ドールズフロントライン ~サムライ/ドライブ~ 作:弱音御前
どうも、弱音御前です。
サムライ/ドライブ第3話、クリスチームのお話の続きになります。
ELIDにいいようにやられたネゲヴと57。手助けに入ったクリスの実力やいかに? といったところで、本日もどうぞごゆっくりと~
仮設キャンプ兼HQ
「おぉ・・・これは」
まずELIDと接敵したのはクリス率いるネゲヴと57のチーム。
イヤリングの映像の中で、クリスが手にした銃の映像をピックアップ。それを画像処理し、
3Dモデルとして構築する。
PCディスプレイに映し出されたそのモデルに、指揮官の眼はもう釘付けだった。
「あの娘達、ベレッタM9のカスタムモデルだったんだね」
指揮官と並んでディスプレイを覗くスパスも興味深々な様子で、小脇に抱えているスナック菓子を口に運ぶ手も捗っている。
ウザカワなチビッ子、ベレッタM9とあのサムライエッジ3姉妹はベースモデルが同じとは思えないくらい容姿が違うが、それはIOPの戦術人形にはよくある事だ。
ベースモデルを同じくする、M1911ガバメントとグリズリーなんかも良い例である。
「いやぁ、改めてみるとやっぱりM9はカッコいいよな。このスライド部分の見た目がたまらない」
「ブリガーディアスライドだね。バレル上部が剥き出しになってる独特のデザインは私も好きなんだ」
「政府組織正式採用のハンドガンだったから性能も折り紙付きで、使用する9ミリ弾は他の銃器とシェアしやすい。広く出回ってたから、拡張性も高い傑作拳銃だな」
「なによ、そんなに褒めるくせに指揮官自身はガバメント使ってるじゃん」
ここで、目元を拭いながら45が話に参加してくる。
つい今まで、ネゲヴがELIDにいいようにやられている映像を見て狂ったように笑い転げていた、薄情者の副官である。
「いやぁ、性能は良いんだけどグリップが分厚いから握りづらくてな。ガバメントはその点で一番しっくりくるんだよ」
「指揮官さん、体格が大きいほうじゃないからね。ガバメントとM9の好き好みはそこで別れる人が多いみたい」
「でも、これだったら使ってみてもいいと思っちゃうな。シンプルなカスタムだけど、色合いは
凄く良い。シルバーのバレルに、グリップカバーは木とラバーの混合なのかな? あの娘達の部隊のメダリオンがあしらわれてるってのもイケてる」
こうなってしまったら指揮官の話は止まらない。
一人でブツブツと言っているだけならまだしも、本日は心強い同好の士がいるのだ。
「その他にも、特徴的なカスタムがされてるんだけど、指揮官さん分かる?」
スパスもカスタムマニアであると同時に、相当なガンマニアだ。
2人が揃ってしまったら、お話はもうどうにも止まらない。
そうして、お話に入っていけず、のけ者にされてしまったことが気にくわなくて仕方のない45がそこに居るのである。
「まだ何かあるのか? ・・・見た目に分かるのは、スライドが使い込まれてる感じするなってくらいだけど」
「そう、このスライド、マットブルーフィニッシュされてるんだよ」
「マットブルーフィニッシュ。確か、薬液に漬けて防塵性の高い膜を張るんだっけか? 言われてみれば、角度によっては青っぽく見えるな」
「その他にも、ちょっとした効果があってね・・・」
スパス曰く、スライド表面の艶を抑えることで、射撃時に光の反射が目に向かうのを防いだり、と小ネタが盛りだくさんなのだが、あまりにもディープなお話になってしまうので、ここでは
バッサリと割愛させていただく。
「余計なパーツは纏わない、ストイックな射撃のプロ仕様ってとこか。なるほど、それなら、この異常なまでのヘッドショット率にも納得がいくよ」
あらかた、サムライエッジの分析を終えた指揮官は、再び57とネゲヴのカメラ映像へと目を向ける。
再びクリスチーム
銃声の数だけ血肉が頭上に降り注ぎ、その数だけELIDの身体がバタバタと倒れていく。
幾つもの任務をこなしてきた57といえど、すぐにでも脱出したいほどの惨状だが、今動いたら絶対顔にこれらを浴びる羽目になると分かっているので、大人しく伏せておいて、目線だけは可能な限り上げておく。
それはもちろん、STARS所属サムライエッジ3姉妹、長女クリスの手際を目に焼き付けておくためだ。
携えている銃はベレッタM9か。見た目はそれほど手の込んだ改造が施されているわけではなさそう。銃声からして、使用している弾薬も標準の9ミリ弾だ。
しかし、そんな小型火器ながらELIDを倒しまくっているのは、ヘッドショット率が異常なまでに高いせいだ。
(走りながらだと照準がブレるだろうに、何だってあんな当たるわけ?)
M9の装弾数は15発。マガジン1本で15体ものELIDを倒している計算だ。
ネゲヴがベルト弾薬1本あたり5体も仕留められなかったことを考えると、これがどれだけ効率の良い事か。
銃の性能ではない。57としては悔しい事だが、射撃能力の決定的なまでの差だ。
「8時方向をクリアにします。お2人ともそこから離脱を」
高速でリロードを終えたクリスが指示を送る。
言われた方向のELIDの気配が消えたところで、這いつくばりながら離脱を試みる。
「いつまでもこんなとこに居られないっての! 先に行くわよ!」
地面に転がるELIDもなんのその。ネゲヴはそれらを器用に掻き分けながら、我先にと匍匐で突き進んでいく。
「ホント調子いいわね、あの桃色は」
今日、ここまで過ごしてきた僅かな時間で57のネゲヴに対しての評価はダダ下がりである。
間違っても、Valkily小隊に編成されて面倒を見ることになりませんように、と57は切に願う。
クリスが派手に銃声を鳴らしているおかげでELID達の注意が逸れ、57とネゲヴはすんなりと
包囲網から脱出することができた。
ようやく血肉の雨から解放され、遮蔽物に潜んだところで本当に心から安堵の息をつく2人。
「もう、体中ベタベタのドロドロじゃない。私、ELID退治なんか金輪際やりたくないんだけど。
そのタオル、私にも貸しなさいよ」
「イヤ。自分で持ってこないのが悪いんでしょ、馬鹿ネゲヴ」
すっかりヤル気を無くしてしまったらしいネゲヴはさておき、タオルで身体を拭きながらも、
57の目はクリスの方へ。
57達を逃がし終えたクリスは、ジリジリと後退してELIDとの距離を保ちつつ、的確に迎撃を
続けている。
しかし、いくら手際が良いとはいえ、ELIDの数は圧倒的だ。
今までどこに潜んでいたのか、クリスの背後、後退していく先にもELIDの集団が姿を現しているのが目に付いた。
「クリス、背後にもいるわよ!」
手は出せない代わりに言葉で援護する57。
その声を受けて、クリスがニコリと微笑む。
どうやら、ELID退治のエキスパートに対しては要らぬ心遣いだったようだ。
背後を見もせず、クリスは左腕の下を通すように腕を回し、銃口を背後に向ける。
そうして放たれた1発の弾丸は、しかし、ELIDの集団の横へ逸れた弾道を描く。
ELIDを倒す為ではない。弾丸の行く先は赤錆まみれのドラム缶だ。
弾丸がドラム缶に直撃した瞬間、耳を劈く爆音と共に眩い炎が巻き上がった。
「っ~~!」
「おわぁっ!?」
爆炎に巻き込まれ、クリスの背後にいた集団は丸焼きだ。
背後で燃え盛る炎を一瞥し、クリスは再び正面の敵の掃討へ戻る。
「ふぅ、少し数が多いですね」
ポツリとクリスが呟いたのが見える。
いよいよクリスに手を貸してあげた方がいいか、と57も思うが。
「弾が勿体ないので、手段を変えましょう」
追い詰められているわけではなかったようなので、やっぱり引っ込んでおいた方が良さそうである。
銃をホルスターに納め、代わりにクリスが引き抜いたのは一本のナイフ。
刃渡りは20センチ弱。鈍い銀色に輝く、片刃タイプのコンバットナイフだ。
「ふっ!」
短く、強く呼吸を一つ。同時にELIDの懐へと踏み込むと、逆手に持ったナイフを額へと突き立てた。
刃の根元まで深々と突き刺さり、切っ先が後頭部から飛び出している様を遠目に、57は思わず顔をしかめる。
身体を蹴とばし、ナイフを引き抜くとクリスは次の標的に目を向ける。
クリスを捕まえようと伸ばしてきた腕をナイフ一振りで切断。
まるで、空を切っているかのように滑らかな切れ味だ。
振り切った体勢から構えを直すと、今度はELIDの首を狙って一閃。
ゴトリ、と切断された頭部が地面に転げ落ちる。
クリスの動きはそれだけに留まらない。
ELIDの群れの隙間を優美に、踊るようにすり抜けるクリス。
彼女が通ったその道筋を大量の血飛沫が彩っていく。
「あの娘、銃必要ない系ね」
「ってか、銃が無い方が強い系だわ、あれ」
数十体は居たELIDを瞬く間に薙ぎ倒すと、そこでようやくクリスが足を止める。
赤黒い血にまみれたナイフを空振りして血を払う。
残った血を拭おうとしてそこで、仕留め損ねたELIDが足元で蠢いているのが目についたようだ。
眉ひとつ動かさず、クリスは足を振り上げるとELIDの頭を相手のゴールに向かってシュート。
超エキサイティングである。
「おまけに容赦ない系」
「大人し気な見た目のクセにエグイわね」
ちょっとイラついている時なんかは、鉄血人形相手に似たようなことをやっちゃったりもする
2人だが、そんなことは棚に上げてヒキ気味である。
「ネゲヴさん、57さん、お怪我はありませんか?」
ジャケットの裾でナイフの血を拭いながら、クリスは涼しい表情を向けている。
足元に広がる死屍累々のギャップが凄すぎて、ちょっとリアクショが遅れてしまう2人。
「うん、平気」
「腐った血とか肉片を浴びて大変だけどね」
「ふふ、何事も初めては大変ですよね。何回かこなしてけば慣れますよ」
できれば、こんなめに遭うのはもう御免願いたいとこだが、さすがにクリスに対して失礼だろうと、苦笑いだけ返しておく57。
「こんなドロドロになる任務、もうゴメンなんだけどさぁ」
「ぁ、ごめんなさい。私ったら、押しつけがましい事を・・・」
「気にしないで良いわよ、クリス! これは私達の間での、その・・・グリフィン流ジョーク
だからさ! あはは~」
ウンザリした様子で呟いたネゲヴの言葉を聞いて、しゅんとなってしまったクリスを見てすかさずフォローを入れる57。
もちろん、クリスに見えないようネゲヴに蹴りを入れておくことも忘れない。
「そう・・・なのですか? 私の教えはお役に立てたでしょうか?」
「そりゃあもう、良い経験になったわ」
「まぁ、それなりには役に立ったかな」
「でしたら、満足していただけたのなら良かったです」
胸を撫で下ろしたクリスを見て、57も内心でほっと一息。
せっかく教官として色々と面倒を見てくれているのに、ここで57達が下手をしてSTARSに対してのグリフィンの評価を落としてしまうのは避けたい。
イヤな事でも、少しは我慢して体面を繕うのも仕事には必要な事である。
「さぁさぁ、あちらの方にもELIDの大群が控えていますよ! 今度はお2人で半分は倒してみましょう!」
まるで休日を楽しむ子供のように、軽い足取りでELID満載の路地を突き進んでいくクリス。
「悪気の全くない迷惑ほど迷惑なものってないわね」
「愚痴ってないでなんとかしなさいよ、スペシャリスト」
「何よその言い方? どいつもこいつも、スペシャリストをなんだと思ってんのよ」
「アナタがスペシャリストスペシャリストうるさいからでしょ? 大体さぁ・・・」
ブツブツと言い合いながらも、足並みを揃えてクリスの後に続く57とネゲヴ。
指揮官の元で同じ志を持つ者同士、口喧嘩しながらも結局は気が合うに違いないのである。
バイオハザードの作中に出てくるベレッタM9改サムライエッジ。STARS隊員用にカスタムされているので、隊員毎に仕様も違っています。
今回登場したのはクリスモデルですね。他のしようと違ってスタンダードモデルに近い仕様ですが、それもかえって渋いところかなと思います。
このような感じで、バートンとウェスカーのお話も進んでいく予定です。
残りの2モデルがどんななのかお分かりの方もいるかと思いますが、どうか続きもお楽しみいただければ幸いです。
それでは、次週の更新もお楽しみに。
どうか良いお年を、弱音御前でした~