ドールズフロントライン ~サムライ/ドライブ~ 作:弱音御前
どうも、弱音御前です。
サムライ/ドライブ、本日は折り返しとなる第5話です。
姉御気質のバートンとファマス、タボール組のお話の後編ですね。
クリスの時と同様に、まずはガンオタ指揮官とスパスのやり取りからスタートということで。
本日もごゆっくりとどうぞ~
仮設キャンプ兼HQ
「スパス~! すごいの出てきたから、早くこっち来て!」
「どうしたの、指揮官さん!?」
指揮官の呼びかけを受け、お昼ご飯前のおやつを貪っていたスパスが駆け付ける。
そうして、クリスの時と同様に2人揃ってタボールのカメラが映すモニターに目を向ける。
「ほぇ~、指揮官さんの言う通り、これはまたスゴイの出てきたね~」
スパスの目が好奇心で輝いているのが指揮官にも分かる。
同時に、指揮官自身の目も同様にそうなっているのは自分では気づかないものである。
「こんな派手なコンプ初めて見たよ。クリスの銃とモデルは一緒でも、随分と印象が変わるよな」
コンペンセイター、通称コンプは銃のマズルに取り付けられるカスタムパーツだ。
発砲の際に吹き出す燃焼ガスを利用し、銃の反動を相殺することを目的としたパーツで、
マズルブレーキとも呼ばれる。
「上部に2つくらいのポートが開いてるのが普通なんだけど、大型サイドポートも合わせて
4ポート。おまけにレール一体型だから大迫力だよね。バートンちゃんの見た目にピッタリな
銃かも」
レール一体型コンペンセイターが取り付けられたM9は、ベースモデルとは比べ物にならない
ほど大型だ。おそらく、指揮官ですらも慣れるまで取り回しに苦労するほどだろう。
バートンは姉妹の中はもとより、他の戦術人形と比べても大柄な方だ。
彼女が銃を構える姿は非常にサマになっている。
「それにしても、コンプが付いただけでこれだけ威力が変わるものなんだな。クリスの時と比べてELIDが派手に吹き飛ばされてるように見える」
「弾道が安定するから威力が上がるのはその通りなんだけど、こんなに変わるものかな。
・・・ん~? 指揮官さん、バートンちゃんの銃、マズルの部分だけをズームできる?」
「できるよ。45、よろしく」
「は~いはい」
完全にほったらかしにされていた、モニター操作係45が嫌味を込めた返事を指揮官に送って
やる。
しかし、スパスと一緒にモードに入ってしまっている指揮官にはそんな嫌味も効きやしないのである。
「・・・・・・やっぱり、これ普通のM9じゃないよ。M96だ」
「M96って、マシンピストルのモデルだったっけ?」
「指揮官さんが言ってるのはM93かドルフィンの事かな。M96は40口径仕様の銃だよ」
「ベレッタの40口径モデルなんかあるの!?」
ガタッ! という擬音が似合いそうなくらいの食いつきようをみせる指揮官。
これでまた2人の話が盛り上がっちゃうのが、実に気にくわない45である。
「ベレッタっていえば、9ミリ弾の代名詞みたいなところがあるからね」
「40口径とはまたマニアックな弾を使うよな。うちの基地でも40口径弾を使う娘は少ない」
「9ミリと45口径の中間、両方の良い所を持ってるともいえるし、どっちつかずともいえるよね。この弾丸が開発される経緯には色々とあったみたいで・・・」
そうして、スパスの銃器トリビアから2人の話が盛り上がっていく。
すぐ傍にいるのに、まるでバリアでも張られているかのような近づきがたい空気を感じてしまうことが、また45の神経を逆撫でする。
「弾丸の威力が上がることで反動も大きくなる。それを抑えるための大型ブレーキっていうことだね。やっぱり、見た目の良い銃は」
「性能も良い。それな」
パチン、と上機嫌にハイタッチを交わす指揮官とスパス。
そんな2人をチラリと見やり、45は小さく溜息。
「私の銃に合うマズルブレーキとかあるかな? それも、カッコいいの」
膝の上に乗せた携帯端末でこっそりと検索。
悲しいかな、汎用部品ですらも合う物が無い事が分かって、指揮官に見えないよう45は
人知れず頬を膨らませて拗ねてみせるのだった。
再びバートンチーム
「そぉら!」
バートンの振り回した鉄パイプがELIDの頭を抉り飛ばす。
傍にいた数体のELIDも同じ運命を辿ったところで、使い物にならなくなったパイプを放り捨てると、今度は傍に転がっていた木製の椅子を拾い上げて目前のELID集団へ向けてぶん投げる。
「ストラ~イク」
高速で突っ込んできた椅子の直撃を受け、ボウリングのピンよろしく倒れ込んだ敵に向けて銃で追撃。トドメを刺すや、お次は電光看板を拾い上げて振り回し始める。
ELIDの大群を前に一騎当千の大立ち回りをみせるバートンの様子を、ファマスとタボールは言われたままに大人しく見学している。
「タボール、あれ参考になりますか?」
「難しい質問ですわ。だって、あまり銃を使っていないんですもの。私よりも、むしろファマス
さんの方が参考にした方が良いのではなくって?」
「近接戦闘という点では参考にしたいのは山々ですが・・・あれは、ただ力任せに暴れ回っているだけですからね」
グリフィン基地には、指揮官の教える近接格闘術を会得している人形が何人か在籍している。
ファマスもその一人で、中でも上位に入る腕前である。
力の流動を利用し、その人形が発揮できる以上の力生み出して相手を組み伏せるのが指揮官流
近接格闘術の基本だ。
比べて、バートンがいま行っている近接格闘は、自分が持ちうるパワーの全てを振り回して敵を薙ぎ倒す、非常に荒々しいもの。
その根底からして全く違うので、ファマスにとっても参考になるとは言いづらい。
ただ、どの部分を狙えば効率よく仕留められるか、という点はしっかりと見ておいて損はないだろう。
「というか、さっきはあんなにビビっていたくせに、今は随分と落ち着いていますのね」
「ええ、まぁ、こっちに来ないと分かりきっていますので」
「随分と都合の良い恐怖症ですこと。・・・ファマスさん、後ろにELIDが!」
「ふゃあぁあぁぁ!!?」
タボールの言葉を聞いて、反射的に身体を投げ出す。
行く先に座っていたタボールにがっしりと抱き着いたところで、タボールが卑しい笑みを浮かべているのが目に付いた。
嵌められた、と気付いて顔が熱くなるのを感じるファマス。
「タボール、よくも・・・よくもぉぉ~」
「さっき、私に戦闘を任せっきりにしやがったお返しですわよ」
そう言われてしまっては何も反論できず、拗ねた表情のままファマスはタボールから身体を
離す。
「お~い、終わったぞ~。2人とも無事か~い?」
時を同じくして、掃討を終えたバートンの声が聞こえてくる。
「ええ、無事ですわよ~。って、あの人の周り凄い事になってますわね」
「あ、あまり足を踏み入れたくない状態なのですが・・・」
バートンの周囲は倒したELIDだらけ。ピクリとも動かない個体は良いとして、未だに細かく痙攣を起こしているようなのも何体か転がっているその中に足を踏み入れるのは、ELID初心者の2人にはまだ少しレベルが高いのである。
「この奥にもまだ集団がいそうだから、先に進もうか~」
そんな2人の気持ちなどいざ知らず、バートンは足元のELIDなど意にも介さず歩きはじめる。
ELIDが敷き詰められたエリアを早足に迂回し、ファマスとタボールはバートンの背中を追いかける。
「銃撃もさることながら、近接戦闘も優秀なのですね。他の2人もそうなのですか?」
「ウェスカーは一撃必殺が信条だから格闘戦はやらない。姉貴は格闘戦もやれるよ。でもって、
アタシよりも強い」
「バートンさんより強いって、どんなのか想像できませんわね」
「姉貴はナイフの名手なんだ。〝百人斬り〟ってアタシ達の中で勝手に伝説にしてるんだけど、
ナイフ一本で三桁のELIDを倒した事があってさ。それも、途中でナイフが半分折れてもそのまま
続けてたんだぜ? ホント、あり得ないっしょ?」
今しがたバートンの暴れっぷりを目の当たりにした2人には、インパクトのあまり強くない話だが、当の本人は非常に楽しそうだ。これまで話をしていた中でも一番良い表情をしている。
「お姉さまの事が大好きなのですね」
「もちろん! 強いし優しいし頭も良いし、最高の姉貴だよ。・・・でも」
途端、バートンの表情が僅かに陰る。
「姉貴は私達のスタンダードモデルだからって、何をするにも私達より控えめなんだ。本当は、
今日のブリーフィングだって姉貴に仕切って欲しかったのに」
バートンの話にファマスとタボールは静かに耳を傾ける。
「だから、グリフィンのみんなにも姉貴の凄さを知ってもらえば、姉貴ももっと自信をもってくれるんじゃないかって、そうウェスカーと話してた」
クリスと一緒に任務に就いているのはネゲヴと57だ。ひねくれ者のネゲヴはともかく、57はFALと一緒に居る割には常識人なので、クリスの事をきっと良く評価してくれることだろう。
「しかし、あなたの戦闘技術も確かなものです。改めまして、ご指導よろしくお願いします、
バートン」
「ホンッットに調子のいい性格してやがりますわね、ファマスさんは。さっきまで私の背後で
ビビって震えていたくせに」
「まっかせといて! 夕方までには一個群体を蹴散らせるくらいにしたげるから」
「い、いや・・・さすがにそれはちょっと・・・」
「んじゃあ、次はあそこにいる集団をやっつけてみよっか」
3人が進む通路の先、戦闘によるものだろう崩落の大穴の手前で立ち止まる。
大穴の先はモールの地下フロアだ。バートンが指さす先に目を向けると、薄暗いフロアに
ノソノソと彷徨うELIDの集団が視認できる。
「あらあらまあまあ、見える限りでも相当な数ですわね」
「ひぇぇ~~」
ついさっき相手をしたものとは比べ物にならない数を目の当たりにして、ファマスは再び怖気
づいてしまう。
表情には出さないが、タボールも少しビビってしまいそうなくらいの数だ。
「今度はファマスも頑張ってみよっか」
「ふえ? ちょ、バートン!?」
まだ落ち着いていないのもお構いなしに、バートンがファマスを担ぎ上げる。
流石のパワー。さながら、丸めた毛布でも担ぐかのように楽々と、だ。
「タボールはここにいて、アタシ達の援護射撃をよろしくね」
「イエッサー、ですわ」
「待ってください! あんな大群の中に2人で降りるなんて自殺行為ですって! タボール、貴女もなんとか言ってやって下さい!」
手足をバタバタと振って暴れるファマスだが、バートンは変わらず涼し気な表情だ。
力が強いわけでも、近接戦闘の心得があるわけでもないタボールが敵う相手じゃないのは明白。
いくら親友の頼みといえど、こればかりは聞けない。
「残念ですが、これもファマスさんのスキルアップの為ですわ。大人しく行っていらして」
「裏切り者ぉ~! 貴女なんか、ELIDに身体を引きちぎられてやられちゃえばいいんです! このメカ耳エセお嬢様!」
「んな! なんですの、その低俗な呼び方は!? 頭のこれは耳ではなくアンテナですわ!
ア・ン・テ・ナ! バートンさん、お気をつけて行ってきてくださいまし」
「はいは~い」
「この恨み、絶対に晴らします。覚悟しておくことですね、タボールぅぅ~~~」
穴の底へ飛び降りるバートンと共に、ファマスの怨嗟の声も吸い込まれていく。
それを見送ると、タボールは銃を構えて大穴の淵で狙撃体勢に就く。
2人が無事に着地したのをスコープ越しに確認。着地の際の音と振動に反応して、周囲をうろついていたELIDが2人の方へと振り向いた。
2人を中心にして、半径5メートル圏内に視認できるだけでも数十体以上。文字通りの完全包囲である。
「いぃやぁあぁぁ~~~! こんなのムリムリぃ! 絶対に死んじゃいますって~!」
薄暗いモールの中に響き渡るファマスの絶叫を聞いて、タボールはニヤニヤが止まらない。
さっきより少しはまともに戦えているファマスだが、それでも抑えきるには足りない。
バートンは背後のELIDを抑えるだけに留める腹づもりみたいなので、タボールの援護も必要だ。
さしあたり、ファマスに一番近いELIDに狙いを定めてトリガーを引く。
弾丸は頭部に見事命中。真ん前にいたELIDの頭が爆ぜたのを見て、ファマスは更に大絶叫。
「ここからの狙撃は楽ですわ~」
元から精度の高い銃であるタボールだ。動きが遅いELIDなど、止まっている的を撃ち抜くにも
等しい。
ファマスが慌てふためく様を堪能しつつ余裕の援護狙撃、といきたいところだったのだが。
「あ・・・」
ここで、自分もELIDに囲まれている事に気が付いた。
タボールがいるフロアも決して安全ではないのである。
いや、むしろ、一人ぼっちでELIDから身を守りつつ援護を行わなければいけないタボールの状況こそ、下よりも危険だといえるだろう。
「まぁ、これくらいでないとスキルアップには繋がりませんものね」
いっそのこと、自分も下に降りようかという弱気を抑え込みつつ、タボールは迎撃に悪戦苦闘
する羽目になるのだった。
サムライエッジシリーズをご存じの方はお分かりと思いますが、バートンモデルは特にゴツい
ディテールになっています。
今回、作中で出したのはバートンモデルのVer2、原作だとリベ2で使ってたやつですね。
この銃を使っているところを見たいがためにPC版のリベ2を買い、そしてラスボス手前でバグってフリーズを起こし進行不能になったのも今となっては良い思い出です・・・。
例によって例の如く、次週も更新予定ですので、お暇があったら足を運んでやってくださいな。
以上、弱音御前でした~