ドールズフロントライン ~サムライ/ドライブ~   作:弱音御前

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記録的な寒波という事で寒い日が続く今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか?
どうも、弱音御前です。

対ELID戦実践演習、本日で第7話となります。
クリスとバートンの時と同様、今回もHQに居るガンオタ2人組のお話から始めていきましょう。
それでは、今週もごゆっくりとどうぞ~


サムライ/ドライブ 7話

 仮設キャンプ兼HQ

 

 

「マスター、大変です! ドえらいのが出てきましたぞ~!」

 

「なになに? 今度はどうしたの、指揮官さん?」

 

 興奮のあまり、よく分からない言葉遣いになっている指揮官に呼ばれ、おやつ休憩をとっていたスパスがドスドスと・・・失礼、パタパタといった感じで駆け寄ってくる。

 

「ウェスカーのサムライエッジ、9A91のカメラ画像からようやくモデルを起こせたんだけど。見てくれよ、これを」

 

「どれ? ・・・ほえ~、これはこれは」

 

「な? スゴイだろ? なんなのコレ?」

 

「ん~・・・・・・なんなんだろうね?」

 

「マスターも分からないとか、マジでヤバいなコイツは!」

 

「ちゃんと会話をしなさいよ、アンタ達。傍から見てるとバカっぽいわよ?」

 

 全く会話になっていない事に呆れた45が、冷たい視線と共にツッコミを入れる。

 それが多少なりともクールダウンのきっかけになり、改めて画像の検証が始まる。

 

「M9ベースのカスタムガン、サムライエッジには変わりないけど、クリスちゃんとバートン

ちゃんのとはまた毛色が違うね」

 

「その言葉の通り、バレルの色と同じレール一体型のシルバーフレームはかなり目立つよな。それに、後端のこれビーバーテイルだろ? 俺、ベレッタにビーバーテイルが付いてるの初めて見たよ」

 

「ガバメントのは個別パーツだから交換しやすいけど、M9はフレーム一体だからね。ビーバー

テイル仕様のフレームを作らないといけないから、一般的じゃないかも」

 

「んで、それよりなにより、問題はマズルについてるデカいこれだよな」

 

 指揮官が言っているのは、ウェスカーの銃のマズル部分に付けられているパーツだ。

 長方形の平べったい金属板のように見えるそれは、グリフィンにいる人形達が持つ銃には見られないものである。

 穴のようなものも見られないので、つい先ほどのバートンの銃についていたコンペンセイターではなさそうだ。

 

「う~ん、多分これサプレッサーじゃないのかなって思うんだ。ウェスカーちゃんの戦闘時って、ほとんど音が出てないでしょ? 隠密戦闘には欠かせない装備だから」

 

「にしたってデカくないか?」

 

「その分、消音素材を多く詰められるから消音効果と耐久性アップとか、銃のウェイトバランス調整用のスタビライザーにしてるのかもね。よく見ると八角形に整えられてるから、オクタゴン

サイレンサーって呼んでおこうか」

 

「おお、本当だ! こういうさりげないオシャレってマジでたまらないんだよな」

 

 バートンの時はかろうじてついていけていたが、今回ばかりはマニアックすぎて完全に話についていけない45。

 副官という身の上なのに、周りにいるグリフィンのスタッフさん達みたいになっている今日この頃が不満で仕方ない。

 拗ねた表情をさりげなく指揮官に向けてみても、完全に眼中にないようなのでもう諦めて我慢せざるを得ないだろう。

 

「しかし、同じ一撃必殺でもバートンとウェスカーでは全く戦い方が違うな。姉妹それぞれが全く違う特性を持っている、良いチームだよ」

 

 まぁ、あんな調子でもこうして最後にはそれなりに纏めてくれる指揮官だ。そんな所を45も

気に入っている事でもあるし、ちょっとくらいは大目に見てあげるのも相棒としての甲斐性というものではないだろうか。

 

 

 

 

 

 再びウェスカーチーム

 

 

「なんなのよ、あの速さ。アイツ、本当にIOP製の人形?」

 

 驚きのあまり、独り言が大きくなっている自覚すらワルサーにはない。

 スコープの暗視装置が緑色の複数の輪郭を映し出している。

 一つは9A91のもの。彼女を取り囲むようにしてELIDのものが多数。

 そして、それらの輪郭の合間を縦横無尽に駆け巡る輪郭が一つ。

 ウェスカーの姿だと見て間違いないだろうその姿がELIDに近づくたびに、1体また1体と輪郭が地面に倒れ伏せていく。

 視認する角度によっては、緑色の輪郭が残像をひいているように映るほどの素早さだ。いくら

夜戦に強く夜目が効く9A91とはいえ、何が起こっているのかほとんど理解できていないのだろう、慌てている様子が見て取れる。

 それだけの手際だ、ウェスカーがELIDの大群を全滅させるのにはさほど時間はかからなかった。

 地下道は変わらず静かで湿った空気が滞っていて。さっきと違うのは、腐った血肉と硝煙が

混じった何とも言えない不快な匂いに覆われているところか。

 

「周辺ELIDの殲滅を確認した。2人とも楽にして良いぞ、しばらくは安全だ」

 

 ウェスカーの言葉で、ようやく安堵の息をつくワルサー。

 力を抜いたところで、銃を構えていた自分の手が汗でびっしょりな事に気が付く。

 それは、ELIDという初めて遭遇する脅威に対してのものか。それとも、ウェスカーという規格外の人形を目の当たりにした故のものか。

 

「・・・ふん」

 

 どちらにしろ、この世に存在するモノに対してビビったなどという事実をワルサーは認められない、認めたくない。

 だから、この一件は糧としよう。次回、同じ轍を踏まないための経験値。

 基地でもトップクラスに名を連ねるスナイパー、WA2000は決して天才肌というだけでその地位まで上り詰めたわけではない。

 氷のように冷たいその性格の下に隠された、火花の如く激しい闘争心が彼女をそこまで導いてくれているのだ。

 その事を知る者は基地でも非常に少ない。

 もちろん、我らが指揮官は当然のように把握してくれて・・・・・・いたらワルサーも少しは

報われることだろうが、真実は当人のみぞ知るところだ。

 銃をしまうと、2人がいるロータリーへと歩を進める。

 

「うえ~、足の踏み場もないじゃない。最悪なんだけど」

 

 ELIDの身体を踏まないよう跨いで、時には、ブニブニとした柔らかいものを踏んづけたりしながらも、ようやく2人と合流する。

 

「9A91、ケガはない?」

 

 見た所、地面に倒されて身体は汚れているものの、負傷はしていなそうだ。

 ただ、いちおう仲間同士の礼儀としてワルサーは問いかけてみる。

 

「はい、ありません。どうかお気遣いなく」

 

「あっそ、ならいいんだけど」

 

 ワルサーとは目も合わせず、必要最低限の答えだけ返す9A91。

 素っ気ないその態度が少し気にくわないワルサーだが、自分も他の娘達に対してそんな感じなのは分かっているので、他人の事を言えやしないのである。

 

「初の対ELID戦、ご苦労だった。簡単ではあるが、2人の手際に対しての所感を述べさせてもらおう」

 

 ワルサーと9A91の正面に、やはり背後で腕を組み堂々と佇むウェスカー。

 頭2つ分くらい背が低いチビッ子の筈なのに、纏う雰囲気のおかげで自然とワルサーも9A91も揃って背筋が伸びてしまう。

 

「まず、9A91。夜戦が得意だと言っていたな。ステルス技術は大したものだ。奴らに気づかれずあの距離まで近づくのはクーねぇとバーねぇですら苦慮する、と言えばわかりやすいだろう」

 

(クーねぇとバーねぇって・・・)

 

 見た目にそぐわぬ可愛らしい呼び方を不意打ちでするものだから、つい吹き出しそうになってしまうワルサー。

 しかし、今は真面目な空気なので寸でのところで堪えてみせた。

 

「銃撃も良かったが、組みつかれたのは失態だったな。相手は集団で襲いかかってくる。一度捕まってしまえば、荒波に呑み込まれるように押し込まれてしまうぞ。周囲の状況をつぶさに確認しろ。仕留める優先順位を誤るな。これだけを肝に銘じておけば、作戦効率は格段に上がるだろう」

 

「了解」

 

 それなりに良い評価のようだったが、9A91は眉根ひとつ動かさない。

 感情が欠落してるんじゃないかと思えるくらい、つくづく淡白な人形だとワルサーは傍で思う。

 

「次はワルサー。流石の狙撃能力だな。暗視装置越しにあれだけ正確に頭部を狙えるとは恐れ入った。私達の組織には狙撃手がいなくてな、その手腕を借りたいくらいだ」

 

「それはどうも」

 

「しかし、自分の身を顧みないのは、狙撃手として一流とは言えないのではないか? なぜ、手近なELIDの対処よりも援護を優先した?」

 

 ウェスカーが言っているのは、ワルサーがELIDの接近を知りながらも9A91への援護を優先した時の事だ。

 彼女が責めるような言い方で問いただすその意味は、ワルサーにも理解ができる。

 

「なにも、自分の身を顧みなかったわけじゃないわ。援護を続けて、自分の傍の敵だって問題なく始末できるって予想だっただけ。実際、それで上手くいったんだからいいじゃない」

 

「あのタイミングでは、私が手を出していなければ負傷の確率は五分といったところだったろうな」

 

 攻撃を受けるかどうか、ギリギリのタイミングだった事は理解している。それを言われてしまっては言葉を返せず、ワルサーはウェスカーから視線を外してしまう。

 

「結果が全てというのはその通りだが、良い結果へ導くための確率は高く維持しておくに越したことはあるまい。せっかく腕の良い相棒がいるのだ、もう少し信用してやってはどうだ?」

 

「・・・了解」

 

 やや拗ねた様子ながらも、ワルサーなりに納得して返答する。

 以上を以て、ウェスカー教官の所感はひとまずお開きだ。

 

「では、エリアの奥へ進むとしよう。ここからは潜んでいるELIDの数も多くなるだろう、警戒は怠るな」

 

 そう告げるや、踵を返すとウェスカーはスタスタと先へ進んでいく。

 そんな教官に遅れまいと、黙って後を追う2人。

 ・・・と

 

「ワルサー」

 

 唐突に、9A91が声をかけてきた。

 考えてみれば、この任務が始まってから・・・というか、グリフィンで一緒に生活していた今までの間で、彼女の方から声をかけてきたのは初めての事だ。

 驚くのと同時に、少しだけ嬉しさを感じてしまうワルサー。

 

「何よ?」

 

 でも、そんな内心とは裏腹につっけんどな言い方になってしまうのも、やっぱりいつもどおりのワルサーである。

 

「ウェスカーの話だと、自分がELIDに襲われていたのに、私の援護を優先してくれたのですか?」

 

「それが私の役目だもの。与えられた仕事くらいちゃんとやって当然でしょ?」

 

「そう・・・ですか。それは確かに、その通りですね」

 

 9A91が言いたいのはそういう事ではない筈だ。

 でも、彼女もあまり話が上手な方ではないのでちゃんと言いたいことを伝えられず、ワルサーは戦闘勘こそすこぶる優秀だが、相手の気持ちを汲むことに関してはすこぶるニブい娘なのである。

 助けてくれたお礼の気持ちを伝えたいけど、どうしていいか分からず内心で焦り気味な

9A91。

 さっきからなんで当たり前の話ばかり振ってくるのだろうか? と内心で首を傾げ続ける

ワルサー。

 人付き合いの下手な似た者同士のくせに、どこかすれ違った会話をその後もしばらく続ける

2人。

 9A91はワルサーに対してありがとうって言って、ワルサーはそんな9A91にどういたしましてって返せば良いだけの事だろうにと、サングラスとコートの長襟で隠された下でウェスカーが微笑みを浮かべていたのは、誰も知らない真実である。




サムライエッジのウェスカーモデルを始めてみた時は、サムライエッジだとは気づきませんでしたね。
基本、ハンドガンはシンプルな見た目の方が好みな当方ですが、バートンモデル同様にかなり好きなモデルです。
・・・まぁ、実際こんなにデカいと取り回しとかどうなのよ? とかいうツッコミは野暮なものだという事でひとつ。

というわけで、次週の更新もどうかお楽しみに。
以上、弱音御前でした~
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