事では無いようだ。
「でも、キミ達がどんな任務に就いていようが、それでキミ達の性質が決まるものではないよ。
今日会ったばかりだけど、キミ達3人共とても良い娘だと思うし、こうして話をしていて楽しい。一緒に任務に就いていたグリフィンの2人は、キミに対して怪訝そうな態度をとっていたかな?」
「いや、そのようなことはない。ワルサーも9A91も私に良くしてくれていた」
今の質問はちょっと危なかった。2人とも、本当は素直な良い娘達であることは分かっているが、何分、相手は今日初めて会う人形だ。人見知りを発揮されてウェスカーに悪い印象を与えていたら面目丸潰れな話になっていたところだ。
「それなら良かった。何か、そんな風に考えるような事があったの?」
「ああ・・・実は、クーねぇとバーねぇも気にかけている事なのだが」
聞けば、彼女たちは自分たちの指揮官と会ったことが無いどころか、声を聞いた事すらもないのだという。
任務に関してのやり取りは全てメールで不都合はないのだろうが、それでは彼女達が不安に思ってしまうのも無理は無いだろう。
「そうだったのか。それは確かに不安に思うのも無理はないだろうね。キミたちの指揮官とは話をしただけで会った事はないのだけど」
「会話をしたのか! どのような方だった!?」
指揮官に詰め寄ってくるウェスカーの勢いについたじろいでしまう。
彼女達にとって気になって仕方ない事だ、こうなるのも無理は無いか。
「俺よりもだいぶ年上の男性。話した感じでも分かるくらい厳格そうな、軍人然とした人だったよ」
STARSの組織形態は謎に包まれている。正式軍でもなければグリフィンのような民間軍でもない。指揮官も相手側の代表者と会話をしたというだけの情報しかない。
優秀で厳格な軍人は仕事に私情を挟まない。エッジ三姉妹に対して嫌悪を抱いているどうこう
以前の話として、仕事を仕事として割り切っての対応だという可能性は十分に高いだろう。
「多分、キミ達に会いに来ないのは何か理由があるんじゃないかな。何か俺にも協力してあげられることがあればいいんだけど」
「いや、そこまでする必要はない。我々の指揮官がどのような方か分かっただけでも十分だ」
組織の末端でしかない指揮官がそう簡単にコンタクトをとれる相手ではない。
指揮官がエッジ三姉妹の為にしてあげられることはほとんどない。
なので、指揮官は自分にできる普段通りのやり方で彼女たちへの協力としよう。
「じゃあ、その代わりといったらなんだけど。携帯端末を出してもらえるかな」
「? ああ」
ウェスカーから受け取った携帯端末のアドレスを確認、自分の連絡先を送る。
「それ、俺のアドレスだから何か相談したいことがあったら遠慮なく連絡して」
STARSの上層とは連絡をとれなくても、戦術人形達との連絡に関しては制限されていない。何か言われたとしても、戦術人形部隊の指揮官という立場を利用して言い訳はいくらでもできるので
問題は無いだろう。
「良いのか? 私達なんかにそこまで肩入れして、ロクな事にならないかもしれないぞ」
「今更だね。グリフィンに来た時点ですでにロクな目にあってないから」
「ふふ、違いない」
冗談めかしての言葉だったが、事実だというのも間違いない。
ただ、ちょっとくらい心配事が増えたところで、それで少しでも彼女たちが安心できるのなら、それはそれで指揮官は満足なのである。
「それでは、この資料一式を・・・」
一通り話を終え、ウェスカーがデスクに置かれた資料を抱え上げる。
基地へと送り出す箱に入れようと歩き出した矢先。
「っ!?」
足元に這っていた電子機器の配線に足をとられてしまう。
小柄なのに大量の資料を抱えたおかげで足元が見えなかったのだろう。
「危なっ!」
幸いにも指揮官の手が届く位置。資料は床に盛大にぶちまけられる羽目になったが、ウェスカーだけは上手く空中でキャッチする事に成功する。
基地でもままあるイベントなので、指揮官にとっては慣れっこな動きなのである。
「っとぉ、ケガは無いかな?」
「ああ、大丈夫・・・・・・じゃない!」
お姫様抱っこのような状態になっていたウェスカーは、普段のクールな返答から一変、バネで
弾かれたように指揮官から飛び退くと、両手でサッと顔を覆った。
「さ、ササササングラスは!? サングラスはどこ!?」
そして、まるで性格が変わってしまったかのようにその場で慌てふためいている。
「サングラス? えっと~・・・躓いた拍子にどこかに飛んでっちゃたのか?」
「探してくれませんか? このままでは何も見えなくて」
「そりゃあそうだろうね」
手で完全に顔を覆い隠しているその状態では何も見えるはずも無かろう。
それにしても、態度どころか言葉遣いもまるっきり変わってしまったのは一体、どういう原理なのだろうか?
とにかく、このままにしておくわけにはいかないので指揮官は屈んで近場のデスクの真下を覗き込んでみる。
「任せっきりにしてしまってゴメンなさい」
「いや、構わないけど。眼に問題があるの? サングラスが無いと見えないとか」
「そういうわけではないのですが・・・」
居心地が悪そうにその場で足踏みをしながら口籠るウェスカー。
やたらと恥ずかしそうにしているその姿を見ていると、なんだか悪い事をした気分になってしまう指揮官。
「私、その・・・眼が変で、赤く光るんです。あまり見られたくなくて」
「そうなんだ? でも、他の戦術人形の娘だって、もっと特徴的な娘もいるよ?」
動物のような耳が生えていたり、尻尾が生えていたり、指揮官は気にならなくても本人にとってはコンプレックスとなっている事は色々とあるものだ。
それでも、目が赤く光るくらいはまだまだ可愛いモノだと指揮官は思えてしまう。
「そういうものなのですか。・・・では」
恐る恐るとウェスカーが両手を外す。
「これは変ではないですか?」
M9ベースの人形というだけのことはある。ウェスカーの素顔は指揮官の基地に居るM9にそっくりである。・・・クリスとバートンはかなり違う見た目だという点は今は端に寄せておいて。
眼が光るのがコンプレックスだという話だが、言う通り、赤い瞳がランプのように光を放っている。
暗がりに紛れての潜入任務等には不便だろう特徴だが、やはり、そこまで嫌がるような変な見た目とは指揮官には思えない。
「うん、変なんていうことはないよ。むしろ、すごく綺麗な眼だと思う」
「キ! きききききききれきれきれきれ、キレイぃぃ!!?」
何気ない指揮官の言葉に顔を真っ赤にして慌てふためくウェスカー。
床に這いつくばっている指揮官は、彼女のパニック具合になど気づくはずも無く。
「あ、デスクの足元にサングラスが」
ウェスカーのすぐ傍のデスク下に転がっているサングラスを発見。
這いつくばったままそれを拾いに行こうとした・・・その時だった。
「ちょっと時間いいか~い?」
バン! と勢いよくドアを開け放ち、バートンが入室してきた。
「バートン! 他人の部屋に入る時にはちゃんとお伺いを立ててからにしないと」
正論でバートンを窘めながら続くのはクリスである。
「ああ、ごめんごめん。ついいつもの調子で、ってウェスカーも一緒にいたのか」
「うむ」
顔を上げてみれば、いつの間にかウェスカーはサングラスをかけていつも通りの佇まいに戻っていた。
指揮官がバートンに気をとられている隙にサングラスを拾い上げたというのか。
映像でも確認はしていたが、相変わらずとてつもない速度で動く人形である。
「ん~? ウェスカー、なにか様子がおかしいような気が・・・」
「そのような事は無い。絶っっっっ対に無い」
普段通り堂々としているウェスカーだが、姉妹にしか分からないような些細な違いがあったのだろう。それを指摘するバートンだが、ウェスカーは完全否定の構えである。
いくら姉妹でも知られたくない事もあろう、ウェスカー本人が隠したいのであれば指揮官としても何も言うまい。
「そうですか? ならばいいのですが。ところで、指揮官さんはなぜ四つん這いに?」
「落とした資料を拾っていたんだ。それで、2人とも何か用事かな?」
指揮官が立ち上がったところで話が切り替わる。
視界の端で、ウェスカーがホっと息をついたのが見えて笑いそうになってしまった指揮官である。
「実は、スパスさんの件で指揮官さんも含めてお話がありまして」
「スパスの件で話し?」
任務に出ていなかったので彼女達と直接的な絡みは無かったスパスだったが、先ほどの交流会で何かやらかしてしまったのだろうか? などと思案する指揮官。
「しきか~ん。STARSの娘達が話しあるからって言うから、スパス連れてきたよ~」
「うぅ~・・・私、何かマズイ事やっちゃったのかな?」
そこへ、スパスを引きつれて45がやってきた。
話の渦中であるスパス当人も、なぜ呼び出されたのか分からず困惑顔である。
「んで、スパスを呼び出したのは何でなの?」
「それをこれから聞くところ。どういう内容なんだ、クリス?」
「お話というのは他でもありません。先ほど、スパスさんが作成した対ELID弾の事なのです」
「「「あぁ~~~」」」
3人揃って納得の声をあげる。
そういえばそんな事もあったね、とあまり気にも留めていなかった指揮官達である。
「な、なんだか皆さんあまりにも平然としていますけど、あれは私達にとっては凄い発明なのですよ?」
「そうそう、これまでは大火力で吹っ飛ばすのが一番手っ取り早いやり方だったのに、45口径弾であんな威力を見せられたらさ」
「私達STARSも別部隊の仲間もこれまで以上に任務の遂行が安全になる、素晴らしい発明だ」
「だってさ。ベタ褒めじゃない、良かったわねスパス」
「えへへ~、そこまで言われると本当に照れちゃうな~」
45もスパスも特殊弾の功績を褒められたことで素直に喜んでいるが、指揮官はそうではなかった。
スパスの功績を高く評価した上で、指揮官を交えて話がある。
それがどのような内容なのか? 指揮官のように多くの部下を抱える立場の人間であれば、予想するのはそれほど難しい事ではない。
「この事を指揮官に連絡したところ、是非、私達の組織に加わってもらいたいとの返答が来ました」
「え? それって・・・私に移籍してほしいってこと?」
2人の表情が一変して曇る。
指揮官は予想通りの話になった事に、内心で小さく頷くだけ。
「はい。基本は兵器開発部でのお仕事になりますが、一線でELIDと戦う状況になる事もあり得ます。その際は私達がしっかりとサポートしますので、どうかご安心下さい」
「あの、えっと・・・それは嬉しいんだけど・・・」
クリスと指揮官を交互に見やって、スパスは混乱の真っ只中といった様子。
このように、任務での功績を買われて別組織からスカウトされるなど、グリフィンではめったにない事だ。どうしていいか分からないのも当然だろう。
「移籍というのは良い話だけど、スパスの身柄を預かる身として確認させてもらいたい点がある」
「はい、何なりと」
「彼女にも生活がある。そちらに行っても少なくともグリフィンと同等、もしくはそれ以上の待遇は約束されるのかな?」
まず確認すべきはそこだ。せっかく移籍しても、その先でまともに生活できないのでは意味が無い。
対ELID特殊部隊STARSを抱える謎組織の規模を探るにも良い機会である。
「すぐに確認しますので、少々お待ちください」
クリスが携帯端末を操作する。
チャットで繋がっているのか、指揮官からの答えは数秒と待たずに返ってきたようだ。
「差し支えなければ、現在のグリフィンでの待遇をお伺いしてもよろしいですか?」
「俺から教えても良いかな、スパス?」
「うん、お願い指揮官さん」
指揮官も軽端末を取り出して、現在のスパスの待遇を確認する。
給料、休暇日数、福利厚生、おおよそ人間が労働するに際しての対価と同じ要素をクリスへと
伝えた。
スパスは大人しく素直な性格で指揮官は元より仲間たちからの信頼も厚い。
戦闘ではショットガンという立ち位置で第一線で臆することなく活躍してくれているし、銃器のメンテナンスやカスタム等のサポート面も非常に優秀だ。
指揮官が付けている評価査定のランクも高く、待遇はそれなりに良い方。
「・・・お給料は少なくとも2倍の額をお約束するそうです。勤務時間は現在と同じ、休暇も2倍近く設けられるようです。それからそれから・・・」
だというのに、相手側はそれを遥かに上回る待遇を準備できるご様子。
クリスの話が進むに従って、段々と表情が青ざめている45とスパスに対し、エッジ達は平然とした表情。
新人のスパスでさえこれだけの待遇を用意してもらえるのだ、彼女たちがどれほどの待遇を与えられているのか、指揮官でも怖くて想像したくなくなる。
「以上がこちらの提供する条件になります」
「おいおい、凄いな。大出世じゃないか、スパス」
「ちょっと指揮官! 何をそんな他人事みたいに」
45が指揮官にくってかかろうとして、そこで何かに気が付いたようで矛を収める。
これはスパスと指揮官の、部下と上司としての話だ。そこに自分が口を挟むのはお門違いだと、寸での所でそう気づいてくれたのは副官として素晴らしい成長だと言えるだろう。
「うん、そう・・・だね。クリスちゃん達の所に移籍したら、今よりももっと良い生活ができそう」
そう言う割には、スパスは浮かない表情だ。
今までの生活がガラリと変わってしまうこれは、彼女にとって非常に重大な決断。その事はしっかりと理解できているようだ。
「指揮官さんはどう思う? 私、移籍した方がいいかな?」
「ん、スパスの生活を考えるのなら、行った方が良いかなと思う。正直、これだけの好条件は
グリフィンにいたら絶対にあり得ないし、この機を逃したら、次にまた周ってくるという保証も無いよ」
言ったように、指揮官はスパスの上司であり、保護者の代わりのようなものだ。彼女のこれからの生活を考えるのであれば、移籍には賛成すべきだろう。
・・・ただ、それはあくまでも指揮官の立場からの言葉であり、指揮官自身の気持ちは少し違ってて。
「でも、俺はキミに残ってもらいたいと思ってる。部隊戦力としても、技術力としても頼もしいし、何よりも、キミがいなくなったら銃の話ができる仲間が減っちゃうから」
やっぱり、ガンマニアとしての性質は抑えられないのである。
「そっか・・・えへへ、指揮官さんがそう言ってくれるなら。ごめんね、クリスちゃん。私、
グリフィンに残ることにするよ」
「待遇が不満というのであれば、もう一度指揮官に確認をとってみますが」
「ううん、お給料の問題じゃなくて、指揮官さんが私を必要だって言ってくれたから。私は
グリフィンで、指揮官さんと一緒にお仕事をしていたいの」
スパスの様子に迷いは見られない。
それを悟ったクリスも、それ以上スパスを誘う言葉は出せなかった。
「あ~あ、フラれちゃったね、姉貴」
「本当に残念です。他の戦術人形の方ともっと仲良くなれると思ったのに」
クリスとしては、部隊員以外にも友達ができることを期待してのだろう、かなり残念がっているご様子。
でも、なにも同じ組織に所属しているから友達というわけでもない。
先ほど、ウェスカーに連絡先を教えたのもこれからそれぞれの管轄に戻っても繋がりが途絶えてしまわぬ事を期待してのものだ。
「移籍は出来ないけど、でも、技術協力はできたらいいなって思ってるの。ねえ、指揮官さん、それくらいならやってもいいでしょ?」
「もちろん。技術協力に関してはグリフィンからSTARSの上層にかけあってみるよ。さっき、
ウェスカーに俺の連絡先を教えたから、キミ達の方から連絡をとりたい場合はそれを使って」
「ウェスカー、指揮官さんと連絡先を交換したのですか!?」
「マジか!? 普段は大人しいくせしてやるじゃん!」
「大したことではない。クーねぇもバーねぇも落ち着いてほしい」
2人から思いっきり詰め寄られるも平然とした態度で返すウェスカー。
しかし、チラリと指揮官の方を見やったサングラスの向こうに、恨みがましい目が見えたのは気にしない方向で一つ。
「命拾いしたわね、指揮官」
指揮官の横腹を肘で軽く突きながら45。
「スパスを引き留めてなかったら、あなたはこの場でハチの巣にされていたところよ。この私の手によってね」
「それは穏やかじゃないね。今こうして生きていられる事に感謝しなきゃ」
45とて、本気で言っているわけではない。これは、スパスの移籍話を上手く納めてくれた
指揮官に対しての彼女なりの誉め言葉として受け取っておこう。
「ありがとう指揮官さん。私のこと引き留めてくれたの、すごく嬉しかったよ」
「私達、戦術人形にとっては最高の殺し文句だものね。ああ言われちゃあ、留まるほかないわよ」
「とはいえ、あれだけ良い話なんて本当に少ないからね。引き留めちゃった分の埋め合わせはちゃんとするから」
「いいよ、そんなことは。また指揮官さんと銃のお話ができるだけで私は十分。ああ、そういえば移籍しちゃったら指揮官さん用のカスタムプランも白紙になっちゃうところだったんだよね」
「そうだったぁぁ! 良かった! 引き留めておいてマジで良かったよぉ!」
「このガンオタめ」
指揮官達とクリス達、双方の話が落ち着きを見せたちょうどその時、テントの外から近づいてくるヘリのローター音に気が付く。
まだ、グリフィン側は撤収作業を終えていないので、これはSTASRを回収するために派遣されたヘリだ。
「迎えが来たみたいですね。さぁ、最後に忘れ物が無いか確認して、私達はお暇いたしましょう」
とはいえ、墜落するヘリから着の身着のままで飛び降りてきた3人だ、大した荷物があるわけも無いのでスッキリとしたものである。
すでに見送りの為に外に出ていたグリフィンの人形達の前に、ヘリがホバリング状態からゆっくりと降下を始める。
「帰りは大丈夫なの? ここに来た時、なんか不穏なこと言ってたけど」
どうやら、STARSが乗るヘリはなんだか知らないけど墜落するとのこと。
今回も原因不明の墜落に備え、人形達は目下警戒中である。
「はい、全てが終わった後の帰りのヘリコプターは大丈夫なのです」
「そう・・・なんだ? それなら良かったよ」
どうして? という質問はしない。この世には、常識では考えられないことが山ほど存在するのだ。これもそのひとつだと割り切る境地に指揮官は到達できたのである。
広場に着陸したヘリに3人が乗り込む。
グリフィンの戦術人形とは少し変わった雰囲気の娘達だったが、一緒に過ごした時間は僅かでも楽しかった。
また会える機会だってあるだろうに、それでも寂しさを感じえないのが分かれというものである。
「しきか~ん、拠点に帰ったら連絡すっからね~」
「バーねぇ、私が連絡先を貰ったのだから、私が先だ」
「では、みんなでお話しできるグループルームを作りましょう。指揮官さんも入っていただけますか~?」
「もちろん。招待してくれるの待ってるよ~」
上昇していくヘリに乗った笑顔のSTARS手を振って返す。
クリスが言った通り、ヘリは問題なく上空へ戻ると、あっという間に明後日の空へと消えていったのである。
「ホント、無茶苦茶な戦術人形もいたものね。まぁ、悪くない奴らだったけどさ」
「お別れは少し寂しいものです」
「そんなに寂しがらずとも、任務に就いていればいつかまたきっと会えますわ」
「でも、それって私達がELID掃討任務に就いてれば、って前提よね?」
「アイツらと会うのは良いけど、私はその任務だけはもう勘弁だわ」
「わ、私もできればELID戦はご遠慮願いたく・・・」
思うところはそれぞれとはいえ、皆、STARSと上手く交流を図れたことが今回の何よりの成果である。
この結果報告次第では、また彼女達と会える日もそう遠くは無いのかもしれないと指揮官は思っている。
「さぁ、こっちも撤収準備を進めよう。あと一時間もしないでヘリが来るはずだからね」
お別れムードはこれくらいにして、今はやるべきことをする。
設備機器とテント片づけの残りをこなして、撤収作業は完了。
「? ねえ指揮官、あれ・・・?」
と、これからの動きを考えていた指揮官の耳に届く45の声。
テントを敷いている敷地の外、45が指さす方向に目を向けてみると、旧市街地のメイン
ストリートを指揮官たちの元へ向けてヨタヨタと歩いてくる一体のELIDの姿。
今回の任務で大きな群体は殲滅したとのことなので、単体で行動していたELIDが現れたのだろう。
「まだスパスの特製弾残ってるし、やっちゃおうか?」
「あんな遠くにいるんだし、これ以上近づいてこないなら手を出す必要もないよ。それよりも片づけを」
「し、指揮官? あちらにもELIDがいらっしゃるようなのですが」
「ちょっと、こっちの方角にも2体いるんだけど」
「向こうには4体視認できます。これは・・・」
各々、別の方角を指してELIDの姿を確認している。
それも、ただうろついているのではなく、向かう先は一律に指揮官たちのいるHQ。
「くそっ! 完全包囲されてんじゃないのよ!」
「どこに隠れてたのよ? ってか、数がどんどん増えてるし、手をこまねいてても仕方がないわね」
「ししししし指揮官殿ぉ! ど、どうしたらよいでしょうかぁぁ!!?」
どうするもこうするも、すでにHQは360度、ELIDの大群に包囲されてしまっている。
「考えてる暇があったら戦闘準備よ! 総員、STARSから学んだ技術を見せてみなさい! でいいかしら、指揮官?」
指揮官とスタッフで撤収準備を済ませヘリが迎えに来るまで、ELIDの進行を抑えきる。
45の言った通り、今さっき対ELID戦のエキスパートから学んだ技術を発揮する時だ。
「ヘリが来るまでおよそ一時間。それまでの間、今の戦線を維持してくれ。各員、無茶はせず補給のタイミングを考えて戦う事」
了解、と一同が揃って返答する。
ついさっきまで慌てていたものの、指揮官の号令で一瞬にしてスイッチが切り替わるのは、流石グリフィンの戦闘部隊といったところ。
「エンゲージ(戦闘開始)!」
死の街に再び銃声が木霊する。
命無き人形達が奏でるそれは死者へのハナムケのようで、遠く遠く、天国まで届くかのように
空に響き続けるのである。
END
ELIDだゾンビだとかは本当はどうでもよく、単にサムライエッジをドルフロで出してみたい!
コンセプト(欲望とも言う)のもと考えた今作、お楽しみいただけましたでしょうか?
バイオは銃器の設定にこだわっている作品なので、ドルフロ好きでバイオ好きという方も結構多いのかなと思います。
サムライエッジは特にバリエーションが多いので、扱う人物に則ってキャラ作りできたのは楽しかったですね。
サムライエッジだけでなく他のカスタムガンも存在するので、そっちも使えたらな~、なんて思ったり。
ともあれ、サムライ/ドライブを最後まで読んでいただいてありがとうございました。
今後はしばらくのお休みを貰って、また新しい作品を投稿予定ですので、その際にまたお会いしましょう。
以上、弱音御前でした~