ドールズフロントライン ~サムライ/ドライブ~   作:弱音御前

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日差しが気持ちい雪景色な今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか?
どうも、弱音御前です。

今作も第9話にさしかかり、いよいよ最終局面です。
とか言っても、さして煽りを入れるほど盛り上がるようなものでもないので、いつも通りに何かの片手間にでも見てもらえたら幸いに思います。
それでは今週もごゆっくりとどうぞ~


サムライ/ドライブ 9話

「みんな、初の対ELID戦お疲れ様。負傷した娘を出さず無事に帰還できて安心したよ」

 

 仮設HQミーティングルームの壇上に立つ指揮官が話を始める。

 その真正面に並ぶ戦術人形達は一様に真っすぐに整列し、こういう面を目の当たりにすると、

グリフィンはやはり軍事組織なんだなと思える。

 

「今回、戦闘指導を担当してくれたSTARSの3人には本当に感謝している。お互いに慣れない状況で大変だっただろうけど、上手くやってくれてありがとう」

 

「はい、みんなもお礼」

 

 ありがとうございます~、というイマイチ心のこもってなさそうな一同の言葉を聞けば、やはりグリフィンは軍組織とはちょっとズレた立ち位置なのだろうと感じてしまう。

 

「私達なんかがみなさんのお役に立てたのであれば、とても嬉しく思います。私も妹達も、皆さんと一緒に任務をこなせて楽しかったです」

 

 クリスがお手本のような答えを返す。

 この後は、グリフィンの人形達とSTARSとのちょっとした交流会やグリフィンのスタッフが解析したデータのやりとりなどをこなして、本当の作戦終了となる。

 予定通り、夜が更けるまでには撤収作業も終えられる見通しが立って、自然と気が抜け気味になっている指揮官。

 

「しかし、まだ私達にお礼を言うのは早いですよ?」

 

 そんな彼にとって、グリフィン側の戦術人形の娘達にとっても、クリスのこの言葉はまさに寝耳に水というヤツだった。

 

「? クリス、それはどういう意味?」

 

「私達の経験上、倒すべきELIDはまだ残っているはずです。それを退けて、ようやくの任務完了と言えるでしょう」

 

「倒すべきELID、ってついさっきアンタ達がうちの娘達と一緒に片付けてきたんじゃないの?」

 

「このエリアに徘徊してるELIDはほとんどやっつけてきたよ。ただ、それとは別の大物がまだいるんじゃないかと思うんだよね。私達の経験上」

 

 経験上、という言葉をクリスもバートンも使っている。ということは、STARSには察知はできていないながらも、確実に潜んでいるELIDがいるのだろうか?

 ヘリが何もないのに墜落した時の事といい、所謂〝お決まり〟のようなものが付き纏っている

部隊のようである。

 

「はぁ~? まだELIDと戦うの? 私、もうELID退治はこりごりだって言ってるんだけど」

 

「仕事なんだから我慢しなさいよ、馬鹿ネゲヴ」

 

「まだやれって言うなら、私は構わないけど。もうヤツらの相手も慣れたし」

 

「はい、私もワルサーと一緒であれば負ける気がしません。・・・いや、別に私一人でも後れを

取る事なんてないでしょうけど」

 

「私も構いませんけど、ファマスさんは大丈夫でして?」

 

「もうどうでもいいです。やるならさっさとやって、私は早く基地に帰りたいのです」

 

 一同、ELID相手の戦闘にだいぶ慣れたのかヤル気はあるようだ。

 指揮官としては頼もしい限りだが、肝心の相手が分からないというのは問題である。

 

「専門家のキミ達がそう言うならそうなんだろうけど、一体何が・・・」

 

「来るぞ」

 

 ウェスカーがそう呟いた・・・次の瞬間だった。

 突如として辺りに地鳴りが響き渡る。

 突発的な地震の類ではない、外的要因によるもののようだ。

 

「ば、爆発? ウェスカーが言ってた敵が仕掛けてきたの?」

 

「外にいるようだな。一同、戦闘準備だ。終えたものから外に出て応戦するように」

 

 ウェスカーの淡々とした言葉を受け、戦術人形の視線が指揮官に集まる。

 まだ訳が分からない状況ながらも、指揮官は戦闘準備をするよう合図を返す。

 

「あ~あ、今の音だとかなりデカいのが来てそうだな。メンドくさ」

 

「そういうことを言わないの、バートン。皆さまが不安になってしまうでしょう?」

 

 これまでと同様、STARSの面々は初めは手を貸さないつもりのようだ。

 バートンが渋っている様子からすると、敵はかなり面倒な相手らしい。

 

「指揮官も行くの?」

 

「どんな相手なのか見ておきたい。けど、まずはスタッフの安全確保だ。45も手を貸してくれ」

 

「りょーかい」

 

 引き連れていった45とスパスにグリフィンスタッフの護衛を任せ、指揮官はテントの外へと

向かう。

 

「随分と派手にやりあってるな」

 

 テントの出口に近づくにつれ、銃声と地鳴りと人形達の声が聞こえてくる。

 これだけの地響きを鳴らすのだから、さぞかし大量のELID群なのだろうと予想する指揮官。

 ようやくテントの出口から外へ出て、戦場を目の当たりにした指揮官は度肝を抜かれる事になる。

 

「で、デカいな、おい・・・」

 

 身の丈は建物2階分の高さはあるだろうか。他のELIDと同様に人のカタチをとってはいるが、肌は岩石のように変質し、四肢は巨木もかくやといった巨大さだ。

 人間と同等の大きさのELIDしか確認していなかった指揮官は、目の前で部下たちが相手している怪物を前に言葉を失ってしまう。

 

「指揮官さんはあの特殊感染者を見るのは初めてですか?」

 

「ああ、まさかコーラップス液による変質であそこまで巨大になるなんて」

 

「ヒュージタイプと私達は呼称している。こういったエリアには、大抵一体は潜んでいるのが

お約束だ」

 

「それにしてもあれはまたデカいな。アタシ達が相手した中でもトップクラスじゃないか?」

 

「そうですね。今日初めてELID戦を経験した皆さんには厳しい戦いかもしれませんが・・・これ

くらいできないと、この先は無いと私は考えます。いかがでしょうか、指揮官さん?」

 

「キミの言う通りだよ。さっきまでと同様にしばらくはあの娘達に任せてもらいたい。決して押されているわけではないからね」

 

 ELID戦は初めてだとしても、指揮官の部下は鉄血の人形部隊を相手にしている戦闘のプロ集団だ。

 日夜磨き上げてきた戦闘スキルを動員して、彼女たちは巨大ELIDの足元で器用に立ち回っている。

 

「ほら、レフトサイドがお留守になってるわよ、スペシャリスト」

 

 ELIDが放り投げた岩石の破片群がネゲヴに襲い掛かる。

 自らの安全は確保しつつ、その破片を精密射撃で撃ち落とすのは57。

 

「こぢんまりとしたお掃除はアンタの仕事よ。私の仕事は、あのデカブツを始末すること!」

 

 そのおかげで、ネゲヴはELIDに火力を集中できる。

 帰ってくるなり大ゲンカを始めた2人ではあったが、ケンカするほどなんとやらとはまさにこの事である。

 

「本当に硬い身体をしてやがりますわね。私達の弾ではなかなか貫けませんわ」

 

「皮膚の硬質部分が魚のウロコのように合わさっているようですね。稼働する部分、関節の辺りに生じる隙間を狙えばダメージを与えれられます」

 

「ファマスさん、随分と落ち着いて戦っていますけど。アレが怖くはありませんの?」

 

「もうあれくらい大したことありません。慣れてしまったので、どうでもいいのです」

 

「きゃ~! 覚醒したファマスさんったら男前デスワ~!」

 

 敵を翻弄すべく近距離に位置取るのはファマスとタボール。

 ELIDというか、ホラーな見た目のものを苦手とするファマスであったが、今ではもう峠を越してしまったかのように落ち着いたものだ。

 タボールは相変わらずの様子だが、ELIDを相手に的確に対処ができている。

 これもひとえに、バートンのやや荒っぽい指導の賜物だろう。

 

「身体が大きい分、死角も多い」

 

 4人が注意を引いている隙に、背後から忍び寄った9A91がELIDの背中を駆け上がり、超至近距離から大口径弾の銃撃を浴びせる。これは流石に効いたのだろう、ELIDは足元の4人を無視して背後の9A91へと手を伸ばす。

 コンクリを叩き割り、アスファルトを踏み抜くほどの怪力だ。捕まりでもしたら人形といえどひとたまりもない。

 9A91を叩き落そうと迫る巨大な掌。しかし、それは9A91に直撃するまさにその寸前で

火花をあげて弾かれる。

 

「まったく、攻撃に夢中になってないで周りを良く見なさいっての」

 

 通信機越しに愚痴るのはワルサー。フォワード4人から距離を置いて後方に陣取っていた彼女の狙撃が仲間への攻撃を許さない。

 

「あなたの腕ならば、絶対に護ってくれると信じていましたから」

 

「ふん、おだてたってなんも出ないわよ」

 

 普段、他の娘達と相いれない2人がこうしてシンクロしているのも、目覚ましい成長といえるだろう。

 ただ、この場合は部隊指揮官として、というか娘の成長を喜ぶ親のそれに近いような気分を覚える指揮官である。

 

「~~~~!」

 

 6人の息の合った連携攻撃を浴び続け、巨大ELIDが苦悶の声を漏らしながら膝をつく。

 一旦、きっかけが出来てしまえばもうこちらのもの。

 人形達に一縷の容赦も無く畳みかけられ、ついに巨大ELIDは地面へと崩れ落ちたのである。

 

「やりましたわ~! 私達の大勝利ですの~!」

 

 タボールの勝鬨で、人形達の間に歓喜が伝播する。

 STARSの力を借りず、自分達だけで強大な敵を倒したのだ。嬉しさもひとしおといったところだろう。

 

「よくあの大物を倒したなぁ。これも、キミ達の指導のおかげだよ。本当にありがとう」

 

 本当は、自分の部下たちの能力をドヤ顔で自慢したい気分だが、そこはグッと堪えて謙虚な態度で指揮官。

 

「やるねぇ」

 

「ん、良い連携だった」

 

 バートンもウェスカーもグリフィンの人形達を褒めてくれている。

 教官のお墨付きも得られたところで、対ELID実践演習はめでたく幕を・・・

 

「見事な手際、感服しました。ですが」

 

 降ろさせてくれる、というわけにいかないのが現実の辛いところである。

 

「ここからは我々の仕事だろうな」

 

「よっしゃ~! 少し本気出しちゃうか~!」

 

「え? 3人とも何を言って」

 

「「「「「「ぎゃああぁぁぁあぁぁぁ~~~~!!?」」」」」」

 

 歓声から一変、戦術人形達6人の絶叫が指揮官の言葉を遮る。

 驚いて背後を振り向き、そこに展開されていた光景を目の当たりにして、指揮官も思わず声が

漏れ出てしまいそうになる。

 

「おいおい、何だよアレ・・・」

 

 倒れていた筈のELIDがいつの間にか起き上がっている。それも、さっきまでの姿から、より禍々しい見た目に変異している。

 岩石のようだった皮膚が裂け、隆起し、その下に潜んでいた赤黒い筋肉質が剥き出しになっている。

 それだけでも十分に嫌悪感を抱く装いなのに更に輪をかけているのが、身体の至る所に現れた

巨大な眼だ。

 まるで、血の涙を流しているかのような黄色い眼が何を探しているのか周囲をキョロキョロと

見回しているその様子は、大昔に作られた安っぽいホラー映画のようである。

 そんな、冗談のような相手が突然現れては、百戦錬磨の戦術人形達もパニックに陥ろうというもの。

 

「ちょっとぉ! 少しくらいは戦っておこうとか考えないわけ、アンタは!?」

 

「あんなの無理って見ただけで分かるわよ! 退き際を見極めるのもスペシャリストとしての鉄則よ!」

 

 まず、先陣をきって逃げ出してきた・・・失礼、撤退してきたのはネゲヴと57。

 

「慣れたって言ってたくせに気絶してんじゃありませんわよ、ファマスさん~!!」

 

「きゅうぅ~・・・」

 

 変異したELIDを見て気絶してしまったファマスを担ぎ、タボールが続く。

 

「私達も撤退するのですか? アレを倒せば、指揮官は私達を見てくれますよ?」

 

「それは確かに嬉しい! 嬉しいけどまともに戦っても勝ち目がないってことくらいは分かりなさいよアンタは!」

 

 そして、やや不満げな9A91を引き連れたワルサーが最後だ。

 

「皆さん、ここからは私達STARSが引き受けます。指揮官さんも、私達から十分に距離をとってさがっていて下さいね」

 

「分かった。お手並み拝見させてもらうよ、STARS」

 

 クリスの指示に従い、3人よりも後方に退がる。

 巨大な異形を前にして立ち並ぶサムライエッジ三姉妹の背中のなんと頼もしい事か。

 命の危険すらもあるこの状況にも関わらず、思わず見とれてしまうほどだ。

 

「やり方はいつもと同じで大丈夫でしょう。行きますよ、バートン、ウェスカー」

 

「はいよ~」

 

「了解」

 

 クリスの号令で3人が動く。

 体格の差など気にする様子も無く、真正面から仕掛けるのはクリスとバートンだ。

 クリスは得意の精密射撃で巨大ELIDの不気味な目玉を次々と撃ち抜いていく。

 そこが弱点ということなのか、目玉を潰される度にELIDが苦しそうにたじろいでいるのが目に

見えて分かる。

 しかし、クリスの位置からでは死角になってしまい撃ち抜けない目玉は幾つもある。そして、

いつまでもクリスにいいようにやらせておくほど敵は温厚でもない。

 銃撃を受けながらも、ELIDがクリスに向けて突進していく。

 大型トラックがフルスロットルで突撃してくるようなものだろうそれを、クリスは落ち着いて

見切り、横っ飛びに回避する。

 

「っと。ずいぶんタフなタイプですね。これは、眼を潰しただけでは倒しきれないでしょうか?」

 

「姉貴、多分〝アレ〟がどっかにあるんじゃないかな。アタシたちが時間稼ぐから、そこらへんを探してみてよ」

 

「そうですね。では、任せましたよ、2人とも」

 

 何か作戦があるのだろうか? バートンとやり取りを交わし、クリスは一人あさっての方向へと走り出す。

 それを追いかけようと踏み出すELIDだが。

 

「おいおい、お前の相手はこのアタシだ」

 

 その前にバートンが立ちはだかる。

 標的をバートンへと切り替えるELID。

 大木のような巨腕を頭上に掲げると、自らの真下で堂々と佇むバートンへ向けて振り下ろした。

 直撃コース。バートンが攻撃を避ける様子は無い。

 しかし、それこそ虫が潰されるように呆気なくバートンがやられてしまったのかといえば、そんなことは全くなく。

 

「でぇりゃあぁあぁぁ!」

 

 踏み込みと共に乱暴に振り上げられたバートンのアッパーカットが、ELIDの腕を見事に受け止めてみせたのだ。

 

「うぉ!? あ、あの娘、メチャクチャだな・・・」

 

 ズゥン、と響いてくる音の振動に驚き、つい呟きが漏れる指揮官。

 

「そうですの。あの方のパワーは本当に規格外で、私達はもうついていけませんのよ」

 

 と、一緒に行動して存分に思い知ったのだろうタボールが指揮官に応える。

 

「なぁるほどね。確かに、これはそこいらのヒュージタイプと比べても格上だ」

 

 バートンを潰そうとELIDは更に力を籠めるが、当の本人は涼し気な表情を浮かべている。

 この時点でもう、力の差は歴然である。

 

「でも・・・アタシ達を倒そうなんて100年早いってやつだ」

 

 バートンが開いている手で銃を抜く。

 銃口が向けられるのは、肘関節の部分だ。眼を潰され、内部が剥き出しになっていた箇所を

狙い、銃弾が連続で撃ち込まれる。

 

「~~~~~!!?」

 

 血飛沫を撒き散らしながら、ELIDが後退する。

 これ以上のダメージを防ぐためにバートンと距離をとったのは、生物としての本能が故の行動。

 

「逃げられると思ったか? 浅はかな」

 

 だが、バートンが追わずとも、すでにELIDの身体に忍び寄っていたウェスカーがそれを許しはしなかった。

 さながら、木々を縦横無尽に移り渡る小動物といったところか。ELIDの身体に取り付いた

ウェスカーは、足から身体へ、身体から腕へ、と眼を次々と撃ち抜きながら飛び回っている。

 ウェスカーの姿は残像をひいて、おぼろげにしか視認できないほどの速さだ。大柄なELIDが叩き落とすことなど不可能だろう。

 

「とんでもない娘達だな。ぜひともうちにも欲しい」

 

 あれだけの戦闘能力を持っていれば、ELIDのみならず鉄血相手でも即戦力として十分に活躍ができるだろう。

 戦力の増強目的が半分、あとの半分は彼女たちが持つ銃をもっと間近で堪能したい!

という私的な考え半分な指揮官である。

 

「ウェスカー、残りの目玉はどこにあるんだ?」

 

「いま潰したので最後だ。もう見当たらない」

 

「マジか? それでも倒れないってことは、やっぱり特殊なタイプみたいだな」

 

 ウィークポイントを全て潰しても未だにELIDは倒れていない。

 さすがのSTARSも困るような相手なら、グリフィンチームも手を貸した方がいいかと考え始める指揮官。

 でも・・・

 

「お待たせしました、見つけてきましたよ!」

 

 どこからか戻ってきたクリスが担いでいる得物を目の当たりにして、やっぱりそれは余計な

お節介だったと指揮官は気づくことになるのである。

 

「おいおい、ロケットランチャーかよ!? あんなのどこに用意してたんだ?」

 

 オリーブ色の金属筒、みんな大好きロケランを肩に乗せて発射態勢をとるクリス。

 

「さっすが姉貴! ウェスカー、巻き込まれないように注意しろよ~」

 

「ん」

 

 ELIDの身体を蹴り飛ばし、ウェスカーが大きく距離をとる。

 爆発範囲内からウェスカー外れた事を視認したところで。

 

「いっけぇ~~!」

 

 クリスが発射スイッチをポチっと押下する。

 ロケット推進の白煙をひきながら榴弾がカっ飛んでいく。

 それがどれほど危険なものなのか? そんなことを理解する知能すらも失ってしまったELIDに

それを避けられよう筈も無く。

 爆炎と轟音を巻き上げながら、その巨体はようやく地に伏せる事と相成ったのだった。

 

「標的の沈黙を確認。任務完了です」

 

 ランチャーを地面に突き立て、堂々と宣言するクリス。

 こういう仕草がとてもサマになる凛々しい人形である。

 

「最後に決めてくれるのはやっぱり姉貴なんだよな」

 

「クーねぇが一番だ。異論は認めない」

 

 三姉妹揃ってリラックスムードなので、これで本当に戦闘終了と見ていいのだろう。

 指揮官がSTARSのもとに歩み寄る。

 

「三人共さすがの戦闘能力だね。最初から最後まで驚きっぱなしだったよ」

 

「へへ~、そうだろそうだろ? アタシ達STARSに敵なしってね」

 

「バーねぇ、調子乗りすぎは良くない」

 

「それにしても、ロケットランチャーなんていつのまに準備してたんだ?」

 

「これですか? 準備していたのではなく落ちていたのを見つけたのです」

 

「落ちてたって、この辺に?」

 

 ここはグリフィンが仮設HQを敷くために詳しく調査をしたエリアである。あれほど大きな武装が、しかも使用可能なものが落ちていれば事前に見つけていても良さそうなものだが。

 

「大抵、私達がヒュージタイプのELIDと戦う時は周辺にロケットランチャーが落ちているんですよ」

 

「・・・・・・なんで?」

 

「さぁ?」

 

 これもまたSTARSにとってのお約束というものか、深く追求してもその真相を知ることはできないだろう。

 

「ま、まぁ、なんにしてもこれでELID退治は終わりってことで良さそうかな?」

 

「そうですね。最後に皆さんでデブリーフィングを行って、晴れて終了ということで」

 

「指揮官、失礼する!」

 

 突如、クリスの言葉に割って入るのはウェスカー。

 

「へ?」

 

 反応もできていない指揮官の懐にウェスカーは潜り込むと、身体を担ぎ上げる。

 

「え? な? ちょっと!?」

 

 何が何だか分からず言葉も出ない指揮官をそのままに、ウェスカーが大きく飛び退く。

 直後、指揮官が立っていた位置に巨大な腕が振り下ろされた。ほんの少しタイミングが遅かったら、間違いなく大ケガをしていただろう。

 

「っ! アイツ、まだ動けるのかよ? しぶとすぎっしょ」

 

「し、ししし指揮官さん、大丈夫ですか!? 私としたことが、油断してしまいました!」

 

「俺の事はいいから、それよりもELIDまだ倒せてないのか!?」

 

 ランチャーを受けた箇所が盛大に抉れ飛び、見た目には明らかな致命傷だ。

 しかし、生命力も他のELIDとは桁違いなのだろう、這いつくばりながらも指揮官達に向けて動いている。

 

「姉貴、もういっちょロケラン叩き込んじゃえ」

 

「弾が1発しか見つからなかったので、もう弾切れです」

 

「では、地道に攻撃を続けるしかないということか。面倒な」

 

 ともあれ放っておけば傷を修復してまた襲い掛かってくるだろう。

 早急に始末して被害を防ぐのもSTARSの仕事である。

 面倒そうに溜息をつきつつも、再び武器を手に取るサムライエッジ三姉妹。

 そこへ・・・

 

「ヒーローは遅れてやってくる!」

 

 かなり場違いな感じで乱入してきたのは副官45。

 予想外の事態に、三姉妹は揃ってあっけにとられてしまっている。

 

「ヒーローってお前、藪から棒に」

 

 代わりに45にツッコミを入れたのは保護者役の指揮官である。

 

「私がコイツを始末してやるっていう意味よ」

 

 45が構えた銃口をELIDへ向ける。

 対ELID特殊部隊が手を焼く相手を、実戦訓練にも参加していなかった45がどうこうできるものなのか?

 指揮官と恐らくはエッジ三姉妹も同じだろう心配をよそにトリガーを引く45。

 フルオートで襲い掛かる弾丸の雨。直径1センチ弱の弾丸が直撃した瞬間、まるで、小型の榴弾でも炸裂したような勢いでELIDの肉片が爆ぜ飛んだ。

 

「ほぅ」

 

「ひゅぅ♪」

 

「凄い!」

 

 三姉妹揃って驚きの声を漏らす。

 対して、指揮官は驚きすぎて声を出す事すらも忘れている始末。

 ミキサーに放り込まれた果物の如く、巨大ELIDは45の手によってあっという間に細切れにされてしまったのである。

 

「どう? これがグリフィンの副官戦術人形の実力よ」

 

 弾丸を全て撃ち尽くし、ELIDの肉片を前にドヤ顔で言い放つ45。

 

「いやいや、お前の実力っていうか何か特殊な弾丸を使っただろ? 只の45口径弾であんな火力が出るわけがない」

 

「せっかく私がカッコよく決めたのに、なんで水を差すようなこと言うかな。まぁ、いいわ。

スパス」

 

「は~~い」

 

 45に呼ばれ、スパスがドスドスと・・・失礼、とてとてと駆け寄ってくる。

 

「もしかして、キミが細工した弾丸?」

 

「そうだよ。みんなに採ってきてもらったデータを基にして、対ELIDに最適なホローポイント弾を即席で作ったの。厳密に言うと、ELIDの皮質に対して最もダメージ効率のいいエキスパンション

形状と拡張率の弾丸で、ベースにしたのはハイドラショックっていう種類のホローポイントなんだ。これは通常のホローポイントと比べて広く鋭利に拡張する弾丸で・・・」

 

 渋い表情を浮かべる45をよそに、非常にディープな説明を続けるスパス。

 指揮官としてはいつまでも聞いていられるほどに興味深いお話ではあったが。

 

「凄いです、スパスさん!」

 

 光のような速さと勢いでスパスへと詰め寄ってきたクリスによって、お話は中断。

 ちょっとだけ残念に思う指揮官である。

 

「スパスさんが作成した弾丸のあの威力、感服いたしました! おまけに、そんな弾丸を即興で作っちゃう技術力がまた素晴らしい!」

 

「えへへ、そこまで喜んでくれたのなら、苦労して作った甲斐があったよ」

 

「結局、凄いのは45じゃなくてスパスだったっていうことな」

 

「何よその言い方!? 私が撃って倒したんだから、凄いのは私なのよ!」

 

 ふてくされている45はさておき、対ELID実践訓練はこれにて無事完了。

 人形達の能力向上はもとよりも、装備に関しての技術レベルにも貢献できた非常に実りのある

演習だったといえるだろう。




ロケランは原作のバイオではお約束ですよね。ヘリから投下してくれるのならまだしも、なんで
そんなとこに落ちてんだ? っていう。
まぁ、ゲームですし、それで盛り上がるのであれば少しくらいはねぇ、ってことにしておくのが良いのでしょう。

というわけで、次回更新でサムライ/ドライブ最終話になります。戦術人形達の活躍、最後まで
お見逃しなく!
以上、弱音御前でした~
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